本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど

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鍛錬場《キース side》

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◇◆◇◆

 ────同時刻、鍛錬場にて。
僕達は大公家の騎士団のトップであり、アランの父でもあるフレデリック・ギデオン・ルージュと対面していた。

「帰ってきて早々、手合わせを申し込んでくるとはちょっと予想外だったな。お前達なら、ジーク様の治療方法を死に物狂いで探すと思っていたんだが」

 フレデリック様はアランと同じ赤髪を風に靡かせつつ、小首を傾げる。
じっとこちらの様子を窺うような赤い瞳を前に、僕達はこう答えた。

「それはセオドア達に任せた。俺達は俺達で、今出来ることをする」

「適材適所って、やつッス」

「ふ~ん?まあ、何でもいいけどよ。お前達との試合は、こちらとしても嬉しいからな」

 ニヤリと笑い、フレデリック様は背負っていた大剣を抜く。

「冒険者として日々邁進し、どれくらい成長したか見せてもらおうじゃないか」

 そう言うが早いか、フレデリック様は勢いよく走り出した。
一瞬にして眼前へ迫った彼を前に、僕達は素早く後ろへ飛び退く。
すると、元々僕達の居たところへ大剣が振り下ろされた。

「速攻かよ……!」

「相変わらずッスね……!」

 苦笑にも似た表情を浮かべ、僕達は武器を手に持つ。
鍛錬場の床に入った亀裂を眺めながら。

「なんつー馬鹿力……!」

「こんなの当たったら、一堪りもないッスよ……!」

「なら、当たらないようにしろ!」

 床にくい込んだ大剣をあっさり引き抜き、フレデリック様はそのままこちらに斬り掛かる。
連撃と言ってもいい追加攻撃を前に、アランが剣を持ち直した。
かと思えば、上手にフレデリック様の大剣をいなして軌道を変え、受け流す。
その隙に、僕は短剣で反撃を試みた。

「甘い甘い!」

 フレデリック様は僕の突き出した短剣を、面の部分を叩いて折る。
比喩表現でも何でもなく、本当に。
『えぇ?』と驚く僕を前に、彼は体勢を少し低くした。
と同時に、頭突き。しかも、僕の顔面に。

「っ……!」

 鼻が潰れるような威力と勢いに、僕は思わず顔を顰める。
ダラリと鼻血の流れる感覚がする中、アランは剣を大きく振るった。
恐らく、相手を牽制するためだろう。
でも、

「この程度か、お前達の実力は!」

 フレデリック様に剣を踏みつけられ、更には頬を殴られる結果に。

 大振りであるが故に剣筋を読まれ、対処されたか……!
いや、だからと言って普通はこんな動き出来ないんだけど……!
予めこちらの行動を予測しているならともかく、フレデリック様は見てから動いているから……!

 『本当に凄まじい……!』と思いつつ、僕は一歩前に出る。
今、アランは武器を封じられている状態でまともに戦えないため。
『剣を踏んでいる足だけでも、どうにかしないと……!』と自分に言い聞かせ、僕は壊れた短剣を投げた。
もちろん、フレデリック様の方へ。

「【風よ、彼の者を浮かせたまえ】」

 久々に魔法の詠唱を行い、僕は真っ直ぐ前を見据える。
その瞬間、フレデリック様の足元から強風が巻き起こり、彼を舞い上げようとした。
が、そう簡単に行く筈もなく……フレデリック様は余裕の表情で耐える。
先程こちらの投げた短剣を、大剣で叩き落としながら。

「ぬるい、ぬるいぞ!ぬるすぎる!!!」

 勢いよく大剣を床に突き立て、その衝撃波で風を相殺した。
ハッと息を呑む僕達の前で、フレデリック様は腰に手を当てる。

「お前達、魔物ばっかり相手にして対人戦闘の勘が鈍ったのではないか!」

「「!」」

 ピクッと僅かに反応を示し、僕達は俯いた。
────まさにその通りだと思ったから。

 単純な力で技もなく襲い掛かってくる魔物と、策や武器を用いて戦ってくる人間とでは戦い方が大きく異なる。
だから、どんなに強い魔物を倒したからと言って対人戦闘のスキルが上がる訳じゃない。
もちろん、そこで鍛えられた筋力や瞬発力は活かせるだろうが。

 グッと強く手を握り締め、僕はそっと目を伏せる。
その傍で、フレデリック様は前髪を掻き上げた。

「まあ、人間と戦う機会なんてあまりない冒険者ならそれでもいいかもしれないがな!でも、大公家こっちに戻ってくる可能性がある以上……」

「「────これからは対人戦闘も磨かなきゃ、いけないんだ(ッス)!」」

 勢いよく顔を上げ、僕達は半ば叫ぶようにして宣言した。
無論、大公家に戻ったときのことを想定してではない。
ミレイちゃんを守るため、だ。
彼女の身に何かあった場合、相手するのは間違いなく魔物じゃなくて人間だろうから。
『何がなんでも勘を取り戻し、強くならなくては』と決意し、僕達は戦闘を再開する。

 その後、隙を見てアランの剣を回収したり僕が鞭を使ったりと様々な展開が繰り広げられた。
そして、徐々に息が上がってきた頃

「────そこまで」

 第三者によって、試合を止められた。
反射的に攻撃態勢を解除する僕達は、声の主の方に視線を向ける。

「ったく、空気を読めよ。せっかく、いいところだったのに」

 堪らずといった様子で文句を言い、フレデリック様は肩を竦めた。
すると、第三者────いや、僕の父であるテレンス・アフダル・グフルーンが小さく息を吐く。

「旦那様に呼び出されていることをお忘れですか?」

「……そ、そういえばそうだったな」

 『手合わせに夢中で、すっかり忘れていた』と呟き、フレデリック様はポリポリと頬を掻いた。
かと思えば、こちらに向き直って手を合わせる。

「悪いが、俺は行かなきゃならん。この続きは、また今度で頼む」
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