異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第七十三話 お祭り

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第七十三話 お祭り


「うっわ、暑い!」

リシュナから招待状を貰ってから一週間。
今日はトーナ王国のお祭りを見に来た。

「さすが砂漠の国だね」
「ヒナ、あまり離れるなよ。その姿だと、見つけ難い」
「は~い」

今日は獣人の姿で来ている。
町と言う事もあるが、このお祭り・・・始祖を祀るお祭りだった!
そこら中に始祖の肖像画(猫)とか、始祖の絵が描かれたお皿やカップ(猫グッズ?)が露天で売られている。
この世界で今まで行った町とは雰囲気が違い、アラビアンな雰囲気のトーナ王国。

「エスト、これ見て!スケスケ!」

露天で売っている、スケスケの布!何に使うんだろう?

「お、嬢ちゃん!トーナの祭りは初めてかい?」
「はい」
「そうかい、そうかい。この布は、こうやって顔を隠すもんだ」

あ、テレビで見た事ある!
頭に被せる布とセットになっていて、スケスケ布は顔の下半分を隠す物だ。

「こいつは前部分だけでも着けれるんだ。どうだい?色っぽさが増すぜ?」

勧めて来た露天のオジサンが、私の後ろにいるエストをチラチラと見ている。

「あ~・・・うん、いいかな。ありがと!」

布を返して、エストの所へ戻った。

「買わなくて良かったのか?」
「うん。まぁ、私が付けてもねぇ」

色っぽさなんて、砂粒ほども持ち合わせていないからね。

「確か儀式は夜からだったよね?」
「ああ。夕方には祭場に入った方が良いだろう」

夕方までにはもう少しか。

「祭場は・・・」
「城の方みたいだな」

そのお城はと言うと、町の真ん中にあるらしい。

「そう言えば、ここのお城は水に囲まれているんだって」
「砂の国でか?」
「何だったかな・・・オアシスの水を引いたとか、始祖が水を掘り当てたとか」

ちゃんとした文献は残っていないって、リシュナが言っていた。
どちらにしても、砂漠のど真ん中にある町で水源が無いのは困るだろうと思っていた。

「水!水はどうだい!?」

水と聞こえた方を見てみると、家から壺を持って出てきた女性が、「水!」と叫んでいた男性にお金を払っていた。
男性はお金を受け取ると、魔法で水を出して壺に入れていた。
そうか、魔法があったか。
水源が無くても、魔法が使えれば・・・いやいや、それって、魔法が使えない人にとっては死活問題では?
もしかして、そのお城の周りのお水を使い放題とか?
まぁ、行ってみればわかるか。





「ん?んんん?水が・・・無いねぇ」
「無いな」

城を囲む堀と橋がある事から、水があったんだろうなとは思うけど。
完全に干上がっていて、地面がひび割れている。

「ヒナ、あそこが祭場みたいだ」

お城の横に、小島が見えた。

「橋は・・・お城からしか行けないみたいだね」

ちょびっとだけ帰りたくなった。

「迎えに来た」
「へ?」

後ろを振り返ると、リシュナの息子でありクロのお兄ちゃんでもあるジェフが立っていた。

「ヒナの事だから、城に入らねばならないと知ったら面倒がって帰ると言い出すだろうから、迎えに行けと言われた」
「う・・・まだ、言ってない」

思っただけで。
さすがリシュナだな。

「ふっ・・・」

ジェフが少しだけ笑った。

「ヒナ、この人は・・・」
「ああ、エストは初めてか。この人はジェフ。リシュナの息子さんで、クロのお兄ちゃん。ジェフ、この人はエスト。島で色々手伝ってもらってるんだ」
「お初にお目にかかります、殿下」
「殿下はよしてくれ。公式の場意外では、ジェフで良い」
「ですが・・・いや、分かった」
「公式の場・・・じゃあ、お城に入ったら「ジェフ様」?それとも「殿下?」」
「ふふ、ヒナにそんな風に呼ばれるのはくすぐったい。ヒナは母上の友人だ。そのままで良い」

まぁ、その公式の場とやらに、私が招かれる事も無いだろうからね。大丈夫だろう。

「さぁ、そろそろ行こう」

ジェフの顔パスで城門を通り、小島に続く橋までやって来た。
ここにもまた、門がある。

「ヒナ、プレートを」

リシュナに貰った二枚のプレートを、ジェフに渡した。

「グレイガイス王国第百三十七王子、ジェフ。そして、女王の招待客二名だ」

百三十七・・・本当に多いなぁ。少子化とは無縁だな。
ここもスルーっと通り、橋を渡る。

「ねぇ、ジェフ。ここって」
「水があった。数年前から水位が下がり始め、今年の夏に涸れたらしい。今回の祭事は、雨乞いも兼ねていると聞いている」

やっぱり水があったんだ。

「このままでは、民が飢える。王都を移す事も考えねばならぬだろうな」
「そりゃ大変だけど、雨乞い・・・」
「言いたい事は分かる。が、民の心を静める意味もあるからな」

効果があるかどうかはさておきって事か。

「それで、雨乞いって何をやるの?まさか、生贄!?」
「そんな事はしない。始祖の為の祭りでもあるからな。選ばれた白毛の獣人が、舞を奉納する」
「舞か。平和で良かった」

巫女さんがお祭りで舞うって感じかな?
話している間に小島に着いた。
小島と言っても結構な広さがあり、真ん中には板張りの祭壇が見える。
祭壇を囲むように客席が用意されているようだ。

「始まるまでは、まだ時間があるみたいだな」
「そうだねぇ・・・ちょっと散歩に行ってこようかな。二人はどうする?」
「私は挨拶に行かねば」
「俺は・・・席で大人しくしている」
「どうしたの?」

気のせいか、エストが縮こまってるように見える。

「いや、大した事じゃないから、ヒナは行ってくると良い。ここなら迷子にもならんだろう」
「迷子って・・・子供か。まぁ、いいや。じゃあ、ちょっと行って来るね」

ヒナが去った後、エストは小さくため息を吐いた。

「やれやれ、まさか近隣の王族も招待されているとはなぁ」

エストの視線の先には、かつて自分が剣を捧げた王がいた。
何も顔向けできない事はしていないが、少し気まずい。
平民出の一隊長の顔を王が覚えているとは思えないが、近寄らない方が良いだろう。

「やれやれだな」





「う~ん、完全に涸れてるなぁ」

下の方を見てみるが、水一滴出なさそうだ。
どこかから水を引いている感じはしないから、オアシスの様に湧いていたんだろうな。

「あ~!」
「へい!?」

背後で叫び声が聞こえて、ビクッとなった。

「貴女!ちょっとこっちに来て!」
「は、はいぃ!?」

いきなり腕を引っ張られて、楽屋みたいな場所に連れ込まれた!

「白毛の子、見つけた!」

白毛?あぁ、今の私は真っ白に見えるのか。耳と尻尾だけだけど。
ってか、何だ?
良く見ると、私を連れて来たのは獣人の女の子だった。

「ふむ・・・合格だの」
「合格?」

部屋の奥から現れたのは・・・ノナさん!?
ノナさんによく似た、小さいお婆さん。違うのは、お婆さんの頭には猫耳がある事。

「あのね、今日の祭事で舞を舞う予定だった子が、怪我をしちゃったの!」
「はぁ」
「白い毛色の子は珍しいから、中々見つからなくて!」

珍しいんだ。

「貴女にお願いしたいの!」
「は?いやいやいや、無理でしょ!祭事まであと・・・」
「一時間ちょっとだの」
「お願い!始祖様と同じ白い毛じゃないと、駄目なの!私達の首が、飛んじゃう!」
「はぁ!?」
「物理的にの」

怖い事サラッと言ったぁ!

「お願い!」

ウルウルと見つめられた・・・必死なのは分かるけど・・・。

「うぅ」

誰か、た~すけて~!
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