Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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激震!勇魔最終戦争…!

繋いだ想い

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 目を開けると、朝の日差しのように眩しい光が。
 しかし自然と、痛みはなく、まるで天国にいるような気持ちだった。
 周りには、やっぱり仲間がいて。
 これが天国か、と錯覚しそうになった。だが。


「……よくやったな、セン。お前の勇気がたった今、世界を救った。

 あの予言は間違ってた。なぜなら、世界を救う者の1人にお前を入れてなかったからな」



 暖かい声が、聞こえた。
 ……そうか、なるほど、僕は、やったんだ。
 ほんとのほんとに、せかいをすくったんだ。

 ちょっと、ぼんやりしてきているけど。
 ……まあ、すこしくらい、やすんだって、いいよ、ね。



********

「大丈夫だ、セン。お前の守り通した世界は、俺が救ってみせる」

 運命は、今、その概念通りに逆転した。
 本来、ここで終わるはずだった。
 全てが、今まで積み重ねてきた数多の現実が、ここで潰えるはずだった。

 しかし、少年は運命を変えた。
 自らの死をも厭わない覚悟で、変えてみせたんだ。

「このままだと、救世主としての名が泣くよな。

 鍛冶屋のじっちゃん、アーマーは完成してるんだろ? 俺の覚悟は済んでるから、早く……俺にくれ。お前の孫の、センの守り通した未来が消える前にな」


「久しぶりじゃな、あの時の勇者よ。まさかお主があの村を救い、世界を救う事になるやもしれぬとはな、まあ頑張ってくれ、わしは応援しとるぞ」

「ああ、行ってくる。俺が、世界を救ってみせるさ」

「その概念防護は、この最終決戦用に調整した特別仕様じゃ。ここで勝たなければ、未来はないぞ」

 アーマーを胸に装着する。

「やってみせるさ、この俺が」




「……アレン。1つだけ、言わせてくれ」

 聞こえてきたのはイデアの声。
 そうだったな、センを最後まで信じ、応援していたのは、イデア……兄さんだった。

 兄さんにしては……意外だが。


「センは……センは、やりきった。ヤツは勝ってみせたんだ。……アレン。貴様も、勝てよ……!」

「…………兄さんは、兄さんは戦わない……のか?」

「———フン……! 貴様と一緒に戦う、など絶対にごめんだ」

「この前は普通に一緒に戦ってたくせに」



「貴様が俺以外に殺されるのが気に食わんだけだ。さっさと行け、センの努力が水の泡になる前にな……!

 それに、あの魔王とは他でもない、の、『鍵』の継承者たるお前が決着をつけなきゃならない。だからこそ———」

「…………ああ、勝ってみせるさ」







「……すごい、白、神みたい……!」

 白銀の騎士は再度王城へと飛び立ち、中に入る。
 そして人界王の眼前に飛び込み、跪く。





「この身、この定め、王のものとして預けたい。今の俺は、王の忠実なる騎士です。どうか、ご命令を、人界王」

 何とも皮肉と言うか、2年前王に楯突いた勇者が、今となっては王に完全なる忠誠を誓っている、という状況。

「……ならば、人界王、ユダレイ・タッカーダル四世が命じる。魔王を、その手で討伐せよ。繰り返す、魔王をその手で討伐せよ」

「仰せの———ままに」




 瞬間、白の背中に白色の魔力翼が展開される。

「アルビオンアーマー、起動……! 発進!」

 その翼を身につけ、白は竜の如く飛び立った。



********

「…………アレンは、行ったか。……それにしてもムカつく野郎だ、こんな時まで共闘を選びやがって……!」

 イデアはその右拳を、気に食わなそうに力強く握りしめる。

「…………だが、……セン。お前を見てると顕著に感じてくるもんだぜ。……一緒に何かを成し遂げることの、重要さがな……!

 アレンは最初から分かっていやがったんだ、それが最適解だと、2人で戦うのが一番だと。

 ……俺がくだらないものだと一蹴したものだが、そこには確かな力があった、想いがあった。それが積み重なって俺たちの現在イマがあった……!

 貴様が強かったのも、きっとそれだ。貴様には、守るものがあった、大切な人がいた。だからこそ、それを失わないために、ひたすら強くなって、必死に策を模索して、一緒に戦う。

 それが一番だと、貴様は誰よりも分かっていた……俺はそこから、一緒に戦うことの大切さを、知ったんだ……! だからこそ、今は貴様にこの言葉を送ろう……」








「……勝てよ、アレン。お前はこの世の誰よりも、強い……!」






*◇*◇*◇*◇


 弾丸の如く、空を駆け巡る。
 風が頬を撫で、いずれ切り裂かれそうなほどに激しく強くなる。

 ……いや、切り裂かれちゃマズいか。


「目指すは魔王城……待ってろよ魔王……!」

 瞬間。

 ずっと横、数キロ離れた先にて浮かんでいたのは、にあまりにも巨大すぎる数個もの鉄の塊。


「クラッシャー……じゃない、じゃなんだアレ……まさかあの時の……あの村にいた鉄の球体……なのか……?」

 目的地は……この混乱を引き起こしている魔王城だろうか、その鉄の物体は移動していた。が、そんな事は気にもとめない。



 早く、早く。
 どこまでも、銀の翼竜は飛び立つ。
 遥か地平線の、彼方まで。
 世界を、全てを救う為に。

「……魔力反応……雑兵か、振り切ってみせるさ、こんなところじゃ止まれない……!」

 既に消し飛ばされた地上を見て、それまでの旅の思い出が奥底より蘇る。
 それと同時に決意は固まった。

 日は空の向こうへと沈む。
 ……がしかし、太陽の如く輝くこの翼が、この地上を明るく照らす———!




「アレが……魔王城……」

 黒のレンガで構成されたそれは、いかにもここが本拠地ですよ、と言わんばかりの雰囲気を醸し出していた。

 ……周囲には毒沼。
 空を飛んできてよかったなと、改めて思う。


 ……不思議だった、なぜか魔力障壁がない。
 いくら魔族の本拠地、魔界の奥底、大陸最西端に位置するとはいえ、そんなはずはないだろう。

 あの魔槍、ガイア・コンソールも撃ち尽くした……はずだ、魔王城にはほとんど魔力反応がない。


 いや、城内には残存魔力もあるのだが。
 ……なのになぜ、魔王城そのものに魔力障壁が貼っていない……?



 世界の終わりには似合わない程、不自然に静か。
 明らかに何かがおかしい、と思いながらも。

 魔力翼を前面に押し出し、城内へと突撃する。
 瓦礫を魔力翼で突き破り、落ちゆくレンガとともに落下する。
 出てきたのは、王城と同じような大広間。



 その奥には、姿の隠れた、人影がいた。

「貴様が……魔王か」




「———僕?……僕は……魔王……かな。偽者、というより影みたいなものだけど」

 姿の隠れた紫のカーテンから、その人影は姿を完全に晒す。



「おはようゼット、僕だ、僕だよ」

「……誰だ」

 現れたのはあの時の、———ダメだ、記憶が……?
「…………そうか、キミは既に……ゼットじゃない、か」


「誰の話をして……」

「残念だけど僕は魔王じゃない。正確には、僕はもう死んでるし、そもそもこの世界にいる権利はない、でも僕は面白いモノが見たかった。

 彼は……ゼットは、実に面白いモノを見せてくれたよ。ところでキミは……何を見せてくれる?」



 その人物にはモヤがかかっていて、
 見よう、と思っても、視覚がそれを拒絶している。
 ……何か、液体のようなモノがあって。
 それでいて、何者かに切り裂かれた跡が…………


 頭が割れる。
 もうアイツは、アダムはいないはずなのに、なぜだ、どうして頭がこんなに……!

「ほら……見せてよ、キミの神話」

 やめろ……!

「俺の身体に……何がいる…………!!」









「本物の、魔王だよ」
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