26 / 43

第26話 エルフ国に案内して貰う

しおりを挟む
「うっ……ううっ……」

 エルフの少女は呻いていた。俺達は傷ついているエルフの少女にポーションを一個使用した。

【※エルフの少女にポーションを使用した為、ポーションの所持数が11個→10個になります】

「……はっ……あ、あなた達は一体……私は魔族兵と闘っていたのでは」

 回復したエルフの少女は、意識を取り戻したようであった。だが、若干、記憶が混濁しているようだった。状況を飲み込めていないようだ。

「安心してください。魔族兵は私達が倒しました」

 エステルがエルフの少女に優しく語り掛ける。

「そうですか……私はあなた達に助けられたのですね。ありがとうございます。私の名はセシリアと申します」

 エルフの少女はそう名乗った。彼女の名はセシリアと言うらしい。

「俺の名はカゲト、それから彼女はエステルだ」

 俺達も名乗り返した。

「魔王軍とエルフ国が交戦しているのは聞いている……それに、旗色が悪くなっているという話も。俺達は君達の力になりたいんだ」

「あ、あなたはもしかして、異世界より召喚されたと言われる、あの伝説の勇者様なのですか?」

 セシリアは輝いた目で俺にそう聞いてくる。

「違う……俺は勇者ではない。だけど、異世界から召喚されたというのは本当の事だ。俺達を君達の国、エルフの国に案内して欲しい。エルフ王に会って、直接話をつけたいんだ」

 加勢をする上で、やはり上の者に話を通しておく事は大事な事であった。そうでないと味方だと思っていたエルフ側から攻撃される事もあるだろうし、協力をして貰う事もできない。

「話はわかりました……私に出来るのはエルフ国への案内だけですが、それで良いのでしたら」

「そうか……ありがとう。助かるよ」

「いえ。あなた達は私の命の恩人ですから。そのくらい、お安い御用です」

 彼女は笑顔でそう答えた。

「本来であれば、エルフ国に部外者を連れて行くのは禁忌ではありますが、あなた達は特別です。案内します」

 彼女は俺達にそう約束をしてくれた。こうして俺達はエルフの少女セシリアに導かれ、エルフ国へと向かう事になったのだ。

                  ◇
「一つ、聞いていいか?」

「は、はい。何でしょうか?」

「人間界における風の噂では、エルフ国と魔王軍の戦況は拮抗状態にあったはずだ。それが何で、急にその態勢が崩れたんだ? 魔王軍が新戦力の投入でもしてきたのか?」

「それが……」

 セシリアは表情を曇らせる。何やら、深い事情があるらしい。

「エルフ国と魔王軍との抗争は順調とはいえませんでしたが、おっしゃるようにある程度の拮抗状態にありました。エルフにはこの森による地の利と弓矢や魔法による攻撃もあります。むしろ拮抗状態はこちらの都合の良い方向に流れ始めていた節すらありました。——ですが」

 どうやら何かあったようだ。

「恐ろしい人間が魔王軍に加勢したと聞きました。私は直接、その人間を見たわけではありませんが。その人間が魔王軍に加勢した事で、エルフ国と魔王軍の拮抗状態は崩れていったのです。そして私が所属していた部隊も壊滅状態になり、私以外の仲間はもう——」

 セシリアは表情を歪ませる。辛い出来事や悲しい出来事があった事を容易に察する事が出来た。

 恐ろしい人間が魔王軍に加勢したのか。何だか嫌な予感がした。この時の俺にはまだわからなかったが、後にこの嫌な予感は的中する事になる。

 迷宮のような森を抜ける。長い時間、俺達は歩いた。

「ここがエルフの国です」

「何もないじゃないか」

 今まで通り、同じような森が続いているだけである。

「視覚を妨害する結界が張られているのです。特別な魔法を使うか、マジックアイテムがないと視認できるようになりません。今、結界を無効化します」

 セシリアは魔法石を取り出した。輝かしい石。彼女が先ほど言っていたように、結界を無効化するマジックアイテムなのだろう。

 セシリアは呪文を唱えた。聞き取れない呪文。その呪文により、魔法石は輝かしい光を放った。

 すると、目線の先には木々の中で暮らす、エルフの人々の姿が見えるではないか。
 
「……あれがエルフの国か」

「そうです。王城はこちらになります。案内しますのでついてきてください」

 俺達がエルフの国に入国すると程なくして、再び結界が張られる。

 こうして俺達はエルフの国に入る事ができたのだ。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...