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第252死 丘梨栄枯vs死の指導者マザー・テン

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 小細工無しの火花は散る────三合打ち合い離れた。素速くかち合ったエメラルドとブラックは味わうように……またはパパッと敵の正体を見極めるように。

 構え、唾を飲み、再び仕掛け合い合わさる事でのみ成す美しい煌めきを幾度も咲かせ交わり合う。

 黒いキャップに抑えられたダイヤモンドの髪は妖しく乱れ動き、躍動する黒と黄の戦士は煌びやかな宝石の戦士が持つエメラルドの矛の長い間合いに臆せず飛び込んでいく。

 星の瞬きのバックライトよりも、宇宙は混ざり合うふたり色に染め上がっていく。


「GMにはもう少し成熟を待てと言われましたが、気に入ったんですよあなたを、あなたという存在を。あなたのような人がフツウに死ぬなんてイヤです。私はこの塔で独り待ち丘梨栄枯、ナントあなたは独り駆けて来た! ここまで並々ならぬ敵を打ち倒したそのチカラも資格も十分ッ対峙した予感は予想以上に遥かにドキドキとッ高鳴るッ……なのであなたを私の手元へと収め連れて帰ります!」

「大変熱心な情報量満載のようですがもはや理解不能ですよ、ええ!」

「私からのプレゼントなのですよ。私は機人としてあなたは人としてやがて人と機人を導く女王になるのです! 二人でヒトツの」

「女王? ……ふふっ、そんな突飛なプレゼントははじめて聞きましたが! カタチのないカオスなモノよりお金でいいです、ええ! パパッと褒美を受け取って帰りますので! 折れてください!」

「いいえ、折れませんっ! フフフ、カタチならばそこにもあります。フフ、最初のイチマイメから。あなたにもっともっと知ってほしいのです」

「いちまいめ…………ッ余計な付属パーツはあなたの仕業でしたか、ふふふふ、チンキス!」

 激しく撃ち合う最中────丘梨栄枯の包丁捌きを巧みにいなすエメラルドハルバード、そのまだ余裕を含ませるようなマザーテンの斬り合いの中で浮かべる笑みに対して。

 かち合った刃と刃、体と体が押し合い離れる、

 すぐさま、

 爆発させたチンキスブレードで黄色いスポーティーは平面の宇宙ステージの上を滑っていく、思った以上に伸びた左脚はマザーの予期しない奇襲。

 一瞬の間、めり込んだ足裏から召喚し突き刺さる果物ナイフ。

 浴びせたスキルチンキスで果物ナイフから放出した栄枯の死電子が敵を拘束し続ける。

 そしてまたブラックな包丁をしっかりと握りすぐさま追撃を仕掛けた。

 油断はしない微笑まず走る必勝パターンに──口角を上げた表情からビュンと勢いよく一瞬にして迫った弾丸────。

 ブラックな刀身はその一瞬の煌めきを受け止めきれず構えた後ろの長身は激しく一直線に吹き飛び──やがて左手を突き宙返りの受身で、強烈なベクトルを緩和しながら体勢をなんとか踏ん張り引き摺られながらも整えた。

 黄色い二足はやがて滑り止まり、猫のような身のこなしで尻餅を着かず堪えた。前傾しその前足を出したファイティングポーズで遠方のターゲットを見つめる。

 弾丸ではない投擲したエメラルドハルバードは、ぶわりと、黒帽に翳る笑みの手元へと返ってきた。乱れたダイヤモンドの艶めく髪をあまった左手で整えながら……。

「────やはりあなたは特別なピース。時代とヒトに望まれた子です。さぁそのチカラを行使しその美貌で大宇宙を彩るホシとなりッ、私とともに生きましょう!」

 黒いナイフはいつの間にやら栄枯の足元に返され突き刺さる。

 ただただ流れる両者の間に、

 エメラルドの一刺を受け止め痺れる右腕はゆっくりと確かな力が込められていき、仕掛けて来ないマザー・テンの顔にしっかりとその目を向けたまま。

 試し合う僅かな戦闘時間に滲む汗は……出し惜しみの出来ない相手だと、前を向いたまま立ち直った丘梨栄枯は右手に握る刃の出力を上げた。
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