145 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
機神降臨³
しおりを挟む
鉄の壁に囲まれた、オリュンポスそのものを覆い尽くした黒き影。
その2つの影の正体———機神球体は、その1つは黒を増していき、その1つはだんだんと遠ざかっていくように小さく縮こまってゆく。
……何をする気だ……?
「……上から神力光線でも撃ちまくられたら厄介だ……全隊、地下へ避難しろ!……地上にて消し炭になるよりかはマシ……だと思う!」
『なんで急にそんな弱気になるでヤンスか……』
「アイツらが何をしでかすか分からないだろ?!……僕たちが戦ってるのは個の敵じゃない。………………国さえも覆う大敵、それがヤツらなんだから……っ!」
サイドツー15機、その全てが地下へと避難した数秒後———。
『おわああっ?!』
『…………なに、これ……!』
まるで地面を縦に振ったかの如き地響きが、その場———オリュンポス全域にて轟く。
「……そうか、ヤツら……地上の掃除に出たか……逃げ遅れたオリュンポス市民をも皆殺しにするつもりか……っ!」
『セン…………アレ、使える…………?』
くいなの呼び掛けに呼応するかの如く、僕が搭乗するサイドツー、その背中部分に取り付けられていた、黒き色をしたコンテナが瓦解する。
「……弾数はたったの3発。……使い所を間違えれば意味がない代物だ、……それに、今は絶対に……意味がない」
*◇*◇*◇*◇
ディルと別れた後、地上をフラフラと歩き続けていた俺は、唐突のアテナの発言に驚愕する。
「…………起きた」
「はい?!」
「起きた……?……一体、何の話だよ」
「…………べつの、機神……が、その……からだを、起こした」
「は……?」
そうして俺が見上げた空にもまた、2つソラを覆う天蓋が。
「アレ……かよ、あの球体2つが……そのどっちもが、機神だってのか……?」
「……!……しろ、くる……!」
「何がだよ!」
「こうげき……!」
「…………へ……?」
瞬間、一瞬の刹那、一筋の光のスキマより垣間見えたその光景は———。
空を裂く星霆。
気を焼く熱波。
場を滅す轟音。
まるで、この世の終わりでも、世界の終わりでも見たかのような、そんな幻想的で———神秘的で、絶望的な———あまりにも一瞬すぎて、もはやそんなことすら思う暇もないまま。
「…………っ、なん………だ………っ!」
「こう、げき。……それも、無差別に」
「おいおい、機神……なんだろ、仮にもこの都市の守護神なんだろ?!……そんなことあってたまるかよ、住民の避難は済んで……」
「…………どこまで、も……お人好し……なんだ、から」
ぎこちない発音の後、唇に小さなその人差し指が押し当てられる。
「んおっ?!」
「…………しろは、自分の心配を……して。……ただでさえ、人間は……軟弱、なんだから」
「お……おう、分かった、分かったよ……なんだか恥ずかしいな……」
「…………それで、指示……は……?」
「指示?」
「……そう、私に、何を……望むか、何を……してほしい、のか」
「どう戦うかを……お前に命令しろって?」
「そう」
何だ、それ。
俺はコイツと———アテナと、対等に立ったと、対等の関係にようやく立てたとそう思っていた。
ただ、何なんだ、それは。
まるで自分が、他人の命令通りに働く奴隷のような……そんな言い草じゃないか。
「…………命令、して」
「はあ……とりあえず、俺は地下に逃げる。地下はとりあえず……安全なんだろ?」
「………………さすが、に、地下は…………お父様、の、神核がある、から、しないと思う」
「……お前に戦えとは言わない、ただ……俺が地下に移動するまで、ひとまず守ってほしい」
「戦わなくて、いい、の?」
「お前はそのために、今ここにいるワケじゃないんだろ———」
次撃。
星をも穿つ陽火の矢、その轟音は、俺の耳にも突き刺さる。
「また、攻撃……かよ……!」
「キリ……が、ない…………!」
*◇*◇*◇*◇
『……それ、で、センはいつ…………『神爆』を使うの……?』
2発目の爆発、轟音が巻き起こった直後、くいなは僕に対して質問する。
「なんとか、別部隊……魔導大隊あたりと合流して、あの機神の神力障壁を破ってもらう。
その隙に撃ち込むしか———ない。今の僕たちの兵装じゃあ、あの神力障壁を破るのは不可能だ」
『……でも、機神は、2体…………だって、それに、魔導大隊……は、あっちで———』
「1体は沈黙を貫いている。そうでしょ、ヤンス?」
『まあ、比較的低空にて鎮座してる1体は……未だ攻撃を放ってないでヤンスが……その1体が攻撃してこないとも限らないでヤンスよ?』
「………………ならば、『キリエライトシールド』を用いるまでだ、タイミングが合わなければ……即死だけど」
キリエライトシールド。
文字通り、神の光の下にある盾、概念防護の一種だ。
人界王都、その地下深くにて、『核爆』として眠っていた、『機神ヘスティアの神核』から取り出し、その神核の一部を盾として、概念防護へと改変した代物だ。
その盾は、度重なる実験の末、ほぼ全ての攻撃を受け付けないことが判明している。
だからこその、今回の実戦導入なのだ。
いくら一部と、腐っていても元は神核。
故に、神の一撃をも防ぎ切るのではないか、となったわけだ。
……但し、元々は神の核である代物。
そんな人智を超えた超絶技術が、何のリスクもなく人類に扱えるはずもなく。
ただの一瞬の使用だけでも、この概念防護は辺り一帯から膨大な量の神力及び魔力を奪い取るのだ。
……と、普通に使ったら神力エネルギー不足による即衰弱死、全滅にも繋がる最悪に等しいデメリットがあるため、これを実体化させる時間は、僅か一瞬しかないのである。
だからこそ、その一瞬のタイミングを、どの攻撃に合わせるか、それが———鍵だ。
「……ひとまず、この部隊は魔導大隊との合流を目標として動く。……ただ、地上は火の海だ、なんとか地下から合流できる場所を探し出して———っ!」
無線を用いた僕の説明が終わりを告げた所以は、すぐそこに迫った誰かの足音であった。
絶え間なく砲撃の相次ぐ地上より、その轟音に紛れ聞こえてきた、たった2つのほんの小さな足音。
そこにいたのは。
「…………なあ、アテナ。……俺たち、なんで銃を向けられてんだ?」
「……………………さあ」
『白……さん?』
運命の出会いは、いつも唐突に。
その2つの影の正体———機神球体は、その1つは黒を増していき、その1つはだんだんと遠ざかっていくように小さく縮こまってゆく。
……何をする気だ……?
「……上から神力光線でも撃ちまくられたら厄介だ……全隊、地下へ避難しろ!……地上にて消し炭になるよりかはマシ……だと思う!」
『なんで急にそんな弱気になるでヤンスか……』
「アイツらが何をしでかすか分からないだろ?!……僕たちが戦ってるのは個の敵じゃない。………………国さえも覆う大敵、それがヤツらなんだから……っ!」
サイドツー15機、その全てが地下へと避難した数秒後———。
『おわああっ?!』
『…………なに、これ……!』
まるで地面を縦に振ったかの如き地響きが、その場———オリュンポス全域にて轟く。
「……そうか、ヤツら……地上の掃除に出たか……逃げ遅れたオリュンポス市民をも皆殺しにするつもりか……っ!」
『セン…………アレ、使える…………?』
くいなの呼び掛けに呼応するかの如く、僕が搭乗するサイドツー、その背中部分に取り付けられていた、黒き色をしたコンテナが瓦解する。
「……弾数はたったの3発。……使い所を間違えれば意味がない代物だ、……それに、今は絶対に……意味がない」
*◇*◇*◇*◇
ディルと別れた後、地上をフラフラと歩き続けていた俺は、唐突のアテナの発言に驚愕する。
「…………起きた」
「はい?!」
「起きた……?……一体、何の話だよ」
「…………べつの、機神……が、その……からだを、起こした」
「は……?」
そうして俺が見上げた空にもまた、2つソラを覆う天蓋が。
「アレ……かよ、あの球体2つが……そのどっちもが、機神だってのか……?」
「……!……しろ、くる……!」
「何がだよ!」
「こうげき……!」
「…………へ……?」
瞬間、一瞬の刹那、一筋の光のスキマより垣間見えたその光景は———。
空を裂く星霆。
気を焼く熱波。
場を滅す轟音。
まるで、この世の終わりでも、世界の終わりでも見たかのような、そんな幻想的で———神秘的で、絶望的な———あまりにも一瞬すぎて、もはやそんなことすら思う暇もないまま。
「…………っ、なん………だ………っ!」
「こう、げき。……それも、無差別に」
「おいおい、機神……なんだろ、仮にもこの都市の守護神なんだろ?!……そんなことあってたまるかよ、住民の避難は済んで……」
「…………どこまで、も……お人好し……なんだ、から」
ぎこちない発音の後、唇に小さなその人差し指が押し当てられる。
「んおっ?!」
「…………しろは、自分の心配を……して。……ただでさえ、人間は……軟弱、なんだから」
「お……おう、分かった、分かったよ……なんだか恥ずかしいな……」
「…………それで、指示……は……?」
「指示?」
「……そう、私に、何を……望むか、何を……してほしい、のか」
「どう戦うかを……お前に命令しろって?」
「そう」
何だ、それ。
俺はコイツと———アテナと、対等に立ったと、対等の関係にようやく立てたとそう思っていた。
ただ、何なんだ、それは。
まるで自分が、他人の命令通りに働く奴隷のような……そんな言い草じゃないか。
「…………命令、して」
「はあ……とりあえず、俺は地下に逃げる。地下はとりあえず……安全なんだろ?」
「………………さすが、に、地下は…………お父様、の、神核がある、から、しないと思う」
「……お前に戦えとは言わない、ただ……俺が地下に移動するまで、ひとまず守ってほしい」
「戦わなくて、いい、の?」
「お前はそのために、今ここにいるワケじゃないんだろ———」
次撃。
星をも穿つ陽火の矢、その轟音は、俺の耳にも突き刺さる。
「また、攻撃……かよ……!」
「キリ……が、ない…………!」
*◇*◇*◇*◇
『……それ、で、センはいつ…………『神爆』を使うの……?』
2発目の爆発、轟音が巻き起こった直後、くいなは僕に対して質問する。
「なんとか、別部隊……魔導大隊あたりと合流して、あの機神の神力障壁を破ってもらう。
その隙に撃ち込むしか———ない。今の僕たちの兵装じゃあ、あの神力障壁を破るのは不可能だ」
『……でも、機神は、2体…………だって、それに、魔導大隊……は、あっちで———』
「1体は沈黙を貫いている。そうでしょ、ヤンス?」
『まあ、比較的低空にて鎮座してる1体は……未だ攻撃を放ってないでヤンスが……その1体が攻撃してこないとも限らないでヤンスよ?』
「………………ならば、『キリエライトシールド』を用いるまでだ、タイミングが合わなければ……即死だけど」
キリエライトシールド。
文字通り、神の光の下にある盾、概念防護の一種だ。
人界王都、その地下深くにて、『核爆』として眠っていた、『機神ヘスティアの神核』から取り出し、その神核の一部を盾として、概念防護へと改変した代物だ。
その盾は、度重なる実験の末、ほぼ全ての攻撃を受け付けないことが判明している。
だからこその、今回の実戦導入なのだ。
いくら一部と、腐っていても元は神核。
故に、神の一撃をも防ぎ切るのではないか、となったわけだ。
……但し、元々は神の核である代物。
そんな人智を超えた超絶技術が、何のリスクもなく人類に扱えるはずもなく。
ただの一瞬の使用だけでも、この概念防護は辺り一帯から膨大な量の神力及び魔力を奪い取るのだ。
……と、普通に使ったら神力エネルギー不足による即衰弱死、全滅にも繋がる最悪に等しいデメリットがあるため、これを実体化させる時間は、僅か一瞬しかないのである。
だからこそ、その一瞬のタイミングを、どの攻撃に合わせるか、それが———鍵だ。
「……ひとまず、この部隊は魔導大隊との合流を目標として動く。……ただ、地上は火の海だ、なんとか地下から合流できる場所を探し出して———っ!」
無線を用いた僕の説明が終わりを告げた所以は、すぐそこに迫った誰かの足音であった。
絶え間なく砲撃の相次ぐ地上より、その轟音に紛れ聞こえてきた、たった2つのほんの小さな足音。
そこにいたのは。
「…………なあ、アテナ。……俺たち、なんで銃を向けられてんだ?」
「……………………さあ」
『白……さん?』
運命の出会いは、いつも唐突に。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる