55 / 126
本編
脅迫③
しおりを挟む
「先に言っておくけど、今からクラリス嬢を保護して匿うのは無理だよ。だって────もう僕の部下に拐わせて、人気のない場所に閉じ込めてあるから」
『いつでも、殺せる状態だ』と主張し、義弟は無駄な悪足掻きをしないよう釘を刺した。
大人しく従うことを求める彼に対し、私はこう言い返す。
「貴族令嬢が姿を消せば、きっと直ぐに捜索されます。私がわざわざ動かなくても……」
「うん、そうだね。フィオーレ伯爵家の者達が、今頃懸命に探してくれている筈だよ。でも、果たして見つけられるかな?だって、彼らはきっと誘拐じゃなくて家出だと思っているだろう?」
「!」
駆け落ちという前科を持つ姉のことを考え、私は小刻みに震える。
誘拐と失踪では、捜索範囲も方法も違うから。何より、そこに掛ける熱意が全く異なる。
きっと……いや、確実に見つからないわ。
────と諦めかけたとき、私の脳裏にある可能性が過ぎる。
と同時に、ハッとした。
「……確かにただ姿を消しただけでは、家出か誘拐か判断がつきませんよね」
半ば独り言のようにボソリと呟き、私は強く手を握り締める。
「なので、フェリクス様がお姉様の家出を誘拐と偽って脅しの材料に使っている線もありますよね?」
ややピンク寄りの赤い瞳を見つめ返し、私は『どうか、そうであってほしい』と願った。
不安と期待の入り交じる視線を送り、唇を強く引き結ぶ。
一縷の望みに掛ける私の前で、義弟はパチパチと瞬きを繰り返した。
かと思えば、
「あはははっ!そういう考え方も出来るのか!」
と、大笑いする。
『その発想はなかった!』と口にする義弟は、余裕の態度を一切崩さなかった。
思わず表情を強ばらせる私を前に、彼はトントンと一定のリズムで膝を叩く。
「じゃあ、誘拐したことを信じてもらえるよう幾つか補足……いや、暴露しようか」
『この際だから、全て明かそう』と言い、義弟は自身の顎を撫でた。
「まずね、クラリス嬢を拐わせた部下というのが────彼女の駆け落ち相手なんだ」
『いつでも、殺せる状態だ』と主張し、義弟は無駄な悪足掻きをしないよう釘を刺した。
大人しく従うことを求める彼に対し、私はこう言い返す。
「貴族令嬢が姿を消せば、きっと直ぐに捜索されます。私がわざわざ動かなくても……」
「うん、そうだね。フィオーレ伯爵家の者達が、今頃懸命に探してくれている筈だよ。でも、果たして見つけられるかな?だって、彼らはきっと誘拐じゃなくて家出だと思っているだろう?」
「!」
駆け落ちという前科を持つ姉のことを考え、私は小刻みに震える。
誘拐と失踪では、捜索範囲も方法も違うから。何より、そこに掛ける熱意が全く異なる。
きっと……いや、確実に見つからないわ。
────と諦めかけたとき、私の脳裏にある可能性が過ぎる。
と同時に、ハッとした。
「……確かにただ姿を消しただけでは、家出か誘拐か判断がつきませんよね」
半ば独り言のようにボソリと呟き、私は強く手を握り締める。
「なので、フェリクス様がお姉様の家出を誘拐と偽って脅しの材料に使っている線もありますよね?」
ややピンク寄りの赤い瞳を見つめ返し、私は『どうか、そうであってほしい』と願った。
不安と期待の入り交じる視線を送り、唇を強く引き結ぶ。
一縷の望みに掛ける私の前で、義弟はパチパチと瞬きを繰り返した。
かと思えば、
「あはははっ!そういう考え方も出来るのか!」
と、大笑いする。
『その発想はなかった!』と口にする義弟は、余裕の態度を一切崩さなかった。
思わず表情を強ばらせる私を前に、彼はトントンと一定のリズムで膝を叩く。
「じゃあ、誘拐したことを信じてもらえるよう幾つか補足……いや、暴露しようか」
『この際だから、全て明かそう』と言い、義弟は自身の顎を撫でた。
「まずね、クラリス嬢を拐わせた部下というのが────彼女の駆け落ち相手なんだ」
852
あなたにおすすめの小説
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
愛し子は自由のために、愛され妹の嘘を放置する
紅子
恋愛
あなたは私の連理の枝。今世こそは比翼の鳥となりましょう。
私は、女神様のお願いで、愛し子として転生した。でも、そのことを誰にも告げる気はない。可愛らしくも美しい双子の妹の影で、いない子と扱われても特別な何かにはならない。私を愛してくれる人とこの世界でささやかな幸せを築ければそれで満足だ。
その希望を打ち砕くことが起こるとき、私は全力でそれに抗うだろう。
完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました
つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。
けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。
会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!
山田 バルス
恋愛
王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。
名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。
だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。
――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。
同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。
そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。
そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。
レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。
そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる