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past3(ローランド)
episode44
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「今話したのが全てです、父上。今回の事態の責任は全て私にあります」
「・・・」
アルマに覆い被さるジョージの姿がフラッシュバックし、ローランドが眉間に皺を寄せ苦々しげな表情を浮かべた。
「アルマの傷は治るんだな?」
「はい。医者によれば数日で完治するだろうとの事です。しかし、今朝の事といい、心の面では弟も憔悴している様子です・・・」
俯いたローランド自身もアルマと同様混乱していた。
煌びやかな宮殿の地下、薄暗い牢の中で首を落とされたジョージの姿が未だ脳裏に焼き付いている。
「そうか、あの子が無事なら良い。・・・ところで──」
王宮の謁見室の最奥、豪奢な肘掛イスに座した男が部屋の中央に立つ青年に視線を向ける。
「ローランド。話を聞いていると、お前がいちばん深刻な傷を抱えているように思える。・・・まだ父に隠し事があるだろう?」
「・・・私は」
「ここまでおいで」
シンと静まり返った謁見室にはローランドと父王のみしかおらず、青年の靴が大理石の床をコツコツと叩く音だけが響く。
父王の目の前まで進んだローランドが床に跪くと、肘置きから離れた男の手が青年の頬に触れた。
「服を脱いで、そこに立ちなさい」
「っ・・・」
穏やかな父の声にローランドの瞳が見開かれ、困惑した様に見開いたその赤い瞳に父の姿を映す。
「・・・っ?それ、は」
「ローランド、脱ぎなさい」
青年の赤い唇が恐怖で震える。
表情は穏やかであったが、有無を言わせないような雰囲気がある。
まるで少し前の自分を見ているようだった。
アルマも、この恐怖を感じていたのかと思うと、声を発することが出来なかった。
「どうした?父の前なのだから恥じなくていい」
「・・・」
ゆっくりと立ち上がり、肘掛に手を置きじっと見守る父の前で肩掛けや上着から順に服を脱いでいく。
肩掛けを床に脱ぎ捨てて普段は着慣れない詰襟に手を掛けると、プチプチとボタンを外していく。
顕になった白い肌にはフィリップの残した愛撫の痕が浮いていて、羞恥にローランドの顔が耳まで赤く染る。
「・・・これもジョージ・ロペスが?」
「・・・っ違います」
父王が胸の噛み跡を撫で、眉間に皺を寄せ俯くローランドを見上げる。
「・・・女か?」
「・・・いえ」
ローランドが息を殺し唇を噛み締めると、その腰を引き寄せた父王が自らの頬を青年の腹部にすり寄せた。
滑らかな肌に切りそろえられた上品な口髭が当たり、青年の腰がピクリと反応する。
「男か。相手は?」
「・・・っ言えません、父上」
知ればきっと殺されてしまうだろう。
今朝、この父王によって目の前で殺された彼の父親の様に。
三人の王子と国王の目の前でどす黒い血が流れ、あまりのショックにアルマが身体を震わせ涙を流していた。
懺悔をしながら無惨に死んで行ったジョージを冷たく見下ろしていた父王に、呆然とその光景を眺めていたローランドは改めて実の父には逆らえないと思い知ったばかりだった。
「そうか・・・。言えない相手か」
「・・・っ」
何者にも引けを取らなかったローランドも、この男を目の前にすると笑ってしまう程簡単にカタカタと体が震える。
無数に付けられた鬱血痕を確認するように男の手が青年の脇腹を撫でる。
「まあいい、調べればすぐわかる事だ」
「あッ、・・・」
「言う気になったか?」
「・・・・・学園理事の、フィリップ・ロペスです」
ローランドの肌を撫でていた父王の手が止まる。
「成程・・・言い渋っていた理由はそれか」
「・・・父上、」
「・・・ああ、美しいお前たちが心配だ」
意外にも父王が優しい表情を見せ呆然とするローランドに、男が優しく服を着せてやる。
「そんな顔をするな。震えなくていい、お前を責めている訳では無いのだから」
「・・・」
「・・・年々、母親に似てきたな」
「・・・あ、」
透き通るような白い肌に冷たい印象すら抱かせる吸い込まれる様な赤い瞳。
栗毛に赤茶の瞳の父王も整った凛々しい顔つきの男だったが、幼い頃から国一番の絶世の美女と名高かったオリヴィアの息子として産まれたローランドも、女性的で神々しい類稀なる美しさを持って生まれていた。
柔らかな金髪を撫でた父王がほうっとため息をつく。
「お前は私のあとを継いでこの国の国王になる。・・・心配しているんだよ」
父王はまだ四十代後半だったが先の戦争で足を悪くし、今では公務や軍の指揮の殆どをローランドがこなす様になっていた。
ローランドももう二十四歳だ。
早々な次期国王誕生をと声をあげる者も少なくない。
「・・・分かっています」
男が立ち上がると、青年の肩に手を置く。
キラキラと輝くローランドの耳元に父王が口を近づけ何かを囁くと、青年の形のいい唇が歪んだ。
「・・・」
アルマに覆い被さるジョージの姿がフラッシュバックし、ローランドが眉間に皺を寄せ苦々しげな表情を浮かべた。
「アルマの傷は治るんだな?」
「はい。医者によれば数日で完治するだろうとの事です。しかし、今朝の事といい、心の面では弟も憔悴している様子です・・・」
俯いたローランド自身もアルマと同様混乱していた。
煌びやかな宮殿の地下、薄暗い牢の中で首を落とされたジョージの姿が未だ脳裏に焼き付いている。
「そうか、あの子が無事なら良い。・・・ところで──」
王宮の謁見室の最奥、豪奢な肘掛イスに座した男が部屋の中央に立つ青年に視線を向ける。
「ローランド。話を聞いていると、お前がいちばん深刻な傷を抱えているように思える。・・・まだ父に隠し事があるだろう?」
「・・・私は」
「ここまでおいで」
シンと静まり返った謁見室にはローランドと父王のみしかおらず、青年の靴が大理石の床をコツコツと叩く音だけが響く。
父王の目の前まで進んだローランドが床に跪くと、肘置きから離れた男の手が青年の頬に触れた。
「服を脱いで、そこに立ちなさい」
「っ・・・」
穏やかな父の声にローランドの瞳が見開かれ、困惑した様に見開いたその赤い瞳に父の姿を映す。
「・・・っ?それ、は」
「ローランド、脱ぎなさい」
青年の赤い唇が恐怖で震える。
表情は穏やかであったが、有無を言わせないような雰囲気がある。
まるで少し前の自分を見ているようだった。
アルマも、この恐怖を感じていたのかと思うと、声を発することが出来なかった。
「どうした?父の前なのだから恥じなくていい」
「・・・」
ゆっくりと立ち上がり、肘掛に手を置きじっと見守る父の前で肩掛けや上着から順に服を脱いでいく。
肩掛けを床に脱ぎ捨てて普段は着慣れない詰襟に手を掛けると、プチプチとボタンを外していく。
顕になった白い肌にはフィリップの残した愛撫の痕が浮いていて、羞恥にローランドの顔が耳まで赤く染る。
「・・・これもジョージ・ロペスが?」
「・・・っ違います」
父王が胸の噛み跡を撫で、眉間に皺を寄せ俯くローランドを見上げる。
「・・・女か?」
「・・・いえ」
ローランドが息を殺し唇を噛み締めると、その腰を引き寄せた父王が自らの頬を青年の腹部にすり寄せた。
滑らかな肌に切りそろえられた上品な口髭が当たり、青年の腰がピクリと反応する。
「男か。相手は?」
「・・・っ言えません、父上」
知ればきっと殺されてしまうだろう。
今朝、この父王によって目の前で殺された彼の父親の様に。
三人の王子と国王の目の前でどす黒い血が流れ、あまりのショックにアルマが身体を震わせ涙を流していた。
懺悔をしながら無惨に死んで行ったジョージを冷たく見下ろしていた父王に、呆然とその光景を眺めていたローランドは改めて実の父には逆らえないと思い知ったばかりだった。
「そうか・・・。言えない相手か」
「・・・っ」
何者にも引けを取らなかったローランドも、この男を目の前にすると笑ってしまう程簡単にカタカタと体が震える。
無数に付けられた鬱血痕を確認するように男の手が青年の脇腹を撫でる。
「まあいい、調べればすぐわかる事だ」
「あッ、・・・」
「言う気になったか?」
「・・・・・学園理事の、フィリップ・ロペスです」
ローランドの肌を撫でていた父王の手が止まる。
「成程・・・言い渋っていた理由はそれか」
「・・・父上、」
「・・・ああ、美しいお前たちが心配だ」
意外にも父王が優しい表情を見せ呆然とするローランドに、男が優しく服を着せてやる。
「そんな顔をするな。震えなくていい、お前を責めている訳では無いのだから」
「・・・」
「・・・年々、母親に似てきたな」
「・・・あ、」
透き通るような白い肌に冷たい印象すら抱かせる吸い込まれる様な赤い瞳。
栗毛に赤茶の瞳の父王も整った凛々しい顔つきの男だったが、幼い頃から国一番の絶世の美女と名高かったオリヴィアの息子として産まれたローランドも、女性的で神々しい類稀なる美しさを持って生まれていた。
柔らかな金髪を撫でた父王がほうっとため息をつく。
「お前は私のあとを継いでこの国の国王になる。・・・心配しているんだよ」
父王はまだ四十代後半だったが先の戦争で足を悪くし、今では公務や軍の指揮の殆どをローランドがこなす様になっていた。
ローランドももう二十四歳だ。
早々な次期国王誕生をと声をあげる者も少なくない。
「・・・分かっています」
男が立ち上がると、青年の肩に手を置く。
キラキラと輝くローランドの耳元に父王が口を近づけ何かを囁くと、青年の形のいい唇が歪んだ。
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