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第15話 ドワーフ姫が逃げ込んでくる

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 グー! グー! グー! グー!  グー! グー! グー! グー!  グー! グー! グー! グー!  グー! グー! グー! グー!  グー! グー! グー! グー!  グー! グー! グー! グー! グー! グー! グー! グー!

 その日の夜の事であった。俺達はベッドで眠っていた。重労働だったという事もあり、俺は深い眠りに落ちていた。疲れていたのだ。隣にリノアがいるが、もはや段々と慣れてきた。最初はドキドキして眠れなかったが、人間慣れると普通になってくる。

 それはリノアも同じだった。俺達はまるで長年連れ添った夫婦のように、平気で同じベッドで眠っていたのだ。

 それは眠りも深まる深夜の事だった。その時の事であった。

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

玄関の扉を叩く音が聞こえてくる。異様な程連打され、思わず俺達は起きてしまう。

「………………………………………………………………………………ん? なんだぁ?」

「………………………………………………………………………………んん? なんでしょうかぁ?」

 俺達は寝ぼけ眼を擦り、目を覚ますのであった。

「リノア、昨日木の橋を片付けなかったっけ?」

「多分、片付けるのを忘れて眠ってしまったような気がします…………」

「だよなぁ……誰だと思う?」

「怪物(モンスター)だったらわざわざノックなんてしてこないんじゃないでしょうか?」

「とりあえず、暗いからリノア、照明(ライティング)の魔法を使ってくれ」

「わかりました。グラン様。照明魔法(ライティング)」

 リノアの魔力により、光の球が作り出され、周囲を明るく照らし出す。

 俺達は警戒しつつ、玄関の扉を開くのであった。

 ――と。その時の事であった。玄関を開けると、突如小さい女の子が俺の胸に飛び込んできたのだ。

「た、助けてください!」

「え!?」

 泣き叫ぶ小さい女の子。人間で言うならば童女くらいの慎重しかない、可愛らしい女の子だ。だが、気づくのだ。彼女は小人族(ホビット)とか呼ばれたりもする亜人種の種族であるという事に。彼女はドワーフ族の女の子だ。

 身体は小さいが、それでも彼女は立派に成人しているのだろう。

「ど、どうしたの? 一体、こんな深夜に」

「わ、私達、ドワーフの国が魔王軍に襲われたんです!」

「え? 魔王軍に!?」

「は、はい! それで命からがらに逃げ出してきたんです!」

「ふーん……そうか……そんな事が」

 魔王軍の侵攻はそこまで進んでいるのか……。エルフの国に攻め入ると次はドワーフの国まで。いずれは人間の国である俺の母国——この前リノアと行ってきたアークライトまで攻め込んでくるのも時間の問題かもしれない……。

 だが、そんな事を心配している余裕はない。今の俺達は自分達の身を守り、生活していく事だけで、いっぱい、いっぱいなのだ。

「……とりあえず、もっと落ち着いてよ。深呼吸してさ。大変なのはわかるけど、こっちも何がなんだかわからないよ」

「ええ……そうでしたね。すみません。すぅー、はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 ドワーフの少女は深呼吸をして、気を落ち着かせる。

「申し遅れました。私の名はリディアと申します。ドワーフ国の姫です。先ほど言った通り、ドワーフの国が魔王軍に襲われ、命カラガラ逃げたしてきたのです」

「……そうだったのですか。ドワーフの姫よ。そのような事が……」

 エルフの国の元姫であるリノアは同情しているようだった。なにせ種族こそ違うが同じような境遇である。思わず同情せざるにはいられなかったようだ。

「いえ、私はもう姫などではありません。元姫です……私達が暮らしていたドワーフの国は恐らくもう……」

 ドワーフ国の元姫——リディアはそう言って、瞳に涙を浮かべた。しかし彼女はそれを必死に堪える。泣いたところで状況が改善するわけではない事を、彼女はわかっているのだ。

「……それで、魔王軍はどうしたんだ?」

「わ、私に追手を放ってきたのです……ついそこまで迫ってきていると思います」

「な、なんだって! リノア! 木の橋を撤去しろ! それで玄関の鍵を閉めて、籠城するんだ! 早速、外堀の出番だぞ!」

「は、はいっ!」

 俺達は手早く木の橋を撤去した。

 窓から外の様子を見る。間違いない。魔王軍の兵士達だ。奴らが俺達の家——ミスリルの家を完全に包囲し始めた。リディアの言っている事は本当だったのだ。

 こうして俺達と魔王軍の兵団との闘いが突如として始まったのだ。

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