怠惰な悪役貴族は変わらず怠惰に過ごしたい。死亡フラグを回避する為に【闇魔法】を極めてたら正ヒロインに好意を持たれたのだが。

つくも/九十九弐式

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第31話 女子生徒達との会話

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 ある教室の一室に俺とカレンとフィオナはいた。それは授業のない放課後の出来事である。

 俺の目の前にいるのはアリシアあたりを除く、その日女湯に入っていた女子生徒達である。

 彼女達は殺気立っていた。理由は当然、俺がその場にいるからである。

「カレン理事長。なぜこの不埒な痴漢行為をした変態男がまだ学園に留まる事を許されているのでしょうか?」

 女子生徒の一人が不満を呈する。その一言をきっかけに各々が文句を言い始める。

「そうよ。そうよ」

「は、裸なんて見られて……も、もう、お嫁にいけないわよ」

「わ、私もよ。もうお嫁にいけないわ、どうしてくれるのよ」

 散々泣き喚かれる。

「ふっ……嫁にいけないなら俺が貰ってやろうか?」

 俺はそう言い放つ。

「え?」

 フィオナは声を漏らす。

「将来、俺様が作るハーレムの一員に加えてやろう。そうだな、貴様達なら大体、3ケタ番目の婦人の番号を与えてやろう。どうだ? 嬉しいだろう? これでこの件は一件落着だな。がっはっはっはっは! がっはっはっはっは!」

 俺は高笑いをするが、女子生徒達の怒気がさらに高まるだけであった。

「ふざけるんじゃないわよ!」

「こ、こいつ、絶対許せない。退学だけじゃ温いわ! 死刑! 死刑にすべきよ!」

「そうよ! そうよ! 死刑! 死刑にしなさい!」

 うむ。怒気が強まったな。なぜだ? 女心という奴はとんとわからん。

「はぁ……予想通りに感情的になっているな」

 カレンは溜息を吐いた。

「まあ、待て。彼もやりたくてそんな事をしたのではない。やむない理由があったのだ」

「やむない理由? どんな理由ですか。どんな理由があれば婦女子の入浴に侵入してくるというのですか? そしてそれが許されるとでも」

「う、うむ……それがやむない理由があってだな。説明するのも面倒だし、気が重い事ではあるのだが」
 
 カレンは言葉を濁らせる。

「ふっ。もうよせ。下らん問答はもう終わりにしようではないか。時間の無駄だ」

 俺は言い放つ。

「な、なによ! この変態のぞき魔がさっきから偉そうよ!」

「そうよ! そうよ! せめて謝りなさいよ!」

「土下座よ! 土下座しなさいよ!」

 ええい。異世界ファンタジーに土下座という概念があるのか。やはり土下座という謝罪概念は異世界にも共通する、最上級の謝罪方法。

 だが、俺がそんな真似をするなどプライドが許さん。

「いつまでも怒るな。高々、乳のひとつやふたつ、尻のひとつやふたつ見られただけではないか。実に女々しい」

「め、女々しいって何よ! 私達は女なんだから女々しいのなんて当然でしょう!」

「そうよ! そうよ!」

「お前達の望みはわかった! 俺が退学してこの学園を去ればいいのだろう!」

「……わ、わかってるじゃない」

「く、口だけじゃなくてちゃんと行動に移しなさいよ」

 俺が『退学』を口にすると、ようやく女子生徒達の怒りが多少は治まったのだ。殺気立った怒気から、不機嫌程度の態度へと明らかな変化を遂げる。

「そ、そんな、アーサーさん」

 その場に同席していたフィオナがわかりやすい程動揺していた。

「ただし! この俺様からも条件がある!」

「条件? 一体、何の条件があるというのかしら?」

「三カ月後に魔法武術大会がある事は当然のように知っているであろうな?」

 魔法を用いた戦闘技術、能力を適性に評価する為に行われるトーナメント戦である。その大会の参加者となるのは学年関係なく、この学園における全生徒である。

「そこでこの俺様が優勝できなかったら、大人しく、退学をしてやろう! だが、俺が優勝した場合、この俺様がこの学園に在籍する事を認めるがいい」

 全生徒が出場するという事は、当然のように、あのいけすかないイケメンチート主人公であるリオンも出場するのである。

 女子生徒達からイケメンとして絶対的な人気を集めているリオンではあるが、単に顔やスタイルが良いだけで人気を集めているというわけでもない。

 王国第二王子というその高貴な地位にある事も勿論ある。だが、何よりもあいつには反則的に強い。身体能力が高く、頭脳が優れている。その上にチート魔法まで持っている。

 はっきり言って完全無欠だ。俺は加減の出来ないあのリオンに調子に乗った挙句に本気を出されて殺されてしまうというのが本来の運命(シナリオ)なのだ。

「ふっ。あなたが優勝できるわけがありませんわ」

「なぜなら魔術武闘大会にはリオン様も出場するからですわ」

 全く。なんだ、この好感度の違いは。風呂場に現れたのが俺ではなくてリオンだったらやんわりとした雰囲気でお咎めなく終わったのではないだろうか。

 なんだか、腹立たしい事ではあるが。

「本当に良いのか? やむない事情があるにも関わらず、そんな大見栄を切ってリスクの高い条件を受け入れて、それで約束を反故にされたらまた問題になるぞ?」

 カレンは心配そうに、そう聞いてきた。

「奴は俺のライバルだ。やがて超えなくてはならないハードル」

 勝利条件が奴と闘った後に生存するから、闘って勝つというものに変わったというだけである。

「魔術武闘大会がそのハードルを越えるべき、絶好のタイミングというわけだ」

「あなたのようなのぞき魔の痴漢がリオン様のライバルだなんて、ちゃんちゃらおかしいですわ」

「そうよそうよ」

「うるさい! 用は済んだだろうが! さっさと立ち去れ! しっ! しっ!」

「な、何よ! のぞき魔の痴漢のせいに偉そうに。何様だと思っているのかしら」

「まあ、別に良いか。用も済んだし、俺は帰るとしよう。じゃあな」

「あ、あなたの顔なんて二度と見たくないわよ」

 女子生徒達は叫ぶ。
 
 こうして、俺達は解散するのであった。
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