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第二章
果たせなかった約束《マーティン side》③
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「出来るわよね?」
どこか威圧感のある声色で問い掛けてくる母に、私は表情を強ばらせる。
僅かな恐怖と不安を胸に抱いて。
……正直、第一皇子のエレンに勝てる確証も自信も私にはない。
でも、ここで母上の期待を裏切ればどうなるか……。
『見捨てられるかもしれない』と怯え、私は弱音を呑み込んだ。
私にとって、母は世界の全てで……何より変え難い存在だったから。
「はい、出来ます」
────と、出来もしない約束を交わしてから十数年。
私はひたすら努力を重ね、苦汁を嘗め、手を汚し続けた。
全ては、皇位継承権争いで勝つため……いや、母の願いを叶えるために。
そしたら、きっと母上に認められる筈……マーティンは自慢の息子だ、と。
『一度だけでいいから、褒められたい』という思いを抱え、私はここまでやってきた。
でも、もうダメみたいだ。
「はは、うえ……」
現実へ意識を引き戻した私は、帝都の外れにある野原で満月を眺める。
────と、ここでルパートがこちらへ駆け寄ってきた。
「兄上、直ぐに手当てを……しても、無駄そうですね」
瀕死と言って差し支えない負傷状態を見て、ルパートは少しばかり表情を曇らせる。
が、直ぐにいつもの無表情へ戻った。
「何か言い残したいことは、ありますか?」
『遺言を聞こう』と申し出るルパートに、私は内心舌打ちする。
こいつのこういうお人好しなところが嫌なんだ、と毒づきながら。
だが────今際の際で意地を張るのもどうかと思い、口を開く。
最期にどうしても……あの人に伝えたいことが、あって。
「わ、たしが……息子、で……すまなかっ、た……と、母上に……詫びて、くれ」
自分のように不出来で未熟で卑劣なやつが、息子じゃなければ……母の願いを叶えられたかもしれない。
そんな幻想に囚われ、私はただただ申し訳なく思う。
『結局、皇帝になるという約束も無事に合流するという約束も果たせなかったしな』と考えつつ、瞳を揺らした。
と同時に、ルパートが自身の胸元へ手を添える。
「分かりました。ルパート・ロイ・イセリアルの名にかけて、必ずお伝えします」
一点の曇りもない眼でこちらを見つめ、ルパートは確約した。
その途端────私は心底ホッとしてしまう。
もう思い残すことが、なくなったからだろうか……全身から、力が抜けた。
それに比例して、意識もどんどん薄れていき……『嗚呼、もう本当に死ぬんだな』と実感する。
母上、貴方の業も罪も全て私が背負っていきます。
だから、どうか……生き延びて、幸せになってください。
心から母の明るい未来を願い、私は静かに息絶えた。
どこか威圧感のある声色で問い掛けてくる母に、私は表情を強ばらせる。
僅かな恐怖と不安を胸に抱いて。
……正直、第一皇子のエレンに勝てる確証も自信も私にはない。
でも、ここで母上の期待を裏切ればどうなるか……。
『見捨てられるかもしれない』と怯え、私は弱音を呑み込んだ。
私にとって、母は世界の全てで……何より変え難い存在だったから。
「はい、出来ます」
────と、出来もしない約束を交わしてから十数年。
私はひたすら努力を重ね、苦汁を嘗め、手を汚し続けた。
全ては、皇位継承権争いで勝つため……いや、母の願いを叶えるために。
そしたら、きっと母上に認められる筈……マーティンは自慢の息子だ、と。
『一度だけでいいから、褒められたい』という思いを抱え、私はここまでやってきた。
でも、もうダメみたいだ。
「はは、うえ……」
現実へ意識を引き戻した私は、帝都の外れにある野原で満月を眺める。
────と、ここでルパートがこちらへ駆け寄ってきた。
「兄上、直ぐに手当てを……しても、無駄そうですね」
瀕死と言って差し支えない負傷状態を見て、ルパートは少しばかり表情を曇らせる。
が、直ぐにいつもの無表情へ戻った。
「何か言い残したいことは、ありますか?」
『遺言を聞こう』と申し出るルパートに、私は内心舌打ちする。
こいつのこういうお人好しなところが嫌なんだ、と毒づきながら。
だが────今際の際で意地を張るのもどうかと思い、口を開く。
最期にどうしても……あの人に伝えたいことが、あって。
「わ、たしが……息子、で……すまなかっ、た……と、母上に……詫びて、くれ」
自分のように不出来で未熟で卑劣なやつが、息子じゃなければ……母の願いを叶えられたかもしれない。
そんな幻想に囚われ、私はただただ申し訳なく思う。
『結局、皇帝になるという約束も無事に合流するという約束も果たせなかったしな』と考えつつ、瞳を揺らした。
と同時に、ルパートが自身の胸元へ手を添える。
「分かりました。ルパート・ロイ・イセリアルの名にかけて、必ずお伝えします」
一点の曇りもない眼でこちらを見つめ、ルパートは確約した。
その途端────私は心底ホッとしてしまう。
もう思い残すことが、なくなったからだろうか……全身から、力が抜けた。
それに比例して、意識もどんどん薄れていき……『嗚呼、もう本当に死ぬんだな』と実感する。
母上、貴方の業も罪も全て私が背負っていきます。
だから、どうか……生き延びて、幸せになってください。
心から母の明るい未来を願い、私は静かに息絶えた。
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