死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります

穂村満月

文字の大きさ
102 / 124
第八章.みんな可愛い私の弟妹

93.新たな日課

しおりを挟む
 私に新たな日課が増えた。
 パン屋で、ぬるいパン作り体験をする仕事の他に、村人に挨拶して回る仕事を増やしたのだ。
 毎朝、村を一周ぐるっと歩いて、出会った村人の肩を叩いてみたり、時にはイェーイ! とハイタッチしてみたりする仕事だ。
 ふざけているようにしか見えないが、魔力補充のための大事な仕事だ。誰が工場の工員なのか覚えていないので、手当たり次第、ばら撒いている。まれに、あんまり出会わない人が、魔力切れを訴えてこちらに出向いてくることもあるが、体力向上のため、私が撒いて歩くことになった。村一周なんて、1日じゃ歩ききれないのだが。
 出会った人は誰彼構わずハイタッチをしていたが、割と頻繁に空を飛んでる子どもを見るようになったので、危なくないかドキドキしている今日この頃だ。

「おはよー。今日のお仕事終わったよー。お疲れー。お腹減ったー」
 昨日は、お酒を飲まなかったので、ちゃんと宿に帰ってきた。お父さんとお母さんと、朝ごはんを食べる。
「まだ朝なのに、もう仕事をする気がないのか」
「だって、パン屋は朝早いし、充電はみんなの仕事前に済ませた方がいいでしょ? 朝が一番忙しいんだよ。後は、誰にも期待されてない仕事しか、残ってないよ」
「ルルーは、誰にも代われない仕事を頑張っているよ。偉いえらい。わたしも収入を抜かれないように、頑張らないとね」
「1回の指名依頼で平均年収を超える人には、どうしたって敵わないと思うよ?」


「ジョエルさーん、郵便ですよー」
 家出以来、さっぱり見かけなくなっていたおじさんが、やってきた。
「いらない。あなたの手紙は受け取らないことに決めたから」
 このぷりぷりしてるジョエルが怖い、っておじさんが言ってたけど、全然怖くないよね。ジョエルは、絶対返事を返してくれるもん。優しいよね。無言で人殺し仮面をつけるキーリーとか、蔑みの視線で見下ろしてくるシュバルツに比べたら、めちゃくちゃ可愛いもんだよ。
「そんなことをおっしゃらずにー。以前の事件の後始末の報告書らしいですよ。読まなくてもいいので、受け取ってください。シャルルちゃんに、あげてしまいますよ!」
「それが気に入らないんだよ。ルルーの誘拐、許してないからね」
「ジョエルー。それ、私が悪かったんだよ、って説明したよね。『その節は、うちの娘が大変お世話になりました』って言ってくれたら、キュンキュンするのに」
「もうそういうのには、騙されない!」

「ジョエル! なんかすごいおしゃれな封筒入ってたよ」
 おじさんには、恩を感じているので、ジョエルに無断で手紙を受け取って、勝手に開封した。どうせ概ね読めないんだけど、お仕事の手紙か私信かどうかくらいは、書式でわかる。
「なんで受け取ってしまうの」
「イケメンに、おじさんイジメは似合わないから。あと3回くらいは、おじさんを助けてあげようと、心に決めてるの」
「ありがとう、シャルルちゃん。今度、プレゼントを持ってくるよ!」
 おじさんは、逃げ帰って行った。お茶くらい飲んで行けばいいのにね。
「ねぇねぇ、これ、何て書いてあるの?」
 ジョエルに分厚い封筒を渡した。釣書入り封筒よりは薄めだけど、受け取り拒否をすることがわかっているから、一度にまとめて送っているのかな?
「事件の報告書って言うんだから、タケルを見つけた時のことじゃないかな」
 ジョエルは、封筒から出さずに数枚流し読みして終了だ。秘匿文書とかだったら、どうしよう。文字は読めませんから、で許してもらえるだろうか。
「あのおしゃれ封筒は?」
「ルルー、ああいうのはロクでもないから、開封しないで捨てるのが、1番いいんだよ」
 中身を外に出さない割には、乱雑にテーブルにポイだ。大事なのか、ゴミ扱いなのか、わからない。
「なんで? 婚約者さんからの手紙を、お兄さんが混ぜて送ってくれたのかもしれないじゃん」
「婚約者なんていないよ?!」
 そのびっくり顔は、何? 私には秘密だったの? 堂々と面と向かって言ってた気がするけど。
「前に、いつだったか、婚約者ができたって、自慢してたよね。いつ紹介してくれるんだろうって、楽しみにしてたんだよ。待ち切れないから、催促していい?」
「そんなことを言われても、婚約者なんていないよ」
「そっか。私は、教えてもらえるほど、仲良しじゃなかったんだね。聞いて、ごめんね」
「違うよ。婚約者なんていないから。誰が、こんな手紙を送ってきたんだ!」
 ジョエルは、手紙を開封して中身を出すと、投げつけた。
「ベイリー、死ね!」
「婚約者さんに、そんなこと言ったら可哀想だよ」
「ベイリーは、兄だ!」
「お前、ベイリーさんは覚えた、って言ってなかったか?」
 ジョエルに兄がいたというところから、薄っすらとした記憶だ。そんなこと言われたって、毎日覚えることばっかりで、覚えきれてないし、覚えたことも右から左にこぼれてばかりだよ。
「お兄さんが、婚約者さんなの?!」
「なんで、そうなる? 婚約者は、いない。手紙の差し出し人が、兄だ」
「じゃあ、婚約者ができたって話は、なんだったのよ」
「知らないよ。そんな話はしたことないよ」

「お前の兄は、また妙な物を送りつけてきたな」
 キーリーは、手紙を拾ってジョエルに差し出した。
「勢いで開封してしまったが、このまま燃やしてしまえばいい」
「いいのか? お前の母親が噛んでそうじゃないか? 俺は関与してないからな。お前が断るんだからな?」
「お母様からのご招待? じゃあ、会いに行こうよ」
 この世界の住人の大好き番付ぶっちぎり1位のお母様案件なら、何を放っても行きたい!
「やめた方がいいよ。舞踏会だよ?」
「ジョエルが優勝しちゃうね。応援するね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...