Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

文字の大きさ
69 / 256
激震!勇魔最終戦争…!

魔王見参

 目を開ける。
 先程まで拒絶されていた視界は、謎の黒いモヤは完全に晴れ、本当の敵がその姿を晒していた。

 ……俺は今まで、何を見ていたんだ。あの、魔王の子供のような姿は、一体———。






「……まずは礼を言おう。———もの長い間、救世主の身体に住まわせてくれたことに」

 ランスを片手に持ち、漆黒の鎧を身に纏う騎士。
 いや、アイツは騎士じゃない。

「アベル・セイバー」

「正解だ、よくぞ分かった」


「そして……魔王」
「そう、貴公のにして、神域に達した魔術師、そして魔王。アベル・セイバーである」


 互いに浮かび上がる。
 やはり神域。魔術的な浮遊法も何不自由なく使えるらしい。



 勝負は、空中で決着がつく。

「何が目的だ」

 暗黒の地上から、黄昏の空へ。

「余の、目的か……余は、人間の可能性を試していた」

「……はあ、そんなくだらない事で、いつまでもこの愚かな戦争を続けてきたってのか」



 陽の光すら下方へと落ち行く中、

「……いいや、人間と魔族、どちらが生き残るに相応しいか、という事だ。まあ、我々が戦争を行い続けることで多少のだが。

 たった1つの願いを奪い合う大戦は、1000年前に終わりを告げた。ならば、人類と魔族……その2つの種族、大戦時に決着の付かなかった対決に終止符を打つために。

 だからこそ余も、たかが少年に負けては、……いられん」



「そうか。……俺もだ」

 ……ぶつかり合う双星。
 それはまるで、開闢の神話のような———。



「俺も、受け継いだ思い出があるんだからなっ!」

「鏡を見ているような気分に……なるな、っ!」

 交わされる言葉と一撃。
 目にも留まらぬ速さで、1秒間に三千世界が激突する。

 それぞれの想い、それぞれのセカイ。
 互いを壊さねば生きてはいけない、生物の悲しい性。
 ……が、その者たちは互いに自分の覇道を貫かんとする者だった。



 敵の攻撃が擦れる。
 重力と共に落ちてゆく大量出血。
 下がり続ける魔力を使い果たし、これでもかという一撃を、食らわせる……!

「神威……五十三連撃、一極集中……!」
『承知いたしました』



「背水の、陣っ!」

 今まで使ってきた全てを、今まで積み重ねた全てを用いて、完勝のその瞬間まで……!

 急激な反転、下から上へ、身体の動く方向は変化する。

「……がぐ……っ?! 一撃……この余が……食らった……ふは、ふはは、素晴らしいな、人間は! ここまで昂ったのは千年ぶりだ、ッ!」



 鋭く、俊敏な突きが決まる。
 初めて見る魔王の血は、「魔族」には相応しくないだった。

「ああ、俺もだ、不思議と楽しくなってきやがった……!」

 感覚凌駕。
 限界突破。
 無我夢中。

 全てを用いて、何がなんでも手にするは、勝利……!
 余計な思考など全て捨て、無となり虚を突く!


「突・爆牙!」

 一瞬のみ生まれた隙を使い、ゼロタイムで突の構えをとる。



「起きよ———ガイア・コンソール!」

 魔王は既に大槍を構えている。

 既に飛び上がった後。
 もはや後戻りは叶わない……!

「最大最強の、一撃を……!」
「させるとでも思うかあっ!」




 互いに後退する。
 ……何が起きた……?

 完全なる事象飽和。
 どの、何の概念防護を用いても、防御のしようがない一撃を、ヤツは弾いた……?



「「まさか、お前貴公の武器は……!」」

 3秒、息を整え体力を回復する。
 4秒、迎撃開始……!

「ここで一歩も引くわけにはいかないっ!」
「余も同じだ……! ここで終わる訳にはいかぬっ!」

 繰り返される互角な攻防。

 これも全て、このアーマーありきのものなのだが、やはりそれでもこの時の高揚感は異常だった。

 あまりにも高速なそのランスの突きを、鍛え上げられた動体視力で見切り、受け入れる。
 幾度となく動転し行く陽の光をも、もはや全くもって気にならない。


「背水の陣、極ノ項……全開開放っ!」

 惜しみなく、ここで壊れる覚悟で全てを出し尽くす!



 元より死は覚悟の上、みんなには悪いが、生きては帰れない……かもしれない。
 それでも、ここで終わらせる……それが、俺の贖罪だ……!

「もう誰も、傷つかない、優しい世界を……!」
のような世迷言を口にするものだ!」
感想 203

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。

孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。 その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。 そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。 同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。 春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。 昔から志穂が近くにいてくれるから……。 しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。 登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。 志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。 彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。 志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。 そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。 その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。