怠惰な悪役貴族は変わらず怠惰に過ごしたい。死亡フラグを回避する為に【闇魔法】を極めてたら正ヒロインに好意を持たれたのだが。

つくも/九十九弐式

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第2話 数年後に死亡フラグが立つ事を思い出す

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 それからも俺は与えられた立場をふんだんに利用し、朝寝坊からの三食昼寝付きの生活を満喫していた。働きもせずに三食旨いものを食べる事ができて、そして寝放題なんて、なんて最高の生活なんだ。

 コンコンコン。

「なんだ?」

 ノックの音が聞こえてきた。

「アーサー様。夕食の時間です」

 どうやらメイドのようだ。

「旦那様と奥様が食堂でお待ちです。そしてお姉様も」

「……そうか。今から行く」

 姉。アーサー・フィン・オルレアンには2歳年上の一人の姉がいた。その名がアリシア・フィン・オルレアン。長い黒髪に黒い瞳をした容姿端麗な少女。。そして頭脳明晰。運動神経も良く、剣にも優れ。そして何よりも魔法の才能に優れていた。
 その魔法の才は四大属性と言われる火・風・水・地。一般的な魔法属性全てを極める程に至る。

 ただ、そんな彼女にも致命的な欠点があった。高圧的で人を見下すところがあり、ただただ性格が悪いのだ。原作ゲーム内では所謂『悪役令嬢』である彼女は、その有り余った才能で他者を見下し、多くのヘイトを買っていた。
 そして、正ヒロインであるフィオナ・オラトリアに婚約者である王子を奪われ、婚約破棄されたり、負けヒロインのような役割。フィオナと闘って敗れるという踏み台のような役割を果たしていた。

 いかにも、この俺、アーサー・フィン・オルレアンの姉に相応しい人物だ。ただ、俺と違って彼女は怠惰ではない。負けず嫌いな彼女は勤勉である。そうであるが故に成績優秀にもなるし、魔法を極める事もできるのだ。

 その夜。俺は大きな食堂で父・母、そして姉であるアリシアもその場にいた。
 食堂には多種多様な豪華な料理が並んでいた。とても四人で食べきれる量ではないだろう。実に勿体ないが、いかにも貴族の生活と言った感じだ。

「ど、どうだ? アーサー。勉学や剣の鍛錬の調子は?」

 食事中。父が心配そうに聞いてくる。

「も、申し訳ありません。お父様。腹の調子が良くなく、自室で静養中であります故、なかなか勉学も鍛錬の方も進んでおりません」

 俺は仕方なく嘘をついた。勿論、そんな事はなく、仮病だ。毎日、沢山、出されてた食事を平らげている。胃腸は極めて好調であった。
 ただただ、俺は怠けたいだけなのだ。ダラダラしていたいだけなのだ。

「そ、それは大変だ。治癒魔法を使える者を呼んだ方がいいのでは」

「お父様。そんな事をしても無駄です。前に治癒魔法師を呼んで治療させたところ、腹痛が治まらなかったそうではないですか。そんなものサボりたいが為の仮病に決まってます」

 アリシアが厳しい言葉を言い放つ。

 ギクリ。図星だ。その通りだ。図星過ぎて反論できない。仕方ない。ここは本音で語るとするか。

「僕の才能なら、別に勉学も鍛錬も必要ないんですよ! 努力なんて言葉、凡人にだけ必要な言葉なんです! 僕はやる必要がない勉学や鍛錬などしたくないのです!」
 
 俺は立ち上がり、高々と宣言する。

「そんな事しなくても、三食食えて寝ているだけの生活が可能なのに、なぜそんな事をする必要があるのですか!? それこそ無駄な努力と言えるのではないでしょうか!?」

「才に溺れた愚弟が。そんな事ではやがて足元を掬われますよ」

 アリシアはため息交じりに嘆く。

「お父様、お母様。この愚弟には何も期待しない事です。オルレアン家の家督は私が継ぎます故、何も心配はいりません」

 この世界では男女による権利格差というものは殆どない。その理由のひとつに男女による身体格差があまりない事。ゲーム世界なのでステータスのような概念がそのまま身体能力に反映されるのだ。そして次に魔法の存在である。魔法には男女差のような概念があまりない。その為、男性による特権意識というものが特になく、家督を継ぐのは別に女性であっても構わないのだ。

 それに男女の違いを除けば年齢が上である姉であるアリシアこそが家督を継ぐのが自然な事と言えた。

 それに俺は怠惰に過ごしたいのだ。面倒ごとは全て姉であるアリシアに押し付けたい。俺は気ままに楽して生きて行ければいいのだ。働いたら負けだと思ってるのだ。

                  ◇

 こうして夕食を終えた俺はデカい大理石で出来た風呂に入り、リラックスタイム。別に勉学もしてないし、剣の鍛錬もしてないのだから別に疲れるって事もないのではあるが。強いて言えばあの姉であるアリシアが目の上のたんこぶでストレスになるって事くらいか。

だが、それ以外には何の不満もない。俺にとっては最高の環境だった。この状況がずっと続く事を願うばかりだ。

それから自室に戻った。そして、いつものように大きなふかふかのベッドに俺はダイブした。

最高だ。最高過ぎる。これから俺は昼になるまで惰眠を貪るだけだ。勉学や鍛錬なんてもってのほかだ。前世で俺は死ぬほど働いたのだ。それなのに勉学だの鍛錬だの、だるすぎる。疲れる事や面倒な事は、御免こうむりたい。

だが、その時。俺は気づいた。今の俺——アーサー・フィン・オルレアンは10歳の誕生日を迎えたところである。
つまりは今から5年後には俺は主人公達と魔法学園に入学する事になる。

そして俺は闘技大会で主人公に大敗を喫して爆散したり、魔族に仲間を売り渡し、命乞いをした末に用済みとばかりに処刑される。仲間を売り渡さなくても舐め腐ったまま魔族と闘い、当然のように敗北し、無残に命を落とす事もあるのだ。

ま、まずい。

俺は気づいてしまった。このまま怠惰な生活を送り続けると、俺は5年後には死亡フラグを散々と立てた挙句に、見事にそのフラグを回収して死亡ENDを迎えてしまうのだ。

それだけは避けなければならない。死んでしまっては元も子もない。怠惰な生活というのは生きていてこそ価値があるのだ。

俺は考えを少し改める事にした。怠惰な生活を送る為にも、剣や魔法の修練や勉学にも多少は真面目に取り組まなければならないだろう。

死亡フラグを回避する為には。だが、それも一時的なものだ。全ての死亡フラグを乗り越えた暁には俺はダラダラと怠惰な生活を送ると心に誓った。

その翌日から俺は一時的に心を入れ替え、死亡フラグを回避する為に剣や魔法の修練。勉学に勤しむ事にしたのだ。

そして朝日が昇り、朝がやってきた。俺にとっての新しい一日の始まりであった。







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