怠惰な悪役貴族は変わらず怠惰に過ごしたい。死亡フラグを回避する為に【闇魔法】を極めてたら正ヒロインに好意を持たれたのだが。

つくも/九十九弐式

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第39話 マジック・シー・ワールドでの出来事

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『マジック・シー・ワールド』は夏という事もあって大変、賑わっていた。そこには多くの若い男女が詰め寄せていた。

 俺達は『マジック・シー・ワールド』の入り口前で待ち合わせをしていた。

「あの……本当にリオン王子は来るのでしょうか?」

 フィオナが心配そうに聞いてくる。なにせ、前に『マジックランド』の時にはドタキャンするという前科がリオンにはあるのだ。だから不安に思うのも仕方のない事であった。

 待ち合わせ時間まではまだ数分あるとはいえ、すぐそこに迫っているのも確かな事ではあった。

「いや、奴は来る。今度こそ来る」

「なぜそうまで言い切れるのです?」

「もし来なかったらお前の身内を拉致監禁すると脅したからだ」

「それは来たとしても、身内の危機を案じたのではなく、お友達を犯罪者にしたくないからではないでしょうか?」

 フィオナはそう言って首を傾げるのであった。

「はぁ……はぁ……はぁ」

 息を切らせて、リオンが走り寄ってくる。

「お待たせ、待たせたね」

 何食わぬ顔でリオンはそう言ってくるのであった。
 
「ちっ。遅いではないか」

「別に遅刻はしてないはずだよ。待ち合わせの時間には間に合っているはずだよ」

「それもそうではあるが、涼しい顔をしているのがなんとなく気に食わなかっただけだ」

「あー、はいはい。ごめんね、アーサー君。遅くなって。これでいいでしょ?」

「うむ。特別に貴様の事を許してやろうではないか」

 我ながら王族に対して何という振る舞いだとは思うが、ルームメイトなのでこのくらいは許されるであろう。恐らくではあるが。

「それよりも今日は暑いし、さっさと中に入ろうよ」

 リオンはそう言ってきた。確かに、今日は暑かった。夏らしく、燦々とした太陽が降り注ぎ、肌を焼いている。立ち話をしているのも多少の苦痛を覚えた。

「うむ。それもそうだな。その通りだ。暑いからさっさと中に入るとしようではないか」

 こうして俺達は入口で入場料を払い『マジック・シー・ワールド』に入るのであった。

                 ◇
『マジック・シー・ワールド』はやはり夏である事と、学校などの教育機関が夏休みである事もあり、多くの若い水着姿の男女がそこかしこに居たのである。

『マジック・シー・ワールド』は屋内型水流施設と屋外型流水施設を併せ持ち、屋内の方の施設なら基本的には空調が効いており、夏場でも普通に涼しいようで
あった。

 俺達は更衣室で水着に着替えた。男なんていうのは着替えが簡単なものである。だから、俺達の方が早く更衣室から着替えて出てきた。いつだって待たされるのは男の方である。大抵、そういうものであった。

 その間、俺は特にやる事もなく、暇だったので周囲を観察していた。やはり、あの水着売り場の店員がおすすめしていた水着のような、痴女が身に着けるようなヒモの水着を身に着けている者はいなかった。

 あんな水着を身に着けていたら、明らかに浮いていた事だろう。その上、好奇の視線で見られ、恥をかいていた事は必至であった事だろう。

 やはりあの店員は売れなくて在庫に困っていたので売りつけようとしていただけなのだ。あんな水着が流行っていてたまるものか。

 俺はフィオナの買い物に付き合って心底良かったと思った。常識のないあいつであったのならば、きっと相手の事を何も疑わずにあのヒモで出来たような水着を買わされていたに違いないのだ。

「お待たせしました」

 そしてフィオナが現れる。白い清楚なビキニを身に着けた彼女はとても魅力的であり、周囲からの視線を集めた。平民という身分ではあれど、彼女はルックスも良く、プロポーションも良いのだ。

 だから、こういった場に来るとそれなりに周囲からの視線を集めるのであった。勿論、良い意味でだ。

 俺は頃合いを見て、その場から離れようと考えていた。リオンとフィオナを二人切りにすれば、関係が進むかもしれないのだ。

 それが本来あるべき、二人の関係であり、運命(シナリオ)というものであった。

 俺はしばらくしたら昼時あたりに飲み物と買い物を買いに行くという体裁で、しばらくその場から離れる事を決めた。

 こうして『マジック・シー・ワールド』での一日が始まったのである。
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