ポメガバって異世界転移したら、冷酷王子に飼われて溺愛されました

夏芽玉

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5.結婚

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 二人にはこの後それぞれ予定があるらしく、オレたちはすぐに彼女の部屋を出ることになった。
 ということで、オレはまた城の廊下を王子に抱えられたまま移動している。

 うーん、やっぱり人々の視線が痛い……

 城内には、グエナエル王子のお母さんのように好意的な視線を向けてくれる人が全然居ないのだ。
 なんとかして彼の元を逃げ出して、他の誰かに可愛がってもらおうと思っていたけれど、この様子じゃ他の人に近寄ることは難しそうだ。下手したら魔物と間違われて殺されてしまいかねない。ポメラニアンって万国共通の可愛い生き物だと思ってたんたけど、なんでぇ!?

 あ。実は、これは終電で爆睡しているオレが見た夢ってことはないかな!?
 夢だったら、もう覚めてくれてもいいんだけど……

 そんなことを考えていたら、正面からエンジ色のドレスを着た女性がやってきた。
 こげ茶色の髪を高く結い上げて、隙のない化粧をしている。服装が派手というわけではないのだけど、なんというか印象が派手だ。
 正面から来た人影に気づくと、グエナエル王子はすっと端に避けて彼女に道を譲った。

 おお!? もしかして、彼より身分が高い人なのかな!?

 オレは王子の腕の中から、思わずその女性をじっと見た。
 そしたら、彼女とばっちり目が合ってしまった。不快そうに、細い眉毛がクイッと上がる。

 わわわ、あんまりジロジロと見たらダメだったかな!?
 慌てて首をひっこめたけれど、彼女はグエナエル王子の前で足を止めた。

「その汚い生き物はなんです?」

 ひゃっ!!
 早速冷ややかな言葉を投げつけられてしまった。

「私の自慢のペットのビジュです」

 しかし、グエナエル王子も負けてはいない。
 相変わらず温度のない声でシレッと言い返す。

「なにをふざけたことを……」
「ふざけてなどいませんよ」

 二人は仲が悪いみたいで、このやり取りの間に挟まれるのはなんとも居心地が悪い。

「この国の第二王子として相応しい振る舞いをなさいませ」
「だから、こうして皆に見せびらかしているのですよ。これは私のモノだと」

 ええ!? オレ、見せびらかされていたの!?
 痛い視線にさらされて、何の苦行を強いられてるのかと思ったぞ!?

「でないと、殺されてしまいますからね」

 ひぃっ!? どーゆーこと!?
 やっぱりポメラニアンはここでは魔物扱いなの!? 誰か教えて……!!
 助けを求めてドニのほうを見たけれど、我関せずという表情をしていた。

「もうすぐジェレールの婚約者が我が国に到着します」
「そのようですね」
「この国の第一王子はジェレールです。彼が結婚を控えている大事な時期に、外聞の悪いことはおよしなさい」

 そう言い捨てると彼女はそのまま廊下を進んでいった。

 結婚……

 その言葉はオレの胸に重く響いたのだった。

 
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