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第二章
ヒント《グランツ side》①
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「用件を聞こうか、我が息子よ」
寝室に押し入るなんて今までなかったからか、父は少しばかり表情を硬くする。
『どんな話をされるのか』と身構える彼の前で、私は手に持った資料を差し出した。
「単刀直入に言いますね────ジェラルドについて、知っていることを全て教えてください。生まれてから、表舞台に立つまでの五年間を特に」
「!!」
ハッとしたように息を呑む父は、調査資料と私の顔を交互に見つめる。
『いつの間にこんなことを調べて……』と狼狽えつつ、唇を引き結んだ。
「……余から言えることは何もない」
案の定とでも言うべきか、父は回答を拒否した。
『本人に聞きなさい』と告げる彼を前に、私は少し身を乗り出す。
「父上も薄々気づいている筈です。ジェラルドは普通じゃない……何かとんでもない事実を隠している。ソレを暴くためにも、過去のことが知りたいのです」
『いい加減、口を割ってほしい』と頼み込む私に対し、父は小さく首を横に振る。
「ならん」
「どうしてですか?」
「……それを説明してやる義理はなかろう」
「それでは、納得出来ません。大体、何故父上はそこまでジェラルドに肩入れするのです?早くに母親を亡くしたからですか?」
『それにしたって、贔屓し過ぎだと思うが……』と訝しみ、私は父の真意を探ろうとする。
が、依然として彼は真実を語らない。
「どうとでも解釈しろ。余の口からは何も言えない」
どことなく思い詰めた様子でそう語り、父は席を立った。
「用件がそれだけなら、もう帰ってくれ」
壁際に待機していた騎士へ目配せし、父はさっさと踵を返す。
取り付く島もないあしらい様に、私は焦りを覚えた。
『収穫なしで帰るなんて、出来ない』と。
「お待ちください。まだ話は……」
「グランツ殿下、申し訳ございません。お引き取りください」
そう言って腕を掴んでくる騎士に、私は『離してくれ』と頼む。
が、聞き入れられる筈もなく……そのまま、追い出された。
パタンと閉まる扉を前に、私は『はぁー……』と大きく息を吐く。
寝室に押し入るなんて今までなかったからか、父は少しばかり表情を硬くする。
『どんな話をされるのか』と身構える彼の前で、私は手に持った資料を差し出した。
「単刀直入に言いますね────ジェラルドについて、知っていることを全て教えてください。生まれてから、表舞台に立つまでの五年間を特に」
「!!」
ハッとしたように息を呑む父は、調査資料と私の顔を交互に見つめる。
『いつの間にこんなことを調べて……』と狼狽えつつ、唇を引き結んだ。
「……余から言えることは何もない」
案の定とでも言うべきか、父は回答を拒否した。
『本人に聞きなさい』と告げる彼を前に、私は少し身を乗り出す。
「父上も薄々気づいている筈です。ジェラルドは普通じゃない……何かとんでもない事実を隠している。ソレを暴くためにも、過去のことが知りたいのです」
『いい加減、口を割ってほしい』と頼み込む私に対し、父は小さく首を横に振る。
「ならん」
「どうしてですか?」
「……それを説明してやる義理はなかろう」
「それでは、納得出来ません。大体、何故父上はそこまでジェラルドに肩入れするのです?早くに母親を亡くしたからですか?」
『それにしたって、贔屓し過ぎだと思うが……』と訝しみ、私は父の真意を探ろうとする。
が、依然として彼は真実を語らない。
「どうとでも解釈しろ。余の口からは何も言えない」
どことなく思い詰めた様子でそう語り、父は席を立った。
「用件がそれだけなら、もう帰ってくれ」
壁際に待機していた騎士へ目配せし、父はさっさと踵を返す。
取り付く島もないあしらい様に、私は焦りを覚えた。
『収穫なしで帰るなんて、出来ない』と。
「お待ちください。まだ話は……」
「グランツ殿下、申し訳ございません。お引き取りください」
そう言って腕を掴んでくる騎士に、私は『離してくれ』と頼む。
が、聞き入れられる筈もなく……そのまま、追い出された。
パタンと閉まる扉を前に、私は『はぁー……』と大きく息を吐く。
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