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第35話 怒りの矛先がグランへ向かう
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(義弟ヘイト視点)
「……くそっ!」
ロズベルグ家に戻ったヘイトは石の壁に向かって、拳を叩きつける。そんな事をしても拳を痛めつけるだけなのではあるが、そうせざるを得ない程にヘイトの中の苛立ちは大きかったのである。
あれからヘイトはグランが世継ぎとしてロズベルグ家に戻ってこなかったという事で、仕方なしに世継ぎとしての座は維持される事となったが……その座はただの仕方なしである。もはや決して望んで世継ぎになれたわけではないのである。
ヘイトの尊厳(プライド)は酷く傷つけられた。実父は勿論の事、囲っていた貴族の娘達から得ていた気持ちも失ってしまっていた。既にヘイトは誰もが認めるロズベルグ家の世継ぎにはなかった。ヘイトの評判は失墜してしまったのである。
「あの野郎だ! あの馬鹿兄貴のせいだ!」
ヘイトは自身の評判が落ちた理由を全てグランに転嫁して、責め立てた。それだけには及ばず、激しい怒りと殺意をグランに抱くようになったのである。
グランは世継ぎとしてロズベルグ家に戻るつもりはないと言っていたが、義父は未だにご執着の様子だ。あの二人は自分と異なり、実の親子なのである。何か歯車がかみ合えば、グランがロズベルグ家に戻り、世継ぎとして我が物顔で闊歩する未来は想像するに難しくない。
貴族の娘達の態度もなんだかそっけなくなってきた。
「あいつだ! あいつのせいだ! あいつさえいなければ……」
ヘイトは激怒した……グランの居所はわかっているのだ。だから、後は実行に及ぶだけだ。
「ぶっ殺してやるぜ! あの馬鹿兄貴! 俺様じゃなくて、あの無能兄貴の方がちやほやされているなんて、俺には我慢できねぇ!」
怒りは明確な殺意となり、ヘイトを駆り立てる。
ヘイトは一人、再び北の辺境へと向かうのであった。そう、義兄であるグランを殺害する為にだ。
◇
(グラン視点、視点が戻ります)
「ぐー、すか、ぴー……」
俺達はアークライトで様々な家財道具などなどを買って帰った。その為、もう一つのベッドで皆で寝るような生活をしなくても済むようにあったのである。各々一人ずつ、ちゃんとしたベッドで眠れるようになった。
そもそもの話として……一つ屋根の下で、何の仕切りもなしに。相手はエルフとドワーフだという、ただし書きは付くかもしれないが。一緒に生活するというものはいかがないものか。
いい加減、俺の【建築(ビルド)】スキルを活用し、もっとこの家の拡張工事をしていくべきか……。
同じ屋根の下で暮らすのは仕方ないとしても、各々の一人部屋を作る事は出来るだろう。
そうすれば俺の心身の安息を確保できる。魔王軍が北の辺境に攻め入って来たり、それどころではないのが実情ではあったのだが、今の生活は大分余裕を取り戻せてきた。
勿論、魔王軍の脅威がなくなったわけではない。いずれはその魔の手が差し迫ってくるに違いない。だが、すぐ訪れるとも思えない。魔王軍の魔族兵団は砲台の力により、大打撃を食らったのだ。立て直すのには時間がかかるだろうし、前よりは慎重に攻めてくると思われる。
……だから、それくらいの余裕はあるはずだ。家を拡張する位の暇は。多分ではあるが。
――と。それは俺達が寝静まった深夜の時の事だった。
突如悲鳴が聞こえてきたのである。
「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
そう、外から男の悲鳴が、それも聞いた事のあるような声だった。
「ん? んんー? な、なんだ!?」
俺は目を覚ます。
「……今、外から悲鳴が聞こえてきました」
「も、もう、なんですかー。せっかく人がぐっすり眠ってきたのに……また魔王軍が攻めてきたんですかー?」
リノアとリディアの二人も目を覚ました。
「一応……外の様子を見に行こうか」
「は、はい。グラン様」
俺達は仕方なく外へ行くのであった。
◇
「ううっ……いてぇ……いてぇよ……痛くて死んじまうよぉ……」
外堀の底の方から、声が聞こえてきた。
「だ、誰なんだ……誰か、外堀に落ちたんですか?」
「ま、魔王軍の襲撃でしょうか?」
「わ、わからない……と、とりあえずリノア。照明魔法(ライティング)で周囲を照らしてくれ」
「わ、わかりました。照明魔法(ライディング)!」
リノアは照明魔法(ライディング)で周囲を明るく照らし出す。
外堀の底にいた人物は予想だにしない……い、いや、俺はある程度予想できてたけど。人物であったのだ。
「ヘイト!」
「うっ……うう、いてぇよ……あ、兄貴、ここからだしてくれよ」
外堀の底にはミスリルで出来た無数の棘が設置されているのだ。どうやらヘイトは外堀の底に落ち、そして棘に串刺しになってしまったようである。
「い、いかがいたしましょう? グラン様」
「だ、出してやろう……仮にも俺の義理の弟だ。可哀想だし」
俺達はヘイトを救出する事にした。
◇
「回復魔法(ヒーリング)」
外堀の底に落ち、大きなダメージを負ったヘイトはリノアの回復魔法(ヒーリング)で治療を受ける。
全く……我が義弟(おとうと)ながら、余計な手間を取らせる。
「あ、ありがとう……兄貴。助かったぜ」
こんな時ばかりは流石のヘイトの態度も少しは大人しかった。
「それで、何の用なんだ? ヘイト……わざわざこんな北の辺境に、それもこんな夜遅くに来たのにはなんか理由があるんだろう? 俺に何か用なのか?」
俺はヘイトに聞いた。
「そ、それはだなぁ……その……あ、兄貴を暗殺しにここまで来たけど……暗くて良く見えなくて、外堀に落ちちまったんだ……」
ヘイトはそう、ボソボソと呟いた。
「え? 今あなた、なんとおっしゃいました? グラン様を暗殺?」
リノアがヘイトの呟きに血相を変える。
「い、いや、今のは言い間違いだ……すまない。く、国を救った英雄であるグランの兄貴に、感謝の言葉を伝えようとここまできたんだ」
「そ、そうなのか……ヘイト。わざわざこんな夜遅くに来なくていいのに、危ないだろ? というか、危なかっただろ?」
実際に外堀の底に落ちたわけだし。魔法系のスキルを授かっていないヘイトが夜に単身で出歩くと、このような事態になりかねない。
「あ、ああ……そうだ」
「本当に俺に感謝の言葉を伝える為だけに、ここにきたのか?」
俺はヘイトの言葉がとても信じられずに、疑ってかかった。
「ほ、本当だ! あっ! お、俺様、急用を思い出したぜ! そ、それじゃあな! 兄貴!」
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
ヘイトは風のようにその場を去っていった。
「きゅ、急用って……」
「なんだったんですか、あの人は! 実に迷惑な人ですー」
俺達は呆気に取られていた。
「ふぁぁ……な、なんだったんだろうな。また寝るか……」
「ええ……そうですね」
こうしてヘイトにかき回された俺達は再び家に戻り、睡眠を取る事にしたのである。
「……くそっ!」
ロズベルグ家に戻ったヘイトは石の壁に向かって、拳を叩きつける。そんな事をしても拳を痛めつけるだけなのではあるが、そうせざるを得ない程にヘイトの中の苛立ちは大きかったのである。
あれからヘイトはグランが世継ぎとしてロズベルグ家に戻ってこなかったという事で、仕方なしに世継ぎとしての座は維持される事となったが……その座はただの仕方なしである。もはや決して望んで世継ぎになれたわけではないのである。
ヘイトの尊厳(プライド)は酷く傷つけられた。実父は勿論の事、囲っていた貴族の娘達から得ていた気持ちも失ってしまっていた。既にヘイトは誰もが認めるロズベルグ家の世継ぎにはなかった。ヘイトの評判は失墜してしまったのである。
「あの野郎だ! あの馬鹿兄貴のせいだ!」
ヘイトは自身の評判が落ちた理由を全てグランに転嫁して、責め立てた。それだけには及ばず、激しい怒りと殺意をグランに抱くようになったのである。
グランは世継ぎとしてロズベルグ家に戻るつもりはないと言っていたが、義父は未だにご執着の様子だ。あの二人は自分と異なり、実の親子なのである。何か歯車がかみ合えば、グランがロズベルグ家に戻り、世継ぎとして我が物顔で闊歩する未来は想像するに難しくない。
貴族の娘達の態度もなんだかそっけなくなってきた。
「あいつだ! あいつのせいだ! あいつさえいなければ……」
ヘイトは激怒した……グランの居所はわかっているのだ。だから、後は実行に及ぶだけだ。
「ぶっ殺してやるぜ! あの馬鹿兄貴! 俺様じゃなくて、あの無能兄貴の方がちやほやされているなんて、俺には我慢できねぇ!」
怒りは明確な殺意となり、ヘイトを駆り立てる。
ヘイトは一人、再び北の辺境へと向かうのであった。そう、義兄であるグランを殺害する為にだ。
◇
(グラン視点、視点が戻ります)
「ぐー、すか、ぴー……」
俺達はアークライトで様々な家財道具などなどを買って帰った。その為、もう一つのベッドで皆で寝るような生活をしなくても済むようにあったのである。各々一人ずつ、ちゃんとしたベッドで眠れるようになった。
そもそもの話として……一つ屋根の下で、何の仕切りもなしに。相手はエルフとドワーフだという、ただし書きは付くかもしれないが。一緒に生活するというものはいかがないものか。
いい加減、俺の【建築(ビルド)】スキルを活用し、もっとこの家の拡張工事をしていくべきか……。
同じ屋根の下で暮らすのは仕方ないとしても、各々の一人部屋を作る事は出来るだろう。
そうすれば俺の心身の安息を確保できる。魔王軍が北の辺境に攻め入って来たり、それどころではないのが実情ではあったのだが、今の生活は大分余裕を取り戻せてきた。
勿論、魔王軍の脅威がなくなったわけではない。いずれはその魔の手が差し迫ってくるに違いない。だが、すぐ訪れるとも思えない。魔王軍の魔族兵団は砲台の力により、大打撃を食らったのだ。立て直すのには時間がかかるだろうし、前よりは慎重に攻めてくると思われる。
……だから、それくらいの余裕はあるはずだ。家を拡張する位の暇は。多分ではあるが。
――と。それは俺達が寝静まった深夜の時の事だった。
突如悲鳴が聞こえてきたのである。
「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
そう、外から男の悲鳴が、それも聞いた事のあるような声だった。
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「……今、外から悲鳴が聞こえてきました」
「も、もう、なんですかー。せっかく人がぐっすり眠ってきたのに……また魔王軍が攻めてきたんですかー?」
リノアとリディアの二人も目を覚ました。
「一応……外の様子を見に行こうか」
「は、はい。グラン様」
俺達は仕方なく外へ行くのであった。
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「ううっ……いてぇ……いてぇよ……痛くて死んじまうよぉ……」
外堀の底の方から、声が聞こえてきた。
「だ、誰なんだ……誰か、外堀に落ちたんですか?」
「ま、魔王軍の襲撃でしょうか?」
「わ、わからない……と、とりあえずリノア。照明魔法(ライティング)で周囲を照らしてくれ」
「わ、わかりました。照明魔法(ライディング)!」
リノアは照明魔法(ライディング)で周囲を明るく照らし出す。
外堀の底にいた人物は予想だにしない……い、いや、俺はある程度予想できてたけど。人物であったのだ。
「ヘイト!」
「うっ……うう、いてぇよ……あ、兄貴、ここからだしてくれよ」
外堀の底にはミスリルで出来た無数の棘が設置されているのだ。どうやらヘイトは外堀の底に落ち、そして棘に串刺しになってしまったようである。
「い、いかがいたしましょう? グラン様」
「だ、出してやろう……仮にも俺の義理の弟だ。可哀想だし」
俺達はヘイトを救出する事にした。
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「回復魔法(ヒーリング)」
外堀の底に落ち、大きなダメージを負ったヘイトはリノアの回復魔法(ヒーリング)で治療を受ける。
全く……我が義弟(おとうと)ながら、余計な手間を取らせる。
「あ、ありがとう……兄貴。助かったぜ」
こんな時ばかりは流石のヘイトの態度も少しは大人しかった。
「それで、何の用なんだ? ヘイト……わざわざこんな北の辺境に、それもこんな夜遅くに来たのにはなんか理由があるんだろう? 俺に何か用なのか?」
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「そ、それはだなぁ……その……あ、兄貴を暗殺しにここまで来たけど……暗くて良く見えなくて、外堀に落ちちまったんだ……」
ヘイトはそう、ボソボソと呟いた。
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実際に外堀の底に落ちたわけだし。魔法系のスキルを授かっていないヘイトが夜に単身で出歩くと、このような事態になりかねない。
「あ、ああ……そうだ」
「本当に俺に感謝の言葉を伝える為だけに、ここにきたのか?」
俺はヘイトの言葉がとても信じられずに、疑ってかかった。
「ほ、本当だ! あっ! お、俺様、急用を思い出したぜ! そ、それじゃあな! 兄貴!」
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ヘイトは風のようにその場を去っていった。
「きゅ、急用って……」
「なんだったんですか、あの人は! 実に迷惑な人ですー」
俺達は呆気に取られていた。
「ふぁぁ……な、なんだったんだろうな。また寝るか……」
「ええ……そうですね」
こうしてヘイトにかき回された俺達は再び家に戻り、睡眠を取る事にしたのである。
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