31 / 36
31章 ホワイトデー
しおりを挟む
ホワイトデー。それは日本発祥の慣習である。日本企業の商業戦略によって生まれた慣習だ。要するに「土用の丑の日のウナギ」と同じなのである。
そんな商業戦略に多くの日本人は踊らされている。関都もその1人である。関都は城之内と三バカトリオ、それに慈美子を学校の屋上に呼び出していた。
「関都さん。用事ってなんですの?」
今日はホワイトデーなのは城之内も重々承知だったが、ホワイトデーのホワイトに相応しいぐらいに白々しくしらばっくれていた。
「今日はホワイトデーよね?」
慈美子は隠し立てをする事もなく、平然と口にした。城之内は厚かましいと明らかに嫌悪感を示した。
しかし、関都はそんな事気にも留めていなかった。
「そうなんだ。だから4人に渡したいものがあって」
関都は4人に同じ大きさ・同じ包装の箱を手渡した。城之内以外は皆嬉しそうである。関都は箱の中身を説明した。
「中身はホワイトチョコなんだ!ホワイトデーだからな!一応手作りだ」
「まあ!ありがとう関都くん!関都くんも私と同じく手作りに挑戦したのね!」
「ありがとう関都くん!」
「安物のチョコのお返しが手作りだなんて気が引けるけれど…」
「大事に食べるわ!」
慈美子と三バカトリオは大喜びである。しかし、城之内は不満であった。4人のチョコに差が無いのが不満なのである。本来ならば、自分が一番良いチョコを受け取るべきだと思っているのだ。少なくとも三バカトリオよりはいいチョコでなければ納得が行かない。
しかし、城之内はその不満を押し殺して関都にお礼を言った。
「ありがとうございますの。関都さん」
「城之内の高級チョコに見合うものじゃなくて悪いんだが…」
「いいえ!お気になさらなくて結構ですの!」
そう言いながらも、チョコに差を付けてくれなかった事に城之内は内心ショックを受けていた。それを悟られないように、三バカトリオを引き連れ、城之内はその場を逃げるように去って行った。
4人を見送った関都は、しめたというような顔をした。
「慈美子!僕がやったチョコを今ここで食べてくれないか?」
「ええ!?今?」
「うん。食べた反応が見たいんだ」
まさにバレンタイデーの時と真逆である。関都に食べる事を促された慈美子は関都のチョコをパクリと口にした。
「まぁ?!これは…!」
慈美子の口の中に甘酸っぱい味が広がった。慈美子の頬っぺたは隕石のように落下した。それほど美味しそうなリアクションをしたのである。
「パイナップルチョコレート!」
「そう。ホワイトチョコの中身にパイナップルチョコを入れたんだ!」
パイナップルは慈美子の大好物である。慈美子はおいしそうに関都のチョコを全て平らげた。
慈美子は満足げだが、それ以上に満足げなのは他ならぬ関都であった。
「遠足でパイナップルが好物だって言っていたからパイナップルチョコをふんだんに使ったんだ」
「覚えててくれたのね。私の好物…」
「うん。バレンタイデーのお返しには好物で返すのが相応しいと思ってな。それに手作りには手作りで返そうと思ってな。差を付けたら悪いから、皆に同じチョコを渡したんだが、…手作りにしたのは完全にお前の為だよ」
高級チョコよりも手作りのチョコの方が関都の心に響いていたのだった。慈美子が心を込めて作ったチョコがまさに関都の心にぶっ刺さったのである。だからこそ、皆に渡すのを慈美子の好物に合わせたチョコにしたのである。
「ふふふ!ありがとう関都くん!とても美味しかったわ!」
慈美子は幸せそうに深々とお辞儀をした。関都は「おいおいおい」とそこまでしなくてもと言う風に慌てている。
一方、その頃、城之内たちは…。
「そのホワイトチョコレート、わたくしにお渡しなさい」
「え?」
城之内のその言葉に三バカトリオたちは混乱した。しかし、城之内はそんなのお構いなしである。
「聞こえませんでしたの?関都さんから貰ったホワイトチョコレートをわたくしにお渡しなさい」
「そんな…どうして…」
「そのチョコレートは本来わたくしが貰うべきチョコレートですわ!わたくしの指示で渡したチョコレートのお礼ですもの!当然ですわ!」
そう一方的に宣言すると、城之内は3人から関都のチョコレートを奪いとった。3人は成す術なく無抵抗である。
「わたくしはこれくらいお返しをもらっても当然ですわ!これは本当はわたくしに渡すべき分ですの!」
そういうと城之内は関都のから貰ったチョコを食べ始めた。三バカトリオはうんざりしてどっかに行ってしまった。
「あら。このホワイトチョコレート。中身はパイン味ですわ。関都さんも中々凝ってらっしゃいますわね!」
城之内はそれが慈美子の好物に合わせて作ったものだとは気が付いていなかった。そんな事もつゆ知らず、城之内は関都から貰ったチョコを独占し、ご満悦である。まさに知らぬが仏。
一方、用事がある関都と別れた慈美子は1人帰路に付いていた。するとその慈美子の行く手を阻む思わぬ人物たちが現れる。
「あら!?小美瑠ちゃんに阿諛美ちゃんに小別香ちゃんじゃない!どうしたの?」
そう、現れたのはいつもの三バカトリオである。慈美子は城之内が居ない事に不思議そうであった。
3人はそんな慈美子の気持ちを察してか、察せずか、用件だけを手短に述べた。
「これ…」
「友チョコのお返しの…」
「手作りクッキーなんだけれど…受け取ってくれるかしら?」
意外な申し出に慈美子は驚いた。と、同時に歓喜が沸いてきた。まさかこの3人までもが自分にお返しをくれるとは思っていなかったのである。
「もちろんよ!ありがとう!」
「ふふふ…じゃあ私たちはこれで…」
「待って!」
慈美子は3人を呼び止めた。3人は不思議そうな顔をする。慈美子はそんな3人に暖かい目で微笑みかけた。
「せっかくだもの!一緒に帰りましょう!」
3人は少し戸惑うが、一瞬静かになり、無言で頷いた。こうして4人は微妙な距離感で帰って行くのであった。
そんな商業戦略に多くの日本人は踊らされている。関都もその1人である。関都は城之内と三バカトリオ、それに慈美子を学校の屋上に呼び出していた。
「関都さん。用事ってなんですの?」
今日はホワイトデーなのは城之内も重々承知だったが、ホワイトデーのホワイトに相応しいぐらいに白々しくしらばっくれていた。
「今日はホワイトデーよね?」
慈美子は隠し立てをする事もなく、平然と口にした。城之内は厚かましいと明らかに嫌悪感を示した。
しかし、関都はそんな事気にも留めていなかった。
「そうなんだ。だから4人に渡したいものがあって」
関都は4人に同じ大きさ・同じ包装の箱を手渡した。城之内以外は皆嬉しそうである。関都は箱の中身を説明した。
「中身はホワイトチョコなんだ!ホワイトデーだからな!一応手作りだ」
「まあ!ありがとう関都くん!関都くんも私と同じく手作りに挑戦したのね!」
「ありがとう関都くん!」
「安物のチョコのお返しが手作りだなんて気が引けるけれど…」
「大事に食べるわ!」
慈美子と三バカトリオは大喜びである。しかし、城之内は不満であった。4人のチョコに差が無いのが不満なのである。本来ならば、自分が一番良いチョコを受け取るべきだと思っているのだ。少なくとも三バカトリオよりはいいチョコでなければ納得が行かない。
しかし、城之内はその不満を押し殺して関都にお礼を言った。
「ありがとうございますの。関都さん」
「城之内の高級チョコに見合うものじゃなくて悪いんだが…」
「いいえ!お気になさらなくて結構ですの!」
そう言いながらも、チョコに差を付けてくれなかった事に城之内は内心ショックを受けていた。それを悟られないように、三バカトリオを引き連れ、城之内はその場を逃げるように去って行った。
4人を見送った関都は、しめたというような顔をした。
「慈美子!僕がやったチョコを今ここで食べてくれないか?」
「ええ!?今?」
「うん。食べた反応が見たいんだ」
まさにバレンタイデーの時と真逆である。関都に食べる事を促された慈美子は関都のチョコをパクリと口にした。
「まぁ?!これは…!」
慈美子の口の中に甘酸っぱい味が広がった。慈美子の頬っぺたは隕石のように落下した。それほど美味しそうなリアクションをしたのである。
「パイナップルチョコレート!」
「そう。ホワイトチョコの中身にパイナップルチョコを入れたんだ!」
パイナップルは慈美子の大好物である。慈美子はおいしそうに関都のチョコを全て平らげた。
慈美子は満足げだが、それ以上に満足げなのは他ならぬ関都であった。
「遠足でパイナップルが好物だって言っていたからパイナップルチョコをふんだんに使ったんだ」
「覚えててくれたのね。私の好物…」
「うん。バレンタイデーのお返しには好物で返すのが相応しいと思ってな。それに手作りには手作りで返そうと思ってな。差を付けたら悪いから、皆に同じチョコを渡したんだが、…手作りにしたのは完全にお前の為だよ」
高級チョコよりも手作りのチョコの方が関都の心に響いていたのだった。慈美子が心を込めて作ったチョコがまさに関都の心にぶっ刺さったのである。だからこそ、皆に渡すのを慈美子の好物に合わせたチョコにしたのである。
「ふふふ!ありがとう関都くん!とても美味しかったわ!」
慈美子は幸せそうに深々とお辞儀をした。関都は「おいおいおい」とそこまでしなくてもと言う風に慌てている。
一方、その頃、城之内たちは…。
「そのホワイトチョコレート、わたくしにお渡しなさい」
「え?」
城之内のその言葉に三バカトリオたちは混乱した。しかし、城之内はそんなのお構いなしである。
「聞こえませんでしたの?関都さんから貰ったホワイトチョコレートをわたくしにお渡しなさい」
「そんな…どうして…」
「そのチョコレートは本来わたくしが貰うべきチョコレートですわ!わたくしの指示で渡したチョコレートのお礼ですもの!当然ですわ!」
そう一方的に宣言すると、城之内は3人から関都のチョコレートを奪いとった。3人は成す術なく無抵抗である。
「わたくしはこれくらいお返しをもらっても当然ですわ!これは本当はわたくしに渡すべき分ですの!」
そういうと城之内は関都のから貰ったチョコを食べ始めた。三バカトリオはうんざりしてどっかに行ってしまった。
「あら。このホワイトチョコレート。中身はパイン味ですわ。関都さんも中々凝ってらっしゃいますわね!」
城之内はそれが慈美子の好物に合わせて作ったものだとは気が付いていなかった。そんな事もつゆ知らず、城之内は関都から貰ったチョコを独占し、ご満悦である。まさに知らぬが仏。
一方、用事がある関都と別れた慈美子は1人帰路に付いていた。するとその慈美子の行く手を阻む思わぬ人物たちが現れる。
「あら!?小美瑠ちゃんに阿諛美ちゃんに小別香ちゃんじゃない!どうしたの?」
そう、現れたのはいつもの三バカトリオである。慈美子は城之内が居ない事に不思議そうであった。
3人はそんな慈美子の気持ちを察してか、察せずか、用件だけを手短に述べた。
「これ…」
「友チョコのお返しの…」
「手作りクッキーなんだけれど…受け取ってくれるかしら?」
意外な申し出に慈美子は驚いた。と、同時に歓喜が沸いてきた。まさかこの3人までもが自分にお返しをくれるとは思っていなかったのである。
「もちろんよ!ありがとう!」
「ふふふ…じゃあ私たちはこれで…」
「待って!」
慈美子は3人を呼び止めた。3人は不思議そうな顔をする。慈美子はそんな3人に暖かい目で微笑みかけた。
「せっかくだもの!一緒に帰りましょう!」
3人は少し戸惑うが、一瞬静かになり、無言で頷いた。こうして4人は微妙な距離感で帰って行くのであった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる