私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第二章

果たせなかった約束《マーティン side》②

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「手を……!」

 慌ててこちらに身を乗り出し、ルパートは懸命に手を伸ばす。

 きっと、これを掴めば助かるんだろう。でも、

「こっちにだって、プライドはある!」

 眼前にあるルパートの手を無視し、私は『ははっ!』と小さく笑った。
だって、ルパートの顔があまりにも面白くて……。
『こいつでも、こういう表情するのか』と目を細め、風の流れに身を任せる。
すると、瞬く間に右腕と左足を失った。
両耳もちょっと欠けており、じんじんと痛む。

 血が……止まらねぇ。多分、これ死ぬな。

 いつもより近く見える月を見つめ、私はフッと笑みを漏らした。
結局、自爆で人生の幕を下ろすなど……滑稽だな、と思って。
『ルパートを道連れに出来たなら、少しは格好がついたのにな』と思案する中、暴風が止む。
と同時に、私は地面へ落ちて背中を強打した。

「っ……!」

 背骨が折れる感覚と痛みに、私は思い切り顔を歪める。
そして、息すら出来ない状態に陥ちる中────過去の記憶がブワッと甦った。
まるで、己の生き様を見せつけるように。

「────母上、試験で満点を取りました」

 まだ十歳にも満たない年齢の私が、テスト用紙片手に母の部屋へ足を運ぶ。
『よくやった』と褒められることを期待して。
でも、当の本人はソファに座ったままこちらに一瞥もくれず……

「それくらい、上の皇子もやっているわ。もっと、頑張りなさい」

 と、述べるだけ。
『試験の点数程度で、いちいち騒がないでちょうだい』と鬱陶しそうに振る舞う彼女は、一つ息を吐いた。
疲れた顔で手元の資料を読んでいる母を前に、私は唇を引き結ぶ。

 今回は褒めてもらえると思ったんだけどな……上の皇子より優秀にならないと、目も合わせてくれないのか。

「……邪魔だな」

 ボソリと独り言を呟き、私はさっさと踵を返した。
エレンへの対抗心とも、復讐心とも取れる感情を抱いたまま。
『今度こそ、あいつよりいい結果を出してやる』と奮起する中、私は剣術で頭角を現す。

「母上、剣の手合わせで第一皇子に勝ちました」

 稽古終了と共に母の部屋へ赴き、私はいち早く報告した。
この喜ばしい出来事を。
『これで母上も私のことを認めてくれる筈だ』と期待しつつ、彼女の座るソファへ駆け寄る。
と同時に、母が勢いよく私の頬を叩いた。

「どうせ勝つなら、帝王学や算術にしなさい。何でよりによって、皇位継承権争いにあまり関係のない剣術なの?」

 『そんなの何の自慢にもならない』と吐き捨て、母は冷めた目でこちらを見下ろす。
思わず肩を震わせる私の前で、彼女はおもむろに足を組んだ。

「ただでさえ、こっちは強力な後ろ盾がなくて遅れを取っているというのに。君主たる才能もあちらの方が上となれば、勝ち目がないわ」

 ギシッと奥歯を噛み締め、母は私の肩を強く掴む。

「マーティン、お願いだから上の皇子を越えて皇帝になってちょうだい。そして、母を一番にして。誰にも見下みさげることが、出来ないように」

 真っ赤な瞳に僅かな……でも強い怒りを滲ませ、母は真っ直ぐこちらを見据えた。

「出来るわよね?」
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