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past1(アルマ)
episode40
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窓から差し込む朝の光が頬を撫でる。
「・・・ん、うぅ。あれ?」
上半身を起こして隣に寝ていたはずの男に手を伸ばし、首を傾げる。
「エド?・・・あ、」
見ると、部屋の入口に置かれた椅子に座って静かに眠っていた。
膝には申し訳程度のブランケットが掛けてあるが、最近の朝の寒さには心許なく、丸めた体が僅かに震えている。
「・・・一緒に寝ようって言ったのに、エドは嫌だったの?」
悲しそうにつぶやき、腕を組んで俯くエドをアルマが見つめる。
昨晩はエドの部屋にアルマが寝て、客室にエドが寝る筈になっていたのだが、アルマが頑なに嫌がって根負けしたエドが同じベッドで寝るのを了承したのだった。
それなのに。
「・・・エド。僕、ワガママだった?」
まだ温かいアルマの掌がすっかり冷えてしまったエドの頬に触れる。
「ん・・・」
「わ、」
眉間に皺を寄せ、小さく息を漏らすエドにドキリとする。
「エディ・・・」
もっと触れたい衝動に駆られて、俯いたまま眠る男の正面にしゃがみ込む。
薄く開かれた唇からは静かな寝息が漏れ、腕を組んだ胸がそれに合わせてゆっくりと上下する。
「あのね、エディ。僕、本当は弟じゃなくて・・・」
エドの首筋に赤い痕を見つけ、指でなぞる。
容姿が良くヴァルアロ首席卒業、飾らない性格が男女共に人気のこの男ならどこかの誰かと良い仲になっていてもおかしくない。
「・・・これ、誰の?」
気付かれない様にそっと首筋に唇を押し付けて痕を上書きする。
浮ついた噂は聞いた事がなかったが、縁談の話が来ていてもおかしくは無い。
「エド、どこかの誰かを好きになるくらいなら僕の事好きになって・・・?お願い・・・」
「・・・・」
「・・・エドは迷惑、だよね」
「・・・アルマ?」
低く落ち着いたエドの声にアルマの肩が跳ねる。
いつから起きていたのか、気付くとエドが真っ直ぐアルマの栗毛を見下ろしていた。
声色は至極落ち着いていたが、表情が固く普段と違う様子に少年の体が慌ててエドから離れる。
「えッエド、」
「・・・お前」
「わ、あ・・・ご、ごめんなさい!変な事して・・・ぁッ言って!」
「ふッ、あはは!・・・ん、何が迷惑だって?」
途端に破顔しくつくつと笑うエドに、驚いたアルマの顔が真っ赤に染る。
「アルマ様は昔から俺の事大好きだもんなぁ」
「・・・ッそうやってすぐ僕の事からかう」
アルマがエドにそっぽを向けて頬を膨らませる。
背後で聞こえる小さな笑い声に耳を澄まして内心ドキドキする心臓を落ち着かせる。
「・・・時々、お前が優しすぎて心配になることもあるけど、それもアルマの良さだろ?」
「え?」
「それでヘマした時は、俺が護る」
エドの掌がアルマの肩に触れ、少年の体を優しく抱きしめた。
「わっ・・・」
「・・・筈だったのに、護ってやれなくてごめんな」
ほっとする。
トクトクと優しいエドの心音がアルマの背に伝わって体に広がっていく。
「・・・エドッ、僕」
「あ、悪い・・・ッ」
エドの体が勢いよく離れる。
「まあ、兎に角。マナーハウスにいる間ならなんでも聞いてやれるし、護ってやれるから」
「・・・・なんでも?」
「ああ」
「・・・ん、うぅ。あれ?」
上半身を起こして隣に寝ていたはずの男に手を伸ばし、首を傾げる。
「エド?・・・あ、」
見ると、部屋の入口に置かれた椅子に座って静かに眠っていた。
膝には申し訳程度のブランケットが掛けてあるが、最近の朝の寒さには心許なく、丸めた体が僅かに震えている。
「・・・一緒に寝ようって言ったのに、エドは嫌だったの?」
悲しそうにつぶやき、腕を組んで俯くエドをアルマが見つめる。
昨晩はエドの部屋にアルマが寝て、客室にエドが寝る筈になっていたのだが、アルマが頑なに嫌がって根負けしたエドが同じベッドで寝るのを了承したのだった。
それなのに。
「・・・エド。僕、ワガママだった?」
まだ温かいアルマの掌がすっかり冷えてしまったエドの頬に触れる。
「ん・・・」
「わ、」
眉間に皺を寄せ、小さく息を漏らすエドにドキリとする。
「エディ・・・」
もっと触れたい衝動に駆られて、俯いたまま眠る男の正面にしゃがみ込む。
薄く開かれた唇からは静かな寝息が漏れ、腕を組んだ胸がそれに合わせてゆっくりと上下する。
「あのね、エディ。僕、本当は弟じゃなくて・・・」
エドの首筋に赤い痕を見つけ、指でなぞる。
容姿が良くヴァルアロ首席卒業、飾らない性格が男女共に人気のこの男ならどこかの誰かと良い仲になっていてもおかしくない。
「・・・これ、誰の?」
気付かれない様にそっと首筋に唇を押し付けて痕を上書きする。
浮ついた噂は聞いた事がなかったが、縁談の話が来ていてもおかしくは無い。
「エド、どこかの誰かを好きになるくらいなら僕の事好きになって・・・?お願い・・・」
「・・・・」
「・・・エドは迷惑、だよね」
「・・・アルマ?」
低く落ち着いたエドの声にアルマの肩が跳ねる。
いつから起きていたのか、気付くとエドが真っ直ぐアルマの栗毛を見下ろしていた。
声色は至極落ち着いていたが、表情が固く普段と違う様子に少年の体が慌ててエドから離れる。
「えッエド、」
「・・・お前」
「わ、あ・・・ご、ごめんなさい!変な事して・・・ぁッ言って!」
「ふッ、あはは!・・・ん、何が迷惑だって?」
途端に破顔しくつくつと笑うエドに、驚いたアルマの顔が真っ赤に染る。
「アルマ様は昔から俺の事大好きだもんなぁ」
「・・・ッそうやってすぐ僕の事からかう」
アルマがエドにそっぽを向けて頬を膨らませる。
背後で聞こえる小さな笑い声に耳を澄まして内心ドキドキする心臓を落ち着かせる。
「・・・時々、お前が優しすぎて心配になることもあるけど、それもアルマの良さだろ?」
「え?」
「それでヘマした時は、俺が護る」
エドの掌がアルマの肩に触れ、少年の体を優しく抱きしめた。
「わっ・・・」
「・・・筈だったのに、護ってやれなくてごめんな」
ほっとする。
トクトクと優しいエドの心音がアルマの背に伝わって体に広がっていく。
「・・・エドッ、僕」
「あ、悪い・・・ッ」
エドの体が勢いよく離れる。
「まあ、兎に角。マナーハウスにいる間ならなんでも聞いてやれるし、護ってやれるから」
「・・・・なんでも?」
「ああ」
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