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本編
幸せな日々
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「────えっ?じゃあ、ソフィアは最恐と恐れられる北端の修道院に行ったの?」
甲斐甲斐しくバハルの世話をしながら、ソフィアの処遇を聞いていた私はパチパチと瞬きを繰り返す。
困惑が隠し切れない私に、ニコラスはコクリと頷いた。
北端の修道院は刑罰の神を祀るところで、別名『矯正場』と呼ばれている。
掟を守り、上の者に逆らわなければ問題ないが、掟を破ったり、上の者に逆らったりすると厳しい罰が下される。
場合によっては暴力も振るわれるため、みんな必ずどこかに傷跡を残して帰ってくると言う……。
しかも、北端の修道院は女性と男性を分けて管理しているため、余程のことがなければ異性と会うこともない。
つまり……男好きのソフィアには地獄みたいな場所なのだ。
ソフィアって、男性の扱いには慣れているけど、女性の扱いには慣れてないから、何かやらかしていそうね……。
優れた容姿が裏目に出ないといいけど……。
「それにしても、驚いたわ。お人好しで有名なジェフリー王子が北端の修道院にソフィアを送るなんて……彼なら、寛大な処置で済ませると思ったけど……」
「あぁ、そのことなんだけど……あの修道院を指定したのはイアン王子らしいよ。顔には出さないけど、今回の件には相当腹を立てていたみたい」
「なるほど、イアン王子が……」
第一王子の名前が出た途端、妙に納得してしまう。
だって、彼なら本当にやりかねないから……。
イアン王子は俗に言う腹黒というやつで、笑顔の裏に隠された本性がかなりヤバい……。
邪魔なものは徹底的に排除し、気に入ったものは手元に置く……おまけに他人のことを駒としか見ていない。
彼が損得勘定抜きで関わっているのは弟のジェフリー王子くらいだろう。
「ソフィアったら、無意識のうちに一番敵に回しちゃいけない人を怒らせていたのね……」
「そうみたいだね。まあ、あれは完全に自業自得だよ。それより、体調はどうだい?吐き気があったりしない?」
毎日のようにこの質問を繰り返すニコラスは心配そうにこちらを覗き込んでくる。
過保護な彼は私の手首を緩く握り、『細すぎて、折れちゃいそう……』と呟いた。
出産してから急激に体重が落ちたから、心配しているのね。
でも、そう簡単に腕は折れないと思うわ。
「うふふっ。ニコラスは心配し過ぎよ。私はそんなヤワじゃないわ。それより、お昼寝の時間だからバハルを早く寝かせなきゃ」
ベビーベッドの上で大人しくしているバハルを抱き上げ、チュッと額にキスを落とす。
すると、バハルは嬉しそうにキャキャッと声を上げた。
バハルは夜泣きなんてほとんどしない良い子で、あまり手が掛からない。
それが嬉しくもあり、寂しくもあった。
「赤子の寝かしつけなんて、乳母に任せればいいのに……バハルにジュリアを取られた気分だよ」
拗ねたように口先を尖らせる銀髪碧眼の美青年は普段より幼く見えた。
“氷の貴公子”とは思えない言動にクスクスと笑みを漏らす。
「うふふっ。拗ねないでちょうだい、ニコラス。バハルを寝かせたら、たくさん構ってあげるから」
「……約束だからね?ジュリア」
すりすりと額を擦り付けてくるニコラスに母性本能を擽られながら、コクリと頷く。
そして、楽しそうに笑うバハルに微笑みかけながら、
────こんな幸せな日々がずっと続きますように
と、心の底から願うのだった。
【END】
※最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
明日から番外編(ソフィアのその後など)を何話か更新しますので、そちらもお読み頂けますと幸いです。
甲斐甲斐しくバハルの世話をしながら、ソフィアの処遇を聞いていた私はパチパチと瞬きを繰り返す。
困惑が隠し切れない私に、ニコラスはコクリと頷いた。
北端の修道院は刑罰の神を祀るところで、別名『矯正場』と呼ばれている。
掟を守り、上の者に逆らわなければ問題ないが、掟を破ったり、上の者に逆らったりすると厳しい罰が下される。
場合によっては暴力も振るわれるため、みんな必ずどこかに傷跡を残して帰ってくると言う……。
しかも、北端の修道院は女性と男性を分けて管理しているため、余程のことがなければ異性と会うこともない。
つまり……男好きのソフィアには地獄みたいな場所なのだ。
ソフィアって、男性の扱いには慣れているけど、女性の扱いには慣れてないから、何かやらかしていそうね……。
優れた容姿が裏目に出ないといいけど……。
「それにしても、驚いたわ。お人好しで有名なジェフリー王子が北端の修道院にソフィアを送るなんて……彼なら、寛大な処置で済ませると思ったけど……」
「あぁ、そのことなんだけど……あの修道院を指定したのはイアン王子らしいよ。顔には出さないけど、今回の件には相当腹を立てていたみたい」
「なるほど、イアン王子が……」
第一王子の名前が出た途端、妙に納得してしまう。
だって、彼なら本当にやりかねないから……。
イアン王子は俗に言う腹黒というやつで、笑顔の裏に隠された本性がかなりヤバい……。
邪魔なものは徹底的に排除し、気に入ったものは手元に置く……おまけに他人のことを駒としか見ていない。
彼が損得勘定抜きで関わっているのは弟のジェフリー王子くらいだろう。
「ソフィアったら、無意識のうちに一番敵に回しちゃいけない人を怒らせていたのね……」
「そうみたいだね。まあ、あれは完全に自業自得だよ。それより、体調はどうだい?吐き気があったりしない?」
毎日のようにこの質問を繰り返すニコラスは心配そうにこちらを覗き込んでくる。
過保護な彼は私の手首を緩く握り、『細すぎて、折れちゃいそう……』と呟いた。
出産してから急激に体重が落ちたから、心配しているのね。
でも、そう簡単に腕は折れないと思うわ。
「うふふっ。ニコラスは心配し過ぎよ。私はそんなヤワじゃないわ。それより、お昼寝の時間だからバハルを早く寝かせなきゃ」
ベビーベッドの上で大人しくしているバハルを抱き上げ、チュッと額にキスを落とす。
すると、バハルは嬉しそうにキャキャッと声を上げた。
バハルは夜泣きなんてほとんどしない良い子で、あまり手が掛からない。
それが嬉しくもあり、寂しくもあった。
「赤子の寝かしつけなんて、乳母に任せればいいのに……バハルにジュリアを取られた気分だよ」
拗ねたように口先を尖らせる銀髪碧眼の美青年は普段より幼く見えた。
“氷の貴公子”とは思えない言動にクスクスと笑みを漏らす。
「うふふっ。拗ねないでちょうだい、ニコラス。バハルを寝かせたら、たくさん構ってあげるから」
「……約束だからね?ジュリア」
すりすりと額を擦り付けてくるニコラスに母性本能を擽られながら、コクリと頷く。
そして、楽しそうに笑うバハルに微笑みかけながら、
────こんな幸せな日々がずっと続きますように
と、心の底から願うのだった。
【END】
※最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
明日から番外編(ソフィアのその後など)を何話か更新しますので、そちらもお読み頂けますと幸いです。
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