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6副委員長委員長共闘

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2ユニットさんにん共闘──そして再び。

緑針鼠を電磁スライムウィップの作る網に捉えてここで充瞳の予想通りの敵のアクション、抜け抜けとやって来た赤玉の連携。

まんまと青線のゴールへと向かうその軌道、敵を前へと誘き寄せる事に成功。キマイラは同時に全速力で走り交差する直前の赤玉を蹴り飛ばした。

炸裂した巨脚のサッカーボールキックで彼方へと飛んでいった1匹を余所に。
すぐさま捕らえた緑のハンマーを操り、隙を突き仕掛けて来ていた紫へと──横殴りに衝突させ同時に粉砕調理。

敗北のミドリムラサキの爆炎が混じり合っていく。

そして野の彼方で立ち直った余りモノの赤は既に青く捕縛。

最後に赤ハリネズミのハンマーをビュンビュンと凄まじい風を切る音の後、程よく数の減っていた空飛ぶ残りの編隊へとキマイラは思いっきり投げつけた。

「────ソコナシ三丁+何羽上がりィィ!」

『だいばくはつ……もうあがったの?』

「すすすすすらっと電量大爆発やったあああああガッタァァァ」


電量を惜しみなく纏わせたスライムウィップの網はやがて赤玉をきつく縛りビリビリとタイミングよく大爆発。鳥ドリを色とりどりに巻き込む大勝利の色が、猿顔チワワ顔の見据えるオレンジ夕暮れにとてつもなく広がっていった。



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▽▽▽



夕陽も色が薄まりすんと沈みかけているその後────敵に見つかりにくい所定の位置に置いていたカプセルドックへとキマイラとチワワスナイパーそれぞれを電量弾丸の補給、破損箇所の修理をすべくキッチリと戻し格納させた。

並々ならぬ本日の激しいロボット戦も終わり──伸びて煌めいた赤と青の光が湖のナカからほとりへと降り立ち、地上で出会った3人は、

「ハピスケ特盛フルーツサンドの宴会はーーーー」

「特盛宴会もいいけどさぁとりあえず東のハッピーの実家に帰る!」

「そっかぁ? イーンチョウは?」

やはり青い粘液体スライムの女の子が元気にしゃべっている……。物珍しさから訝しみたくなる目と顎に手をやる失礼をこらえた委員長沼津はその問いに答えた。

「……私はさっき食べたから」

無邪気に近付き覗き込むスライム王女は彼女のそのホイップのアトを見つけて、そっかー、ぽん、と手を打ち納得したようで──

「って待て!」

「お茶請け……食べたらダメだった? あ、皿」

「ちがちがちがう! フルーツサンドと消えた安っすいフリーマーケットの皿をそんな僻むか! じゃなくってスライム王女なんでおれがハピスケで委員長がイインチョなんだぁ!」

「んーーーー、ハピスケギンガハッピース!」

「……ギンガハッピース」

「ギンガァァァハッピース!!! ってなるかぁ! ……まぁいいまぁいいや! ならいくぞ勝利のギンガハッピースゥゥゥ!!!」

「「ソコナシギンガハッピース!!!」」
「ソコナシギンガハッピース」



本日ハッピースライムヤードの地にて、時間を共にした特別な3人、最後のハイテンションのVサイン夕日と共に沈みゆく。



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▽▽▽



勝利のVサインの後に押忍とマジナイを唱えてふたり無事に東の森から現世へと戻ってきた。


▼充瞳の部屋▼


部屋を明るく包んでいたミドリの光が四角く収まり止んでいき────


「ふぃぃやぁ……」

「……」

男子学生はゆっくりと高く本日のロボットバトルの成果を振り返り味わうように伸びつつ────バッと両腕を打ち下ろした。


「って……ことで?」

「……ハッピースライムヤ」
「生クリィィィィーム」

見つめ合い、沼津が何かを話そうとしたところ謎の生クリーム絶叫に遮られた。

少し大きくそのクールな目を見開いてしまった彼女は、男が絶叫のちに指し示した口元の斜め下のポイントを真似し。

さっと指でその違和感を確認した。

自分では気付かなかった白がソコにあり、詰めが甘く味わいノコした恥ずかしさというよりはそれ以上に味わった目まぐるしさ。

「はははは助かったぜヌマズさん委員長! じゃ俺は風呂おおおお連続サンマイ天才スナイプさんきゅーー」

ドタドタドタドタ、綺麗なガーネットの瞳、元気な表情はまた背を見せ駆けてゆく。

『こうしてハッピースライムヤードの超平和は守られたのであった。ってな!!! ふふーー』

部屋から部屋まで響いて知らせる本日のまとめであるナレーションのち、

ひとり散らかる男子学生の部屋に取り残された委員長沼津。
凛と、というよりはぼーっと突っ立ちやがてゆっくりと動き出した。

異常なテンションを目の当たりにし……目の前に脱ぎ捨てられたダラシのない臙脂色のブレザーをひとつ拾い──ひとつゆっくりと確かな瞬きをし、ごしごしと──まだ残る口元のソレをハンカチではなく見当違いの渋いアカイロで拭っていた。

ひとつ黒く長い艶髪をリセットするようにかき上げて。



▼▼▼
▽▽▽



回鍋肉を食べている。

風呂上がりに回鍋肉を食べている。

キャベツがシャキッとうまい。

そして。

冷静になってみるとこれやばい状況なんじゃないのか。

俺は何故か風呂上がりで委員長を待たせていて。

待っている間に委員長が俺の家で回鍋肉を炊いている。

いや、回鍋肉は炊かない。

よし、充瞳は冷静だ。


何を話しかけようか……。



「「ハッピースライムヤ」」

「……」

「……だよな!」


黙々と食す食卓にて、切り出した同じハッピーワード。

2人だけの秘密の会談がすべりだし始まっていった。






タコイカ学習帳でハッピースライムヤードについてそこそこ事前に学習済みの彼女は、充瞳の話す内容にすんなりと納得したようで……。

ハッピースライムヤードと石盤についての大まかな説明は終わり、ここから先はあのゲームのような世界の現在保有する戦力について……尽きない話は次のもう少し踏み込んだ段階へと移っていった────

「だからたのむゥゥゥプテラノドンの編隊を倒すにはどう考えてもチワワが必要なんだよ!」

「きみ、チワワに乗ればいいのでは? それでそのキマ」

「あーダメダメダメ! キマイラは俺1人でも元気印の王女ひとりでも動かせても針鼠に敵わない扱いづらい合体ロボットなんだって! 見たろあの姑息な延々針千本で中距離射撃のハリネズミ三兄弟を! ほらタコイカのこのページ参照だ」

タコイカ学習帳のキマイラに関するページをバンっと開き、彼女は黙々と示された充瞳直筆の資料を読み────


「…………放課後」

「ん?」


発した一言がなんであったのか、何を意味するのか充瞳は目をバキバキと充血させていき彼女の表情を、テーブルに両手をつき前のめりに覗き込んでいき。


「放課後だけならいいわ」


確かに聞こえた──ながい髪をかきながら右耳を裸にし確かにその油艶めく唇から彼女は発した。

「うおおおおマジか!」

チカラが込められる両腕はその行き場をテーブルへと放ち、漆の器に入った豆腐のお味噌汁の沈んだ水面が揺れる。

その愚行のテーブルマナーに右手で制してゆっくりと、凛と姿勢正しく座る委員長沼津は待ったをかけた。

「ただしキミ副委員長。もう少し底無高校、学校行事の事にも協力的であってほしい、と私はおもう」

彼、副委員長は手を置いたままの前のめりで熱く目を凝らし耳を良く立て静止。

「おっ、おうそりゃもちろん! ……職務に励ませてもらいます!」

「……よろしい、とおもう」

その変わらず制す右手の平と箸左持ち、目を瞑りクールにゆっくりと頷いた彼女の姿勢はただの1クラスの委員長と言うより────彼の目には世界で唯一の観音様のように後光がさしてみえたのかもしれない。


そして何度も頷きながら彼はうるさく自席へと落ち着いた。


「ア、回鍋肉ホイップ」

「えどこ、て回鍋肉ホイップゥゥゥ!?」


風呂上がりの彼は回鍋肉のタレがべったりと口元についていた事には気付かず。

油タレ艶めく満面のスマイルとともに、彼女の気配りのティッシュを確かに受け取った。

委員長沼津は微かにその口角を上げた。



▽▽▽
▽▽▽



「あ、回鍋肉めっちゃ美味かったわ! キャベツシャキッとで! アレどうなってんの委員長! あんなの食ったことないぞ!? たっぶん、俺がヤルときっとシナシナだよなぁ?」

「……5分水にさらす」

「ええええ回鍋肉を!?」

「もちろんキャベツ、回鍋肉という括りをさらすのは何か違うとおもう。豚肉はさらしちゃダメ」

「……だよな!!!」



彼が優雅に鼻歌まじりでお湯に浸かっている間にもキャベツは5分水にさらす、彼女が言うにはそうする事でよりシャキッと仕上がるらしい。
サブ戦力であるピーマンは冷蔵庫に無かったがその分はキャベツに全精力を……。
ネムっていた企業努力の回鍋肉のモトを使ったが努力足らずで甘すぎたので唐辛子を少し加えたようだ。


(それなりに上手くできたようね……回鍋肉は、何度か作ったことがある、得意)


2人は冷凍の余りご飯と定番の豆腐のお味噌汁、キャベツシャキッとな本格回鍋肉を味わい尽くし完食。

するとそそくさと白シャツの腕をまくり、
食器洗い物の後片付けは家主として副委員長として彼がキチンとシャキッとやってくれたようだ。

そのヘンに熱心な背姿をちらりとのぞいた彼女はまたすこし遠目にワラっていた。
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