本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど

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手合わせ《キース side》

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「悪いが、俺は行かなきゃならん。この続きは、また今度で頼む」

 『すまんな』と謝り、フレデリック様は足早にこの場を後にした。
その刹那、僕達は顔を見合わせる。

「このあとの鍛錬、どうする?他の騎士に頼んで、相手してもらうか?」

「いや、それはやめておいた方がいいッスね。僕達との手合わせは極めて実戦に近く、苛烈なものッスから」

「親父みたいな圧倒的強者じゃなきゃ、怪我するか」

「ええ、だから筋力や体力を強化する基礎訓練に切り替えた方が……」

 ────いいッスよ。

 と続ける筈だった言葉は、父に遮られる。

「ならば、私が手合わせの相手を務めましょうか?」

 いつの間にか僕達の前まで来ていた父は、モノクルを軽く押し上げた。

 僕の父は執事でありながら、かなりの手練れだ。
それも、フレデリック様と互角に渡り合えるほどの。
相手にとって、不足なしだろう。

 と、判断したのは僕だけじゃないようでアランもやる気を露わにしている。
渡りに船だ、と言わんばかりに。

「是非頼む!」

「僕からもお願いするッス!」

 前向きな返事をする僕達に対し、父はスッと目を細めた。

「では、どうぞ。掛かってきてください」

 『先手はお譲りします』と宣言し、父は静かにこちらの挙動を見守る。

 武器を構えるどころか、取り出すことすらしないなんて余裕だな。

 後ろで手を組んで待機する父の姿に、僕は内心苦笑した。
その刹那、アランが一歩前に出て剣を振り上げる。

「じゃあ、遠慮なく!」

 そう言うが早いか、アランは勢いよく剣を振り下ろした。
と同時に、父は体を横へ逸らして斬撃を回避する。
その際、後ろで結った長い金髪がサラリと揺れた。

「威勢だけは、大変よろしいですね」

 遠回しに『それ以外は全くダメ』と述べる父に、アランはめげることなく向かっていく。
何度も、何度も。
だが、こちらの攻撃は尽く躱され、まるで遊ばれているようだった。

 全ての攻撃を正面から受けるへし折るフレデリック様とは、また違う強さ……脅威だね。
それに、とても厄介だ。触れられない刃が届かないというのは。

 改めて父の実力を痛感しつつ、僕は

「【風よ、我らを取り囲みたまえ】」

 魔法を展開する。
途端に強風が巻き起こり、僕達の周囲をグルグルと回る。
そのため、竜巻や台風の中に閉じ込められているような状態となった。

「ほう?風の檻で、行動範囲を狭めましたか」

 父は絶え間なく続くアランの斬撃を避けながら、チラリとこちらを見る。

「これは敵味方ともに影響のある策……謂わば諸刃の剣ですが、私の回避能力を下げることを最優先に考えたようですね。悪くない判断です。及第点くらいは、差し上げましょう」

 手厳しいことを言ってのけ、父はやっと懐から武器ナイフを取り出した。
カキンッと音を立ててアランの剣を弾く彼の前で、僕はちょっと懐かしくなる。

 昔は父様のことを真似て、ナイフばかり使っていたなぁ。
ただ、冒険者になってからは……魔物退治をメインでこなすようになってからは、短剣に切り替えた。
魔物の種類にもよるけど、ナイフじゃ傷をつけられないことも多いので。

 『よく折れたり、刃こぼれしたりしたなぁ』と思い返しつつ、僕は二人の戦いに加わる。
すると、父はナイフをもう一本持った。

「さて、それでは本格的に始めましょうか」

 色素の薄い瞳に戦意を滲ませ、父は僕達の手首を切りつける。
ここに来てようやく攻撃へ転じた彼を前に、僕とアランは表情を硬くした。
ツーッと流れる血を一瞥し、尚も斬撃を繰り出す。
何故なら、もう時間がないから。
『ここで有効打を与えられなければ、勝てない』と確信する中────ついに風の檻が、解けてしまった。
霧散していく風を前に、僕は少しばかり焦る。

「ごめん、魔力切れッス……!」

「いや、親父との手合わせのあとだったのによくやってくれた!」

 『連戦で、魔力はほとんど残ってなかった筈!』と言い、アランはあまり落ち込まないよう気遣ってくれた。
それでも罪悪感を拭えずにいると、彼はこう言葉を続ける。

「そもそも、魔法系は本来セオドアの役割だろ!これだけ出来れば、充分だって……!ぅおっ!?」

 不意にナイフを投げられ、アランは慌てて顔を傾ける。
ギリギリのところで回避する彼を前に、父はモノクルを押し上げた。

「『セオドア様』と呼び方を戻しなさい。あと、口調も敬語へ直すように」

 冒険者になる前の態度を求め、父は一歩こちらへ近づく。

「セオドア様が大公家に帰ってくることになれば、貴方達は一従者・一護衛の立場に戻るのだから」

 今のうちに改めるよう言い聞かせる父に対し、僕とアランはすかさず言い返す。

「そんなことには、ならないッスよ」

「余計なお世話だ」

 僕達はセオドアくんとミレイちゃんがジーク様を治してくれる、と信じている。
だから、大公家ここに帰ってくる事態なんて絶対に有り得ない。

 真っ直ぐ前を見据え、僕達は強気な態度を取った。
すると、父は少しばかり目を見張り────

「生意気に育ったものです、本当に」

 ────呆れたように笑う。
『一体、誰に似たのやら』と呟きつつ、父は肩を竦めた。
その瞬間、僕達は再び攻防戦を始める。
────この手合わせは夕方まで続き、翌日以降も父に時間を作ってもらって指導を受けた。
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