2 / 39
第2話 数年後に死亡フラグが立つ事を思い出す
しおりを挟む
それからも俺は与えられた立場をふんだんに利用し、朝寝坊からの三食昼寝付きの生活を満喫していた。働きもせずに三食旨いものを食べる事ができて、そして寝放題なんて、なんて最高の生活なんだ。
コンコンコン。
「なんだ?」
ノックの音が聞こえてきた。
「アーサー様。夕食の時間です」
どうやらメイドのようだ。
「旦那様と奥様が食堂でお待ちです。そしてお姉様も」
「……そうか。今から行く」
姉。アーサー・フィン・オルレアンには2歳年上の一人の姉がいた。その名がアリシア・フィン・オルレアン。長い黒髪に黒い瞳をした容姿端麗な少女。。そして頭脳明晰。運動神経も良く、剣にも優れ。そして何よりも魔法の才能に優れていた。
その魔法の才は四大属性と言われる火・風・水・地。一般的な魔法属性全てを極める程に至る。
ただ、そんな彼女にも致命的な欠点があった。高圧的で人を見下すところがあり、ただただ性格が悪いのだ。原作ゲーム内では所謂『悪役令嬢』である彼女は、その有り余った才能で他者を見下し、多くのヘイトを買っていた。
そして、正ヒロインであるフィオナ・オラトリアに婚約者である王子を奪われ、婚約破棄されたり、負けヒロインのような役割。フィオナと闘って敗れるという踏み台のような役割を果たしていた。
いかにも、この俺、アーサー・フィン・オルレアンの姉に相応しい人物だ。ただ、俺と違って彼女は怠惰ではない。負けず嫌いな彼女は勤勉である。そうであるが故に成績優秀にもなるし、魔法を極める事もできるのだ。
その夜。俺は大きな食堂で父・母、そして姉であるアリシアもその場にいた。
食堂には多種多様な豪華な料理が並んでいた。とても四人で食べきれる量ではないだろう。実に勿体ないが、いかにも貴族の生活と言った感じだ。
「ど、どうだ? アーサー。勉学や剣の鍛錬の調子は?」
食事中。父が心配そうに聞いてくる。
「も、申し訳ありません。お父様。腹の調子が良くなく、自室で静養中であります故、なかなか勉学も鍛錬の方も進んでおりません」
俺は仕方なく嘘をついた。勿論、そんな事はなく、仮病だ。毎日、沢山、出されてた食事を平らげている。胃腸は極めて好調であった。
ただただ、俺は怠けたいだけなのだ。ダラダラしていたいだけなのだ。
「そ、それは大変だ。治癒魔法を使える者を呼んだ方がいいのでは」
「お父様。そんな事をしても無駄です。前に治癒魔法師を呼んで治療させたところ、腹痛が治まらなかったそうではないですか。そんなものサボりたいが為の仮病に決まってます」
アリシアが厳しい言葉を言い放つ。
ギクリ。図星だ。その通りだ。図星過ぎて反論できない。仕方ない。ここは本音で語るとするか。
「僕の才能なら、別に勉学も鍛錬も必要ないんですよ! 努力なんて言葉、凡人にだけ必要な言葉なんです! 僕はやる必要がない勉学や鍛錬などしたくないのです!」
俺は立ち上がり、高々と宣言する。
「そんな事しなくても、三食食えて寝ているだけの生活が可能なのに、なぜそんな事をする必要があるのですか!? それこそ無駄な努力と言えるのではないでしょうか!?」
「才に溺れた愚弟が。そんな事ではやがて足元を掬われますよ」
アリシアはため息交じりに嘆く。
「お父様、お母様。この愚弟には何も期待しない事です。オルレアン家の家督は私が継ぎます故、何も心配はいりません」
この世界では男女による権利格差というものは殆どない。その理由のひとつに男女による身体格差があまりない事。ゲーム世界なのでステータスのような概念がそのまま身体能力に反映されるのだ。そして次に魔法の存在である。魔法には男女差のような概念があまりない。その為、男性による特権意識というものが特になく、家督を継ぐのは別に女性であっても構わないのだ。
それに男女の違いを除けば年齢が上である姉であるアリシアこそが家督を継ぐのが自然な事と言えた。
それに俺は怠惰に過ごしたいのだ。面倒ごとは全て姉であるアリシアに押し付けたい。俺は気ままに楽して生きて行ければいいのだ。働いたら負けだと思ってるのだ。
◇
こうして夕食を終えた俺はデカい大理石で出来た風呂に入り、リラックスタイム。別に勉学もしてないし、剣の鍛錬もしてないのだから別に疲れるって事もないのではあるが。強いて言えばあの姉であるアリシアが目の上のたんこぶでストレスになるって事くらいか。
だが、それ以外には何の不満もない。俺にとっては最高の環境だった。この状況がずっと続く事を願うばかりだ。
それから自室に戻った。そして、いつものように大きなふかふかのベッドに俺はダイブした。
最高だ。最高過ぎる。これから俺は昼になるまで惰眠を貪るだけだ。勉学や鍛錬なんてもってのほかだ。前世で俺は死ぬほど働いたのだ。それなのに勉学だの鍛錬だの、だるすぎる。疲れる事や面倒な事は、御免こうむりたい。
だが、その時。俺は気づいた。今の俺——アーサー・フィン・オルレアンは10歳の誕生日を迎えたところである。
つまりは今から5年後には俺は主人公達と魔法学園に入学する事になる。
そして俺は闘技大会で主人公に大敗を喫して爆散したり、魔族に仲間を売り渡し、命乞いをした末に用済みとばかりに処刑される。仲間を売り渡さなくても舐め腐ったまま魔族と闘い、当然のように敗北し、無残に命を落とす事もあるのだ。
ま、まずい。
俺は気づいてしまった。このまま怠惰な生活を送り続けると、俺は5年後には死亡フラグを散々と立てた挙句に、見事にそのフラグを回収して死亡ENDを迎えてしまうのだ。
それだけは避けなければならない。死んでしまっては元も子もない。怠惰な生活というのは生きていてこそ価値があるのだ。
俺は考えを少し改める事にした。怠惰な生活を送る為にも、剣や魔法の修練や勉学にも多少は真面目に取り組まなければならないだろう。
死亡フラグを回避する為には。だが、それも一時的なものだ。全ての死亡フラグを乗り越えた暁には俺はダラダラと怠惰な生活を送ると心に誓った。
その翌日から俺は一時的に心を入れ替え、死亡フラグを回避する為に剣や魔法の修練。勉学に勤しむ事にしたのだ。
そして朝日が昇り、朝がやってきた。俺にとっての新しい一日の始まりであった。
コンコンコン。
「なんだ?」
ノックの音が聞こえてきた。
「アーサー様。夕食の時間です」
どうやらメイドのようだ。
「旦那様と奥様が食堂でお待ちです。そしてお姉様も」
「……そうか。今から行く」
姉。アーサー・フィン・オルレアンには2歳年上の一人の姉がいた。その名がアリシア・フィン・オルレアン。長い黒髪に黒い瞳をした容姿端麗な少女。。そして頭脳明晰。運動神経も良く、剣にも優れ。そして何よりも魔法の才能に優れていた。
その魔法の才は四大属性と言われる火・風・水・地。一般的な魔法属性全てを極める程に至る。
ただ、そんな彼女にも致命的な欠点があった。高圧的で人を見下すところがあり、ただただ性格が悪いのだ。原作ゲーム内では所謂『悪役令嬢』である彼女は、その有り余った才能で他者を見下し、多くのヘイトを買っていた。
そして、正ヒロインであるフィオナ・オラトリアに婚約者である王子を奪われ、婚約破棄されたり、負けヒロインのような役割。フィオナと闘って敗れるという踏み台のような役割を果たしていた。
いかにも、この俺、アーサー・フィン・オルレアンの姉に相応しい人物だ。ただ、俺と違って彼女は怠惰ではない。負けず嫌いな彼女は勤勉である。そうであるが故に成績優秀にもなるし、魔法を極める事もできるのだ。
その夜。俺は大きな食堂で父・母、そして姉であるアリシアもその場にいた。
食堂には多種多様な豪華な料理が並んでいた。とても四人で食べきれる量ではないだろう。実に勿体ないが、いかにも貴族の生活と言った感じだ。
「ど、どうだ? アーサー。勉学や剣の鍛錬の調子は?」
食事中。父が心配そうに聞いてくる。
「も、申し訳ありません。お父様。腹の調子が良くなく、自室で静養中であります故、なかなか勉学も鍛錬の方も進んでおりません」
俺は仕方なく嘘をついた。勿論、そんな事はなく、仮病だ。毎日、沢山、出されてた食事を平らげている。胃腸は極めて好調であった。
ただただ、俺は怠けたいだけなのだ。ダラダラしていたいだけなのだ。
「そ、それは大変だ。治癒魔法を使える者を呼んだ方がいいのでは」
「お父様。そんな事をしても無駄です。前に治癒魔法師を呼んで治療させたところ、腹痛が治まらなかったそうではないですか。そんなものサボりたいが為の仮病に決まってます」
アリシアが厳しい言葉を言い放つ。
ギクリ。図星だ。その通りだ。図星過ぎて反論できない。仕方ない。ここは本音で語るとするか。
「僕の才能なら、別に勉学も鍛錬も必要ないんですよ! 努力なんて言葉、凡人にだけ必要な言葉なんです! 僕はやる必要がない勉学や鍛錬などしたくないのです!」
俺は立ち上がり、高々と宣言する。
「そんな事しなくても、三食食えて寝ているだけの生活が可能なのに、なぜそんな事をする必要があるのですか!? それこそ無駄な努力と言えるのではないでしょうか!?」
「才に溺れた愚弟が。そんな事ではやがて足元を掬われますよ」
アリシアはため息交じりに嘆く。
「お父様、お母様。この愚弟には何も期待しない事です。オルレアン家の家督は私が継ぎます故、何も心配はいりません」
この世界では男女による権利格差というものは殆どない。その理由のひとつに男女による身体格差があまりない事。ゲーム世界なのでステータスのような概念がそのまま身体能力に反映されるのだ。そして次に魔法の存在である。魔法には男女差のような概念があまりない。その為、男性による特権意識というものが特になく、家督を継ぐのは別に女性であっても構わないのだ。
それに男女の違いを除けば年齢が上である姉であるアリシアこそが家督を継ぐのが自然な事と言えた。
それに俺は怠惰に過ごしたいのだ。面倒ごとは全て姉であるアリシアに押し付けたい。俺は気ままに楽して生きて行ければいいのだ。働いたら負けだと思ってるのだ。
◇
こうして夕食を終えた俺はデカい大理石で出来た風呂に入り、リラックスタイム。別に勉学もしてないし、剣の鍛錬もしてないのだから別に疲れるって事もないのではあるが。強いて言えばあの姉であるアリシアが目の上のたんこぶでストレスになるって事くらいか。
だが、それ以外には何の不満もない。俺にとっては最高の環境だった。この状況がずっと続く事を願うばかりだ。
それから自室に戻った。そして、いつものように大きなふかふかのベッドに俺はダイブした。
最高だ。最高過ぎる。これから俺は昼になるまで惰眠を貪るだけだ。勉学や鍛錬なんてもってのほかだ。前世で俺は死ぬほど働いたのだ。それなのに勉学だの鍛錬だの、だるすぎる。疲れる事や面倒な事は、御免こうむりたい。
だが、その時。俺は気づいた。今の俺——アーサー・フィン・オルレアンは10歳の誕生日を迎えたところである。
つまりは今から5年後には俺は主人公達と魔法学園に入学する事になる。
そして俺は闘技大会で主人公に大敗を喫して爆散したり、魔族に仲間を売り渡し、命乞いをした末に用済みとばかりに処刑される。仲間を売り渡さなくても舐め腐ったまま魔族と闘い、当然のように敗北し、無残に命を落とす事もあるのだ。
ま、まずい。
俺は気づいてしまった。このまま怠惰な生活を送り続けると、俺は5年後には死亡フラグを散々と立てた挙句に、見事にそのフラグを回収して死亡ENDを迎えてしまうのだ。
それだけは避けなければならない。死んでしまっては元も子もない。怠惰な生活というのは生きていてこそ価値があるのだ。
俺は考えを少し改める事にした。怠惰な生活を送る為にも、剣や魔法の修練や勉学にも多少は真面目に取り組まなければならないだろう。
死亡フラグを回避する為には。だが、それも一時的なものだ。全ての死亡フラグを乗り越えた暁には俺はダラダラと怠惰な生活を送ると心に誓った。
その翌日から俺は一時的に心を入れ替え、死亡フラグを回避する為に剣や魔法の修練。勉学に勤しむ事にしたのだ。
そして朝日が昇り、朝がやってきた。俺にとっての新しい一日の始まりであった。
0
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!
柊
ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」
卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。
よくある断罪劇が始まる……筈が。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる