外れスキル【建築】持ちの俺は実家を追放される。辺境で家作りをしていただけなのに、魔王城よりもすごい最強の帝国が出来上がってた

つくも/九十九弐式

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第29話 モリガンとの戦闘

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「く、くそっ……俺様はこんなところで死ぬわけにもいかねぇ……俺様は世界を救う英雄になるんだ……それでもっと良い女を抱いて、気持ちよくなって……皆から崇められて、最高に幸せな人生を送る予定だっていうのに……」

 地面を這いつつ、ヘイトはそう言った。

「……くっ! 馬鹿兄貴!」

「えっ!?」

 この期に及んで、ヘイトが言ってきた台詞はとても信じられないものだった。

「俺様を助けろ!」

「な、何を言ってるんだ……ヘイト。散々、俺の事を馬鹿にしてきて。それで助けを求めてくるなんて、そんな虫の良い話があるか」

「そうです! そうです! あなたがグラン様に行ってきた非道の数々、私は忘れません!」

 俺もリノアもヘイトに対する憤りを流石に隠せずにいた。

「今は四の五の言っている場合じゃねぇだろ! 俺様が死んだら、魔王軍を倒す切り札がなくなるんだ! ……お前達でこいつ等をどうこうできるわけねぇだろ!」

 ヘイトならどうこうできたというわけでもないだろう。ヘイトは現れた魔王軍四天王の一角——モリガンに手も足も出ずに、地べたを這いつくばっているのだから……。

 だが……俺は冷静に考える。この場でヘイトを見捨てて良いものか。仮にも義理の弟だ。数々の非道な行いをしてきたとはいえ……。それに、こいつを見捨てると魔王軍に対する戦力が大きく減る事になる。
 ヘイトは味方では決してないが、敵の敵であるのは間違いないのだから。

 俺は考えた末に一つの結論を出す。

「いいよ……助けよう、ヘイト」

「グラン様!?」

 予想だにしていない言葉に、リノアは表情を変えた。

「リノア……これはただの慈悲じゃない。俺はそんなに慈悲深いわけじゃない……ただ、ヘイトが今、魔王軍に対抗できる貴重な戦力である事は間違いないんだ。ヘイトを失う事は俺達にとって不利益なんだよ」

「は……はい。グラン様がそうおっしゃるのでしたら……でも、どうやって助ければ」

「リノア……あのモリガンに魔法攻撃を放ってくれ。それで注意をこちらに引き付けるんだ。その間にヘイトは体勢を立て直せるだろう」

「は、はい……で、ですが」

 それはあまりに危険ではないか。そう、リノアは思っている事だろう。何せ相手はあの魔王軍四天王の一角だ。その名に恥じない程の強さをあのモリガンを持っている事は目の前で見て、認識している。

 何せ魔王軍をバッタバッタと薙ぎ払っていったヘイトが手も足も出ずに地べたを這う事になった相手なのだから。

 そんな強い相手の注意を引くという事はまさしく自殺行為であろう。だが――それをしなければヘイトを助ける事などできない。

「リディア……俺達であのモリガンの注意を引く。その間に家から大砲を持ってきてくれ」

「わ、わかりました! グラン様!」

 リディアはそう言って、家まで大砲を取りに戻った。

「リノア、構わない。やってくれ」

「わ、わかりました! 火球(ファイアーボール)!」

 リノアは火球(ファイアーボール)を放った。紅蓮の火球がモリガンに襲い掛かる。

「ん?」

 当然のように、モリガンの魔力障壁(マジックシールド)によって、その火球は搔き消されてしまう。

 だが、注意を引けたのは確かだ。

「虫けらがまだいるようだな……目障りだ」

 モリガンは僅かではあるが怒りの炎をチラつかせた。だが、俺達、人間にとっては脆弱な蛇に睨まれたカエルのように、思わず硬直してしまうような、圧倒的なプレッシャーをそのモリガンは放っているように感じられた。

 彼女の眼光に睨まれただけで、思わず、すくみあがってしまいそうだった。流石は四天王の一角であると言えた。

「へっ! ナイスだぜ! 兄貴!」

 流石に命を救われただけあってか、あのヘイトもこの時ばかりは俺の事を『馬鹿兄貴』だの、いつものように罵ってくる事はなかった。

 そして、とんでもない事を言ってきたのだ。

「けっ……今回ばかりは見逃してやらぁ! 四天王のモリガンさんよっ!」

「まさか、逃げるのか、ヘイト……命惜しさに」

「う、うるせぇ! に、逃げるんじゃねぇよ!」

 ヘイトは膝をガクガクと震わせている。

「膝、震えてますけど……」

 リノアは冷ややかな目で告げる。

「う、うるせぇ! ふ、震えてなんてない!」

 ヘイトは震える膝を両手で強引に押さえた。

「い、良いか! み、見逃してやるって言ってるんだ! この俺様がな……だがな、今度会ったらこうはいかねぇぜ! モリガンさんよ! この俺様の剣で、てめーを跪かせて、ベッドの上でヒイヒイ言わせてやらぁ!」

 ヘイトは負け惜しみとしか取れないような、捨て台詞を吐いた。

「……あばよ! それじゃあな兄貴! 今回ばかりは恩に着るぜ!」

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ

 ヘイトは尻尾を巻いて逃げ出した。それはもう、脱兎の如く。

「……モリガン様、あやつはどうしましょうか?」

「放っておくがいい……我々の目的は人間の国アークライトの侵略にある。邪魔をしてくるわけでもないのなら、放っておけばいいだけだ。もし今度突っかかってきたのなら今度はもう少し、強めに撫でてやろう」

 モリガンは魔人クレイモアに対して、そう告げた。

「それより……まだ歯向かうつもりのこやつ等の相手をしてやろうか」

「くっ……」

 俺は【建築(ビルド)】スキルを発動し、『ビルドハンマー』を構えた。

「いかがされますか? グラン様!?」

「このままこいつ等をアークライトまで通すわけにはいかない……」

 撃退できるとも思えないが、恐らくはアークライトでは何かしらの準備をしている事だろう。魔王軍に対抗する為の兵の準備……あるいは国民の避難。
 撃退できずとも、時間を稼げるというだけで十分に貢献できるはずだ。その結果、俺達が命を落としてはどうしようもないが……。

 何とか逃げられるなら逃げ延びたいものだ。死んでしまってはどうしようもないのだから。ヘイトが真っ先に逃亡したのは誤算であった……。ロズベルグ家の世継ぎという、責務を背負った立場にありながら、命欲しさに真っ先に逃亡するとは……。
 我が義弟(おとうと)ながら、実に情けない奴だった。

 緊迫した空気の中、先んじて動いたのはリノアだった。リノアは魔法攻撃を放つ。

「上級雷撃魔法(ハイ・ライトニング)!」

 リノアは凄まじい雷撃を放つ。バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバ。

 悠然と構えているモリガンに、凄まじい勢いの雷撃が襲い掛かる。

「無駄なあがきを……チンケな虫けらが」

 モリガンは一歩も動かず、指すら動かさない。無意識に発生する魔力障壁(マジック・シールド)が進化したリノアの魔法攻撃を以ってすら、弾かれるのであった。

「そ、そんな! ……何も効かないだなんてっ!」

 リノアは恐れ、慄いていた。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
!」

 俺は『ビルドハンマー』で間髪入れずに、モリガンに襲い掛かった。思いっきり殴りつける。

「無駄だと言っているのがわからぬか……虫けらよっ」

 しかし、俺の『ビルドハンマー』も当然のように、モリガンの魔力障壁(マジックシールド)に阻まれ、振れる事すらできない。

「撫でてやろう……」

 俺はモリガンの反撃を食らう。ヘイトも食らった、魔力衝撃波だ。モリガンからすれば、ただ撫でるだけの自然な行為かもしれないが。俺達にとっては恐ろしい脅威であったのだ。猛烈な魔力衝撃波により、俺は吹き飛ばされた。

「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 俺は猛烈な勢いで吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がった。

「グラン様! ……」

 リノアが叫ぶ。俺はよろよろと、なんとか自力で立ち上がった。

「……心配するな、リノア。本気の攻撃じゃなかったから、何とか耐えられた。本気だったら多分、死んでたと思うけど……」

流石は魔王軍四天王の一角だけあって、モリガンは凄まじい力を持っているようだった。全力ではないからこそ、その実力の深さが知れなかったのだ。深淵に潜む、本当の力を解き放った時、一体どれほどの化け物になるのか、想像もつかなかった。

「流石に強いです……魔王軍の四天王の一角だけの事はあります」

「……ああ」

 万事休すと思われた。

 ――と、その時の事であった。ついに、砲台を持ったリディアが到着するのである。







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