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第八章.みんな可愛い私の弟妹
93.新たな日課
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私に新たな日課が増えた。
パン屋で、ぬるいパン作り体験をする仕事の他に、村人に挨拶して回る仕事を増やしたのだ。
毎朝、村を一周ぐるっと歩いて、出会った村人の肩を叩いてみたり、時にはイェーイ! とハイタッチしてみたりする仕事だ。
ふざけているようにしか見えないが、魔力補充のための大事な仕事だ。誰が工場の工員なのか覚えていないので、手当たり次第、ばら撒いている。まれに、あんまり出会わない人が、魔力切れを訴えてこちらに出向いてくることもあるが、体力向上のため、私が撒いて歩くことになった。村一周なんて、1日じゃ歩ききれないのだが。
出会った人は誰彼構わずハイタッチをしていたが、割と頻繁に空を飛んでる子どもを見るようになったので、危なくないかドキドキしている今日この頃だ。
「おはよー。今日のお仕事終わったよー。お疲れー。お腹減ったー」
昨日は、お酒を飲まなかったので、ちゃんと宿に帰ってきた。お父さんとお母さんと、朝ごはんを食べる。
「まだ朝なのに、もう仕事をする気がないのか」
「だって、パン屋は朝早いし、充電はみんなの仕事前に済ませた方がいいでしょ? 朝が一番忙しいんだよ。後は、誰にも期待されてない仕事しか、残ってないよ」
「ルルーは、誰にも代われない仕事を頑張っているよ。偉いえらい。わたしも収入を抜かれないように、頑張らないとね」
「1回の指名依頼で平均年収を超える人には、どうしたって敵わないと思うよ?」
「ジョエルさーん、郵便ですよー」
家出以来、さっぱり見かけなくなっていたおじさんが、やってきた。
「いらない。あなたの手紙は受け取らないことに決めたから」
このぷりぷりしてるジョエルが怖い、っておじさんが言ってたけど、全然怖くないよね。ジョエルは、絶対返事を返してくれるもん。優しいよね。無言で人殺し仮面をつけるキーリーとか、蔑みの視線で見下ろしてくるシュバルツに比べたら、めちゃくちゃ可愛いもんだよ。
「そんなことをおっしゃらずにー。以前の事件の後始末の報告書らしいですよ。読まなくてもいいので、受け取ってください。シャルルちゃんに、あげてしまいますよ!」
「それが気に入らないんだよ。ルルーの誘拐、許してないからね」
「ジョエルー。それ、私が悪かったんだよ、って説明したよね。『その節は、うちの娘が大変お世話になりました』って言ってくれたら、キュンキュンするのに」
「もうそういうのには、騙されない!」
「ジョエル! なんかすごいおしゃれな封筒入ってたよ」
おじさんには、恩を感じているので、ジョエルに無断で手紙を受け取って、勝手に開封した。どうせ概ね読めないんだけど、お仕事の手紙か私信かどうかくらいは、書式でわかる。
「なんで受け取ってしまうの」
「イケメンに、おじさんイジメは似合わないから。あと3回くらいは、おじさんを助けてあげようと、心に決めてるの」
「ありがとう、シャルルちゃん。今度、プレゼントを持ってくるよ!」
おじさんは、逃げ帰って行った。お茶くらい飲んで行けばいいのにね。
「ねぇねぇ、これ、何て書いてあるの?」
ジョエルに分厚い封筒を渡した。釣書入り封筒よりは薄めだけど、受け取り拒否をすることがわかっているから、一度にまとめて送っているのかな?
「事件の報告書って言うんだから、タケルを見つけた時のことじゃないかな」
ジョエルは、封筒から出さずに数枚流し読みして終了だ。秘匿文書とかだったら、どうしよう。文字は読めませんから、で許してもらえるだろうか。
「あのおしゃれ封筒は?」
「ルルー、ああいうのはロクでもないから、開封しないで捨てるのが、1番いいんだよ」
中身を外に出さない割には、乱雑にテーブルにポイだ。大事なのか、ゴミ扱いなのか、わからない。
「なんで? 婚約者さんからの手紙を、お兄さんが混ぜて送ってくれたのかもしれないじゃん」
「婚約者なんていないよ?!」
そのびっくり顔は、何? 私には秘密だったの? 堂々と面と向かって言ってた気がするけど。
「前に、いつだったか、婚約者ができたって、自慢してたよね。いつ紹介してくれるんだろうって、楽しみにしてたんだよ。待ち切れないから、催促していい?」
「そんなことを言われても、婚約者なんていないよ」
「そっか。私は、教えてもらえるほど、仲良しじゃなかったんだね。聞いて、ごめんね」
「違うよ。婚約者なんていないから。誰が、こんな手紙を送ってきたんだ!」
ジョエルは、手紙を開封して中身を出すと、投げつけた。
「ベイリー、死ね!」
「婚約者さんに、そんなこと言ったら可哀想だよ」
「ベイリーは、兄だ!」
「お前、ベイリーさんは覚えた、って言ってなかったか?」
ジョエルに兄がいたというところから、薄っすらとした記憶だ。そんなこと言われたって、毎日覚えることばっかりで、覚えきれてないし、覚えたことも右から左にこぼれてばかりだよ。
「お兄さんが、婚約者さんなの?!」
「なんで、そうなる? 婚約者は、いない。手紙の差し出し人が、兄だ」
「じゃあ、婚約者ができたって話は、なんだったのよ」
「知らないよ。そんな話はしたことないよ」
「お前の兄は、また妙な物を送りつけてきたな」
キーリーは、手紙を拾ってジョエルに差し出した。
「勢いで開封してしまったが、このまま燃やしてしまえばいい」
「いいのか? お前の母親が噛んでそうじゃないか? 俺は関与してないからな。お前が断るんだからな?」
「お母様からのご招待? じゃあ、会いに行こうよ」
この世界の住人の大好き番付ぶっちぎり1位のお母様案件なら、何を放っても行きたい!
「やめた方がいいよ。舞踏会だよ?」
「ジョエルが優勝しちゃうね。応援するね」
パン屋で、ぬるいパン作り体験をする仕事の他に、村人に挨拶して回る仕事を増やしたのだ。
毎朝、村を一周ぐるっと歩いて、出会った村人の肩を叩いてみたり、時にはイェーイ! とハイタッチしてみたりする仕事だ。
ふざけているようにしか見えないが、魔力補充のための大事な仕事だ。誰が工場の工員なのか覚えていないので、手当たり次第、ばら撒いている。まれに、あんまり出会わない人が、魔力切れを訴えてこちらに出向いてくることもあるが、体力向上のため、私が撒いて歩くことになった。村一周なんて、1日じゃ歩ききれないのだが。
出会った人は誰彼構わずハイタッチをしていたが、割と頻繁に空を飛んでる子どもを見るようになったので、危なくないかドキドキしている今日この頃だ。
「おはよー。今日のお仕事終わったよー。お疲れー。お腹減ったー」
昨日は、お酒を飲まなかったので、ちゃんと宿に帰ってきた。お父さんとお母さんと、朝ごはんを食べる。
「まだ朝なのに、もう仕事をする気がないのか」
「だって、パン屋は朝早いし、充電はみんなの仕事前に済ませた方がいいでしょ? 朝が一番忙しいんだよ。後は、誰にも期待されてない仕事しか、残ってないよ」
「ルルーは、誰にも代われない仕事を頑張っているよ。偉いえらい。わたしも収入を抜かれないように、頑張らないとね」
「1回の指名依頼で平均年収を超える人には、どうしたって敵わないと思うよ?」
「ジョエルさーん、郵便ですよー」
家出以来、さっぱり見かけなくなっていたおじさんが、やってきた。
「いらない。あなたの手紙は受け取らないことに決めたから」
このぷりぷりしてるジョエルが怖い、っておじさんが言ってたけど、全然怖くないよね。ジョエルは、絶対返事を返してくれるもん。優しいよね。無言で人殺し仮面をつけるキーリーとか、蔑みの視線で見下ろしてくるシュバルツに比べたら、めちゃくちゃ可愛いもんだよ。
「そんなことをおっしゃらずにー。以前の事件の後始末の報告書らしいですよ。読まなくてもいいので、受け取ってください。シャルルちゃんに、あげてしまいますよ!」
「それが気に入らないんだよ。ルルーの誘拐、許してないからね」
「ジョエルー。それ、私が悪かったんだよ、って説明したよね。『その節は、うちの娘が大変お世話になりました』って言ってくれたら、キュンキュンするのに」
「もうそういうのには、騙されない!」
「ジョエル! なんかすごいおしゃれな封筒入ってたよ」
おじさんには、恩を感じているので、ジョエルに無断で手紙を受け取って、勝手に開封した。どうせ概ね読めないんだけど、お仕事の手紙か私信かどうかくらいは、書式でわかる。
「なんで受け取ってしまうの」
「イケメンに、おじさんイジメは似合わないから。あと3回くらいは、おじさんを助けてあげようと、心に決めてるの」
「ありがとう、シャルルちゃん。今度、プレゼントを持ってくるよ!」
おじさんは、逃げ帰って行った。お茶くらい飲んで行けばいいのにね。
「ねぇねぇ、これ、何て書いてあるの?」
ジョエルに分厚い封筒を渡した。釣書入り封筒よりは薄めだけど、受け取り拒否をすることがわかっているから、一度にまとめて送っているのかな?
「事件の報告書って言うんだから、タケルを見つけた時のことじゃないかな」
ジョエルは、封筒から出さずに数枚流し読みして終了だ。秘匿文書とかだったら、どうしよう。文字は読めませんから、で許してもらえるだろうか。
「あのおしゃれ封筒は?」
「ルルー、ああいうのはロクでもないから、開封しないで捨てるのが、1番いいんだよ」
中身を外に出さない割には、乱雑にテーブルにポイだ。大事なのか、ゴミ扱いなのか、わからない。
「なんで? 婚約者さんからの手紙を、お兄さんが混ぜて送ってくれたのかもしれないじゃん」
「婚約者なんていないよ?!」
そのびっくり顔は、何? 私には秘密だったの? 堂々と面と向かって言ってた気がするけど。
「前に、いつだったか、婚約者ができたって、自慢してたよね。いつ紹介してくれるんだろうって、楽しみにしてたんだよ。待ち切れないから、催促していい?」
「そんなことを言われても、婚約者なんていないよ」
「そっか。私は、教えてもらえるほど、仲良しじゃなかったんだね。聞いて、ごめんね」
「違うよ。婚約者なんていないから。誰が、こんな手紙を送ってきたんだ!」
ジョエルは、手紙を開封して中身を出すと、投げつけた。
「ベイリー、死ね!」
「婚約者さんに、そんなこと言ったら可哀想だよ」
「ベイリーは、兄だ!」
「お前、ベイリーさんは覚えた、って言ってなかったか?」
ジョエルに兄がいたというところから、薄っすらとした記憶だ。そんなこと言われたって、毎日覚えることばっかりで、覚えきれてないし、覚えたことも右から左にこぼれてばかりだよ。
「お兄さんが、婚約者さんなの?!」
「なんで、そうなる? 婚約者は、いない。手紙の差し出し人が、兄だ」
「じゃあ、婚約者ができたって話は、なんだったのよ」
「知らないよ。そんな話はしたことないよ」
「お前の兄は、また妙な物を送りつけてきたな」
キーリーは、手紙を拾ってジョエルに差し出した。
「勢いで開封してしまったが、このまま燃やしてしまえばいい」
「いいのか? お前の母親が噛んでそうじゃないか? 俺は関与してないからな。お前が断るんだからな?」
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