棘バラの口付け

おかだ。

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past2(シーヴァ)

episode49

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「・・・ん、」

「っわ!」

色素の薄い睫毛が震え、重たく閉じられていたシーヴァの瞼がまたたく。

「・・・・・え。あ、さっきのメイド」

視界いっぱいにそばかすだらけの少女の顔が映る。

驚いた様子のメアリは、胸に手を当ててふぅと安堵の吐息を漏らした。

「「・・・さっきのメイド」じゃないですよっ!シーヴァ様、良かった・・・!急に気を失って!」

乱反射する天井に目を細め腕を上げると、裸だったはずなのにしっかりと衣服を着ている。

シーヴァが周囲を見渡すと、大袈裟なことにもメアリ以外の侍従数名に白衣を着た医師まで控えていた。

「ベッド・・・。お前が運んだの?そんな訳ないか。お前、チビだもんね」

ヘラヘラと笑うシーヴァにむくれ顔をみせることもなく、メアリが奥に控えた男に目配せをした。

「?」

そいつメアリの兄のダビです。シーヴァ様。妹が御無礼を」

奥に控えていた男の侍従達の一人が前に出ると、深深とお辞儀をした。

頬のそばかすと活発そうな日に焼けた小麦色の肌。

「へぇ、確かに似てるね。西からの移民かな?」

「っ凄い!私達の出身がわかるんですか?」

感心するように声を弾ますメアリは無邪気にシーヴァに期待の顔を向ける。

まるで兄に甘え縋る妹だ。

「こらっ!失礼だろ、メアリ!」

「いいよ。この子メアリはほんの少し気に入ってるんだ。間抜けな所が面白い」

「っな!?酷い!」

目の前で百面相をするメアリにくすくすと笑みがこぼれる。

「・・・ッ」

「なに?」

「・・・!ああ、いえ!・・・パーティ迄お時間が押していたので、お着替えさせて頂きました」

赤茶色のダビの瞳が柔らかく微笑む。

シーヴァが暫く首を傾げベッドに腰かけたままダビを見上げていたが、興味を失った視線は堅苦しく着飾られた自らの服に落とされていた。

「・・・この服嫌いだよ。動きずらいし、真っ黒」

ピッチリと体のラインにそった黒の上下に、同じく黒地に銀の糸で刺繍されたベスト。

棘バラをあしらったイヤーカフまでご丁寧に耳元で輝いている。

「ダメですよ、外しちゃ。国王様が是非この服を、と。今日の為に見繕われたんです。・・・それにとても、お似合いですから」

「・・・・」

仕上げとばかりに首に掛けられたシルバーのネックレスを忌々しげに摘む。

「お葬式の間違いじゃないの?」

「まあまあ、そんなこと仰らず」

「そうですよ!シーヴァ様カッコイイ!」

メアリの無邪気な声にシーヴァの眉間のシワが少し伸びる。

朗らかな笑みを浮かべるダビと無邪気に瞳を輝かせるメアリを交互に見つめ、シーヴァが自慢げにフフンと鼻を鳴らした。
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