Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

文字の大きさ
128 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

プロジェクト:エターナル

「……でェ? お友達ごっこは、ようやく終わりか?」

 まるで最初からその様子を見ていたように、物陰から出てきたのは。



「…………ちょうど聞きたいところだった、クラッシャー。何でお前は生きている……?」


 ———そうだ、俺の思い出した記憶には、コイツのことも入っていた。
 クラッシャー。一度サナを殺してみせた、俺の憎悪の対象。

 ……ただ、生きてるってことは———人界軍はコイツの扱いを間違ったか……?

「………………白、クラッシャーは仲間よ。……一応ね」

 サナの発言に少しばかり安堵しながらも、だがしかしやはりこの状況はおかしいと、困惑した頭をフル回転させる。

「何で、か?……お前、この俺様にトドメを刺すことを忘れただろ……?」

 ……盲点、だった。
 そう言えば、センがクラッシャーを蹴り上げた後、クラッシャーの消息は掴めていなかったが。

「そうだった、俺が殺し損ねたんだった。……じゃなくて、何でお前が俺たちの仲間、みたいな感じになってるんだよ?!」



「……プロジェクト:エターナル。その不可逆的阻止のためよ」

 サナは完全に立ち直っている様子だった。……俺がいなかった間にも、やっぱり成長してるんだ。それだけ。

 プロジェクト:エターナル。
 一体何の話だ……?

「……チッ、仕方ねえな、ならば教えてやるよ。俺たちカーネイジが入手した、極秘計画……エターナルの全貌を」





「プロジェクト:エターナル。それは、永遠を掴む儀式。

 人類を、悠久の時を生きる生命体に進化させる計画だった。だからこそアースリアクター、この世界の中心大穴に存在するを用いて、人類を進化させ、永遠に争いの起こらない世界を作るの。

 その為には、アースリアクターを開くための鍵……つまり、神技『ザ・オールマイティ』を持つ人物が必要な訳。…………つまり、今は貴方よ、白」

「…………鍵の話に関しては、俺もなんとなくは分かるんだ。でも、それって悪い……ことなのか? 永遠に争いの起こらない世界を作ることの……何がいけないんだ……?」

「聞こえはいいが、実際のところ実にクソッタレな計画さぁ……何せ人類を、意志を持たず永遠に彷徨い続ける生命体『ロスト』に、強制的に進化させる。

 つまりは停滞した明日を……作る計画な訳だ。それのどこが素晴らしいってんだ、人斬り……?」


 ロストが……意志を持たず永遠に彷徨い続ける生命体だって……?
 ならば、俺が今まで倒し続けてきたロストは、皆元は人間だってのか……?

「じゃあ……じゃあ俺たちゴルゴダ機関は、今まで何をしてたんだ……?

 ロストの元が人間だってなら、俺たちは何のためにロストを殺して……そもそも、ロストは何なんだよ、どこから出てきて、何が起源なんだよ……!」


「…………ロストは、この国、オリュンポスの実験の……よ」




「は……?」

 実験……? 失敗作……?

「…………オリュンポスは、数十年前から、永久に活動できて……更には人の意志も併せ持つ、『ソウルレス』を生み出す実験を続けてきた。

 その実験にて、ソウルレスになれなかった人々は、『ロスト』と名付けられた怪物に変貌した。だからこそ、今のゴルゴダ機関は、その実験の後始末をしてるに過ぎない、ってこと」

「……つまり今度は、その失敗作……ロストに、全人類を進化させようと……?」


 果たしてそれは、皆が幸せになるための計画なのだろうか。

「永遠」を掴むことは、本当に俺たちが幸せになることに繋がるのだろうか?
 ……そんなことはない、ないはず……




「……うい?」

 ふと、左を振り向くと、そこにはアテナの姿が。
 そうだった、コイツは……機神は、悠久の時を生きる生命体だった。
 植え付けられた「ツバサ」の記憶がそうだと釘を刺す。


「…………俺、は、永遠を、生きたい…………だけど、皆にその……俺だけにとっての幸せを、押し付けるわけにはいかない……からな」

 ずっと、一緒にいたかったけれど。
 だけど、それが許されないことだと言うのなら。


「……腹は決まった、って訳ね。ならば白、私たちについてきて。この施設の本当の用途を教えてあげる」



 そう言われ、階段の下へと連れられた先、薄暗闇の陰る部屋の隅には。

「光、がある……?」
「貴方と会う前、私が灯しておいただけよ」


 着いたのは、苔むした研究室……のような部屋。
 無意識に、そこのテーブルの上に置いてあった、古ぼけた紙に視線がいく。


--------------------------------
 エターナル:S計画
 実験#1
 被験体名称
 ヴァイン・レンス=○ 後日脱走
 黒(仮名)=○ 後日脱走
 レイン・ヴァープナー=○
 ヴォレイ・カイル=○
--------------------------------
 カイラ・アダプト=× 自我はあり。
 サレン・ケイラ=× 自我はあり。
 エイン・サード=× 自我はあり。
 その他186254名、失敗。

 経過観察:実験#2
 ヴァイン・レンス及び黒(仮名)の脱走を確認。国際重要最高刑執行人物に指定。
 他自我の残った4名の解剖を始める。

 解剖を行った結果、被験体は痛みを感じていたが、切開部位はすぐに再生。
 カイラ・アダプトの体内に出現したコアを破壊。その後、数分かけて被験体カイラは、悶え苦しんだ後他の自我のないロスト同様消滅。

 収容区内のロスト(エイン含む)が全脱走。
 …………
-------------------------------




「何だ、これ……バツ、って、もしかして……」

「お察しの通り、ロストになった被験体のことだ。……惨めなもんだぜ、コイツらは全員、ここの奴らの実験の犠牲となった。

 これのどこが……神の守る国だと言うのやら」

「……これは?」

 テーブルの上に置かれていた、緑色の液体の入った注射器を手に取る。

「白、それは刺さないでよ」
「だから、これは何なんだよ」

「……RX-3654。それを打ち込んだ生命体は、魂———スピリットの外壁が喪失し、固体生命を保てなくなる。

 そこから自力で固体生命を再生するか、再生できず、溶け出したままロストと化すか、それはその本人の適正次第って訳」



「……なあ、なあアテナ、これもお前がやったのか、これも、こんな酷いこともお前がやった……」

「それ、は、きっと……お父様が……命令、した」



 その言葉に、サナもクラッシャーも共に反応する。

「……で、その『お父様』……つまりは、主神ゼウスを殺すために、私たちはここまで来たのよ」

「いや、え……? 主神ゼウスを……殺す……?」

 主神ゼウス。
「ツバサ」としての、帝都民だった俺の記憶が、その名を覚えていた。



 主神ゼウス。
 最大最強にして、全知全能の神。姿を見せず、オリュンポスの中枢にて眠る、神の中の神。
 そんな化け物を殺す……だって……?


 ……いや、アテナは確か……ゼウスの娘だったはずで……

「……アテナ、お前は大丈夫……なのか、俺たちはお前の父を……殺すかもしれないんだぞ」

「アテナ、は……白……と一緒、に、いられる、なら……何だって、いい。

 お父様、が、間違ってる、なら……アテナが……直さなきゃ、いけない…………から」



「おっとお、主神の娘も意外と賛成か……殺し合いは覚悟してたんだがな……」

 クラッシャーはその剛腕を地に降ろし、心底つまらなさそうに肩を落とす。

「…………それじゃあ、白。懐かしい人たちに会いに行くわよ」

 俺たちより一足先に階段を上がりながら、サナはそう告げるが。

「懐かしい人たち……って、まさか……っ!」
「…………まあ、察しはつくでしょ。



 会いに行くのよ。貴方の思い出に」
感想 203

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。

孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。 その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。 そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。 同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。 春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。 昔から志穂が近くにいてくれるから……。 しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。 登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。 志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。 彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。 志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。 そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。 その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。