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第二章

灼熱の炎②

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 察しの悪い私に対し、バハルは縋るような目を向けた。

「ベアトリス様、お願い!今すぐ、契約を交わさないと────夏の管理者・・・・・が魔力切れで、消滅してしまうわ!」

「な、夏の管理者……!?何でこんなところに……!?ニンフ山で眠っている筈じゃないの!?」

 『いつの間にか目覚めたのか』と動揺する私に対し、バハルはこう説明した。

「多分、夏の訪れを感じて予定より早く目覚めたんだと思う!それで、私の気配を頼りにここまで来たんじゃないかしら!」

「つまり、たまたまか。まあ、助かったけど」

 大きな魔法を使わずに済んだルカは、ホッと胸を撫で下ろす。
『まさに“ヒーローは遅れてやってくる”だな』と呟く彼を前に、私は赤いトラの元へ駆け寄った。
と同時に、腰を下ろす。

「えっと、私はベアトリス・レーツェル・バレンシュタインです。先程は助けていただき、ありがとうございました。それで、あの……良ければ、私に貴方を助ける機会をいただけませんか?大切な恩人を……私のために身を賭して戦ってくれた貴方を失いたくないのです」

 逆行前のことも含めて感謝していることを示し、私は少し身を屈める。
ゆっくり瞬きする赤いトラをじっと見つめ、スッと目を細めた。

「もし、私の手を掴んでくれるのならこの名前をもらってください────ベラーノ」

 夏を意味する古代語を口にすると、赤いトラは小さく……でも、ハッキリ吠える。
そして、凄まじい熱気を放った。
かと思えば、ゆっくりと立ち上がる。

「夏の管理者ベラーノが、四季を司りし天の恵みベアトリス様に挨拶申し上げます」

 しゃんと背筋を伸ばし、お辞儀する赤いトラは黄金の瞳をうんと細めた。
これでもかというほど、喜びを滲ませながら。

「お会い出来て、本当に……本当に光栄です」

「私もです、ベラーノ」

「嗚呼、そんな……どうか、敬語など使わず気軽に接してください」

 『恐れ多い』とでも言うように前足を胸の前で振り、ベラーノは慌てる。
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