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第36話 フィオナに魔法を教える続き
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無数の『シャドウナイト』がフィオナに襲い掛かる。
「『ホーリーレイ』」
フィオナは光魔法『ホーリーレイ』で『シャドウナイト』の一体を消失させた。
だが、間髪入れずにもう一体の『シャドウナイト』がフィオナに攻撃を仕掛ける。闇の剣がフィオナに当たる。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!」
フィオナは甲高いを悲鳴を上げて、転がった。マジックスーツにより、ダメージが減少しているとはいえ、些か心配ではあった。
何メートルか転がった結果、盛大に塵埃を上げて止まった。
「……大丈夫か?」
俺が聞くと、フィオナは間髪入れずに立ち上がった。
「だ、大丈夫です! コーチ」
声には張りがあった。まだ元気そうだ。ダメージは差ほどでもない。
「……では続けるとするか」
「は、はい! コーチ」
俺は再び待機状態(スタンバイ)にした『シャドウナイト』を起動させる。再び動き出した『シャドウナイト』はフィオナを襲い始めた。
その練習は放課後から日が暮れるまで行われた。
そして夕暮れ時がやってきた。
「はぁ……はぁ……はぁ」
フィオナは息を切らしていた。汗を流している。やはり汗を流している少女は良い。絵になる。これが男相手だとそうはいかない。
「ふむ。大分、疲れたようだな」
「は、はい。コーチ」
「今日はこのくらいにしようではないか」
「そ、そうですね。暗くなりましたし」
こうして俺達は初日の特訓を終えるのであった。そして、その特訓は毎日のように行われる事となるのであった。
◇
キンコンカンコーン。鐘の音が鳴る。終業を知らせる鐘の音である。
「明日からこの魔法学園は夏休みの期間の期間を迎えます」
教壇に立つエスティアはクラスの生徒達に向かって、そんな事を言う。
「夏休みですが、あまりハメを外しすぎないように。そして夏休みが終わってすぐに魔法武術大会があるので、その準備も忘れずにしておくようにしてください」
「はぁ~……眠い、早く終わらんか」
俺は欠伸をする。
「ア、アーサーさん。失礼ですよ」
横にいるフィオナが諫めてくる。
「眠いもんは眠い。夕方もお前の訓練に付き合っているから、それなりに疲れているのだ。それなりに魔力も消耗している」
「そ、それはありがたいですし。それと同時に申し訳ないな、とは思っていますけど……」
「別に、そう気を病むな。俺の為にもなっているし、俺がやりたくてやっている事だ」
「そうですか……ならいいんですが」
「それに、この大会は普段の実戦訓練の総決算でもあるのです。皆様の力が存分に発揮され、そして、この夏休みの期間が実りあるものである事を祈っております」
そんな事をしているうちに、瞬く間に時は過ぎ去り、魔法学園は一学期を終えて夏休みの期間を迎えたのである。
そして、その一カ月程の夏休みの期間の後、魔法武術大会が行われるのである。
その間も俺とフィオナは魔法武術大会に向かって特訓をする事になっていたのだ。何とも汗臭い夏休みの予定である。
「あー……くそっ」
寮の自室でベッドに寝転びながら俺は吐き捨てた。
「何か嫌な事があったの?」
リオンが聞いてくる。
「どっかの融通の利かんバカ王子がわざと負けろと交渉しているのに言う事を利かないもんで、毎日のように居残りで特訓をしなければならないのだ」
「そのバカ王子って、目の前にいる僕の事だよね? それって普通に不敬罪だよ? わかってるの?」
「勿論、お前の事だ。だから毎日のように居残りで特訓をしなければならなくて、大変疲れているのだ。お前のせいだぞ、どうしてくれるんだ?」
「それは自分のせいでしょ。僕が手を抜かないのも、わざと負けないのも別に何も悪い事じゃないでしょ。八百長だよ」
「八百長? 賭けているわけでもあるまい?」
「裏でいるみたいだよ。賭けている生徒くらい。秘密裏に組織だって賭けているのさ。魔法武術大会の優勝者は誰かって。当然、オッズは僕が一番低いみたいだけどね。つまりは本命だね」
「……ふむ。ちなみに俺の倍率は何倍くらいだ?」
「多分、100倍くらいじゃないかな。僕が1.1倍くらいだよ」
「ふざけているのか! 舐めるのも大概にしろよ!」
「そんな事、僕に言われてもどうしようもないよ」
「くそっ。こいつに賭けていた奴等を大損させてやるからな」
俺は更なる闘志を燃え上がらせていた。
「それにしても面倒だ。なぜ俺がこんなに必死になって訓練やらをしなければならないのだ。この夏休みも学生らしい事が出来そうもない」
「それを言われても、それは僕のせいではないからね」
「くそ。ダラダラと昼間で寝て、グダグダとしていて気づいたら夜になっているみたいな生活を送るような夏休みを送るはずだったのに……」
「それはそれで、学生らしい夏休みとは言えないんじゃないかな?」
リオンは呆れた様子であった。
「くそっ。どうにか、楽に強くなる方法はないものか。いい加減、地道な訓練も飽きたぞ」
「そんな方法あったら、苦労はしないよ」
リオンは溜息を吐く。
「はっ!」
その時、俺の脳内に電流が流れたような感覚になる。そう、俺は思い出したのだ。古代の魔導書の存在を。ここより遥か東にある塔。そしてここより遥か西にある塔に古代の魔導書がある事を俺は原作知識で知っていたのだ。
東にある塔には闇の魔導書。そして西にある塔には光の魔導書があった。その魔導書をラーニングすれば、更なる闇と光の魔法を修得する事ができるのであった。
夏休みの期間は一カ月もある。それだけの期間があれば十分に二つの塔を攻略し、学園にまで戻っていく事が可能である。
「勝てる! これがあれば俺はバカ王子に勝てるぞ!」
俺は叫んだ。
「そのバカ王子って呼ばれている人物が目の前にいる事を忘れないでよね」
リオンはさらに呆れた目で言ってくるのであった。
「そうなれば地道な訓練などかったるいだけだ! 夏休みは学生らしく、思いっきり遊ぼうじゃないか!」
「急にテンションが上がって来たね。何を思いついたのかはわからないけど。それにしても遊びに行くってどこに?」
「それはもう、夏と言えば暑いし。暑いと言えば涼しそうな場所があるではないか。若い学生達に人気な施設が」
「あー……そういえば学園でも話題になっていたね」
そう、流水型プールが目玉の大規模な複合型プール施設『マジック・シー・ワールド』が今、話題になっていたのだ。
「というわけで、付き合ってくれよ、リオン。一緒に遊びに行こう」
「なんで、僕がアーサー君と行く事になっているの?」
「いいではないか。どうせ夏休みなんて暇だろう? 付き合え」
俺はあの遊楽施設『マジックワールド』での出来事を思い出す。あの時は運命(シナリオ)を本来の形に修正する事に失敗をした。
だが、俺は運命(シナリオ)を書き換える事を諦めたわけではなかった。今度こそ、リオンとフィオナを引き合わせる。そうすれば何か上手い事行くのではないか。そんな期待があったのだ。
そして、夏休みを迎えた俺達は複合型プール施設『マジック・シー・ワールド』へと出向く事になったのである。
「『ホーリーレイ』」
フィオナは光魔法『ホーリーレイ』で『シャドウナイト』の一体を消失させた。
だが、間髪入れずにもう一体の『シャドウナイト』がフィオナに攻撃を仕掛ける。闇の剣がフィオナに当たる。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!」
フィオナは甲高いを悲鳴を上げて、転がった。マジックスーツにより、ダメージが減少しているとはいえ、些か心配ではあった。
何メートルか転がった結果、盛大に塵埃を上げて止まった。
「……大丈夫か?」
俺が聞くと、フィオナは間髪入れずに立ち上がった。
「だ、大丈夫です! コーチ」
声には張りがあった。まだ元気そうだ。ダメージは差ほどでもない。
「……では続けるとするか」
「は、はい! コーチ」
俺は再び待機状態(スタンバイ)にした『シャドウナイト』を起動させる。再び動き出した『シャドウナイト』はフィオナを襲い始めた。
その練習は放課後から日が暮れるまで行われた。
そして夕暮れ時がやってきた。
「はぁ……はぁ……はぁ」
フィオナは息を切らしていた。汗を流している。やはり汗を流している少女は良い。絵になる。これが男相手だとそうはいかない。
「ふむ。大分、疲れたようだな」
「は、はい。コーチ」
「今日はこのくらいにしようではないか」
「そ、そうですね。暗くなりましたし」
こうして俺達は初日の特訓を終えるのであった。そして、その特訓は毎日のように行われる事となるのであった。
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キンコンカンコーン。鐘の音が鳴る。終業を知らせる鐘の音である。
「明日からこの魔法学園は夏休みの期間の期間を迎えます」
教壇に立つエスティアはクラスの生徒達に向かって、そんな事を言う。
「夏休みですが、あまりハメを外しすぎないように。そして夏休みが終わってすぐに魔法武術大会があるので、その準備も忘れずにしておくようにしてください」
「はぁ~……眠い、早く終わらんか」
俺は欠伸をする。
「ア、アーサーさん。失礼ですよ」
横にいるフィオナが諫めてくる。
「眠いもんは眠い。夕方もお前の訓練に付き合っているから、それなりに疲れているのだ。それなりに魔力も消耗している」
「そ、それはありがたいですし。それと同時に申し訳ないな、とは思っていますけど……」
「別に、そう気を病むな。俺の為にもなっているし、俺がやりたくてやっている事だ」
「そうですか……ならいいんですが」
「それに、この大会は普段の実戦訓練の総決算でもあるのです。皆様の力が存分に発揮され、そして、この夏休みの期間が実りあるものである事を祈っております」
そんな事をしているうちに、瞬く間に時は過ぎ去り、魔法学園は一学期を終えて夏休みの期間を迎えたのである。
そして、その一カ月程の夏休みの期間の後、魔法武術大会が行われるのである。
その間も俺とフィオナは魔法武術大会に向かって特訓をする事になっていたのだ。何とも汗臭い夏休みの予定である。
「あー……くそっ」
寮の自室でベッドに寝転びながら俺は吐き捨てた。
「何か嫌な事があったの?」
リオンが聞いてくる。
「どっかの融通の利かんバカ王子がわざと負けろと交渉しているのに言う事を利かないもんで、毎日のように居残りで特訓をしなければならないのだ」
「そのバカ王子って、目の前にいる僕の事だよね? それって普通に不敬罪だよ? わかってるの?」
「勿論、お前の事だ。だから毎日のように居残りで特訓をしなければならなくて、大変疲れているのだ。お前のせいだぞ、どうしてくれるんだ?」
「それは自分のせいでしょ。僕が手を抜かないのも、わざと負けないのも別に何も悪い事じゃないでしょ。八百長だよ」
「八百長? 賭けているわけでもあるまい?」
「裏でいるみたいだよ。賭けている生徒くらい。秘密裏に組織だって賭けているのさ。魔法武術大会の優勝者は誰かって。当然、オッズは僕が一番低いみたいだけどね。つまりは本命だね」
「……ふむ。ちなみに俺の倍率は何倍くらいだ?」
「多分、100倍くらいじゃないかな。僕が1.1倍くらいだよ」
「ふざけているのか! 舐めるのも大概にしろよ!」
「そんな事、僕に言われてもどうしようもないよ」
「くそっ。こいつに賭けていた奴等を大損させてやるからな」
俺は更なる闘志を燃え上がらせていた。
「それにしても面倒だ。なぜ俺がこんなに必死になって訓練やらをしなければならないのだ。この夏休みも学生らしい事が出来そうもない」
「それを言われても、それは僕のせいではないからね」
「くそ。ダラダラと昼間で寝て、グダグダとしていて気づいたら夜になっているみたいな生活を送るような夏休みを送るはずだったのに……」
「それはそれで、学生らしい夏休みとは言えないんじゃないかな?」
リオンは呆れた様子であった。
「くそっ。どうにか、楽に強くなる方法はないものか。いい加減、地道な訓練も飽きたぞ」
「そんな方法あったら、苦労はしないよ」
リオンは溜息を吐く。
「はっ!」
その時、俺の脳内に電流が流れたような感覚になる。そう、俺は思い出したのだ。古代の魔導書の存在を。ここより遥か東にある塔。そしてここより遥か西にある塔に古代の魔導書がある事を俺は原作知識で知っていたのだ。
東にある塔には闇の魔導書。そして西にある塔には光の魔導書があった。その魔導書をラーニングすれば、更なる闇と光の魔法を修得する事ができるのであった。
夏休みの期間は一カ月もある。それだけの期間があれば十分に二つの塔を攻略し、学園にまで戻っていく事が可能である。
「勝てる! これがあれば俺はバカ王子に勝てるぞ!」
俺は叫んだ。
「そのバカ王子って呼ばれている人物が目の前にいる事を忘れないでよね」
リオンはさらに呆れた目で言ってくるのであった。
「そうなれば地道な訓練などかったるいだけだ! 夏休みは学生らしく、思いっきり遊ぼうじゃないか!」
「急にテンションが上がって来たね。何を思いついたのかはわからないけど。それにしても遊びに行くってどこに?」
「それはもう、夏と言えば暑いし。暑いと言えば涼しそうな場所があるではないか。若い学生達に人気な施設が」
「あー……そういえば学園でも話題になっていたね」
そう、流水型プールが目玉の大規模な複合型プール施設『マジック・シー・ワールド』が今、話題になっていたのだ。
「というわけで、付き合ってくれよ、リオン。一緒に遊びに行こう」
「なんで、僕がアーサー君と行く事になっているの?」
「いいではないか。どうせ夏休みなんて暇だろう? 付き合え」
俺はあの遊楽施設『マジックワールド』での出来事を思い出す。あの時は運命(シナリオ)を本来の形に修正する事に失敗をした。
だが、俺は運命(シナリオ)を書き換える事を諦めたわけではなかった。今度こそ、リオンとフィオナを引き合わせる。そうすれば何か上手い事行くのではないか。そんな期待があったのだ。
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