怠惰な悪役貴族は変わらず怠惰に過ごしたい。死亡フラグを回避する為に【闇魔法】を極めてたら正ヒロインに好意を持たれたのだが。

つくも/九十九弐式

文字の大きさ
8 / 39

第8話 入浴を覗かれたアリシアは激怒する

しおりを挟む
 そう、俺の身体は10歳の少年のものだ。それにその行為は過失によるものである。決してわざとではない。だから、その行為には幾分かの言い訳の余地を残そう。仕方なかったのだと。

俺はアリシアの言葉を聞いていなかっただけだ。だから、わざとではない。決して俺はスケベな目的で大浴場に入ったわけではない。それだけは誓って良い。

 あれはそうだ。確か、俺達は突然の大雨に打たれたのだ。だから、そう、俺は風邪をひいてはいけないと大浴場の風呂に入ろうとしたのだ。

 それはよくあるイベントだろう。同居ものラブコメなんかでも定番だ。一つ屋根の下に暮らしていればよくある過ち(イベント)のひとつだろう。ひとつはトイレでばったり。ひとつは着替え中に部屋でばったり。そしてもうひとつが入浴中にばったりだ。

この場合は当然のように最後に述べた奴である。

「あっ……」

 俺は入浴中のアリシアとエスティアにばったり鉢合わせていた。

 当然のように、入浴中に服など身に着けているはずもない。お互いに全裸だった。アリシアの身体はまだ少女らしさを残していた。

 年齢から言えば、それも当然と言えた。彼女はまだ12歳なのだ。12歳といえその二つの膨らみは確かなものであった。将来は大きくたわわに実るであろう。

 そんな予感を抱かせるような体付きをしていた。

 対するエスティアは少女のような背丈と童顔をしつつも、服の上からでもわかっていた巨大な胸の膨らみは決してパットで作られたようなハリボテではなかった。

 実際にこの目で視認したからこそ、その胸が見栄で作られた偽物などではないと断言する事ができた。

 少女のような顔と背丈からは想像できない程のたわわに実った二つの果実は実にアンバランスであるようにも見えた。

「えっと……」

 ここはどうする? どうなるんだ? 大抵の場合そうだ。女の子はこういう時、悲鳴を上げるのだ。それで桶でも投げる。それと共に、男の俺は退散する。それがこういう場合のテンプレート的な展開であると言えよう。

 エスティアはただ呆けていただけだ。そもそもエルフのように人間のような羞恥感情があるのかもわからない。感覚がそもそも人間とエルフでは違うのかもしれない。彼女は俺に裸を見られても特に何か危害を加えてきそうにもなかった。

 それはもう、想像通りの反応だ。

 だが、アリシアはそうならなかった。それも想像通りの反応と言えた。彼女は悲鳴を上げるまでもなく、ギリギリと歯ぎしりをし、怒りを露わにさせた。

「愚弟。少しは力を身に着けたからと言って、いくら何でも調子に乗りすぎではないかしら? 性欲に目覚めた淫乱な猿みたいな愚弟にはきついお仕置きをしてあげなければならないようね」

「ご、誤解です。お姉様。お姉様の言う事をよく聞いてなかった事は謝ります。で、ですが別に僕にそんなつもりじゃなかったんです。別に僕は助平な目的で大浴場に入ったのではないのです。そう、これは不幸な事故なのです」

「ふん……不埒な痴漢はいつもそう言って、見苦しい言い訳を並べるものです」

「それに、僕とお姉様は血の通った姉弟(きょうだい)ではありませんか。一緒に入浴したところで何の不思議ではないでしょう。それに、僕はまだ子供ですよ。そんな性的な目で二人の身体を見るはずがないですよ」

「年齢を言い訳に不埒な変態行為を正当化するなど実にこざかしい。それに愚弟。私は一度たりともあなたを実の弟だと認めた事はありません。入浴を共にするなど考えた事すらない」

 ダメだ。何をどう取り繕おうと、アリシアの怒りが治まる事はありそうにもなかった。アリシアは手に魔力を集中させる。掌に顕現せしは炎のようだった。アリシアは火属性の魔法を放とうとしたんだ。

「落ち着いてください。アリシアさん」

 エスティアはアリシアを後ろから抱き着いて制した。

「は、離してください。エスティア先生。先生の裸は元より、高貴な私の裸を見るという大罪を犯したのです。あの愚弟をギタンギタンのバッタン、バッタンのボコボコにした上に、何日にも続く拷問を与え、この世に生まれてきた事を後悔させてやるのです!」

 アリシアは怒鳴り声を散らしまくる。

「止めないでください! エスティア先生! あの不埒な愚弟を最低でも虚勢してやらなければ済みません!」

 アリシアは激怒をしていた。その場はエスティアに制せられ、宥められ、一応、その場の怒りは治まった。

 とはいえ、完全に怒りが治まったわけでもなかった。元々、愛想の欠片もなかったアリシアの態度がさらに酷いものとなった。「ふん」と言って顔を背けて、ろくに顔も合わせてはくれないのだ。

 やはり、入浴を覗かれた事を根に持っているのだろう。10歳の弟に裸を見られたくらいで普通こんなに根を持つものだろうか。やはり我が姉は性格がおかしいのだろう。流石は我が姉、というべきか。
 そもそもの話として性根が腐っているのだ。他人の過ちを赦す器というものを持ち合わせてはいないのであろう。

                  ◇

 そして翌日の事であった。その日もまた、前日と同じようにエスティアにより魔法の実践講義が行われていた。

 その時、ついにはアリシアが制裁に乗り出してきた。とはいっても、不意打ちでいきなりしかけてきたのではない。アリシアは性格こそ実に悪いが、それでも頭はそれなりに回る少女だ。
 そして自分が世界で一番正しく、一番強いという勘違いをしているという、致命的な部分で頭の悪い少女でもある。

「魔法による実戦訓練を許可して欲しい?」

 アリシアはエスティアにそう提案した。

「ええ。愚弟の奴、少しばかりは力を身に着けたでしょう。今でしたら、偉大なるこの私が相手でも少しは良い勝負になるのではないかと思って」

 アリシアの魂胆は明白だった。『実践訓練』という名目の下、俺をいたぶって憂さ晴らしをしたいのであろう。
 高々12歳の少女が弟に裸を見られたくらいでいつまでも根に持つなど実に性格が悪いがそれも実に我が姉らしい事であった。

「それは確かにそうかもしれませんが」

「で、あったらよろしいでしょう。愚弟。私と闘いましょう。安心しなさい。これはただの『実践訓練』。魔法の『実践訓練』なのだから。そう、訓練。ただの訓練なのよ」

 くどいくらい、『訓練』という事をアピールしていた。

「そ、そして。訓練という名目のもとに、愚弟をギタンギタンのバッタン、バッタンのボコボコにしてやるのよ。ぐっふっふ。くっふっふ。おっほっほっほっほっほ!」

 アリシアは哄笑した。もう本音が駄々漏れだった。

 俺も断る理由がなかった。この短期間の訓練で俺の実力がどれくらいのレベルに至っているのかをアリシアで試す良い試験(テスト)だと考えられたからだ。

「良いよ。お姉様。じゃあ、やろうか。その『実践訓練』とやらを」

「ふっ。余裕ぶったその態度がむかつくわね。この優秀な私にまさか勝てるとでも思っているのかしら。その思い上がりがいかに愚かか、この私が痛みを以て教えてあげるわ」

 アリシアは鋭い眼光で俺を睨みつける。

 こうして、俺とアリシアの『実践訓練』が始まったのである。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

ヒロインだけど出番なし⭐︎

ちよこ
恋愛
地味OLから異世界に転生し、ヒロイン枠をゲットしたはずのアリエル。 だが、現実は甘くない。 天才悪役令嬢セシフィリーネに全ルートをかっさらわれ、攻略対象たちは全員そっちに夢中。 出番のないヒロインとして静かに学園生活を過ごすが、卒業後はまさかの42歳子爵の後妻に!?  逃げた先の隣国で、まさかの展開が待っていた——

悪役令嬢に転生しましたが、全部諦めて弟を愛でることにしました

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したものの、知識チートとかないし回避方法も思いつかないため全部諦めて弟を愛でることにしたら…何故か教養を身につけてしまったお話。 なお理由は悪役令嬢の「脳」と「身体」のスペックが前世と違いめちゃくちゃ高いため。 超ご都合主義のハッピーエンド。 誰も不幸にならない大団円です。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 小説家になろう様でも投稿しています。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた

nionea
恋愛
 ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、   死んだ  と、思ったら目が覚めて、  悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。   ぽっちゃり(控えめな表現です)   うっかり (婉曲的な表現です)   マイペース(モノはいいようです)    略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、  「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」  と、落ち込んでばかりもいられない。  今後の人生がかかっている。  果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。  ※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。 ’20.3.17 追記  更新ミスがありました。  3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。  本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。  大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。  ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

処理中です...