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13話 マグロにでもなっとけ

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 相神がシャワーを浴びている間に、オレは自分の今までのセックスについて考えてみた。

 さっきは相神の気を引くためにあんなことを言ってしまったけれど、セックスについてオレに美学なんてものはとくになかった。
 とにかくセックスなんてものは、ヤりたくなったときそこに穴があれば、ただ突っ込んで出せばそれで終わりだった。

 そういえば、最初に相神が琴宮オレにしたのと同じだな。
 なんだよ、オレのお手付きオメガをつかって、相神はそんなことを真似してたのかよ。馬鹿だな。そんなセックスをしても、得られるものなんて何もないのに。

 オレは相神に、ただの性欲処理じゃなくて、気持ちいいセックスをさせてやりてぇなと思った。



 手早くシャワーを浴びてきた相神の目は、ギラギラとしていた。
 ああ、さっきの腑抜けた顔より断然イイと思うぜ。

 オレはベッドに腰を掛けたまま、素っ裸の相神を手招きした。
 相神が素っ裸なのは……単に、着るものがなかっただけだろう。
 ったく、これに懲りたら服くらい用意しとけってんだ。オレなんて、毎日バスローブ一枚しか着るものがねぇんだぞ? つーか、マジで着替えが欲しいわ。あ、そうか。ルームサービスで頼めば良かったのか。選択肢はコスプレ衣装しかねぇが……まぁ、それは今はどうでもいいや。

「とりあえず、ここに寝ろ」

 怪訝な顔をしている相神をベッドの上に寝かせたら、オレはバスローブを脱ぎ捨ててその上に覆いかぶさった。

「そのまま、マグロにでもなっとけ」
「はぁ?」

 そーいや、相神はオレのことが大好きでド執着していたみたいだけど、八剱斗環オレになりたかったのだろうか? それとも、八剱斗環オレに突っ込みたかったんだろうか。よくわからんが……うーん、ま、どっちでもいっか。
 さて、ここからどうしたものかと考えていたら、ものすごく顔を顰めた相神が口を開いた。

「……あの人は、マグロだったのか?」

 一瞬、何を言っているのかわからなかった。
 だけど、その言葉の意味をジワジワと理解してきたら、笑いが止まらなくなってしまった

「ぶはっ……!! ぶぁはははははは……!! 何言ってんだ、笑かしてんじゃねーよ!!」

 え、今、こいつベッドの上に寝っ転がって、眉間に皺を寄せながら、八剱斗環オレがマグロだったかどうかについて真剣に考えちゃってたわけ?
 ヤベ、笑いすぎて涙が出てきた。
 オレは腹を抱えながらひとしきりヒーヒー笑ったあと、目の端に溜まってしまった涙を拭って相神に向きなおった。

「ヤりたくなきゃ、ヤんなくていーんだよ。おまえ、勃ってねーしな」
「別に、そういうわけでは……」

 いきなり自分の上で爆笑し始めたオレに相神は戸惑っているようだった。

「気持ち良くなって、腰が振りたくなったら、そん時は好きに動きゃいい。それまでは、なんもしなくていーよ。こっちで勝手に気持ち良くなるよーにしといてやっから、とりあえず力抜いて楽にしとけ」
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