外れスキル【建築】持ちの俺は実家を追放される。辺境で家作りをしていただけなのに、魔王城よりもすごい最強の帝国が出来上がってた

つくも/九十九弐式

文字の大きさ
35 / 36

第35話 怒りの矛先がグランへ向かう

しおりを挟む
 (義弟ヘイト視点)

「……くそっ!」

 ロズベルグ家に戻ったヘイトは石の壁に向かって、拳を叩きつける。そんな事をしても拳を痛めつけるだけなのではあるが、そうせざるを得ない程にヘイトの中の苛立ちは大きかったのである。

 あれからヘイトはグランが世継ぎとしてロズベルグ家に戻ってこなかったという事で、仕方なしに世継ぎとしての座は維持される事となったが……その座はただの仕方なしである。もはや決して望んで世継ぎになれたわけではないのである。

 ヘイトの尊厳(プライド)は酷く傷つけられた。実父は勿論の事、囲っていた貴族の娘達から得ていた気持ちも失ってしまっていた。既にヘイトは誰もが認めるロズベルグ家の世継ぎにはなかった。ヘイトの評判は失墜してしまったのである。

「あの野郎だ! あの馬鹿兄貴のせいだ!」

 ヘイトは自身の評判が落ちた理由を全てグランに転嫁して、責め立てた。それだけには及ばず、激しい怒りと殺意をグランに抱くようになったのである。

 グランは世継ぎとしてロズベルグ家に戻るつもりはないと言っていたが、義父は未だにご執着の様子だ。あの二人は自分と異なり、実の親子なのである。何か歯車がかみ合えば、グランがロズベルグ家に戻り、世継ぎとして我が物顔で闊歩する未来は想像するに難しくない。
 貴族の娘達の態度もなんだかそっけなくなってきた。

「あいつだ! あいつのせいだ! あいつさえいなければ……」

 ヘイトは激怒した……グランの居所はわかっているのだ。だから、後は実行に及ぶだけだ。

「ぶっ殺してやるぜ! あの馬鹿兄貴! 俺様じゃなくて、あの無能兄貴の方がちやほやされているなんて、俺には我慢できねぇ!」

 怒りは明確な殺意となり、ヘイトを駆り立てる。

 ヘイトは一人、再び北の辺境へと向かうのであった。そう、義兄であるグランを殺害する為にだ。

 ◇

(グラン視点、視点が戻ります)

「ぐー、すか、ぴー……」

 俺達はアークライトで様々な家財道具などなどを買って帰った。その為、もう一つのベッドで皆で寝るような生活をしなくても済むようにあったのである。各々一人ずつ、ちゃんとしたベッドで眠れるようになった。

 そもそもの話として……一つ屋根の下で、何の仕切りもなしに。相手はエルフとドワーフだという、ただし書きは付くかもしれないが。一緒に生活するというものはいかがないものか。

 いい加減、俺の【建築(ビルド)】スキルを活用し、もっとこの家の拡張工事をしていくべきか……。
 同じ屋根の下で暮らすのは仕方ないとしても、各々の一人部屋を作る事は出来るだろう。
 そうすれば俺の心身の安息を確保できる。魔王軍が北の辺境に攻め入って来たり、それどころではないのが実情ではあったのだが、今の生活は大分余裕を取り戻せてきた。
 勿論、魔王軍の脅威がなくなったわけではない。いずれはその魔の手が差し迫ってくるに違いない。だが、すぐ訪れるとも思えない。魔王軍の魔族兵団は砲台の力により、大打撃を食らったのだ。立て直すのには時間がかかるだろうし、前よりは慎重に攻めてくると思われる。
 ……だから、それくらいの余裕はあるはずだ。家を拡張する位の暇は。多分ではあるが。
  ――と。それは俺達が寝静まった深夜の時の事だった。

 突如悲鳴が聞こえてきたのである。

「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 そう、外から男の悲鳴が、それも聞いた事のあるような声だった。

「ん? んんー? な、なんだ!?」

 俺は目を覚ます。

「……今、外から悲鳴が聞こえてきました」

「も、もう、なんですかー。せっかく人がぐっすり眠ってきたのに……また魔王軍が攻めてきたんですかー?」

 リノアとリディアの二人も目を覚ました。

「一応……外の様子を見に行こうか」

「は、はい。グラン様」

 俺達は仕方なく外へ行くのであった。

 ◇

「ううっ……いてぇ……いてぇよ……痛くて死んじまうよぉ……」

 外堀の底の方から、声が聞こえてきた。

「だ、誰なんだ……誰か、外堀に落ちたんですか?」

「ま、魔王軍の襲撃でしょうか?」

「わ、わからない……と、とりあえずリノア。照明魔法(ライティング)で周囲を照らしてくれ」

「わ、わかりました。照明魔法(ライディング)!」

 リノアは照明魔法(ライディング)で周囲を明るく照らし出す。

 外堀の底にいた人物は予想だにしない……い、いや、俺はある程度予想できてたけど。人物であったのだ。

「ヘイト!」

「うっ……うう、いてぇよ……あ、兄貴、ここからだしてくれよ」

 外堀の底にはミスリルで出来た無数の棘が設置されているのだ。どうやらヘイトは外堀の底に落ち、そして棘に串刺しになってしまったようである。

「い、いかがいたしましょう? グラン様」

「だ、出してやろう……仮にも俺の義理の弟だ。可哀想だし」

 俺達はヘイトを救出する事にした。

 ◇

「回復魔法(ヒーリング)」

 外堀の底に落ち、大きなダメージを負ったヘイトはリノアの回復魔法(ヒーリング)で治療を受ける。
 全く……我が義弟(おとうと)ながら、余計な手間を取らせる。

「あ、ありがとう……兄貴。助かったぜ」

 こんな時ばかりは流石のヘイトの態度も少しは大人しかった。

「それで、何の用なんだ? ヘイト……わざわざこんな北の辺境に、それもこんな夜遅くに来たのにはなんか理由があるんだろう? 俺に何か用なのか?」

 俺はヘイトに聞いた。

「そ、それはだなぁ……その……あ、兄貴を暗殺しにここまで来たけど……暗くて良く見えなくて、外堀に落ちちまったんだ……」

 ヘイトはそう、ボソボソと呟いた。

「え? 今あなた、なんとおっしゃいました? グラン様を暗殺?」

 リノアがヘイトの呟きに血相を変える。

「い、いや、今のは言い間違いだ……すまない。く、国を救った英雄であるグランの兄貴に、感謝の言葉を伝えようとここまできたんだ」

「そ、そうなのか……ヘイト。わざわざこんな夜遅くに来なくていいのに、危ないだろ? というか、危なかっただろ?」

 実際に外堀の底に落ちたわけだし。魔法系のスキルを授かっていないヘイトが夜に単身で出歩くと、このような事態になりかねない。

「あ、ああ……そうだ」

「本当に俺に感謝の言葉を伝える為だけに、ここにきたのか?」

 俺はヘイトの言葉がとても信じられずに、疑ってかかった。

「ほ、本当だ! あっ! お、俺様、急用を思い出したぜ! そ、それじゃあな! 兄貴!」

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ

 ヘイトは風のようにその場を去っていった。

「きゅ、急用って……」

「なんだったんですか、あの人は! 実に迷惑な人ですー」

 俺達は呆気に取られていた。

「ふぁぁ……な、なんだったんだろうな。また寝るか……」

「ええ……そうですね」

 こうしてヘイトにかき回された俺達は再び家に戻り、睡眠を取る事にしたのである。

 




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...