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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
機神降臨³
鉄の壁に囲まれた、オリュンポスそのものを覆い尽くした黒き影。
その2つの影の正体———機神球体は、その1つは黒を増していき、その1つはだんだんと遠ざかっていくように小さく縮こまってゆく。
……何をする気だ……?
「……上から神力光線でも撃ちまくられたら厄介だ……全隊、地下へ避難しろ!……地上にて消し炭になるよりかはマシ……だと思う!」
『なんで急にそんな弱気になるでヤンスか……』
「アイツらが何をしでかすか分からないだろ?!……僕たちが戦ってるのは個の敵じゃない。………………国さえも覆う大敵、それがヤツらなんだから……っ!」
サイドツー15機、その全てが地下へと避難した数秒後———。
『おわああっ?!』
『…………なに、これ……!』
まるで地面を縦に振ったかの如き地響きが、その場———オリュンポス全域にて轟く。
「……そうか、ヤツら……地上の掃除に出たか……逃げ遅れたオリュンポス市民をも皆殺しにするつもりか……っ!」
『セン…………アレ、使える…………?』
くいなの呼び掛けに呼応するかの如く、僕が搭乗するサイドツー、その背中部分に取り付けられていた、黒き色をしたコンテナが瓦解する。
「……弾数はたったの3発。……使い所を間違えれば意味がない代物だ、……それに、今は絶対に……意味がない」
*◇*◇*◇*◇
ディルと別れた後、地上をフラフラと歩き続けていた俺は、唐突のアテナの発言に驚愕する。
「…………起きた」
「はい?!」
「起きた……?……一体、何の話だよ」
「…………べつの、機神……が、その……からだを、起こした」
「は……?」
そうして俺が見上げた空にもまた、2つソラを覆う天蓋が。
「アレ……かよ、あの球体2つが……そのどっちもが、機神だってのか……?」
「……!……しろ、くる……!」
「何がだよ!」
「こうげき……!」
「…………へ……?」
瞬間、一瞬の刹那、一筋の光のスキマより垣間見えたその光景は———。
空を裂く星霆。
気を焼く熱波。
場を滅す轟音。
まるで、この世の終わりでも、世界の終わりでも見たかのような、そんな幻想的で———神秘的で、絶望的な———あまりにも一瞬すぎて、もはやそんなことすら思う暇もないまま。
「…………っ、なん………だ………っ!」
「こう、げき。……それも、無差別に」
「おいおい、機神……なんだろ、仮にもこの都市の守護神なんだろ?!……そんなことあってたまるかよ、住民の避難は済んで……」
「…………どこまで、も……お人好し……なんだ、から」
ぎこちない発音の後、唇に小さなその人差し指が押し当てられる。
「んおっ?!」
「…………しろは、自分の心配を……して。……ただでさえ、人間は……軟弱、なんだから」
「お……おう、分かった、分かったよ……なんだか恥ずかしいな……」
「…………それで、指示……は……?」
「指示?」
「……そう、私に、何を……望むか、何を……してほしい、のか」
「どう戦うかを……お前に命令しろって?」
「そう」
何だ、それ。
俺はコイツと———アテナと、対等に立ったと、対等の関係にようやく立てたとそう思っていた。
ただ、何なんだ、それは。
まるで自分が、他人の命令通りに働く奴隷のような……そんな言い草じゃないか。
「…………命令、して」
「はあ……とりあえず、俺は地下に逃げる。地下はとりあえず……安全なんだろ?」
「………………さすが、に、地下は…………お父様、の、神核がある、から、しないと思う」
「……お前に戦えとは言わない、ただ……俺が地下に移動するまで、ひとまず守ってほしい」
「戦わなくて、いい、の?」
「お前はそのために、今ここにいるワケじゃないんだろ———」
次撃。
星をも穿つ陽火の矢、その轟音は、俺の耳にも突き刺さる。
「また、攻撃……かよ……!」
「キリ……が、ない…………!」
*◇*◇*◇*◇
『……それ、で、センはいつ…………『神爆』を使うの……?』
2発目の爆発、轟音が巻き起こった直後、くいなは僕に対して質問する。
「なんとか、別部隊……魔導大隊あたりと合流して、あの機神の神力障壁を破ってもらう。
その隙に撃ち込むしか———ない。今の僕たちの兵装じゃあ、あの神力障壁を破るのは不可能だ」
『……でも、機神は、2体…………だって、それに、魔導大隊……は、あっちで———』
「1体は沈黙を貫いている。そうでしょ、ヤンス?」
『まあ、比較的低空にて鎮座してる1体は……未だ攻撃を放ってないでヤンスが……その1体が攻撃してこないとも限らないでヤンスよ?』
「………………ならば、『キリエライトシールド』を用いるまでだ、タイミングが合わなければ……即死だけど」
キリエライトシールド。
文字通り、神の光の下にある盾、概念防護の一種だ。
人界王都、その地下深くにて、『核爆』として眠っていた、『機神ヘスティアの神核』から取り出し、その神核の一部を盾として、概念防護へと改変した代物だ。
その盾は、度重なる実験の末、ほぼ全ての攻撃を受け付けないことが判明している。
だからこその、今回の実戦導入なのだ。
いくら一部と、腐っていても元は神核。
故に、神の一撃をも防ぎ切るのではないか、となったわけだ。
……但し、元々は神の核である代物。
そんな人智を超えた超絶技術が、何のリスクもなく人類に扱えるはずもなく。
ただの一瞬の使用だけでも、この概念防護は辺り一帯から膨大な量の神力及び魔力を奪い取るのだ。
……と、普通に使ったら神力エネルギー不足による即衰弱死、全滅にも繋がる最悪に等しいデメリットがあるため、これを実体化させる時間は、僅か一瞬しかないのである。
だからこそ、その一瞬のタイミングを、どの攻撃に合わせるか、それが———鍵だ。
「……ひとまず、この部隊は魔導大隊との合流を目標として動く。……ただ、地上は火の海だ、なんとか地下から合流できる場所を探し出して———っ!」
無線を用いた僕の説明が終わりを告げた所以は、すぐそこに迫った誰かの足音であった。
絶え間なく砲撃の相次ぐ地上より、その轟音に紛れ聞こえてきた、たった2つのほんの小さな足音。
そこにいたのは。
「…………なあ、アテナ。……俺たち、なんで銃を向けられてんだ?」
「……………………さあ」
『白……さん?』
運命の出会いは、いつも唐突に。
その2つの影の正体———機神球体は、その1つは黒を増していき、その1つはだんだんと遠ざかっていくように小さく縮こまってゆく。
……何をする気だ……?
「……上から神力光線でも撃ちまくられたら厄介だ……全隊、地下へ避難しろ!……地上にて消し炭になるよりかはマシ……だと思う!」
『なんで急にそんな弱気になるでヤンスか……』
「アイツらが何をしでかすか分からないだろ?!……僕たちが戦ってるのは個の敵じゃない。………………国さえも覆う大敵、それがヤツらなんだから……っ!」
サイドツー15機、その全てが地下へと避難した数秒後———。
『おわああっ?!』
『…………なに、これ……!』
まるで地面を縦に振ったかの如き地響きが、その場———オリュンポス全域にて轟く。
「……そうか、ヤツら……地上の掃除に出たか……逃げ遅れたオリュンポス市民をも皆殺しにするつもりか……っ!」
『セン…………アレ、使える…………?』
くいなの呼び掛けに呼応するかの如く、僕が搭乗するサイドツー、その背中部分に取り付けられていた、黒き色をしたコンテナが瓦解する。
「……弾数はたったの3発。……使い所を間違えれば意味がない代物だ、……それに、今は絶対に……意味がない」
*◇*◇*◇*◇
ディルと別れた後、地上をフラフラと歩き続けていた俺は、唐突のアテナの発言に驚愕する。
「…………起きた」
「はい?!」
「起きた……?……一体、何の話だよ」
「…………べつの、機神……が、その……からだを、起こした」
「は……?」
そうして俺が見上げた空にもまた、2つソラを覆う天蓋が。
「アレ……かよ、あの球体2つが……そのどっちもが、機神だってのか……?」
「……!……しろ、くる……!」
「何がだよ!」
「こうげき……!」
「…………へ……?」
瞬間、一瞬の刹那、一筋の光のスキマより垣間見えたその光景は———。
空を裂く星霆。
気を焼く熱波。
場を滅す轟音。
まるで、この世の終わりでも、世界の終わりでも見たかのような、そんな幻想的で———神秘的で、絶望的な———あまりにも一瞬すぎて、もはやそんなことすら思う暇もないまま。
「…………っ、なん………だ………っ!」
「こう、げき。……それも、無差別に」
「おいおい、機神……なんだろ、仮にもこの都市の守護神なんだろ?!……そんなことあってたまるかよ、住民の避難は済んで……」
「…………どこまで、も……お人好し……なんだ、から」
ぎこちない発音の後、唇に小さなその人差し指が押し当てられる。
「んおっ?!」
「…………しろは、自分の心配を……して。……ただでさえ、人間は……軟弱、なんだから」
「お……おう、分かった、分かったよ……なんだか恥ずかしいな……」
「…………それで、指示……は……?」
「指示?」
「……そう、私に、何を……望むか、何を……してほしい、のか」
「どう戦うかを……お前に命令しろって?」
「そう」
何だ、それ。
俺はコイツと———アテナと、対等に立ったと、対等の関係にようやく立てたとそう思っていた。
ただ、何なんだ、それは。
まるで自分が、他人の命令通りに働く奴隷のような……そんな言い草じゃないか。
「…………命令、して」
「はあ……とりあえず、俺は地下に逃げる。地下はとりあえず……安全なんだろ?」
「………………さすが、に、地下は…………お父様、の、神核がある、から、しないと思う」
「……お前に戦えとは言わない、ただ……俺が地下に移動するまで、ひとまず守ってほしい」
「戦わなくて、いい、の?」
「お前はそのために、今ここにいるワケじゃないんだろ———」
次撃。
星をも穿つ陽火の矢、その轟音は、俺の耳にも突き刺さる。
「また、攻撃……かよ……!」
「キリ……が、ない…………!」
*◇*◇*◇*◇
『……それ、で、センはいつ…………『神爆』を使うの……?』
2発目の爆発、轟音が巻き起こった直後、くいなは僕に対して質問する。
「なんとか、別部隊……魔導大隊あたりと合流して、あの機神の神力障壁を破ってもらう。
その隙に撃ち込むしか———ない。今の僕たちの兵装じゃあ、あの神力障壁を破るのは不可能だ」
『……でも、機神は、2体…………だって、それに、魔導大隊……は、あっちで———』
「1体は沈黙を貫いている。そうでしょ、ヤンス?」
『まあ、比較的低空にて鎮座してる1体は……未だ攻撃を放ってないでヤンスが……その1体が攻撃してこないとも限らないでヤンスよ?』
「………………ならば、『キリエライトシールド』を用いるまでだ、タイミングが合わなければ……即死だけど」
キリエライトシールド。
文字通り、神の光の下にある盾、概念防護の一種だ。
人界王都、その地下深くにて、『核爆』として眠っていた、『機神ヘスティアの神核』から取り出し、その神核の一部を盾として、概念防護へと改変した代物だ。
その盾は、度重なる実験の末、ほぼ全ての攻撃を受け付けないことが判明している。
だからこその、今回の実戦導入なのだ。
いくら一部と、腐っていても元は神核。
故に、神の一撃をも防ぎ切るのではないか、となったわけだ。
……但し、元々は神の核である代物。
そんな人智を超えた超絶技術が、何のリスクもなく人類に扱えるはずもなく。
ただの一瞬の使用だけでも、この概念防護は辺り一帯から膨大な量の神力及び魔力を奪い取るのだ。
……と、普通に使ったら神力エネルギー不足による即衰弱死、全滅にも繋がる最悪に等しいデメリットがあるため、これを実体化させる時間は、僅か一瞬しかないのである。
だからこそ、その一瞬のタイミングを、どの攻撃に合わせるか、それが———鍵だ。
「……ひとまず、この部隊は魔導大隊との合流を目標として動く。……ただ、地上は火の海だ、なんとか地下から合流できる場所を探し出して———っ!」
無線を用いた僕の説明が終わりを告げた所以は、すぐそこに迫った誰かの足音であった。
絶え間なく砲撃の相次ぐ地上より、その轟音に紛れ聞こえてきた、たった2つのほんの小さな足音。
そこにいたのは。
「…………なあ、アテナ。……俺たち、なんで銃を向けられてんだ?」
「……………………さあ」
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運命の出会いは、いつも唐突に。
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※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
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