やっぱり、王子様が好き

夏芽玉

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後編※

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「ほら、脚閉じたらアカンよ」
「んあっ……はぁっ……や、ぁ……もぉ、そこばっかり……」
「だって、ここスキやろ」
「ヨすぎるから、ダメなんだってばぁ……!!」

 ローションをたっぷりと使って、慎弥が僕の好きな場所ばかり攻めてくる。今まで何度も交わっているから、すでにお互いの身体のことは知り尽くしている。僕が慎弥の好きなところを知っている以上に、慎弥も僕の好きなところを知っていた。
 慎弥の指から逃げようとすると狭いソファから落ちそうになるので、僕はもぞもぞと身体を動かすことしかできない。地味に逃げ場がなくて、僕は快感に追いつめられる。

「さっき、好きにしていいってゆーたやん。ほら、キスしたるから。もっと気持ち良くなろーな」
「やだ、これ以上はキツ……んんっ!!」

 抗議の声は、慎弥の唇の中に吸い込まれた。慎弥の指がちょっと動くだけで、頭が真っ白になるくらい気持ちいい。まだ前戯だっていうのに、僕はそれだけであっさりと慎弥の思惑に嵌ってしまった。絶対、次からはこのソファに座ったら慎弥に今日されたことを思い出してしまうに違いない。

「しんや……もう、れて……お願いだから」

 キスから解放されて、息も絶え絶えに僕は懇願した。

「えー……でも、もっと歩生の身体にオレのこと覚えて貰わんと」
「もう慎弥のことしか考えらんないからぁっ……!! これ以上されたら、あたまバカんなるっていってんのっ!!」

 早く挿れて欲しくて、僕が慎弥のペニスに手を伸ばしたら、腰を引いて逃げられた。

「慎弥ぁっ……」
「今だけやなくて。今後、よそ見なんて気ぃ絶対に起こさんよーにしたらんと」
「よそ見なんてしてないっ!!」
「ほんまに? でも、歩生は面食いやからなぁ……」
「絶対に!! 僕はずっと慎弥のことしか見てないし、好きなのも、キスするのも、欲しいのも、こんなことするのも、全部慎弥だけっ!!」

 後ろを弄られ過ぎてオカシクなるくらい気持ち良かったのに、全然心も身体も満たされなくてもどかしい。

「もう、挿れてくれたら後はなにしてもいいからっ!! だから早く、慎弥をちょーだい」
「ふぅん、わかった。それなら、えーよ」

 そう言うと慎弥はソファに座って、その上に僕を後ろ向きに座らせた。十分に解されたソコは、慎弥のモノをあっさりと飲み込んだ。背面座位で一気に一番奥まで貫かれただけで僕はイきそうだったのに、慎弥の指で根元を押さえつけられてしまってそれは叶わなかった。

「ああぁぁぁあああっ……!!」
「ほら、逃げへんの」

 前のめりになった身体を後ろに引っ張られる。体勢が変わると奥の深いところに慎弥のペニスの先端が当たって、息が詰まる。

「なぁ、乳首だけでイってや」
「ひぃあっ……ああぁ……むっ、無理ぃ……」
 悪戯に乳首を触られて、オレは思わず声を上げた。イけずに解放されなかった快感と、慎弥のペニスから与えられる快感に新たな刺激が加わって、わけがわからなくなる。

「ほんでな。ここに座るたびにそのこと思い出して、乳首がジンジンして思わず弄りたくなっちゃって欲しいなーって思ってるんやけど」
「や、やぁ……しんやぁっ……」
「ほら、根本は自分で押さえてて。なにしてもええんやろ、さっき自分で言ってたやん」

 早くイきたくて仕方ないのに、腕を取られて自分のペニスに導かれると、僕は慎弥の言葉に操られたみたいに自分で根元を戒めた。

「押さえてるだけやで。扱いたりしたらアカンで」

 慎弥は僕に念押しをすると、ソファの上に転がっていたローションのボトルを手に取った。そして、両手にたっぷりと中身を取り出して僕の両胸に塗りたくり、ぬちゅぬちゅと音を立てながら僕の乳首を扱きはじめる。

「ふぁっ……んっ、ああっ……」

 あまりの気持ちよさに僕は背中を仰け反らせたけれど、慎弥の胸に背中を擦り付けることになっただけだった。そんな僕の首筋を、慎弥が舐めた。

「そ、そこは……舐めちゃダメぇ……!!」

 ぞわぞわっとした感覚に、僕は背中を震わせた。 

「なんで、めっちゃキモチよさそーやん。中、ぎゅうぎゅう締めつけてんで」
「で、でもぉっ……」
「乳首に集中できへんくなる?」

 僕はこくこくと頷く。

「じゃあ、乳首イき、頑張ってな」

 そう言うと、慎弥はまた僕の乳首を刺激し始めた。ぬるぬると撫でたり引っ張ったりして乳首には色んな刺激が与えられるのに、後ろはただイイトコロに当てたままで全く動いてくれる様子はない。

「こーら、後ろでイこうとせぇへんの」

 だんだんムズムズしてきてしまって、無意識に腰を動かしてしまったら、指先で乳首をピンと弾かれた。

「ひゃあぁんっ……」

 強い刺激に思わず後ろを締めつけてしまって、そうすると中で慎弥のおっきいのが僕のイイトコロを強く抉った。

「あ。こーゆーのがええんや」

 指先で何度も弾かれるたびに、乳首からの刺激と後ろの刺激で視界がチカチカとしてくる。

「あ、やだ……だめ、なんかクる……あっ、あっ、ぅあああああああ……!!」

 身体の奥から何かがせりあがってくるような気がしたときに、慎弥に両方の乳首をぎゅうぅっと摘まれた。一気に頭の中が真っ白になって、ビクビクと身体が痙攣する。

「手ぇ、もう離してえぇで」

 慎弥の言葉に従って根本を戒めていた手を離すと、とぷとぷとペニスから力なく精液が漏れ出した。

「上手にイけて、イイコやな」

 耳元でそう言われて、心がきゅんとした。だけどその余韻に浸る暇もなく、慎弥がガツガツと下から突き上げてくる。

「あっ、あああっ……だ、ダメ……ちょっと待って。まだ動いちゃヤダぁ……今イったばかりで、それキツいからぁ……」
「ちゃうで。まだイってるところ、やろ? ほら、さっきからチンポミルク出っぱなしになっとる」

 慎弥に言われて自分のペニスを見てみると、一突きされるごとに、とぷ、とぷと精液が漏れていた。
 キツすぎる刺激に助けを求めるように手を宙に伸ばしたら、その腕ごと全部抱きしめられてしまった。

「あ゛ーっ、あ゛あ゛あ゛ーっ……!!」
「ん~えぇ声。それ、もっと聞かせて」

 刺激が強すぎて苦しくて。泣きながら悲鳴みたいな声しか出せなくなったら、慎弥が僕の中でまたおっきくなって、更に強い力で一番奥を突いてきた。

「う゛あ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ……!! だめだめっ、それ深いっ……!! イ゛く゛っ……!! またイっちゃう……」
「逃げんなや」

 与えられる快感があまりにも大きすぎて、それが怖くて思わず逃げ出そうともがいたら、強い力で腕の中に閉じ込められた。

「やだ、なんかおっきいのクる……ほんと、だめえぇぇぇぇ……」
「オレも、もーイきそ。オレはぜーんぶ歩生のもんや。だから、好きなだけ絞りとってえぇで」

 逃げ場を全部塞がれて、慎弥の与える刺激をただ受け入れる。

「やっ、やっ、ああぁっ……イク、いくうううぅぅう……」
「はぁっ、歩生……大好きやで」

 身体がガクガクと震えて、僕の中がぎゅうぅって収縮する。そして、慎弥の熱が、僕の一番奥で弾けた。
 僕の中に慎弥が全部出し切ったのを感じて、僕は身体の力を抜いた。後ろに居る慎弥に凭れ掛かる。ぜぇぜぇと息をしていると、慎弥が僕のペニスに手を伸ばしてきた。

「えっ、ちょっと……」
「さっきの、中イキやったやろ。だから、今度は気持ち良く射精させたげる」

 そう言った慎弥は、僕のペニスにたっぷりとローションをまぶして扱き、僕をあっさりと絶頂させてしまった。

 連続で何回もイかされてぐったりしていると、まだ僕の中に入ったままの慎弥がピクリと動いた。

「……慎弥」
「もう一回シてもいい? てか、シよ? ほら、コンドームもこんなに持ってきたし……」
「……ねぇ、それさっき使った?」
「あ」
「あ、じゃなくて」

 どおりでめちゃくちゃ気持ち良かったわけだ。

「まぁ、一回ヤってもたら二回ヤるのも三回ヤるのも変わらんし。てことで、もーいっかい! お願いっ」
「あー、もう。はいはい、わかった。わかったよ、いいよ。好きなだけヤれば」
「やった!!」
「じゃあ次こそはベッドに……」
「でも、今抜いて歩いたら、垂れるで」

 そう言って、慎弥が僕と繋がっている部分を指先で撫でた。不意の刺激に僕は思わず中を締めつけてしまって、そしたらまた慎弥が僕の中で大きさを取り戻してしまったのがわかった。

「慎弥ぁ~……」
「だって、歩生の中がすっごいヨくて、もう一秒だって外に出たくないんやもんっ」
「はぁ……、それじゃあ次ヤったらベッドな」
「オーケー」

 そう約束したけれど、結局この日は慎弥が満足するまでソファで抱かれて、ようやく解放されたときには二人とも空っぽになってしまっていて、ベッドで延長戦なんてするどころじゃなかった。
 だけど、「今度はベッドで、歩生が好きなことだけヤったるから」なんて甘い顔で言われてしまえば、僕がそれを許さないはずがなくて。
 だって、やっぱり慎弥は格好いい。僕はこの顔に弱いんだ。慎弥は、いつまでも僕だけの王子様でいてくれれば僕はそれでいい。

 この時はそう思っていたのだけれど……

 慎弥はモデルオーディションを受けて雑誌の表紙を飾ったことをきっかけに、『喋らないミステリアスな役』で人気舞台作家の劇に出演して、その後、僕たちが全く想像もしていなかった大ブレイクを果たすのだった。


おわり
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