ポメガバって異世界転移したら、冷酷王子に飼われて溺愛されました

夏芽玉

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52.自己紹介

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 ようやく身体の疼きが治まったのは、昼頃になってからだった。
 身体はすっきりしたけれど、射精しすぎて色々空っぽになった気がする。それでも、使い過ぎた尻が腫れて痛むようなことはなかったし、結構無茶な体勢で交わっても腰が痛むようなこともなかった。

 そういえば、ピアスを開けたときも耳を舐められたら痛みはなくなったし、前回の発情期もあれやこれやとヤりまくったにも関わらず、何故か腰も尻もノーダメージで、オレはその後すぐに城内を走り回っている。オレは今までも、知らないうちにグエンの能力の恩恵にあやかっていたようだ。

 グエンの治癒能力はすごく便利だけど、そのおかげで調子に乗ってヤりすぎたような気がしないでもない。




「……なぁ、今更なんだけどさ。自己紹介しない?」

 ベッドから身体を起こしてオレは言った。
 二人ともまだ裸のままだけど、まぁいいや。
 だって機会を逃すと、ズルズルと後回しになっちゃうし……

「自己紹介?」
「だって。オレたち、お互いのことあんまり知らないから」

 こっちの世界に来てから、約一か月。その間、ずっとグエンとは一緒に居たけれど、まともに会話ができるような時間は今までほとんどなかった。
 だって、オレはポメラニアンの姿をしているか、グエンとエッチなことをしているかのどちらかだったから。
 昨日、ようやくグエンのことを少し知ることができたけれど、まだまだオレはグエンのことを知りたいと思う。

「オレは、氏木うじき翔太しょうた。あ、翔太が名前で、氏木が名字……ファミリーネームね。で、26歳」
「26歳……?  てっきり18歳くらいかと……」
「日本人は若く見えるの! そういう人種なの!!」

 ……まさか、そんな年齢トシに見られていたとは。まだオッサンと言われる年齢ではないとはいえ、別に童顔というわけでもないのに……グエンに真剣な顔で驚かれて、オレはがっくりとした。ほら、やっぱり自己紹介は必要じゃないか。

「一応、会社では大口の取引先も任されるし、結婚して家庭をもつ人もでてくるくらいの年齢なんだけど……」

 あ。結婚と言えば……礼央の結婚式でのスピーチを引き受けるかどうか、返事を保留にしたままだ。こっちの世界では一ヶ月くらい経っているけれど、元の世界ではどのくらいの時間が経っているのだろうか。返事をあまり待たせるのは良くないと思うんだけど……

「会社……?」

 聞き慣れない単語をグエンが聞き返す。

「えぇと。仕事をするところ。向こうの世界では、会社が作った商品をお客さんに沢山売れるように紹介したり交渉したりするのがオレの仕事で……」
「つまりビジュは大型商店に勤める商人だったということかな」
「うーん、多分、だいたいそんな感じ!」

 こっちの世界の大型商店に勤める商人の生態があまりよく分からないけれど、物を売っていたわけなので、大雑把には商人ってことでいいだろう。

「ところでさ。……二人っきりの時は、翔太って呼んでもらってもいい?」
「えぇと、ショータ?」

 そう言うと、グエンが戸惑ったようにオレの名前を呼んだ。
 言い方は少しぎこちなかったけれど、久しぶりに自分の名前を呼ばれて頬が緩む。好きな人に名前を呼ばれるくすぐったさをオレは噛み締めた。

「ショータは、ビジュと呼ばれるのは嫌だったか?」

 心配そうにグエンに問い掛けられて、オレは首を横に振った。
 グエンがつけてくれた名前は嫌いじゃないし、すでにあだ名みたいにオレに定着しているけれど、やっぱり本当の名前はオレにとっては特別だ。
 だから、オレはグエンにお願いした。

「みんなの前ではビジュでいいよ。この世界でその名前を呼ぶのは、グエンだけがいい」
「そうか……ショータ」
「ん、なに?」

 大切そうに名前を呼ばれて、オレは思わずはにかみながら返事をした。

「ショータ、好きだ」
「オレも、グエンが好きだよ」

 名前を呼ばれただけでも、胸がものすごくドキドキする。見つめ合ってお互いに好きだと言うと、心の中にじんわりと温かい気持ちが広がっていった。そしてオレたちは、しばらくじゃれつくようなキスをした。


「……それじゃあ、次はグエンの番。自己紹介して」

 キスをしていた唇が離れると、オレはものすごく照れ臭くなってしまって、そう言った。

「グエナエル・ド・ラ・ラグマット。20歳だ」

 は・た・ち。
 見た目と普段の言動から同い年タメか年上かと思っていたけれど、めっちゃ年下だった。うそぉ。
 今まで、6歳も年下に色々とお世話をされ、ベッドの中ではイイように翻弄されていたのか。その事実に、オレは軽くショックを受けた。

「知っての通り、この国の第二王子だ。他には……ショータは何が知りたい?」
「んー、そうだなぁ……好きな食べ物とか、好きなこととか、それから……」

 オレたちはお互いに知りたいことを質問し合った。そして、時々身体に触れたり、キスをしたりしながら、沢山話をした。

 ちなみに、グエンの味覚音痴疑惑だけど、ジェレール王子の仕込んだ毒の味はちゃんと認識できていたようだ。ということで、認識しながらあんなものをパクパク食べていたグエンの感覚がおかしかっただけということが分かった。


 パーティーでグエンに毒を盛ったのが誰かは、わからないままだった。
 オレはジェレール王子のせいだと知っていたけれど、証拠がない。「ジェレール王子からもらった物は食べないで」ということしかできなかった。


 だから、これからは、ジェレール王子の用意した毒入りのものは食べないことを約束してもらった。
 いくら無効化できると言っても、最初にグエンが倒れたときはびっくりしたし、顔色の悪いグエンはそう何度も見たいものじゃない。
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