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第一章

羞恥①

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 父の命令でアイリスの教育から手を引いて以降、どうなっているのかあまり知らなかったが……ここまで酷いとは、思ってなかった。
『私は基本、自室で食事を摂っていたからなぁ』と思い返していると、父が慌てて口を開く。

「も、申し訳ございません。セシリアは陛下達との食事にかなり緊張しているようで……」

「子供のした事と思って、どうか寛大な心でお許しください」

 もう『子供』と呼べる年齢じゃないのに、継母は見当違いな方向へフォローを行った。
『違う、そうじゃない……』と内心頭を抱える私の前で、彼女は尚も言葉を続ける。

「普段は本当にいい子なんです。ただ、人前に出るのが苦手と言いますか……そ、そう!俗に言う、あがり症なんです!」

 グッと手を握り締め、継母は『これだ!』と言わんばかりに力説した。
その隣で唖然としている父の存在に気づかずに。
『お前は何を言っているんだ?』と固まる彼を他所に、継母はよく分からない弁解を続けた。

 お願いだから、もう黙って……あと、アイリス。一旦、食事の手を止めなさい。
気づいていないのかもしれないけど、話題の中心は貴方だから。

 さっさと前菜を平らげるセシリアたるアイリスに、私は羞恥心を抱く。
だって、それを自分の姿でやっているのかと思うと……耐えられなくて。
これもヴィンセントの策略かもしれないが、色んな意味で心に来た。
『穴があったら入りたいって、こういう心境か』と項垂れる中、セシリアたるアイリスが食器を落とす。
それを合図に、一旦会話は途切れた。
────と、ここですかさずヴィンセントが口を開く。

「セシリアらしくない、ミスばかりだね。まるで、別人のようだよ」

「「「っ……!」」」

 いきなり核心を突かれ、父・継母・アイリスは表情を強ばらせる。
『まさか、バレている……?』と危機感を抱く彼らの前で、ロジャー皇帝陛下は軽く咳払いした。

「セシリア嬢の行動は少し驚いたが、別に構わぬ。それより、我々も食事を始めよう。せっかくの料理が、冷めてしまうぞ」

 『腕によりをかけてくれたシェフに申し訳ない』と主張し、ロジャー皇帝陛下はカトラリーを手に取る。
そして、何事もなかったかのように食事を始めた。
おかげで、何とか変な空気から脱する。
まあ、だからと言って『和やかな雰囲気』とまでは行かないけど。

「そうだ、ヴィンセント小公爵とセシリア嬢の馴れ初めを聞いてもいか?ここは両家の親睦を深める場でもあるが、二人の結婚を祝福する場でもあるからな」
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