棘バラの口付け

おかだ。

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past2(ローランド)

episode28

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「・・・あ、」

小走りで教室に向かおうとしていたアルマの足が止まる。

ローランドに連れ込まれたシークレットルームから逃げて来たはいいものの、乱れた姿のままである事に気付いたのだ。

ハァハァと息を整えて当たりをキョロキョロと見渡す。

「ぅぅ、いたい・・・」

どこか一人で落ち着ける場所。身なりを整えなければ教室に向かうことは出来ない。

ローブで頭からすっぽり体を覆い、俯きながら廊下を曲がった突き当たりにあるトイレを目指す。

今日はいつもより何度も手酷く頬を打たれたせいか、薔薇色の頬が普段よりも痛々しく見える。

トボトボと壁にそって廊下の角を曲がろうとしたその時──。

「っわ、?!」

「おっと、」

後方に倒れそうになり、ふらついたアルマを男が抱きとめる。

「クソ、この忙しい時になんだ?ん?なぜこんな所でローブを・・・」

「ゔ・・・」

小さく舌打ちをした中年の男が腕の中でぐったりとしたままの少年のローブをひったくり、次の瞬間息を飲んだ。

「・・・っ王子?」

「??」

ガッシリとした身体の見たことの無い中年の男だった。

寮の管理長であるカルヴィンでも無ければ、この学校の教員でも無さそうだ。

学校という場に不相応なほどのブレスレットや指輪などの装飾品を身につけている。

「アルマ様では御座いませんか!これはご無礼を。──その傷は?」

アルマの頬に男の指先が触れる。

「っ離して、下さい」

「おっと!乱暴は行けませんな。・・・そうだ、ぶつかったのも何かの縁。放っておく訳にも行かないでしょう。私が手当致しましょう」

「えっ、わ、ぁ!?」

フワリと浮いた身体が男の腕の中にすっぽりと収まる。

脚をばたつかせささやかな抵抗をしてみるが、男はビクともしない。
それどころか息巻いている中年の男は、アルマが先程逃げてきた方向に向かっているようだった。

「あ・・・・(さっきの部屋だ)」

手馴れた手つきで部屋の明かりを付けた男が、大きなソファでクッションに埋もれるアルマに向き直る。

「さあ、手当を致しましょう。傷を見せて」

「ひっ、」

冷たい男の手のひらがアルマの太腿に触れ、緩く揉むようにじっとりと撫で回す。

「な、に?んぐっ?!」

男の分厚い手のひらが少年の口を覆う。

もがくアルマの鼻に甘い香りが抜け、5分も抵抗していると段々視界が霞んでいく。

スースーと落ち着いた息が掌にあたるのを確認した男がニヤリと下卑た笑みを浮かべた。
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