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断章Ⅰ〜アローサル:ラークシャサ・ラージャー〜
瞬退
全く同時刻。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「あわ……あわわ……」
赤い服を見に纏った謎の男が、目を見開きその戦場を覗いていた。
「アッ! あなた方は……世界の救世主様!」
……と、突然その場を通りかかった白たちに声がかけられる。
********
「……お前、誰だ?」
「わ……わわ、私はこの大会の司会者を務めさせてもらってます……この大会は子供たちにも楽しみにされていたので、音声だけでも魔力通信でお届けしようとしたのですが、いざ来てみたらなんなんですかアレは?!」
「分かる訳ないだろ、こっちも今来たところなんだ……! とりあえず、戦わないなら下がってろ……!」
砂漠地帯にて。
横たわった巨人の石像の影からそっと覗いて見えたのは。
「……いた、アイツがその殺人鬼か……ってアレは……兄さん?!」
「嘘、イデアさんがやられてる……?!」
———俺もサナも唖然とする他なかった。
なんたって、既に俺たちに敵うヤツなんて———この世にはいないはず。
ましてやあのイデアだ、兄さんだ、最強を目指して特訓ばかりしていた兄さんが負けるって、一体どんな相手が……?!
「……サナ、絶対に気を抜くなよ。センとヤンスとくいなはここで待機だ。いいか、俺たちがやられても、絶対に外には出るな」
……しかしやるしかない、俺たちなら行けると信じて。
「白、後3秒で出るわよ」
1。
鞘から刀を抜く。
2。
杖に魔力を込める。
3。
後は作戦通りに。
……まあ、そこまで大層な作戦ではないのだが。
物陰から勢いよく飛び出したのは、無数に分裂した俺。
……否、全てサナの幻想顕現魔術によるコピーである。
「すりゃああああっ!」
「とりゃああああっ!」
「どすこーーーいっ!」
……変な掛け声が聞こえるのは気のせいだ。
無数の俺が、その刀でヴォレイに襲いかかる。
しかし、やはり覚醒したヴォレイにはそんなヤワなものじゃ通用しなかった。
……いや、俺たちはそれを読んでいた。
なぜなら、地に伏し倒れ込んだイデアと黒という、絶好の証明材料がいたからであり。
それが勝利への道筋となった。
この俺の前で隙を見せれば、それは敗北への道となる。
……そう、先程の無数の飛びかかった白、『全て』サナの魔術のコピーである。
……そう、『全て』。つまり本体は……
音もなく、その屈強な肉体を貫く。
「……ゴッ……」
勝ちだ。
確実に心臓を貫いた。
そのまま刀を捻り、横に振り抜き、ヤツの脇からその刀を突き出す。
心臓を貫かれ破裂した血が、断面を伝わり勢いよく噴き出す。
……そう、ヤツの心臓から脇の部分にかけてを斬ってみせた。
なぜそんな事ができたのか、なぜヤツの肉はそこまで斬りやすかったのか。
そんな、あまりにも分かりやすく、あまりにも気付きにくい違和感を俺は微塵も気に留めず、それで戦闘を終えようとしてしまった。
だからこそ、それが隙となり、俺の敗北への道となった。
倒れ込むヴォレイ。
誰もが終わった、と確信したその時であった。
「勝ったと思ったか……?」
「……っなっ?!」
立ち上がってきたヴォレイは、なんと先程の傷も癒えており。
「がっ……ああっ……!!」
白の胸ぐらを掴み、力強く持ち上げる。
「鍵、か……! そうか、貴様が……!」
「ああ、そうだよ、オールマイティ、って言うんだろ? それがどうした……!」
「ならばその命、このオレに……!」
「させるかっての!!」
杖を振りかざし、サナはここに魔力で編まれた魔法陣を描き出す。
「エクスプロ———」
「そうか、目障りな魔法使いがいたな」
既に敵は背後。既に手遅れ。
サナはその男の力強い打撃で地面に叩きつけられる。
「は……あっ……!」
編まれていた魔力術式も解け、絶対絶命。まさに最悪の状況下にて。
遠くで見ていたセン達が、何もしないはずもなく。
********
「……やめ、て……またアイの前から……また、アイから奪う……の……?」
圧倒的な力。どう勝つかも思い浮かばないその状況下、3人の怒りは煮えたぎる。
「……アイ、行く」
「っ待って……! だめだ、くいなが行っても勝てる相手じゃ……!」
「……嫌、なの。アイ、嫌なの……また、またアイツらに、大切な人、奪われるのは……!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「あわ……あわわ……」
赤い服を見に纏った謎の男が、目を見開きその戦場を覗いていた。
「アッ! あなた方は……世界の救世主様!」
……と、突然その場を通りかかった白たちに声がかけられる。
********
「……お前、誰だ?」
「わ……わわ、私はこの大会の司会者を務めさせてもらってます……この大会は子供たちにも楽しみにされていたので、音声だけでも魔力通信でお届けしようとしたのですが、いざ来てみたらなんなんですかアレは?!」
「分かる訳ないだろ、こっちも今来たところなんだ……! とりあえず、戦わないなら下がってろ……!」
砂漠地帯にて。
横たわった巨人の石像の影からそっと覗いて見えたのは。
「……いた、アイツがその殺人鬼か……ってアレは……兄さん?!」
「嘘、イデアさんがやられてる……?!」
———俺もサナも唖然とする他なかった。
なんたって、既に俺たちに敵うヤツなんて———この世にはいないはず。
ましてやあのイデアだ、兄さんだ、最強を目指して特訓ばかりしていた兄さんが負けるって、一体どんな相手が……?!
「……サナ、絶対に気を抜くなよ。センとヤンスとくいなはここで待機だ。いいか、俺たちがやられても、絶対に外には出るな」
……しかしやるしかない、俺たちなら行けると信じて。
「白、後3秒で出るわよ」
1。
鞘から刀を抜く。
2。
杖に魔力を込める。
3。
後は作戦通りに。
……まあ、そこまで大層な作戦ではないのだが。
物陰から勢いよく飛び出したのは、無数に分裂した俺。
……否、全てサナの幻想顕現魔術によるコピーである。
「すりゃああああっ!」
「とりゃああああっ!」
「どすこーーーいっ!」
……変な掛け声が聞こえるのは気のせいだ。
無数の俺が、その刀でヴォレイに襲いかかる。
しかし、やはり覚醒したヴォレイにはそんなヤワなものじゃ通用しなかった。
……いや、俺たちはそれを読んでいた。
なぜなら、地に伏し倒れ込んだイデアと黒という、絶好の証明材料がいたからであり。
それが勝利への道筋となった。
この俺の前で隙を見せれば、それは敗北への道となる。
……そう、先程の無数の飛びかかった白、『全て』サナの魔術のコピーである。
……そう、『全て』。つまり本体は……
音もなく、その屈強な肉体を貫く。
「……ゴッ……」
勝ちだ。
確実に心臓を貫いた。
そのまま刀を捻り、横に振り抜き、ヤツの脇からその刀を突き出す。
心臓を貫かれ破裂した血が、断面を伝わり勢いよく噴き出す。
……そう、ヤツの心臓から脇の部分にかけてを斬ってみせた。
なぜそんな事ができたのか、なぜヤツの肉はそこまで斬りやすかったのか。
そんな、あまりにも分かりやすく、あまりにも気付きにくい違和感を俺は微塵も気に留めず、それで戦闘を終えようとしてしまった。
だからこそ、それが隙となり、俺の敗北への道となった。
倒れ込むヴォレイ。
誰もが終わった、と確信したその時であった。
「勝ったと思ったか……?」
「……っなっ?!」
立ち上がってきたヴォレイは、なんと先程の傷も癒えており。
「がっ……ああっ……!!」
白の胸ぐらを掴み、力強く持ち上げる。
「鍵、か……! そうか、貴様が……!」
「ああ、そうだよ、オールマイティ、って言うんだろ? それがどうした……!」
「ならばその命、このオレに……!」
「させるかっての!!」
杖を振りかざし、サナはここに魔力で編まれた魔法陣を描き出す。
「エクスプロ———」
「そうか、目障りな魔法使いがいたな」
既に敵は背後。既に手遅れ。
サナはその男の力強い打撃で地面に叩きつけられる。
「は……あっ……!」
編まれていた魔力術式も解け、絶対絶命。まさに最悪の状況下にて。
遠くで見ていたセン達が、何もしないはずもなく。
********
「……やめ、て……またアイの前から……また、アイから奪う……の……?」
圧倒的な力。どう勝つかも思い浮かばないその状況下、3人の怒りは煮えたぎる。
「……アイ、行く」
「っ待って……! だめだ、くいなが行っても勝てる相手じゃ……!」
「……嫌、なの。アイ、嫌なの……また、またアイツらに、大切な人、奪われるのは……!!」
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