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第34話 実父から世継ぎになれと懇願される
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「親父……どうして、ここに」
俺は予想外の人物の出現に戸惑っていた。
「王国を救った英雄が誰かと思っていたが……まさかとは思ったが、本当にそのまさかだったとはな……」
驚いたように、実の父であるクレイはそう言った。
「ば、馬鹿な! あの外れスキルを授かった無能兄貴が俺達の国を救った英雄だと! そ、そんな事あるわけねぇだろうが!」
その場に駆け付けたヘイトはそう叫ぶ。恐らく、ヘイトだけは何となく予感していた事だろう。何せ、俺達とヘイトは魔王軍が攻めてきた北の辺境で会っていたのだ。
ただ、何となく予感していたヘイトだったとしても、どこかでまさか俺が国を救った英雄として王城でもてなされているとは、どこか信じたくなかったに違いない。
だから、俺達と北の辺境で会った事と、魔王軍を救った英雄だという事。この二つの関係が一致しなかったのだと思われる。
故にヘイトは相当に驚いているようであった。
「一体、何の用である? ロズベルグ家の面々よ」
国王は聞いてきた。だが、その国王の言葉が耳に入らない程、クレイは驚いているようであった。
「お、親父……」
クレイは近づいてくるなり、俺の肩をがっしりと掴み、そして俺の目を見つめてきた。
「ほ、本当か!? グランよ! お前が本当にこの国の危機を救ったのか!? い、一体どうやって!? あの『剣神』スキルを授かったヘイトでも魔王軍から尻尾を巻いて逃げ出してきたというのに、お前は一体どうやって退けたというのだ!?」
目を血眼にして、俺を見つめ聞いてくる。
「い、一体、誰なんですか! あなたは!」
リノアは叫ぶ。
「……心配しなくてもいい、リノア。一応ではあるが、俺の実の親父だ」
俺はリノアにそう告げる。
「お、お父様ですか……」
「本当なのか!? 本当にお前達が国を救った英雄だというのか!?」
「そうです! 私達三人の力で魔王軍の侵攻を退けたんです!」
クレイの問いにリディアはえっへんと偉そうに答えた。
「ほ、本当なんだな!? グラン……お、お前がこの国を救った英雄だというのは!?」
「ま、まぁ……一応はそういう事になるかと」
クレイの表情が変わった。破顔したのだ。それはもう、別人かと思ってしまいかねない程に。あの日、俺を追い出した時のまるで他人を見るかのような顔とは正反対の、優しい顔を父はしていた。父は俺に対して、わかりやすく掌を返したのである。
「……良いだろう! グラン! この国アークライトを救ったそなたの行動は誠に見事であった! 貴様に我が名誉あるロズベルグ家に戻ってくる事を許す! グランよ! お前が我がロズベルグ家の世継ぎだ! 流石は私の実の息子……大変名誉で、父も誇らしいぞ」
「なっ!?」
驚いた俺は表情で固まる。まさかのクレイの掌返しは、流石の俺も予想していなかったのである。
「ふ、ふざけるなよ! 義父(おやじ)、俺がロズベルグ家の世継ぎじゃなかったのかよ! な、なんで外れスキルを授かって実家を追い出された義兄(あにき)が!」
当然のように不満を持ったヘイトがそう叫ぶ。
「黙れ! 魔王軍を前にして、尻尾を巻いて逃げてきた貴様など、我が栄誉あるロズベルグ家の世継ぎに相応しいはずもない! 魔王軍を退け、国を守ったこのグランこそがロズベルグ家の世継ぎに相応しいのだ! 血も繋がっていない貴様なぞ、誰がロズベルグ家の世継ぎにするものか!」
クレイはヘイトに対して、冷徹にそう叫んだ。
「お、親父……そ、そんな……それは酷すぎるだろ! 親父は俺が『剣神』のスキルを授かったからって、俺を世継ぎにしようとして、それで【建築(ビルド)】なんて外れスキルを授かった義兄(あにき)を追い出したんじゃねぇかよ! あんまりじゃねぇかよ!」
ヘイトは叫ぶ。この時ばかりは流石にヘイトに同情せざるを得なかった。それ程までにクレイの言っている事は身勝手だったからだ。いくら何でも、こう自分の都合で振り回されてはヘイトが可哀想というものである。
「黙れ! 貴様は用済みだ! ロズベルグ家世継ぎになるのは我が国を救った英雄、我が息子であるグランだ!」
「……えー? どういう事!?」
「結局、あの時、家を追い出されたグラン様がロズベルグ家の世継ぎとして戻ってくるという事?」
「そ、それじゃあ、ヘイト様はロズベルグ家の世継ぎになれないって事じゃない!」
ヘイトが囲っていた貴族の娘達が血相を変える。彼女達がヘイトに媚を売っていたのも、全てはヘイトがロズベルグ家の世継ぎとなる人間だからだ。それ以外の理由などない。故にもしその前提が崩れたとしたのなら、彼女達がヘイトを慕う理由などなくなるのだ。
「……グラン様」
「ひ、ひいっ!」
貴族の娘達が、突如俺に寄り添ってきた。近い……わざとらしく、俺の胸板に自分の胸を押し当て、上目遣いで俺を見つめてくる。
「どのようにして国を救ったのかしら……私達、グラン様に関心があるのですわ」
「そうそう……、グラン様の武勇伝を是非聞かせて欲しいですわ」
「い、一体、どのようにして、魔王軍を退けられたのかしら!」
「え、えっと……その……あの……」
俺は思わずたじろいでしまう。
「リ、リノア……何とか……なんとかしてくれ」
「ふん! ……グラン様、随分とおモテになるんですね!」
そう言って、リノアは顔を背け、そっぽを向いた。
「リ、リノア……もしかして、妬いているのか!」
「妬いてません!」
リノアは顔を真っ赤にして否定する。
「……どうだ! グラン! ロズベルグ家に戻ってくればお前は良い暮らしを出来るのだ! そこにいるエルフとドワーフの娘達を連れ込んでも良い! お前こそ我が栄誉あるロズベルグ家の世継ぎに相応しいのだ! もうあんな北の辺境で過酷な生活をする必要などないのだぞ!」
クレイはそう、俺に懇願してきた。だが――その誘いに対する答えはもう、俺の中で固まっていたのだ。
「お父様……俺はもうロズベルグ家には戻れません」
「な、なんだと! ど、どうしてだ! どうして世継ぎになれないなど、そんなツレない事を申すのだ!」
「俺はもう北の辺境で暮らしていくと決めたのです……それに俺はこの【建築(ビルド)】スキルを活かし、生活をよりよい物に変えていきました。このエルフとドワーフのリノアとリディアと生きていくと決めたのです。俺は楽しいんです……ゼロから自分達の生活を作っていくような、今の生き方に。だからもう、俺はロズベルグ家には戻りません」
そう、今の生き方は少なくとも俺にとってはかけがえのないものだったのだ。北の辺境でリノアとリディアと一緒に作ってきた生活は俺にとってはもはや人生の一部分だ。なくてはならないものだった。今更ロズベルグ家に戻り、安穏とした生活を送るのは俺には考えられない事だ。
だから俺がロズベルグ家に戻る事はなかったのである。
「そ、そんな……くっ……私は見誤ったというのか、あの時」
「いえ……見誤ったのではありません。俺のスキルが戦闘用の役に立たないスキルだったというのは否定しようもない事実です。ですが、あなたが俺を北の辺境に追いやったから、縁あってリノアとリディアと出会い、そして、魔王軍を退ける事ができたのです。色々と大変でしたが、今では俺を追い出してくれた事は感謝しています」
「……うっ、ううっ。そんな……そんな」
「ごほん! ……良いかね。ロズベルグ家の面々。どうやら何やら揉めているようだが」
国王は咳払いをした。
「え、ええ……申し訳ありません国王。見苦しいところを見せてしまって。俺達はこれで失礼します」
「そうか、それでは英雄グランよ。そしてエルフとドワーフの娘達よ。この度は誠に大儀であった。必要があればまたわしの所を訪れてくるがよい……歓迎するぞ」
国王に貸しができたのは僥倖だった。きっと何か困った事があったら力になってくれるに違いない。
「……ありがとうございます、国王陛下。じゃあ、行こうか。リノア、リディア。城下町に行って、必要な物を買って帰ろう」
「ええ……はい、グラン様」
「は、はい!」
こうして俺達は王城を後にしたのであった。
俺は予想外の人物の出現に戸惑っていた。
「王国を救った英雄が誰かと思っていたが……まさかとは思ったが、本当にそのまさかだったとはな……」
驚いたように、実の父であるクレイはそう言った。
「ば、馬鹿な! あの外れスキルを授かった無能兄貴が俺達の国を救った英雄だと! そ、そんな事あるわけねぇだろうが!」
その場に駆け付けたヘイトはそう叫ぶ。恐らく、ヘイトだけは何となく予感していた事だろう。何せ、俺達とヘイトは魔王軍が攻めてきた北の辺境で会っていたのだ。
ただ、何となく予感していたヘイトだったとしても、どこかでまさか俺が国を救った英雄として王城でもてなされているとは、どこか信じたくなかったに違いない。
だから、俺達と北の辺境で会った事と、魔王軍を救った英雄だという事。この二つの関係が一致しなかったのだと思われる。
故にヘイトは相当に驚いているようであった。
「一体、何の用である? ロズベルグ家の面々よ」
国王は聞いてきた。だが、その国王の言葉が耳に入らない程、クレイは驚いているようであった。
「お、親父……」
クレイは近づいてくるなり、俺の肩をがっしりと掴み、そして俺の目を見つめてきた。
「ほ、本当か!? グランよ! お前が本当にこの国の危機を救ったのか!? い、一体どうやって!? あの『剣神』スキルを授かったヘイトでも魔王軍から尻尾を巻いて逃げ出してきたというのに、お前は一体どうやって退けたというのだ!?」
目を血眼にして、俺を見つめ聞いてくる。
「い、一体、誰なんですか! あなたは!」
リノアは叫ぶ。
「……心配しなくてもいい、リノア。一応ではあるが、俺の実の親父だ」
俺はリノアにそう告げる。
「お、お父様ですか……」
「本当なのか!? 本当にお前達が国を救った英雄だというのか!?」
「そうです! 私達三人の力で魔王軍の侵攻を退けたんです!」
クレイの問いにリディアはえっへんと偉そうに答えた。
「ほ、本当なんだな!? グラン……お、お前がこの国を救った英雄だというのは!?」
「ま、まぁ……一応はそういう事になるかと」
クレイの表情が変わった。破顔したのだ。それはもう、別人かと思ってしまいかねない程に。あの日、俺を追い出した時のまるで他人を見るかのような顔とは正反対の、優しい顔を父はしていた。父は俺に対して、わかりやすく掌を返したのである。
「……良いだろう! グラン! この国アークライトを救ったそなたの行動は誠に見事であった! 貴様に我が名誉あるロズベルグ家に戻ってくる事を許す! グランよ! お前が我がロズベルグ家の世継ぎだ! 流石は私の実の息子……大変名誉で、父も誇らしいぞ」
「なっ!?」
驚いた俺は表情で固まる。まさかのクレイの掌返しは、流石の俺も予想していなかったのである。
「ふ、ふざけるなよ! 義父(おやじ)、俺がロズベルグ家の世継ぎじゃなかったのかよ! な、なんで外れスキルを授かって実家を追い出された義兄(あにき)が!」
当然のように不満を持ったヘイトがそう叫ぶ。
「黙れ! 魔王軍を前にして、尻尾を巻いて逃げてきた貴様など、我が栄誉あるロズベルグ家の世継ぎに相応しいはずもない! 魔王軍を退け、国を守ったこのグランこそがロズベルグ家の世継ぎに相応しいのだ! 血も繋がっていない貴様なぞ、誰がロズベルグ家の世継ぎにするものか!」
クレイはヘイトに対して、冷徹にそう叫んだ。
「お、親父……そ、そんな……それは酷すぎるだろ! 親父は俺が『剣神』のスキルを授かったからって、俺を世継ぎにしようとして、それで【建築(ビルド)】なんて外れスキルを授かった義兄(あにき)を追い出したんじゃねぇかよ! あんまりじゃねぇかよ!」
ヘイトは叫ぶ。この時ばかりは流石にヘイトに同情せざるを得なかった。それ程までにクレイの言っている事は身勝手だったからだ。いくら何でも、こう自分の都合で振り回されてはヘイトが可哀想というものである。
「黙れ! 貴様は用済みだ! ロズベルグ家世継ぎになるのは我が国を救った英雄、我が息子であるグランだ!」
「……えー? どういう事!?」
「結局、あの時、家を追い出されたグラン様がロズベルグ家の世継ぎとして戻ってくるという事?」
「そ、それじゃあ、ヘイト様はロズベルグ家の世継ぎになれないって事じゃない!」
ヘイトが囲っていた貴族の娘達が血相を変える。彼女達がヘイトに媚を売っていたのも、全てはヘイトがロズベルグ家の世継ぎとなる人間だからだ。それ以外の理由などない。故にもしその前提が崩れたとしたのなら、彼女達がヘイトを慕う理由などなくなるのだ。
「……グラン様」
「ひ、ひいっ!」
貴族の娘達が、突如俺に寄り添ってきた。近い……わざとらしく、俺の胸板に自分の胸を押し当て、上目遣いで俺を見つめてくる。
「どのようにして国を救ったのかしら……私達、グラン様に関心があるのですわ」
「そうそう……、グラン様の武勇伝を是非聞かせて欲しいですわ」
「い、一体、どのようにして、魔王軍を退けられたのかしら!」
「え、えっと……その……あの……」
俺は思わずたじろいでしまう。
「リ、リノア……何とか……なんとかしてくれ」
「ふん! ……グラン様、随分とおモテになるんですね!」
そう言って、リノアは顔を背け、そっぽを向いた。
「リ、リノア……もしかして、妬いているのか!」
「妬いてません!」
リノアは顔を真っ赤にして否定する。
「……どうだ! グラン! ロズベルグ家に戻ってくればお前は良い暮らしを出来るのだ! そこにいるエルフとドワーフの娘達を連れ込んでも良い! お前こそ我が栄誉あるロズベルグ家の世継ぎに相応しいのだ! もうあんな北の辺境で過酷な生活をする必要などないのだぞ!」
クレイはそう、俺に懇願してきた。だが――その誘いに対する答えはもう、俺の中で固まっていたのだ。
「お父様……俺はもうロズベルグ家には戻れません」
「な、なんだと! ど、どうしてだ! どうして世継ぎになれないなど、そんなツレない事を申すのだ!」
「俺はもう北の辺境で暮らしていくと決めたのです……それに俺はこの【建築(ビルド)】スキルを活かし、生活をよりよい物に変えていきました。このエルフとドワーフのリノアとリディアと生きていくと決めたのです。俺は楽しいんです……ゼロから自分達の生活を作っていくような、今の生き方に。だからもう、俺はロズベルグ家には戻りません」
そう、今の生き方は少なくとも俺にとってはかけがえのないものだったのだ。北の辺境でリノアとリディアと一緒に作ってきた生活は俺にとってはもはや人生の一部分だ。なくてはならないものだった。今更ロズベルグ家に戻り、安穏とした生活を送るのは俺には考えられない事だ。
だから俺がロズベルグ家に戻る事はなかったのである。
「そ、そんな……くっ……私は見誤ったというのか、あの時」
「いえ……見誤ったのではありません。俺のスキルが戦闘用の役に立たないスキルだったというのは否定しようもない事実です。ですが、あなたが俺を北の辺境に追いやったから、縁あってリノアとリディアと出会い、そして、魔王軍を退ける事ができたのです。色々と大変でしたが、今では俺を追い出してくれた事は感謝しています」
「……うっ、ううっ。そんな……そんな」
「ごほん! ……良いかね。ロズベルグ家の面々。どうやら何やら揉めているようだが」
国王は咳払いをした。
「え、ええ……申し訳ありません国王。見苦しいところを見せてしまって。俺達はこれで失礼します」
「そうか、それでは英雄グランよ。そしてエルフとドワーフの娘達よ。この度は誠に大儀であった。必要があればまたわしの所を訪れてくるがよい……歓迎するぞ」
国王に貸しができたのは僥倖だった。きっと何か困った事があったら力になってくれるに違いない。
「……ありがとうございます、国王陛下。じゃあ、行こうか。リノア、リディア。城下町に行って、必要な物を買って帰ろう」
「ええ……はい、グラン様」
「は、はい!」
こうして俺達は王城を後にしたのであった。
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