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4.準備
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出勤後、指示通りメーキャップ室へ直行すると、ユリウスさんがすでに侍従服に着替えていた。
「遅くなってすみません。すぐ準備します。」そう謝罪しながら、私はフィッティングルームへと直行した。自分の中にイメージ像があるのですぐに完成するだろう。
ユリウスさんは所在なさげに化粧鏡の椅子の前に座っている。くすんだ銀髪を束ねた彼は、起きているのか寝ているのかわからないほど細い。実はどこかの、今はもうない国の王子だ、なんて噂になるほど整った顔立ちだけどね。
「昨日は大変だったようですね。あなたも徹夜だったのでしょう?顔合わせまでまだ時間はありますし、そう急がなくて大丈夫ですよ。」と外から声をかけてくれる。
ありがとうございます、と言いながら私はメーキャップ室の妖精・ピエールさんが準備しておいてくれたフリルとリボンがたっぷりのワンピース以上ドレス未満の衣装に袖を通した。淡いピンクの生地に白のレース達が可愛らしい。ピエールさんはこのメーキャップ室勤めの男性だが、誰もその姿を見たことがないので妖精と言われているのだ。
「どうやら、第三警備隊の確認が漏れていたようですよ、昨日の騒動の前に。まあ我々の仕事は増えましたが、あそこで死傷者が出なかっただけでも幸いでしたね…。」とユリウスさんが教えてくれた顛末によると。
あの王子たちが泊まっていた宿屋のある地区の担当だった第三警備隊の兵士が、その宿屋だけ泊り客の所在確認の報告に来ていなかったのに気づかず、そのままにしていたらしい。
今は謹慎しているその兵士の家では、1ヶ月ほど前に赤ちゃんが生まれ、夜泣きがひどくてノイローゼ気味、集中力が落ちていたそうな。また宿屋の方も、帰ってこない王子様一行に不安を覚えつつも、第三警備隊から報告要請などのコンタクトが無かったのでそのままにしていたということだ。まあ、完全にヒューマンエラーだよね。
「…今頃ミシェル殿下はこっぴどく王宮で叱られているはずなので、歌劇団に戻られてから我々が会いに行く手はずになっています。殿下の護衛の騎士達はもちろんのこと、殿下自身も暗部の警備がつくことを知りません。攻撃は頼みますから、処理はこちらに任せてくださいね。」とユリウスさんが言う。よかった、私が処理だとどうしても2人ずつしか運べないから、バレる確率があがっちゃうのよね。
ワンピースのフリルは1つ1つ仕切られたポケットになっているので、ここに私お得意の暗器を仕込んでいく。10枚ほど入れたら、念のため足首にも白い革のベルトをしてナイフを付けておく、備えあれば憂いなしだ。
着替え終わって、カーテンを開けるとユリウスさんが珍しく目を見開いていた。綺麗な金色の瞳だなー。じゃなくて、そんなにオカシイ!?まあこれからあの子風のメイクにするから大丈夫だと思いたい。
「へへへ、似合わなくて変ですよねー。ただちゃちゃっとヘアメイクしちゃえばなんとかなるので、もうちょっと待っててくださいね。」鏡台の前に座ると、髪の毛をネットに入れてふわふわピンクの髪のカツラを被る。鼻はパテで少し高めに、カラーコンタクトははちみつ色のものを入れて、たれ目になるようアイラインやアイシャドウで調整する。最後に口を小さめに書けば、あんの性悪ヒロイン風のご令嬢の完成!
「お待たせしました。」と振り返ると、「元のほうが良いけれど…任務だしいたし方ない……。」とごにょごにょユリウスさんが言っている、変なの。
「今回もよろしくお願いいたします。」とぴょこんと立って一礼する私。
「あなたと一緒になるのは、あの猫事件以来ですか……どれくらい成長したか楽しみです。まあ、王子相手では本当に襲ってくるかもわかりませんし、気楽にいきましょう。」と優しく微笑むユリウスさん。絵になるなあ。
ちなみに前回一緒になった猫事件とは、とある高位貴族の飼い猫が誘拐されたと騒ぎになった事件のことである。実際は誘拐されたのではなく逃げただけだったのだけど。暗部は他国での対外工作や暗殺から、猫探しまで多種多様な任務があるのだ。
「遅くなってすみません。すぐ準備します。」そう謝罪しながら、私はフィッティングルームへと直行した。自分の中にイメージ像があるのですぐに完成するだろう。
ユリウスさんは所在なさげに化粧鏡の椅子の前に座っている。くすんだ銀髪を束ねた彼は、起きているのか寝ているのかわからないほど細い。実はどこかの、今はもうない国の王子だ、なんて噂になるほど整った顔立ちだけどね。
「昨日は大変だったようですね。あなたも徹夜だったのでしょう?顔合わせまでまだ時間はありますし、そう急がなくて大丈夫ですよ。」と外から声をかけてくれる。
ありがとうございます、と言いながら私はメーキャップ室の妖精・ピエールさんが準備しておいてくれたフリルとリボンがたっぷりのワンピース以上ドレス未満の衣装に袖を通した。淡いピンクの生地に白のレース達が可愛らしい。ピエールさんはこのメーキャップ室勤めの男性だが、誰もその姿を見たことがないので妖精と言われているのだ。
「どうやら、第三警備隊の確認が漏れていたようですよ、昨日の騒動の前に。まあ我々の仕事は増えましたが、あそこで死傷者が出なかっただけでも幸いでしたね…。」とユリウスさんが教えてくれた顛末によると。
あの王子たちが泊まっていた宿屋のある地区の担当だった第三警備隊の兵士が、その宿屋だけ泊り客の所在確認の報告に来ていなかったのに気づかず、そのままにしていたらしい。
今は謹慎しているその兵士の家では、1ヶ月ほど前に赤ちゃんが生まれ、夜泣きがひどくてノイローゼ気味、集中力が落ちていたそうな。また宿屋の方も、帰ってこない王子様一行に不安を覚えつつも、第三警備隊から報告要請などのコンタクトが無かったのでそのままにしていたということだ。まあ、完全にヒューマンエラーだよね。
「…今頃ミシェル殿下はこっぴどく王宮で叱られているはずなので、歌劇団に戻られてから我々が会いに行く手はずになっています。殿下の護衛の騎士達はもちろんのこと、殿下自身も暗部の警備がつくことを知りません。攻撃は頼みますから、処理はこちらに任せてくださいね。」とユリウスさんが言う。よかった、私が処理だとどうしても2人ずつしか運べないから、バレる確率があがっちゃうのよね。
ワンピースのフリルは1つ1つ仕切られたポケットになっているので、ここに私お得意の暗器を仕込んでいく。10枚ほど入れたら、念のため足首にも白い革のベルトをしてナイフを付けておく、備えあれば憂いなしだ。
着替え終わって、カーテンを開けるとユリウスさんが珍しく目を見開いていた。綺麗な金色の瞳だなー。じゃなくて、そんなにオカシイ!?まあこれからあの子風のメイクにするから大丈夫だと思いたい。
「へへへ、似合わなくて変ですよねー。ただちゃちゃっとヘアメイクしちゃえばなんとかなるので、もうちょっと待っててくださいね。」鏡台の前に座ると、髪の毛をネットに入れてふわふわピンクの髪のカツラを被る。鼻はパテで少し高めに、カラーコンタクトははちみつ色のものを入れて、たれ目になるようアイラインやアイシャドウで調整する。最後に口を小さめに書けば、あんの性悪ヒロイン風のご令嬢の完成!
「お待たせしました。」と振り返ると、「元のほうが良いけれど…任務だしいたし方ない……。」とごにょごにょユリウスさんが言っている、変なの。
「今回もよろしくお願いいたします。」とぴょこんと立って一礼する私。
「あなたと一緒になるのは、あの猫事件以来ですか……どれくらい成長したか楽しみです。まあ、王子相手では本当に襲ってくるかもわかりませんし、気楽にいきましょう。」と優しく微笑むユリウスさん。絵になるなあ。
ちなみに前回一緒になった猫事件とは、とある高位貴族の飼い猫が誘拐されたと騒ぎになった事件のことである。実際は誘拐されたのではなく逃げただけだったのだけど。暗部は他国での対外工作や暗殺から、猫探しまで多種多様な任務があるのだ。
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