110 / 171
第二章
灼熱の炎②
しおりを挟む
察しの悪い私に対し、バハルは縋るような目を向けた。
「ベアトリス様、お願い!今すぐ、契約を交わさないと────夏の管理者が魔力切れで、消滅してしまうわ!」
「な、夏の管理者……!?何でこんなところに……!?ニンフ山で眠っている筈じゃないの!?」
『いつの間にか目覚めたのか』と動揺する私に対し、バハルはこう説明した。
「多分、夏の訪れを感じて予定より早く目覚めたんだと思う!それで、私の気配を頼りにここまで来たんじゃないかしら!」
「つまり、たまたまか。まあ、助かったけど」
大きな魔法を使わずに済んだルカは、ホッと胸を撫で下ろす。
『まさに“ヒーローは遅れてやってくる”だな』と呟く彼を前に、私は赤いトラの元へ駆け寄った。
と同時に、腰を下ろす。
「えっと、私はベアトリス・レーツェル・バレンシュタインです。先程は助けていただき、ありがとうございました。それで、あの……良ければ、私に貴方を助ける機会をいただけませんか?大切な恩人を……私のために身を賭して戦ってくれた貴方を失いたくないのです」
逆行前のことも含めて感謝していることを示し、私は少し身を屈める。
ゆっくり瞬きする赤いトラをじっと見つめ、スッと目を細めた。
「もし、私の手を掴んでくれるのならこの名前をもらってください────ベラーノ」
夏を意味する古代語を口にすると、赤いトラは小さく……でも、ハッキリ吠える。
そして、凄まじい熱気を放った。
かと思えば、ゆっくりと立ち上がる。
「夏の管理者ベラーノが、四季を司りし天の恵みベアトリス様に挨拶申し上げます」
しゃんと背筋を伸ばし、お辞儀する赤いトラは黄金の瞳をうんと細めた。
これでもかというほど、喜びを滲ませながら。
「お会い出来て、本当に……本当に光栄です」
「私もです、ベラーノ」
「嗚呼、そんな……どうか、敬語など使わず気軽に接してください」
『恐れ多い』とでも言うように前足を胸の前で振り、ベラーノは慌てる。
「ベアトリス様、お願い!今すぐ、契約を交わさないと────夏の管理者が魔力切れで、消滅してしまうわ!」
「な、夏の管理者……!?何でこんなところに……!?ニンフ山で眠っている筈じゃないの!?」
『いつの間にか目覚めたのか』と動揺する私に対し、バハルはこう説明した。
「多分、夏の訪れを感じて予定より早く目覚めたんだと思う!それで、私の気配を頼りにここまで来たんじゃないかしら!」
「つまり、たまたまか。まあ、助かったけど」
大きな魔法を使わずに済んだルカは、ホッと胸を撫で下ろす。
『まさに“ヒーローは遅れてやってくる”だな』と呟く彼を前に、私は赤いトラの元へ駆け寄った。
と同時に、腰を下ろす。
「えっと、私はベアトリス・レーツェル・バレンシュタインです。先程は助けていただき、ありがとうございました。それで、あの……良ければ、私に貴方を助ける機会をいただけませんか?大切な恩人を……私のために身を賭して戦ってくれた貴方を失いたくないのです」
逆行前のことも含めて感謝していることを示し、私は少し身を屈める。
ゆっくり瞬きする赤いトラをじっと見つめ、スッと目を細めた。
「もし、私の手を掴んでくれるのならこの名前をもらってください────ベラーノ」
夏を意味する古代語を口にすると、赤いトラは小さく……でも、ハッキリ吠える。
そして、凄まじい熱気を放った。
かと思えば、ゆっくりと立ち上がる。
「夏の管理者ベラーノが、四季を司りし天の恵みベアトリス様に挨拶申し上げます」
しゃんと背筋を伸ばし、お辞儀する赤いトラは黄金の瞳をうんと細めた。
これでもかというほど、喜びを滲ませながら。
「お会い出来て、本当に……本当に光栄です」
「私もです、ベラーノ」
「嗚呼、そんな……どうか、敬語など使わず気軽に接してください」
『恐れ多い』とでも言うように前足を胸の前で振り、ベラーノは慌てる。
応援ありがとうございます!
263
お気に入りに追加
3,619
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる