52 / 91
52.自己紹介
しおりを挟む
ようやく身体の疼きが治まったのは、昼頃になってからだった。
身体はすっきりしたけれど、射精しすぎて色々空っぽになった気がする。それでも、使い過ぎた尻が腫れて痛むようなことはなかったし、結構無茶な体勢で交わっても腰が痛むようなこともなかった。
そういえば、ピアスを開けたときも耳を舐められたら痛みはなくなったし、前回の発情期もあれやこれやとヤりまくったにも関わらず、何故か腰も尻もノーダメージで、オレはその後すぐに城内を走り回っている。オレは今までも、知らないうちにグエンの能力の恩恵にあやかっていたようだ。
グエンの治癒能力はすごく便利だけど、そのおかげで調子に乗ってヤりすぎたような気がしないでもない。
「……なぁ、今更なんだけどさ。自己紹介しない?」
ベッドから身体を起こしてオレは言った。
二人ともまだ裸のままだけど、まぁいいや。
だって機会を逃すと、ズルズルと後回しになっちゃうし……
「自己紹介?」
「だって。オレたち、お互いのことあんまり知らないから」
こっちの世界に来てから、約一か月。その間、ずっとグエンとは一緒に居たけれど、まともに会話ができるような時間は今までほとんどなかった。
だって、オレはポメラニアンの姿をしているか、グエンとエッチなことをしているかのどちらかだったから。
昨日、ようやくグエンのことを少し知ることができたけれど、まだまだオレはグエンのことを知りたいと思う。
「オレは、氏木翔太。あ、翔太が名前で、氏木が名字……ファミリーネームね。で、26歳」
「26歳……? てっきり18歳くらいかと……」
「日本人は若く見えるの! そういう人種なの!!」
……まさか、そんな年齢に見られていたとは。まだオッサンと言われる年齢ではないとはいえ、別に童顔というわけでもないのに……グエンに真剣な顔で驚かれて、オレはがっくりとした。ほら、やっぱり自己紹介は必要じゃないか。
「一応、会社では大口の取引先も任されるし、結婚して家庭をもつ人もでてくるくらいの年齢なんだけど……」
あ。結婚と言えば……礼央の結婚式でのスピーチを引き受けるかどうか、返事を保留にしたままだ。こっちの世界では一ヶ月くらい経っているけれど、元の世界ではどのくらいの時間が経っているのだろうか。返事をあまり待たせるのは良くないと思うんだけど……
「会社……?」
聞き慣れない単語をグエンが聞き返す。
「えぇと。仕事をするところ。向こうの世界では、会社が作った商品をお客さんに沢山売れるように紹介したり交渉したりするのがオレの仕事で……」
「つまりビジュは大型商店に勤める商人だったということかな」
「うーん、多分、だいたいそんな感じ!」
こっちの世界の大型商店に勤める商人の生態があまりよく分からないけれど、物を売っていたわけなので、大雑把には商人ってことでいいだろう。
「ところでさ。……二人っきりの時は、翔太って呼んでもらってもいい?」
「えぇと、ショータ?」
そう言うと、グエンが戸惑ったようにオレの名前を呼んだ。
言い方は少しぎこちなかったけれど、久しぶりに自分の名前を呼ばれて頬が緩む。好きな人に名前を呼ばれるくすぐったさをオレは噛み締めた。
「ショータは、ビジュと呼ばれるのは嫌だったか?」
心配そうにグエンに問い掛けられて、オレは首を横に振った。
グエンがつけてくれた名前は嫌いじゃないし、すでにあだ名みたいにオレに定着しているけれど、やっぱり本当の名前はオレにとっては特別だ。
だから、オレはグエンにお願いした。
「みんなの前ではビジュでいいよ。この世界でその名前を呼ぶのは、グエンだけがいい」
「そうか……ショータ」
「ん、なに?」
大切そうに名前を呼ばれて、オレは思わずはにかみながら返事をした。
「ショータ、好きだ」
「オレも、グエンが好きだよ」
名前を呼ばれただけでも、胸がものすごくドキドキする。見つめ合ってお互いに好きだと言うと、心の中にじんわりと温かい気持ちが広がっていった。そしてオレたちは、しばらくじゃれつくようなキスをした。
「……それじゃあ、次はグエンの番。自己紹介して」
キスをしていた唇が離れると、オレはものすごく照れ臭くなってしまって、そう言った。
「グエナエル・ド・ラ・ラグマット。20歳だ」
は・た・ち。
見た目と普段の言動から同い年か年上かと思っていたけれど、めっちゃ年下だった。うそぉ。
今まで、6歳も年下に色々とお世話をされ、ベッドの中ではイイように翻弄されていたのか。その事実に、オレは軽くショックを受けた。
「知っての通り、この国の第二王子だ。他には……ショータは何が知りたい?」
「んー、そうだなぁ……好きな食べ物とか、好きなこととか、それから……」
オレたちはお互いに知りたいことを質問し合った。そして、時々身体に触れたり、キスをしたりしながら、沢山話をした。
ちなみに、グエンの味覚音痴疑惑だけど、ジェレール王子の仕込んだ毒の味はちゃんと認識できていたようだ。ということで、認識しながらあんなものをパクパク食べていたグエンの感覚がおかしかっただけということが分かった。
パーティーでグエンに毒を盛ったのが誰かは、わからないままだった。
オレはジェレール王子のせいだと知っていたけれど、証拠がない。「ジェレール王子からもらった物は食べないで」ということしかできなかった。
だから、これからは、ジェレール王子の用意した毒入りのものは食べないことを約束してもらった。
いくら無効化できると言っても、最初にグエンが倒れたときはびっくりしたし、顔色の悪いグエンはそう何度も見たいものじゃない。
身体はすっきりしたけれど、射精しすぎて色々空っぽになった気がする。それでも、使い過ぎた尻が腫れて痛むようなことはなかったし、結構無茶な体勢で交わっても腰が痛むようなこともなかった。
そういえば、ピアスを開けたときも耳を舐められたら痛みはなくなったし、前回の発情期もあれやこれやとヤりまくったにも関わらず、何故か腰も尻もノーダメージで、オレはその後すぐに城内を走り回っている。オレは今までも、知らないうちにグエンの能力の恩恵にあやかっていたようだ。
グエンの治癒能力はすごく便利だけど、そのおかげで調子に乗ってヤりすぎたような気がしないでもない。
「……なぁ、今更なんだけどさ。自己紹介しない?」
ベッドから身体を起こしてオレは言った。
二人ともまだ裸のままだけど、まぁいいや。
だって機会を逃すと、ズルズルと後回しになっちゃうし……
「自己紹介?」
「だって。オレたち、お互いのことあんまり知らないから」
こっちの世界に来てから、約一か月。その間、ずっとグエンとは一緒に居たけれど、まともに会話ができるような時間は今までほとんどなかった。
だって、オレはポメラニアンの姿をしているか、グエンとエッチなことをしているかのどちらかだったから。
昨日、ようやくグエンのことを少し知ることができたけれど、まだまだオレはグエンのことを知りたいと思う。
「オレは、氏木翔太。あ、翔太が名前で、氏木が名字……ファミリーネームね。で、26歳」
「26歳……? てっきり18歳くらいかと……」
「日本人は若く見えるの! そういう人種なの!!」
……まさか、そんな年齢に見られていたとは。まだオッサンと言われる年齢ではないとはいえ、別に童顔というわけでもないのに……グエンに真剣な顔で驚かれて、オレはがっくりとした。ほら、やっぱり自己紹介は必要じゃないか。
「一応、会社では大口の取引先も任されるし、結婚して家庭をもつ人もでてくるくらいの年齢なんだけど……」
あ。結婚と言えば……礼央の結婚式でのスピーチを引き受けるかどうか、返事を保留にしたままだ。こっちの世界では一ヶ月くらい経っているけれど、元の世界ではどのくらいの時間が経っているのだろうか。返事をあまり待たせるのは良くないと思うんだけど……
「会社……?」
聞き慣れない単語をグエンが聞き返す。
「えぇと。仕事をするところ。向こうの世界では、会社が作った商品をお客さんに沢山売れるように紹介したり交渉したりするのがオレの仕事で……」
「つまりビジュは大型商店に勤める商人だったということかな」
「うーん、多分、だいたいそんな感じ!」
こっちの世界の大型商店に勤める商人の生態があまりよく分からないけれど、物を売っていたわけなので、大雑把には商人ってことでいいだろう。
「ところでさ。……二人っきりの時は、翔太って呼んでもらってもいい?」
「えぇと、ショータ?」
そう言うと、グエンが戸惑ったようにオレの名前を呼んだ。
言い方は少しぎこちなかったけれど、久しぶりに自分の名前を呼ばれて頬が緩む。好きな人に名前を呼ばれるくすぐったさをオレは噛み締めた。
「ショータは、ビジュと呼ばれるのは嫌だったか?」
心配そうにグエンに問い掛けられて、オレは首を横に振った。
グエンがつけてくれた名前は嫌いじゃないし、すでにあだ名みたいにオレに定着しているけれど、やっぱり本当の名前はオレにとっては特別だ。
だから、オレはグエンにお願いした。
「みんなの前ではビジュでいいよ。この世界でその名前を呼ぶのは、グエンだけがいい」
「そうか……ショータ」
「ん、なに?」
大切そうに名前を呼ばれて、オレは思わずはにかみながら返事をした。
「ショータ、好きだ」
「オレも、グエンが好きだよ」
名前を呼ばれただけでも、胸がものすごくドキドキする。見つめ合ってお互いに好きだと言うと、心の中にじんわりと温かい気持ちが広がっていった。そしてオレたちは、しばらくじゃれつくようなキスをした。
「……それじゃあ、次はグエンの番。自己紹介して」
キスをしていた唇が離れると、オレはものすごく照れ臭くなってしまって、そう言った。
「グエナエル・ド・ラ・ラグマット。20歳だ」
は・た・ち。
見た目と普段の言動から同い年か年上かと思っていたけれど、めっちゃ年下だった。うそぉ。
今まで、6歳も年下に色々とお世話をされ、ベッドの中ではイイように翻弄されていたのか。その事実に、オレは軽くショックを受けた。
「知っての通り、この国の第二王子だ。他には……ショータは何が知りたい?」
「んー、そうだなぁ……好きな食べ物とか、好きなこととか、それから……」
オレたちはお互いに知りたいことを質問し合った。そして、時々身体に触れたり、キスをしたりしながら、沢山話をした。
ちなみに、グエンの味覚音痴疑惑だけど、ジェレール王子の仕込んだ毒の味はちゃんと認識できていたようだ。ということで、認識しながらあんなものをパクパク食べていたグエンの感覚がおかしかっただけということが分かった。
パーティーでグエンに毒を盛ったのが誰かは、わからないままだった。
オレはジェレール王子のせいだと知っていたけれど、証拠がない。「ジェレール王子からもらった物は食べないで」ということしかできなかった。
だから、これからは、ジェレール王子の用意した毒入りのものは食べないことを約束してもらった。
いくら無効化できると言っても、最初にグエンが倒れたときはびっくりしたし、顔色の悪いグエンはそう何度も見たいものじゃない。
34
あなたにおすすめの小説
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件
りゆき
BL
俺の部屋の天井から降って来た超絶美形の男。
そいつはいきなり俺の唇を奪った。
その男いわく俺は『運命の相手』なのだと。
いや、意味分からんわ!!
どうやら異世界からやって来たイケメン。
元の世界に戻るには運命の相手と結ばれないといけないらしい。
そんなこと俺には関係ねー!!と、思っていたのに…
平凡サラリーマンだった俺の人生、異世界人への嫁入りに!?
そんなことある!?俺は男ですが!?
イケメンたちとのわちゃわちゃに巻き込まれ、愛やら嫉妬やら友情やら…平凡生活からの一転!?
スパダリ超絶美形×平凡サラリーマンとの嫁入りラブコメ!!
メインの二人以外に、
・腹黒×俺様
・ワンコ×ツンデレインテリ眼鏡
が登場予定。
※R18シーンに印は入れていないのでお気をつけください。
※前半は日本舞台、後半は異世界が舞台になります。
※こちらの作品はムーンライトノベルズにも掲載中。
※完結保証。
※ムーンさん用に一話あたりの文字数が多いため分割して掲載。
初日のみ4話、毎日6話更新します。
本編56話×分割2話+おまけの1話、合計113話。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される
水ノ瀬 あおい
BL
若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。
昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。
年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。
リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる