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第二章

辺境②

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「どうかしたの?イージス卿」

 気になって質問を投げ掛けると、彼は不意にこちらを見た。

「いや、大したことではないんですが、その辺から妙な気配……というか、力を感じて」

 ちょうど父と私の真下を指さし、イージス卿は『気のせいかもしれませんけど』と零す。
でも、彼の勘の良さはこの場に居る全員が知っているため、弾かれたように顔を上げた。

「イージス、掘ってみろ」

 素早くその場から避ける父に対し、イージス卿はコクリと頷く。

「了解です」

 膝を折って地面へ手を伸ばし、イージス卿は『この辺かな?』と穴を掘っていった。
すると、十センチほど深く掘ったところで────半透明の壁にぶつかる。

「あっ、多分これです。俺が感じていた力の正体は」

「掘り起こせ」

「はい」

 いそいそと土を掻き分け、イージス卿はちょっとしか見えなかった半透明の壁……結界を引っ張り出した。
拳サイズのソレを手のひらに載せ、彼はこちらを振り返る。

「なんか、中に指輪が入っていますね」

「貸してみろ」

 父はイージス卿から球体型の結界を受け取ると、まさかの片手で握り潰した。
唖然とする周囲を他所に指輪を確認し、スッと目を細める。

「これは恐らく────収納型魔道具の一種だな。まあ、中に保管出来るのはせいぜい机の引き出し一つ分くらいだろうが」

 『そこまで容量は多くない』と補足しつつ、父は指輪を人差し指に嵌めた。
かと思えば、じわじわ魔力を込めていく。

「……これだけでは、開かないか」

「何か特定の所作をしないといけないみたいだね」

 横から父の手元を覗き込み、グランツ殿下は『宝石の部分を押すとか?』と呟く。
そして、何の気なしにその方法を試すと────指輪の上に白い靄のようなものが現れた。
丸のような形のソレを前に、グランツ殿下は

「どうやら、正解だったようだね」

 と、笑う。
と同時に、その白い靄へ手を突っ込もうとした。
が、父に腕を掴まれる。

「やめてください。何か罠でも仕掛けてあったら、どうするんですか」
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