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第7話 闇魔法が強力になる
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それからも俺とアリシアはエスティアに魔法を教わる事になる。
性格はともかくとして素質としては十分にある俺とアリシアの姉弟(きょうだい)はみるみる上達していった。
「フレイムランス!」
アリシアは巨大な大岩に対して、炎の槍を放った。これは炎系の中級程度の魔法であるフレイムランス(炎の槍)だ。アリシアから放たれた炎の槍は鋭利な刃物のように、大岩に襲い掛かり、一瞬にして大穴を開けた。
「ふふん」
アリシアは鼻を鳴らして得意げな表情をした。
「ふっ……その程度で自慢げになるのですか? お姉様。僕は新たな闇魔法を修得したのですよ」
「なっ!? なんですって!?」
なんだ、そのわかりやすい反応は。流石のちに学園で『悪役令嬢』として皆からの嫌われ者になるだけの事もある。いちいちリアクションが大袈裟なのだ。いかにも将来「おっほっほっほっほ!」と人を見下して馬鹿に大笑いしそうな少女である。
「随分と自信があるようね。だったら、見せて貰おうじゃない」
「見ていてくださいよ。お姉様」
俺は構える。俺の目の前には、姉の時と同じように大岩が存在した。四大属性の範囲内であれば、エスティアは全属性
エスティアは地属性の魔法を使い、自在に大岩を作り出す事ができたのだ。
「それでは次はアーサー君、お願いします」
俺は構える。
「出でよ。黒炎。地獄より顕在せし、邪悪な炎よ。全てを燃やし尽くす為に、我に力を授けたまえ」
「な、何よ。それ、呪文の詠唱? そんな事をしないと使えない魔法なの?」
「い、いえ。そんな事はありません。気分です。気分」
この呪文は単に自分の気分を盛り上げる為のもので、魔法を放つ上での必須事項では決してない。
「気分? そんな事ぶつくさと言ってたら、隙だらけじゃない。敵が襲い掛かってきたらどうするつもりなのよ? さっさと魔法を放ちなさいよ」
それもその通りだ。こんな呪文をいちいち唱えてたら隙だらけだ。デメリットしかない。
「ダークフェニックス」
俺は闇魔法。ダークフェニックスを使用した。俺の魔力は闇の精霊を介して、まるで不死鳥のような形へと変化する。漆黒の炎を纏った不死鳥だ。
ダークフェニックス。これが俺の新闇魔法だ。この闇魔法はダークフレイムとは異なり、より多くの魔力を使用する代わりに広範囲の対象に攻撃する事ができる。
そして、ダークフェニックスはダークフレイムとは異なり、しばらくその場に留まらせる事ができて、任意のタイミングで放つ事ができるのだ。事前に放っておけば魔法を放つ上での隙を無くす事もできる、便利な闇魔法である。
「行け、ダークフェニックス」
キュエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!
俺が命じるとダークフェニックスはまるで本物の大鳥のようにけたたましい叫び声をあげつつ、対象に向かって行った。
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
そして、ダークフェニックスが大岩に着弾すると、爆裂音とともに巨大な黒炎の柱が立ったのだ。そして大岩は消失してしまう。焼失ではない。消失だ。焼失ならば塵くらいは残るだろうが、闇魔法ダークフェニックスを食らった対象は塵すら残らない。
最初からそこにいなかったかのように消えてしまうのだ。
その威力はすさまじいものであったのは明白だった。姉——アリシアは目を丸くしていた。愚弟と蔑んでいた俺が相当な威力の魔法。それも希少属性である闇属性の魔法を使った事を受け止めたくはないのだろう。元々の性格からしてそうなるのは至極当然の事であろう。
「どうですか? お姉様。凄い魔法だったでしょ?」
俺は10歳の子供のように、アリシアに尋ねる。
「そ、そうですね。た、多少は見事な魔法でした。勿論、単に珍しい属性の魔法を使えるというだけで、私の方が優れているとは断言できますが。それでも、愚弟ながら、私と同じ血が流れているという事だけは認めざるを得ませんね」
アリシアは瞼をピクピクと引きつらせながら言ってくる。なんだ、その台詞は。それで褒めているつもりか。そんな事しか言えないからこいつはゆくゆくは魔法学園で『悪役令嬢』として嫌われるし、婚約していた王子から婚約破棄をされる事になるんだ。
「はい! 今日の授業はここまで! 二人共よく頑張りましたね」
エスティアはそう、優しく微笑み。俺達を労った。
この後、エスティアは近くにある街の宿屋に戻り、宿泊する予定だった。
――だが。突如として、雨が降り始めた。それは夕立のような雨というよりも嵐の始まりのようだった。先ほどから雲行きが怪しかったが、ついには本格的に振り始めたようだ。
「早く屋敷に戻りましょう」
アリシアはそう言った。俺達は急いで屋敷に戻っていく。
◇
屋敷に戻った俺達は短い時間だったはずなのだが、それでも雨の勢いが強かったからか、ずぶ濡れだった。
「ひどい雨でしたね……」
「エスティア先生。気候操作の魔法は使えないのですか?」
アリシアはそう尋ねた。
「気候操作の魔法は水と風の魔法を極限まで極めていないと、現実的には行使できないでしょう。それにあれだけの嵐を反らすだけならともかく、完全に消失するとなると膨大な魔力を必要とするのです。一晩経てば消えるようなものに、そんな事をするのは効率的ではありません」
「そ、そうですね。それもその通りです。やはり人間、自然には勝てませんか」
「自然が一番強力な魔法かもしれませんね」
流石はエスティア。魔法の講師を務めるだけあって、なんだか含蓄があるような事を言う。
「と、なると。エスティア先生を町の宿まで馬車で送り届けるのは現実的ではありませんね。その必要もありません。屋敷に泊まって貰いましょうか」
「え? 泊って行ってよろしいのでしょうか? ご迷惑では?」
「どうせこの屋敷の部屋は空いているのです。迷惑なんて事はありませんよ。是非泊まっていって頂ければ。父も母も快諾すると思いますよ」
「そ、そうですか……ではお言葉に甘えて。今晩は泊まらせて貰おうかしら」
その時。俺は二人の話を聞いていなかった。耳に入っていなかったのだ。俺の闇魔法の実力は順調に成長していった。そして、剣術の腕前だってそうだ。今では一流の剣士が相手でも引けを取らないだろう。
「くしゅん。それにしても、先ほどの土砂降りでずぶ濡れになってしまったわ。エスティア先生。大浴場でお風呂を沸かしているのです。一緒に入りましょう」
「い、いいのですか? そんな事まで」
「ええ。勿論です。こんな事で風邪でも引いたら馬鹿みたいでしょう。不経済です。いい事。愚弟。私達が先にお風呂に入るから、あなたはしばらく待っていなさい。良い事」
「は、はぁ……」
俺は生返事をした。アリシアとエスティアはどこかへ歩いていった。この時の俺は二人が大浴場に向かった事など把握していなかった。大雨に打たれればどういう行動にでるか、すぐにでも想像がつきそうなものなのに。
この時の俺は呆けていたからか、完全にその事が頭から抜けていた。
やはり、この『アーサー・フィン・オルレアン』の肉体に宿る素質は相当なものだ。
こいつは性格は悪い。怠惰にして傲慢である。その怠惰さと傲慢さからこいつは原作ゲームで悲惨な死亡ENDを迎える事になる。
俺はこいつがやがて悲惨な死亡ENDを迎える事を知っていた。だから、ここまで努力する事ができたのだ。何も知らなければ俺はダラダラと怠惰な日々を送っていたところだ。何も知らなければ人間そうなる。無理もない。人間は実に弱い生き物なのだ。
だが、こうして努力を積み重ねてきた俺に落ち度はない。この調子で力を蓄えていけば俺が死亡ENDを回避するのは決して不可能ではないはず。
そしてその死亡ENDを回避して生存ルートに入ったら俺は死ぬほどダラダラと怠惰な生活を送ってやるんだ。
だからこのような日々はそれまでの我慢。辛抱の時だ。期限付きの日々だ。
「あれ? そういえばアリシアとエスティア先生はどこにいった?」
二人はいなくなっていた。
「くしゅん!」
雨に打たれたので俺の身体は冷えていた。このままでは風邪を引きかねない。
「風呂でも入りに行くか」
こうして、アリシアの話を聞いていなかった俺は何も知らずに大浴場に向かうのであった。
性格はともかくとして素質としては十分にある俺とアリシアの姉弟(きょうだい)はみるみる上達していった。
「フレイムランス!」
アリシアは巨大な大岩に対して、炎の槍を放った。これは炎系の中級程度の魔法であるフレイムランス(炎の槍)だ。アリシアから放たれた炎の槍は鋭利な刃物のように、大岩に襲い掛かり、一瞬にして大穴を開けた。
「ふふん」
アリシアは鼻を鳴らして得意げな表情をした。
「ふっ……その程度で自慢げになるのですか? お姉様。僕は新たな闇魔法を修得したのですよ」
「なっ!? なんですって!?」
なんだ、そのわかりやすい反応は。流石のちに学園で『悪役令嬢』として皆からの嫌われ者になるだけの事もある。いちいちリアクションが大袈裟なのだ。いかにも将来「おっほっほっほっほ!」と人を見下して馬鹿に大笑いしそうな少女である。
「随分と自信があるようね。だったら、見せて貰おうじゃない」
「見ていてくださいよ。お姉様」
俺は構える。俺の目の前には、姉の時と同じように大岩が存在した。四大属性の範囲内であれば、エスティアは全属性
エスティアは地属性の魔法を使い、自在に大岩を作り出す事ができたのだ。
「それでは次はアーサー君、お願いします」
俺は構える。
「出でよ。黒炎。地獄より顕在せし、邪悪な炎よ。全てを燃やし尽くす為に、我に力を授けたまえ」
「な、何よ。それ、呪文の詠唱? そんな事をしないと使えない魔法なの?」
「い、いえ。そんな事はありません。気分です。気分」
この呪文は単に自分の気分を盛り上げる為のもので、魔法を放つ上での必須事項では決してない。
「気分? そんな事ぶつくさと言ってたら、隙だらけじゃない。敵が襲い掛かってきたらどうするつもりなのよ? さっさと魔法を放ちなさいよ」
それもその通りだ。こんな呪文をいちいち唱えてたら隙だらけだ。デメリットしかない。
「ダークフェニックス」
俺は闇魔法。ダークフェニックスを使用した。俺の魔力は闇の精霊を介して、まるで不死鳥のような形へと変化する。漆黒の炎を纏った不死鳥だ。
ダークフェニックス。これが俺の新闇魔法だ。この闇魔法はダークフレイムとは異なり、より多くの魔力を使用する代わりに広範囲の対象に攻撃する事ができる。
そして、ダークフェニックスはダークフレイムとは異なり、しばらくその場に留まらせる事ができて、任意のタイミングで放つ事ができるのだ。事前に放っておけば魔法を放つ上での隙を無くす事もできる、便利な闇魔法である。
「行け、ダークフェニックス」
キュエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!
俺が命じるとダークフェニックスはまるで本物の大鳥のようにけたたましい叫び声をあげつつ、対象に向かって行った。
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
そして、ダークフェニックスが大岩に着弾すると、爆裂音とともに巨大な黒炎の柱が立ったのだ。そして大岩は消失してしまう。焼失ではない。消失だ。焼失ならば塵くらいは残るだろうが、闇魔法ダークフェニックスを食らった対象は塵すら残らない。
最初からそこにいなかったかのように消えてしまうのだ。
その威力はすさまじいものであったのは明白だった。姉——アリシアは目を丸くしていた。愚弟と蔑んでいた俺が相当な威力の魔法。それも希少属性である闇属性の魔法を使った事を受け止めたくはないのだろう。元々の性格からしてそうなるのは至極当然の事であろう。
「どうですか? お姉様。凄い魔法だったでしょ?」
俺は10歳の子供のように、アリシアに尋ねる。
「そ、そうですね。た、多少は見事な魔法でした。勿論、単に珍しい属性の魔法を使えるというだけで、私の方が優れているとは断言できますが。それでも、愚弟ながら、私と同じ血が流れているという事だけは認めざるを得ませんね」
アリシアは瞼をピクピクと引きつらせながら言ってくる。なんだ、その台詞は。それで褒めているつもりか。そんな事しか言えないからこいつはゆくゆくは魔法学園で『悪役令嬢』として嫌われるし、婚約していた王子から婚約破棄をされる事になるんだ。
「はい! 今日の授業はここまで! 二人共よく頑張りましたね」
エスティアはそう、優しく微笑み。俺達を労った。
この後、エスティアは近くにある街の宿屋に戻り、宿泊する予定だった。
――だが。突如として、雨が降り始めた。それは夕立のような雨というよりも嵐の始まりのようだった。先ほどから雲行きが怪しかったが、ついには本格的に振り始めたようだ。
「早く屋敷に戻りましょう」
アリシアはそう言った。俺達は急いで屋敷に戻っていく。
◇
屋敷に戻った俺達は短い時間だったはずなのだが、それでも雨の勢いが強かったからか、ずぶ濡れだった。
「ひどい雨でしたね……」
「エスティア先生。気候操作の魔法は使えないのですか?」
アリシアはそう尋ねた。
「気候操作の魔法は水と風の魔法を極限まで極めていないと、現実的には行使できないでしょう。それにあれだけの嵐を反らすだけならともかく、完全に消失するとなると膨大な魔力を必要とするのです。一晩経てば消えるようなものに、そんな事をするのは効率的ではありません」
「そ、そうですね。それもその通りです。やはり人間、自然には勝てませんか」
「自然が一番強力な魔法かもしれませんね」
流石はエスティア。魔法の講師を務めるだけあって、なんだか含蓄があるような事を言う。
「と、なると。エスティア先生を町の宿まで馬車で送り届けるのは現実的ではありませんね。その必要もありません。屋敷に泊まって貰いましょうか」
「え? 泊って行ってよろしいのでしょうか? ご迷惑では?」
「どうせこの屋敷の部屋は空いているのです。迷惑なんて事はありませんよ。是非泊まっていって頂ければ。父も母も快諾すると思いますよ」
「そ、そうですか……ではお言葉に甘えて。今晩は泊まらせて貰おうかしら」
その時。俺は二人の話を聞いていなかった。耳に入っていなかったのだ。俺の闇魔法の実力は順調に成長していった。そして、剣術の腕前だってそうだ。今では一流の剣士が相手でも引けを取らないだろう。
「くしゅん。それにしても、先ほどの土砂降りでずぶ濡れになってしまったわ。エスティア先生。大浴場でお風呂を沸かしているのです。一緒に入りましょう」
「い、いいのですか? そんな事まで」
「ええ。勿論です。こんな事で風邪でも引いたら馬鹿みたいでしょう。不経済です。いい事。愚弟。私達が先にお風呂に入るから、あなたはしばらく待っていなさい。良い事」
「は、はぁ……」
俺は生返事をした。アリシアとエスティアはどこかへ歩いていった。この時の俺は二人が大浴場に向かった事など把握していなかった。大雨に打たれればどういう行動にでるか、すぐにでも想像がつきそうなものなのに。
この時の俺は呆けていたからか、完全にその事が頭から抜けていた。
やはり、この『アーサー・フィン・オルレアン』の肉体に宿る素質は相当なものだ。
こいつは性格は悪い。怠惰にして傲慢である。その怠惰さと傲慢さからこいつは原作ゲームで悲惨な死亡ENDを迎える事になる。
俺はこいつがやがて悲惨な死亡ENDを迎える事を知っていた。だから、ここまで努力する事ができたのだ。何も知らなければ俺はダラダラと怠惰な日々を送っていたところだ。何も知らなければ人間そうなる。無理もない。人間は実に弱い生き物なのだ。
だが、こうして努力を積み重ねてきた俺に落ち度はない。この調子で力を蓄えていけば俺が死亡ENDを回避するのは決して不可能ではないはず。
そしてその死亡ENDを回避して生存ルートに入ったら俺は死ぬほどダラダラと怠惰な生活を送ってやるんだ。
だからこのような日々はそれまでの我慢。辛抱の時だ。期限付きの日々だ。
「あれ? そういえばアリシアとエスティア先生はどこにいった?」
二人はいなくなっていた。
「くしゅん!」
雨に打たれたので俺の身体は冷えていた。このままでは風邪を引きかねない。
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