俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~

つくも/九十九弐式

文字の大きさ
14 / 16

第14話 オークの巣へ

しおりを挟む
「はぁ……はぁ……はぁ」

 セラは魔導士だ。魔法攻撃と魔法防御力に長けている魔導士ではあるが、その反面体力はない。走っての移動はただでさえ少ない体力を消耗させる。

 だが、休んでいる余力などないのだ。

「がんばれ! セラ! 休んでいる暇は俺達にはないんだ!」

「は、はい! ……そ、そうですね」

 とはいえ、オークの巣に辿り着くより前にHP(体力)切れで闘えないとなっては話しにもならない。

「ほら……セラ、これを飲むんだ」

 俺はアイテムポーチからポーション2個とエーテル2個を取り出す。

「あ、ありがとうございます」

 ごくごく。

 ごくごく。

 俺達は一気に飲み干した。生き返る。HPとMPが回復したのを感じた。
=====================================
※エルクとセラのHPとMPが回復した
アイテム欄 
ポーション×10→ポーション2個消耗、ポーション×8に
エーテル×5→エーテル2個を消耗、エーテル×3に
パン×5→パン2個消耗、パン×3に ※ここに来るまでに食べた
飲料水×5→水2個消耗、水×3に ※ここに来るまでに飲んだ
=====================================

 よし……これで憂いなくオークの巣へと迎えるのであった。時間が経てば経つ程、クレアに危険が迫っていく。彼女が無事な確率が下がっていくのだ。
 急ぐより他になかった。そして、彼女が無事である事を祈るばかりだ。

「み、見てください! エルクさんっ!」

 セラが指を指した先には洞窟があった。洞窟の入り口には二人のオークがいた。見張りであった。見張り役のオークは松明を掲げ、周囲を警戒している。

 見張りがいるのはまずいが、それにより反って目立つという効果があった。間違いない。あそこがオークの根城だ。

「ああ、間違いない。あそこにセラさんがいる」

 セラだけではないだろう。他の哀れな村の犠牲者達もいるに違いない。俺達はオークの根城へ向かう。

 ――だが、その前に門番をしている二体のオークをどうしても相手にしないとならないようであった。

 ◆

(キングオーク視点)

 オークの根城には一際大きいオークがいた。オーク達のリーダーである、キングオークである。身体が大きいだけではない。人間達から奪った装飾品を身に着け、冠をしている事から、一際豪勢な見た目をしたオークになっている。太った成金のようにも見えなくもない。

「キ、キング!」

「お、遅かったではないか……全く、何をしていたのだ」

「……そ、それがその……色々とありまして」

 根城に帰ってきたオーク達はドサッ、ドサッ、と荷物を置く。

 荷物——とは、勿論、身動きができないように、ヒモで拘束された女性達の事だった。

「おおっ……これはこれは……こやつなど中々に上玉ではないか。ブッヒッヒ! 良い子を産めそうだの……久しぶりに我自らが相手をしてやろうかの……ブッヒッヒ!」

 オークキングはクレアの顔を物色し、涎を垂らす。

 ゾクリッ、とクレアの背筋が震えた。これから訪れるであろう絶望的な未来を恐れたのだ。

「ん? 出発した時より数が少ないようだが……どうしたのだ?」

 オークキングが尋ねてくる。

「そ、それが……実は」

「む、村を襲った時に冒険者に邪魔をされまして……」

「ほう、冒険者か」

 報告を聞いてもオークキングはさほども動揺の色を見せなかった。ある程度想定していたのだろう。村の娘達をさらい、そして捜索していた男達を処分した。恐らくはその若い男のうちに生き残った者がいたのだろう。
 その者がオークによる被害なのだと訴えたとしたのならば、村が自衛手段として何かしらの策を弄する事は十分に考えられた。

 そしてその自衛手段も。村に自衛手段がないのならば外部に頼るより他にない。金を払うだけで大抵の事をしてくれる便利な人間達がいる。その人間達こそが冒険者だ。
 
 だから、この事態はオークキングにとっては想定の範囲内だった。彼はオークの中では格段に頭が回るのだ。決して図体が大きいだけでオークの王へと上り詰めたわけではないのである。

「オークキング!」

「どうした?」

 慌ててオークが駆けこんで来た。

「に、人間です! 人間達が俺達の巣に乗り込んできました!」

「なんだと! 人間達? 何人だ?」

「ふ、二人です」

 思っていたよりも少ない数にオークキングは失笑した。

「ふっ……驚かせるな。たった二人か。その二人はなんだ? 村にいた冒険者とやらと同じなのか?」

「は、はい! 俺達の邪魔をしたのは二人の冒険者でした! だ、だから恐らくは同じ連中だと思います!」

「ふっ……そうか」

 人間の冒険者達が大勢で押しかけてきたらまずいと思っていたが、二人なら問題ない、そうオークキングは考えた。
 
 だが、この巣の存在まで完璧にバレてしまったようだ。恐らくは次はもっと大勢で攻め込んでくる事だろう。そうなるとまずい。流石に対応できないかもしれない。

(そろそろあの村から娘をさらってくるのも限界かもしれんの……)

 オークキングはそう考えていた。

(そろそろ……拠点を別に移す必要があるやもしれぬ)

 先々の事まで色々と思考を巡らせる。

「い、いかがいたしましょうか? オークキング!」

「防衛隊を出せ。もし守り切れない場合は、この我自らの手で叩き潰してやるわ」

 オークキングは言い放った。鋭い眼光が光る。

 オークと人間達の攻防が始まるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

学生学園長の悪役貴族に転生したので破滅フラグ回避がてらに好き勝手に学校を魔改造にしまくったら生徒たちから好かれまくった

竜頭蛇
ファンタジー
俺はある日、何の予兆もなくゲームの悪役貴族──マウント・ボンボンに転生した。 やがて主人公に成敗されて死ぬ破滅エンドになることを思い出した俺は破滅を避けるために自分の学園長兼学生という立場をフル活用することを決意する。 それからやりたい放題しつつ、主人公のヘイトを避けているといつ間にかヒロインと学生たちからの好感度が上がり、グレートティーチャーと化していた。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

処理中です...