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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
決戦〜再起動〜
だが。
その手を止める、もう1つの手がそこにはあった。
それは、師匠の、宗呪羅のように暖かく。
それは、サナのように冷たく、されど優しく。
「…………白、それ…………だけは、ダメ……!」
入るのは、叶わないはずだった。
この完全静止世界、神力領域———ザ・オールマイティ・シャットダウン・オブ・ワールドには、誰1人として入るのは叶わないはずだった。
だが、コイツは、アテナは違った。
俺の、俺のただ1つの間違いを止めるために、自らの神力を用いて自身の神力領域を展開、俺の神力領域を中和する。
そのまま俺を止めるために、その神力を使い果たしたとでと、そう言うのか……?
ただ一瞬の為に。
俺が間違いを犯す、ただその一瞬を止める為だけに、アテナは……ニトイは、その力を振り絞ったと……?
静止世界が収縮する。
神力を使い果たし、再びこの世界より排除されたニトイを抱き、一度後退する。
そして、視界に色が戻る。
「……何、で……? 白はさっき私の背後にいて……何で今はそこに……?」
静止した、俺が時を止めた10秒間、起きた事象を知る者は俺とニトイ以外におらず。
サナはその起きた———吹き飛んだ状況と事象に困惑しながらも、ニトイを抱き抱えた俺を見て、何が起きたのかを朧げに理解したのであろう。
「……し、ろが……間違わない……ように……アテナ、ちゃんと……できた……?」
先程より一層弱々しくなった声に、必死に返事をする。
「…………ああ、お前のおかげで、俺は俺を見失わずに済んだよ、ありがとう。…………お前は、あっちで休んでてくれ。
………………もう俺は、間違わないから」
「……随分と、幸せそうね」
「ああ、今まで進んできたこの日常を、幸せと思わなかったことはなかった。……むしろ、そう思わなければ———俺の贖罪は果たされない」
「再開しても、構わない?」
「できるならば、そんなことしたくはないが———」
概念封印、復活。
神威に再び、木造のカバーが被せられる。
「……何の、つもり?」
「…………救う、つもりだ」
1歩。
重く、されど軽やかに。
この脚は、最愛の人を殺しに行く為に備わっているものじゃない。
この脚は、最愛の人を救う為に備わっているものなのだから。
俺じゃ救えないかもしれない。その俺にとっての『月』は、俺の手には余るものかもしれない。
それでも、俺は俺のできる最善を尽くそうと、そう決めたのだから。
踏み出し、サナに斬りかかるまで、このような思考が交錯する。
しかし、斬り込む瞬間は無心で。
どこまでも、どこまでも空の心で、斬りかかる。
なぜならば、人を斬る時の俺ならば、サナを救う事はできないからだ。
「……っ……!」
「杖は落とした。さあどうする……?」
斬りかかり、サナの右手にあった杖を木刀で薙ぎ払い吹き飛ばす。
「……杖がなくとも、私には……魔力があるんだからあっ!」
「させるか……っ?!」
サナが地面に手を付いた瞬間、地が恐れおののき、ついには割れ始める。
アーススプリット。最上位魔法の1つ、人工地震だ。
崩落する施設の中で、その者らは2人。
光の差し込む中、未だに極限の戦いを続けていた。
瓦解する壁面。
落ちゆく天井。
その、岩の雨の降り続く最中、サナの作る氷の壁を、1つ1つ打ち割って行く。
サナに追いつく為に。サナを救う為に。
その為には、サナの元へと行かなければならないのだから。
「……アンタ、にはっ……負けて、られないのよっ!」
「こっちだって一緒……だっ!!」
だからこそ前へ、前へ。
絶対に、救ってみせるために。
ここで全て終わらせて、もう1度、俺たちが再起動するために。
168枚目もの壁を打ち破った瞬間、サナの動きに鈍りが見えた。
同時に、その方向にあまりにも巨大すぎる魔力反応が。
……このまま殺される、などと言う思考もよぎりはしたが。
———ならばこそ、今がチャンスだと見切った。
「背水の陣……手ノ項……!!」
今しかない、完全な隙、確実な隙と言えば、このタイミングしかあり得ない、と、長年コイツと一緒にいた俺のカンがそう囁く。
それこそ木刀でなければ、打ち首にする程のスピードで刀を振り、そして。
その最高速を、サナの眼前にて完璧に静止させる。
同時に吹き荒れた突風が、その凄まじき速さをそのまま表していた。
「………………は……あ……!」
「もう、終わりにしよう。俺もお前を傷付けたい訳じゃないんだ、だから……」
瞬間、俺は自分の失言を完全に理解した。
「何が……何が傷付けたくないよ……勝手に私の……みんなの前から消えて、それで……再会したら、隣にヘンな女ができてて……
…………それで、私を蔑ろにしてその女を選んでまで、私を傷付けたくない……って……ふざけないでよ……!」
涙を流しながら打ち震える肩に、優しく手を差し伸べようとした。
……けれど、もはや俺にはそんな資格などないと。
「白、あなたは……私を裏切った……せめて、せめてあの子を愛するなら、私なんて最初から興味がないように見捨ててくれればよかったのに……!
……でも、でも何で貴方は、そこまでしておいて中途半端に、私を救おうとする訳……?! 今更……今更勇者ぶる訳?!」
涙で崩れ落ちたサナを見下げ、少しばかり小さな声で告げる。
「今の俺は……白じゃないんだ、ツバサっていう別の俺がいるから、今ここにいる俺は白……なんかじゃない。
でも、それでも俺は、みんなが傷付かない結末を求めたい。
たとえそれが、どれだけ傲慢で、どれだけ自分勝手だったとしても。…………それは、お前だって同じだろ」
興味がなかったように、見捨てる?
そんなことできると思うか、この俺に。
いつまでも過去のしがらみに囚われ、いつまでも十字架を引きずってるこの俺が、そんなこと……過去を全て捨てるだなんて、できるはずがないんだ、だから……!
「正直、初恋だった。でも、俺はもう……アイツを、ニトイを好きになっちまったんだよ、だから……!」
「………………そ…………れは、白、として……?」
「……雪斬ツバサとして、だ。白は、白だった頃の俺にとっては、いつまでもお前が……月のように輝いてる」
「結局、どこまでも遠い存在だったんだ、お前は。すぐそばにいるようで、でもだからこそ、俺はこの想いを言い出せなかった」
それは、遠く、遠く瞬く月のように。
「…………私も、結局は言えなかった。最後まで、貴方に……好きだ、って」
それは、遠く、遠く輝く陽のように。
「じゃあ、ここで俺は言わせてもらうよ」
だからこそ、それが俺たちにとっての決着だった。
言い出すしかなかった。
今までの俺からは、そのたった2文字の言葉は出てきやしなかったけど。
……でも、言うなら———伝えるなら今しかないんだ。
「……俺は、仲間として、君を愛すよ、俺は君が———好きだった」
それは、共に死線を潜り抜けた仲間として。
あるいは、親友として。
ニトイの時には、詰まりすぎてとても出てこなかった言葉が、ようやく口より放たれる。
しかしてそこに、『彼女』としての側面はなく。
そう言い切った後、サナはほのかに微笑み、少しほろ苦い表情で、告げた。
「…………ありがとう、その答えを…………多分、私は待ってた」
「……ならば、俺たちはまた組むべき……だろ」
それが、俺たちの決着であり。
同時に、『ワンダー・ショウタイム』としての俺たちの、再始動の言葉であった。
座り込んだサナに、手を差し伸べる。
その一瞬だけは、『ツバサ』としてではなく、『白』として。
「……そう、よね。……貴方達が、それでもいいって言うなら…………多分それは、本物だと思うから」
その手を止める、もう1つの手がそこにはあった。
それは、師匠の、宗呪羅のように暖かく。
それは、サナのように冷たく、されど優しく。
「…………白、それ…………だけは、ダメ……!」
入るのは、叶わないはずだった。
この完全静止世界、神力領域———ザ・オールマイティ・シャットダウン・オブ・ワールドには、誰1人として入るのは叶わないはずだった。
だが、コイツは、アテナは違った。
俺の、俺のただ1つの間違いを止めるために、自らの神力を用いて自身の神力領域を展開、俺の神力領域を中和する。
そのまま俺を止めるために、その神力を使い果たしたとでと、そう言うのか……?
ただ一瞬の為に。
俺が間違いを犯す、ただその一瞬を止める為だけに、アテナは……ニトイは、その力を振り絞ったと……?
静止世界が収縮する。
神力を使い果たし、再びこの世界より排除されたニトイを抱き、一度後退する。
そして、視界に色が戻る。
「……何、で……? 白はさっき私の背後にいて……何で今はそこに……?」
静止した、俺が時を止めた10秒間、起きた事象を知る者は俺とニトイ以外におらず。
サナはその起きた———吹き飛んだ状況と事象に困惑しながらも、ニトイを抱き抱えた俺を見て、何が起きたのかを朧げに理解したのであろう。
「……し、ろが……間違わない……ように……アテナ、ちゃんと……できた……?」
先程より一層弱々しくなった声に、必死に返事をする。
「…………ああ、お前のおかげで、俺は俺を見失わずに済んだよ、ありがとう。…………お前は、あっちで休んでてくれ。
………………もう俺は、間違わないから」
「……随分と、幸せそうね」
「ああ、今まで進んできたこの日常を、幸せと思わなかったことはなかった。……むしろ、そう思わなければ———俺の贖罪は果たされない」
「再開しても、構わない?」
「できるならば、そんなことしたくはないが———」
概念封印、復活。
神威に再び、木造のカバーが被せられる。
「……何の、つもり?」
「…………救う、つもりだ」
1歩。
重く、されど軽やかに。
この脚は、最愛の人を殺しに行く為に備わっているものじゃない。
この脚は、最愛の人を救う為に備わっているものなのだから。
俺じゃ救えないかもしれない。その俺にとっての『月』は、俺の手には余るものかもしれない。
それでも、俺は俺のできる最善を尽くそうと、そう決めたのだから。
踏み出し、サナに斬りかかるまで、このような思考が交錯する。
しかし、斬り込む瞬間は無心で。
どこまでも、どこまでも空の心で、斬りかかる。
なぜならば、人を斬る時の俺ならば、サナを救う事はできないからだ。
「……っ……!」
「杖は落とした。さあどうする……?」
斬りかかり、サナの右手にあった杖を木刀で薙ぎ払い吹き飛ばす。
「……杖がなくとも、私には……魔力があるんだからあっ!」
「させるか……っ?!」
サナが地面に手を付いた瞬間、地が恐れおののき、ついには割れ始める。
アーススプリット。最上位魔法の1つ、人工地震だ。
崩落する施設の中で、その者らは2人。
光の差し込む中、未だに極限の戦いを続けていた。
瓦解する壁面。
落ちゆく天井。
その、岩の雨の降り続く最中、サナの作る氷の壁を、1つ1つ打ち割って行く。
サナに追いつく為に。サナを救う為に。
その為には、サナの元へと行かなければならないのだから。
「……アンタ、にはっ……負けて、られないのよっ!」
「こっちだって一緒……だっ!!」
だからこそ前へ、前へ。
絶対に、救ってみせるために。
ここで全て終わらせて、もう1度、俺たちが再起動するために。
168枚目もの壁を打ち破った瞬間、サナの動きに鈍りが見えた。
同時に、その方向にあまりにも巨大すぎる魔力反応が。
……このまま殺される、などと言う思考もよぎりはしたが。
———ならばこそ、今がチャンスだと見切った。
「背水の陣……手ノ項……!!」
今しかない、完全な隙、確実な隙と言えば、このタイミングしかあり得ない、と、長年コイツと一緒にいた俺のカンがそう囁く。
それこそ木刀でなければ、打ち首にする程のスピードで刀を振り、そして。
その最高速を、サナの眼前にて完璧に静止させる。
同時に吹き荒れた突風が、その凄まじき速さをそのまま表していた。
「………………は……あ……!」
「もう、終わりにしよう。俺もお前を傷付けたい訳じゃないんだ、だから……」
瞬間、俺は自分の失言を完全に理解した。
「何が……何が傷付けたくないよ……勝手に私の……みんなの前から消えて、それで……再会したら、隣にヘンな女ができてて……
…………それで、私を蔑ろにしてその女を選んでまで、私を傷付けたくない……って……ふざけないでよ……!」
涙を流しながら打ち震える肩に、優しく手を差し伸べようとした。
……けれど、もはや俺にはそんな資格などないと。
「白、あなたは……私を裏切った……せめて、せめてあの子を愛するなら、私なんて最初から興味がないように見捨ててくれればよかったのに……!
……でも、でも何で貴方は、そこまでしておいて中途半端に、私を救おうとする訳……?! 今更……今更勇者ぶる訳?!」
涙で崩れ落ちたサナを見下げ、少しばかり小さな声で告げる。
「今の俺は……白じゃないんだ、ツバサっていう別の俺がいるから、今ここにいる俺は白……なんかじゃない。
でも、それでも俺は、みんなが傷付かない結末を求めたい。
たとえそれが、どれだけ傲慢で、どれだけ自分勝手だったとしても。…………それは、お前だって同じだろ」
興味がなかったように、見捨てる?
そんなことできると思うか、この俺に。
いつまでも過去のしがらみに囚われ、いつまでも十字架を引きずってるこの俺が、そんなこと……過去を全て捨てるだなんて、できるはずがないんだ、だから……!
「正直、初恋だった。でも、俺はもう……アイツを、ニトイを好きになっちまったんだよ、だから……!」
「………………そ…………れは、白、として……?」
「……雪斬ツバサとして、だ。白は、白だった頃の俺にとっては、いつまでもお前が……月のように輝いてる」
「結局、どこまでも遠い存在だったんだ、お前は。すぐそばにいるようで、でもだからこそ、俺はこの想いを言い出せなかった」
それは、遠く、遠く瞬く月のように。
「…………私も、結局は言えなかった。最後まで、貴方に……好きだ、って」
それは、遠く、遠く輝く陽のように。
「じゃあ、ここで俺は言わせてもらうよ」
だからこそ、それが俺たちにとっての決着だった。
言い出すしかなかった。
今までの俺からは、そのたった2文字の言葉は出てきやしなかったけど。
……でも、言うなら———伝えるなら今しかないんだ。
「……俺は、仲間として、君を愛すよ、俺は君が———好きだった」
それは、共に死線を潜り抜けた仲間として。
あるいは、親友として。
ニトイの時には、詰まりすぎてとても出てこなかった言葉が、ようやく口より放たれる。
しかしてそこに、『彼女』としての側面はなく。
そう言い切った後、サナはほのかに微笑み、少しほろ苦い表情で、告げた。
「…………ありがとう、その答えを…………多分、私は待ってた」
「……ならば、俺たちはまた組むべき……だろ」
それが、俺たちの決着であり。
同時に、『ワンダー・ショウタイム』としての俺たちの、再始動の言葉であった。
座り込んだサナに、手を差し伸べる。
その一瞬だけは、『ツバサ』としてではなく、『白』として。
「……そう、よね。……貴方達が、それでもいいって言うなら…………多分それは、本物だと思うから」
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