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第二章
追っ手《マーティン side》①
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◇◆◇◆
────同時刻、帝都の外れにある野原にて。
私は僅かな部下と母を引き連れ、国境へ向かっていた。
それも、徒歩で。
本当は馬車を使って、移動したいところなんだが……皇室の紋章が入ったものを使えば、目立つからな。
逃亡がバレたとき、直ぐにこちらの足取りを掴まれてしまう。
だから、しばらくは徒歩で移動するしかない。
『まあ、この先にある街で荷馬車を買うまでの辛抱だ』と自分に言い聞かせ、私はひたすら前へ進む。
足元の草を掻き分けながら。
チッ……!歩きづらいな。
追っ手の目を欺くため、敢えて街道から外れたが……間違いだったかもしれない。
体力に自信のある私ですら、疲弊するほどだから。
普段運動をしない母上には、かなりの重労働の筈。
視界の端に息切れしている母を捉え、私は『今からでも街道に戻るか?』と悩む。
────と、ここで激しく揺れる草むらの音を耳にした。
『風……では、ないよな』と思案しつつ、私は手元のランプの明かりを消す。
もし、人の起こした音なら危ないと判断して。
でも────
「マーティン・エド・イセリアル、メリッサ・フィーネ・イセリアル発見」
────もう遅かったようだ。
艶やかな紫髪を揺らして現れた男は、素早く私達の前に回り込む。
と同時に、後ろの方から金髪の男も現れた。
それも、騎士を三十人ほど引き連れて。
不味い……完全に囲まれた。
前に居るルパートと後ろに居るエレンを見やり、私は歯軋りする。
『早く何とかしなければ、数はもっと増えるぞ』と危機感を抱く中、母が表情を強ばらせた。
「もう追っ手が……」
前公爵がもうちょっと時間を稼いでくれると思っていたのか、母は動揺を露わにする。
珍しく不安と焦りを前面に出す彼女の前で、エレンは腰に手を当てた。
「そちらの企みは、もう全て把握しています。父上から、君達を罰する正式な許可も貰いました。なので、容赦はしません────が、一応そちらの意思を確認しておきましょう」
そう前置きしてから、エレンは硬い声色で言葉を紡ぐ。
「大人しく降伏して、裁きを受ける気はありますか?」
『あるなら、この場では何もしません』と告げ、エレンはこちらの反応を窺った。
そんなの聞くまでもないことは、彼だって分かっているのに。
ここで捕まれば、私達に待っているのは死刑か生き地獄……ならば、多少の無茶を押し通してでも逃げ切るしかない。
腰に差した剣へ手を掛け、私はエレンから目を離す。
前方に居るルパートを見つめながら。
「そんな気はさらさらねぇーよ────母上、先に行ってください。私はこいつらを蹴散らしてから、後を追います」
────同時刻、帝都の外れにある野原にて。
私は僅かな部下と母を引き連れ、国境へ向かっていた。
それも、徒歩で。
本当は馬車を使って、移動したいところなんだが……皇室の紋章が入ったものを使えば、目立つからな。
逃亡がバレたとき、直ぐにこちらの足取りを掴まれてしまう。
だから、しばらくは徒歩で移動するしかない。
『まあ、この先にある街で荷馬車を買うまでの辛抱だ』と自分に言い聞かせ、私はひたすら前へ進む。
足元の草を掻き分けながら。
チッ……!歩きづらいな。
追っ手の目を欺くため、敢えて街道から外れたが……間違いだったかもしれない。
体力に自信のある私ですら、疲弊するほどだから。
普段運動をしない母上には、かなりの重労働の筈。
視界の端に息切れしている母を捉え、私は『今からでも街道に戻るか?』と悩む。
────と、ここで激しく揺れる草むらの音を耳にした。
『風……では、ないよな』と思案しつつ、私は手元のランプの明かりを消す。
もし、人の起こした音なら危ないと判断して。
でも────
「マーティン・エド・イセリアル、メリッサ・フィーネ・イセリアル発見」
────もう遅かったようだ。
艶やかな紫髪を揺らして現れた男は、素早く私達の前に回り込む。
と同時に、後ろの方から金髪の男も現れた。
それも、騎士を三十人ほど引き連れて。
不味い……完全に囲まれた。
前に居るルパートと後ろに居るエレンを見やり、私は歯軋りする。
『早く何とかしなければ、数はもっと増えるぞ』と危機感を抱く中、母が表情を強ばらせた。
「もう追っ手が……」
前公爵がもうちょっと時間を稼いでくれると思っていたのか、母は動揺を露わにする。
珍しく不安と焦りを前面に出す彼女の前で、エレンは腰に手を当てた。
「そちらの企みは、もう全て把握しています。父上から、君達を罰する正式な許可も貰いました。なので、容赦はしません────が、一応そちらの意思を確認しておきましょう」
そう前置きしてから、エレンは硬い声色で言葉を紡ぐ。
「大人しく降伏して、裁きを受ける気はありますか?」
『あるなら、この場では何もしません』と告げ、エレンはこちらの反応を窺った。
そんなの聞くまでもないことは、彼だって分かっているのに。
ここで捕まれば、私達に待っているのは死刑か生き地獄……ならば、多少の無茶を押し通してでも逃げ切るしかない。
腰に差した剣へ手を掛け、私はエレンから目を離す。
前方に居るルパートを見つめながら。
「そんな気はさらさらねぇーよ────母上、先に行ってください。私はこいつらを蹴散らしてから、後を追います」
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