駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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本編

脅迫③

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「先に言っておくけど、今からクラリス嬢を保護して匿うのは無理だよ。だって────もう僕の部下に拐わせて、人気のない場所に閉じ込めてあるから」

 『いつでも、殺せる状態だ』と主張し、義弟は無駄な悪足掻きをしないよう釘を刺した。
大人しく従うことを求める彼に対し、私はこう言い返す。

「貴族令嬢が姿を消せば、きっと直ぐに捜索されます。私がわざわざ動かなくても……」

「うん、そうだね。フィオーレ伯爵家の者達が、今頃懸命に探してくれている筈だよ。でも、果たして見つけられるかな?だって、彼らはきっと誘拐・・じゃなくて家出・・だと思っているだろう?」

「!」

 駆け落ちという前科を持つ姉のことを考え、私は小刻みに震える。
誘拐と失踪では、捜索範囲も方法も違うから。何より、そこに掛ける熱意が全く異なる。

 きっと……いや、確実に見つからないわ。

 ────と諦めかけたとき、私の脳裏にある可能性が過ぎる。
と同時に、ハッとした。

「……確かにただ姿を消しただけでは、家出か誘拐か判断がつきませんよね」

 半ば独り言のようにボソリと呟き、私は強く手を握り締める。

「なので、フェリクス様がお姉様の家出を誘拐と偽って脅しの材料に使っている線もありますよね?」

 ややピンク寄りの赤い瞳を見つめ返し、私は『どうか、そうであってほしい』と願った。
不安と期待の入り交じる視線を送り、唇を強く引き結ぶ。
一縷の望みに掛ける私の前で、義弟はパチパチと瞬きを繰り返した。
かと思えば、

「あはははっ!そういう考え方も出来るのか!」

 と、大笑いする。
『その発想はなかった!』と口にする義弟は、余裕の態度を一切崩さなかった。
思わず表情を強ばらせる私を前に、彼はトントンと一定のリズムで膝を叩く。

「じゃあ、誘拐したことを信じてもらえるよう幾つか補足……いや、暴露・・しようか」

 『この際だから、全て明かそう』と言い、義弟は自身の顎を撫でた。

「まずね、クラリス嬢を拐わせた部下というのが────彼女の駆け落ち相手なんだ」
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