35 / 39
第35話 フィオナに魔法を教える
しおりを挟む
「……さて」
放課後の事であった。俺達は演習場にいた。そこは魔法の実戦訓練で使ったダダ広い平野である。
そこに俺達はマジックスーツを着て立っていた。ボディラインがくっきりと見えてしまうが、お互いに裸を見せ合った仲なので、そこはもう、今更恥ずかしがる事もなかった。
「よろしくお願いします」
フィオナは深々と頭を下げる。相変わらず礼儀正しい奴であった。
そういえば俺はフィオナが魔法を使っているところを初めて見るわけだった。彼女が使う光魔法がどんな魔法なのか、多少は興味が湧いた。
「……ふむ。そうだな。だったらまずはフィオナの光魔法を見せて貰おうか」
俺は周囲を見渡す。ちょうど、適当なところに岩があった。演習で使う為の標的のような岩だ。
この岩に魔法を放つ事で魔法の威力を試すのだろう。
「フィオナ、試しにあの岩に攻撃してみてくれ」
「は、はい。わかりました。使う魔法は何でもいいんですよね?」
「なんでもいい……とはいえ、光魔法を扱える者は現代ではいない為、俺もよくわかっていないが」
フィオナは岩に向かって意識を集中する。フィオナの周囲が光に満ちているように見えた。光の精霊が力を貸しているのであろう。それはなんだか神々しく、神秘的な光景にも見えた。
「おお……」
見慣れない光景に俺は思わず声を漏らす。
目を閉じていたフィオナはその目を大きく見開き、指を指すのであった。
「ホーリーレイ!」
放たれた聖なる光は岩を貫いた。
「ほぉ……」
パチパチパチ。俺は軽く拍手をする。
「どうでした? アーサーさん。私の魔法は?」
「そうだな。殺傷力はそれなりにありそうだな」
「殺傷力って言い方……なんか他にもっと可愛い言い方ありません?」
可愛いって。どうやったって破壊系の攻撃は可愛く言いようがないだろう。
「うむ……それは難しいがな。ちなみに他に何の魔法が使えるのだ?」
「支援系の魔法と、もう少し強力な光魔法が使えます」
「……そうか。光魔法はもっと上達すると回復魔法や蘇生系の魔法も使えるようになるからな。頑張って修練に励む事だな」
「詳しいんですね。私以外に光魔法を使える人は現代では殆どいないのに」
「う、うむ。まあ、それは理事長あたりから聞いたのだ。叔母が理事長をやっているので、お前の事にも多少は詳しいのだろう」
本当は原作知識から来ているものではあるが、まあ、その事を言っても仕方がない事だろう。知らない方が良い事であった。
「は、はぁ……そうですか」
「それでは、少し実戦形式で闘ってみるか」
「アーサーさんとですか?」
「俺、相手といえばそうであるし、俺相手でないと言えばそうともいえる」
「は、はい? なんですか。それは謎かけみたいですね」
「闇魔法『シャドウナイト』」
俺は自身の影から無数の騎士達を作り出す。現れたのは俺の命令に忠実に動く、影で作られた漆黒の騎士達だ。
耐久性もなく、当たれば一発で消し飛ぶが俺の魔力消費のみで作られている為、別に本体である俺自身にダメージが及ぶ事はない。
それに『シャドウナイト』の持っている影で出来た剣はハリボテでもなく、そこら辺の鋼鉄の剣と同じ程度の殺傷能力がある。
群体を相手にする時には割と便利な闇魔法である。あまり強くない分身を召喚できるみたいな魔法なのだから。
「魔法武術大会は一体一の闘いではあるが、敵が多角的な攻撃をしてこないというわけではない。死角である背後から襲い掛かってくる事もある。これはその訓練だと思え」
パチン。
俺は指を鳴らし、待機状態だった。『シャドウナイト』のスイッチをオンにする。『シャドウナイト』はターゲットであるフィオナ目掛けて明確に行動を始めた。
「行くぞ! フィオナ!」
「は、はい! アーサーさん」
「ここではコーチと呼べ」
「は、はい! コーチ!」
コーチと呼ばれるとなんだか女性向けのスポ根漫画のようだった。鬼コーチとその指導を受ける女子生徒のようである。
こうしてフィオナと俺——の放った『シャドウナイト』数体との闘いが始まったのである。
とはいえ、あくまでも訓練ではあるが。
放課後の事であった。俺達は演習場にいた。そこは魔法の実戦訓練で使ったダダ広い平野である。
そこに俺達はマジックスーツを着て立っていた。ボディラインがくっきりと見えてしまうが、お互いに裸を見せ合った仲なので、そこはもう、今更恥ずかしがる事もなかった。
「よろしくお願いします」
フィオナは深々と頭を下げる。相変わらず礼儀正しい奴であった。
そういえば俺はフィオナが魔法を使っているところを初めて見るわけだった。彼女が使う光魔法がどんな魔法なのか、多少は興味が湧いた。
「……ふむ。そうだな。だったらまずはフィオナの光魔法を見せて貰おうか」
俺は周囲を見渡す。ちょうど、適当なところに岩があった。演習で使う為の標的のような岩だ。
この岩に魔法を放つ事で魔法の威力を試すのだろう。
「フィオナ、試しにあの岩に攻撃してみてくれ」
「は、はい。わかりました。使う魔法は何でもいいんですよね?」
「なんでもいい……とはいえ、光魔法を扱える者は現代ではいない為、俺もよくわかっていないが」
フィオナは岩に向かって意識を集中する。フィオナの周囲が光に満ちているように見えた。光の精霊が力を貸しているのであろう。それはなんだか神々しく、神秘的な光景にも見えた。
「おお……」
見慣れない光景に俺は思わず声を漏らす。
目を閉じていたフィオナはその目を大きく見開き、指を指すのであった。
「ホーリーレイ!」
放たれた聖なる光は岩を貫いた。
「ほぉ……」
パチパチパチ。俺は軽く拍手をする。
「どうでした? アーサーさん。私の魔法は?」
「そうだな。殺傷力はそれなりにありそうだな」
「殺傷力って言い方……なんか他にもっと可愛い言い方ありません?」
可愛いって。どうやったって破壊系の攻撃は可愛く言いようがないだろう。
「うむ……それは難しいがな。ちなみに他に何の魔法が使えるのだ?」
「支援系の魔法と、もう少し強力な光魔法が使えます」
「……そうか。光魔法はもっと上達すると回復魔法や蘇生系の魔法も使えるようになるからな。頑張って修練に励む事だな」
「詳しいんですね。私以外に光魔法を使える人は現代では殆どいないのに」
「う、うむ。まあ、それは理事長あたりから聞いたのだ。叔母が理事長をやっているので、お前の事にも多少は詳しいのだろう」
本当は原作知識から来ているものではあるが、まあ、その事を言っても仕方がない事だろう。知らない方が良い事であった。
「は、はぁ……そうですか」
「それでは、少し実戦形式で闘ってみるか」
「アーサーさんとですか?」
「俺、相手といえばそうであるし、俺相手でないと言えばそうともいえる」
「は、はい? なんですか。それは謎かけみたいですね」
「闇魔法『シャドウナイト』」
俺は自身の影から無数の騎士達を作り出す。現れたのは俺の命令に忠実に動く、影で作られた漆黒の騎士達だ。
耐久性もなく、当たれば一発で消し飛ぶが俺の魔力消費のみで作られている為、別に本体である俺自身にダメージが及ぶ事はない。
それに『シャドウナイト』の持っている影で出来た剣はハリボテでもなく、そこら辺の鋼鉄の剣と同じ程度の殺傷能力がある。
群体を相手にする時には割と便利な闇魔法である。あまり強くない分身を召喚できるみたいな魔法なのだから。
「魔法武術大会は一体一の闘いではあるが、敵が多角的な攻撃をしてこないというわけではない。死角である背後から襲い掛かってくる事もある。これはその訓練だと思え」
パチン。
俺は指を鳴らし、待機状態だった。『シャドウナイト』のスイッチをオンにする。『シャドウナイト』はターゲットであるフィオナ目掛けて明確に行動を始めた。
「行くぞ! フィオナ!」
「は、はい! アーサーさん」
「ここではコーチと呼べ」
「は、はい! コーチ!」
コーチと呼ばれるとなんだか女性向けのスポ根漫画のようだった。鬼コーチとその指導を受ける女子生徒のようである。
こうしてフィオナと俺——の放った『シャドウナイト』数体との闘いが始まったのである。
とはいえ、あくまでも訓練ではあるが。
0
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
転生者だからって無条件に幸せになれると思うな。巻き込まれるこっちは迷惑なんだ、他所でやれ!!
柊
ファンタジー
「ソフィア・グラビーナ!」
卒業パーティの最中、突如響き渡る声に周りは騒めいた。
よくある断罪劇が始まる……筈が。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる