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past1(アルマ)
episode39
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「あぁ!アルマ様、それに王妃様も態々こんなところまで・・・」
「いえ、いいの。・・・ご子息は、」
「倅は・・・塞ぎ込んでいて」
分厚い扉の向こう側で父親のエルドとアルマの母の心配そうな声が聴こえる。
「・・・ロイド。みんな、俺を心配してるのか?(全部俺のせいなのに)」
「・・・ええ。お部屋にお通し致しますか?」
手当ての痕を見つめ、大きなため息を吐く。
「あっ、待ちなさい!」
勢いよく扉が開き、室内に王妃の声が響く。
「っエディ!」
一目散に掛けてきたアルマが、エドの横たわる寝台に飛びつく。
「・・・アルマ?!っ様・・・」
素っ頓狂な声をあげて目を丸くしたエドが自身の腕にしがみつくアルマに視線を向ける。
赤く腫らした紫の瞳と目が合い、心臓の音がうるさく鼓動を打つ。
「・・・許してやって下さいね」
「っ王妃様!」
慌てて頭を下げると、エドのダークブラウンの髪に王妃の白魚の様な美しい指が触れた。
下を向いたままのエドの顔が真っ赤に染まるのを、アルマが不思議そうに傍らから見上げる。
「お、王妃様、俺が全部悪いんです・・・。王子様を危険な目に」
「ふふ、そうかしら?貴方が彼処で引き返さなかったら女の子はどうなってたかしら。それに、列を外れたのもアルマを気遣ってくれたのでしょう?」
「・・・でも」
危険な目に合わせてしまった事に違いは無い。
きっとアルマも怖い思いをしただろう。
あの路地の暗がりで、男に組み敷かれたエドを見つけたアルマの怯えて引きつった顔を思い出す。
「・・・傷だらけね。可哀想に、怖い思いをしたでしょう」
枕元に腰掛けた王妃が少年の頬にできた痛々しい切り傷に優しく触れ、包み込むように引き寄せたその体を抱きしめた。
「わっ・・・!」
王妃の柔らかい胸が重なり、エドがさらに顔を赤くする。
「ふふ、エディの手が迷子だ。腕は相手の背中に回すんだよ」
オロオロと手持ち無沙汰な手をシーツに伸ばすと、アルマの無邪気な声がそれを目ざとく指摘する。
どうするべきかと父親に目を向けると、一部始終を見守っていたエルドが優しく微笑み頷いた。
おずおずと背に手を回して抱きしめ返すと、落ち着いた鼓動が聞こえる。
暖かい香りが優しく包み込む。
「・・・もし、貴方が良ければだけれど」
「?」
「これからもアルマの専属護衛として、友達として、一緒にいてあげてくれないかしら」
エドの腕を握るアルマの手に力が篭もる。
息子とよく似た優しい薄紫の瞳がエドを見つめる。
「王子ったら、貴方の事が大好きなの」
「っも、勿論。こんな俺で良ければだけ・・・ですが」
アルマの警護の今後について話があると聞かされていたため、解任されてしまうのだと思っていたが違ったと知ってホッと胸を撫で下ろす。
「エディ、カッコよかった!やっぱり凄いね!」
幼い少年の弾けんばかりの笑顔にエドが驚きの表情をみせる。
きっと幻滅したろうと思っていた。
今まで何度この小さな少年の前で威張り散らしてきたかしれないが、その結果がこれだ。
「俺が・・・?」
「うん!」
アルマにつられて笑顔を見せたエドに、周囲の大人たちがほっと微笑ましく寄り添う二人を見つめた。
「いえ、いいの。・・・ご子息は、」
「倅は・・・塞ぎ込んでいて」
分厚い扉の向こう側で父親のエルドとアルマの母の心配そうな声が聴こえる。
「・・・ロイド。みんな、俺を心配してるのか?(全部俺のせいなのに)」
「・・・ええ。お部屋にお通し致しますか?」
手当ての痕を見つめ、大きなため息を吐く。
「あっ、待ちなさい!」
勢いよく扉が開き、室内に王妃の声が響く。
「っエディ!」
一目散に掛けてきたアルマが、エドの横たわる寝台に飛びつく。
「・・・アルマ?!っ様・・・」
素っ頓狂な声をあげて目を丸くしたエドが自身の腕にしがみつくアルマに視線を向ける。
赤く腫らした紫の瞳と目が合い、心臓の音がうるさく鼓動を打つ。
「・・・許してやって下さいね」
「っ王妃様!」
慌てて頭を下げると、エドのダークブラウンの髪に王妃の白魚の様な美しい指が触れた。
下を向いたままのエドの顔が真っ赤に染まるのを、アルマが不思議そうに傍らから見上げる。
「お、王妃様、俺が全部悪いんです・・・。王子様を危険な目に」
「ふふ、そうかしら?貴方が彼処で引き返さなかったら女の子はどうなってたかしら。それに、列を外れたのもアルマを気遣ってくれたのでしょう?」
「・・・でも」
危険な目に合わせてしまった事に違いは無い。
きっとアルマも怖い思いをしただろう。
あの路地の暗がりで、男に組み敷かれたエドを見つけたアルマの怯えて引きつった顔を思い出す。
「・・・傷だらけね。可哀想に、怖い思いをしたでしょう」
枕元に腰掛けた王妃が少年の頬にできた痛々しい切り傷に優しく触れ、包み込むように引き寄せたその体を抱きしめた。
「わっ・・・!」
王妃の柔らかい胸が重なり、エドがさらに顔を赤くする。
「ふふ、エディの手が迷子だ。腕は相手の背中に回すんだよ」
オロオロと手持ち無沙汰な手をシーツに伸ばすと、アルマの無邪気な声がそれを目ざとく指摘する。
どうするべきかと父親に目を向けると、一部始終を見守っていたエルドが優しく微笑み頷いた。
おずおずと背に手を回して抱きしめ返すと、落ち着いた鼓動が聞こえる。
暖かい香りが優しく包み込む。
「・・・もし、貴方が良ければだけれど」
「?」
「これからもアルマの専属護衛として、友達として、一緒にいてあげてくれないかしら」
エドの腕を握るアルマの手に力が篭もる。
息子とよく似た優しい薄紫の瞳がエドを見つめる。
「王子ったら、貴方の事が大好きなの」
「っも、勿論。こんな俺で良ければだけ・・・ですが」
アルマの警護の今後について話があると聞かされていたため、解任されてしまうのだと思っていたが違ったと知ってホッと胸を撫で下ろす。
「エディ、カッコよかった!やっぱり凄いね!」
幼い少年の弾けんばかりの笑顔にエドが驚きの表情をみせる。
きっと幻滅したろうと思っていた。
今まで何度この小さな少年の前で威張り散らしてきたかしれないが、その結果がこれだ。
「俺が・・・?」
「うん!」
アルマにつられて笑顔を見せたエドに、周囲の大人たちがほっと微笑ましく寄り添う二人を見つめた。
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