異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

文字の大きさ
83 / 141
連載

第九十六話 守りたい

しおりを挟む
第九十六話 守りたい


「う、わぁ、これ、結構長くない!?」

猫達の秘密基地に通じるという滑り台。予想以上に長いんですけど!
所々にある灯りのおかげで怖くはない。
緩く左にカーブしている気がする。
くる~っと一周した頃、やっと下にたどり着いた。

「な・・・長かった・・・って、うわぁ~!」

床から視線を上げると、広い部屋が広がっていた。
淡いクリーム色の壁に、淡い桃色のフワフワの絨毯。天井にはおさかな形クッキーの形をしたライトが吊るされ、全体的にファンシーな雰囲気になっていた。

「かわいい~!」

「「「「いらっしゃいませ!」」」」
「ませ!」
「キュ!」

小さなテーブルやクッションも置いてあるし、ロフトもある!

「お茶を」

部屋の奥から、ノアが出て来た。

「ノアには、私の補佐として喫茶店を手伝ってもらっています。仕事を覚えるのも早く、とても助かっています」

ノアからお茶を受け取り、一口飲んでみた。
お茶の葉を入れ過ぎたのか、かなり濃い上に渋い。だが、味なんて関係ないさ!

「ありがとう、ノア。美味しいよ」

私がそう言うと、ぱぁっと笑顔になったノア。
少しずつ、感情が出始めているのがとても嬉しい。
それから皆に部屋の中を案内されて、ほんわかした時間を過ごした。

「そう言えば、どうやって上に戻るの?まさか、あの滑り台を歩いて?」
「こちらにエレベーターがございますので」

ここで、じゃあ降りて来るのもそれで良いのでは?とは言っちゃ駄目なんだろうな。
釈然としないまま皆でエレベーターに乗り、喫茶店の中へと戻って来た。

「そう言えば、ニャゴレンニャーが前に言っていた、島の防衛って事?」
「その一部ですね。彼等は畑の平和を守る為の組織ですから」
「まぁ、武器がクワとか鎌だしね」

基本的に、ニャ種から生まれた子達に戦闘能力は無い。
家のお手伝いや、畑や庭のお世話等を手伝う。
喫茶店の外に出ると、もうそろそろお昼と言ったとこか。

「島には結界もございますので、危険な事は滅多にございませんから」

この世界は飛行技術が失われているらしいし、リシュナや魔王は別格だ。
ジローを追って来たカムラは異例と言える。
とは言え、島を守る術はあった方が良い。

「危険と言えば、そろそろ農具の手入れをしないとなぁ」

手入れの道具はスキルで手に入れる事は出来るが、専門の知識がない私では、ちゃんと出来ているかがわからない。
ゲームの頃みたいに、粉を掛けて研いでピカー!とはいかない。

「そういえば、冒険者組の方々が、島に鍛冶職人がいたら良いのにと仰っておりました。武器や防具等の手入れが必要ですからね。町によって鍛冶師の腕も違いますし、依頼の途中だと場所によっては手入れすらできませんから」

森の中の依頼で、剣が欠けたり折れたりしたら大変だ。

「鍛冶師って言うと、ドワーフ?」
「そうですね。ですが、ドワーフは一族総じて気難しい事で有名ですので」
「島に来てくれるかどうかは、微妙なところだね」
「はい」
「ドワーフと言えば、お酒ってイメージだなぁ。ドングリ渡したら、来てくれるかな?」
「ああ、そうですね。あれならば、喜んで来るかもしれないですね」

リシュナも大好きな、ドングリのお酒。
普通の人ならお猪口一杯で卒倒する、かなり強いお酒だ。
リシュナ曰く、強いだけでなく美味しいらしい。私には強すぎて分からん。

「まぁ、暫くは畑で忙しくなるから、当分先の事だろうけどね」
「ドワーフが多く暮らす山はヒノモトから少し距離がありますから。どちらかと言うと、アルガバイスの方が近いですね」
「学問の都市かぁ。賢者だっけ」
「本当にいるのなら、一度お会いしたいですね」

セバスにしては珍しい。島の事意外にあまり興味を示さないのに。

「そろそろ、将棋の相手がいなくなりそうなので」
「なるほど」

さすがと言うか・・・。あっという間に将棋を覚えたセバスは、今のところ島で最強だ。
少し前はノナさんと互角だと言っていたのに。

「ベルは?」
「あのお方は、顔に出すぎるので。よくあれで魔王をやっていられると、心配になります」
「おぉう、相変わらずの粗塩」
「当然です」

セバスは、ベルが島にやって来た時に私を攻撃しようとした事を、未だに怒っている。
意外とねちっこい。

「ヒナ様。今、意外とねちっこいな、と思いました?」
「ふぇ!?い、いやぁ」

誤魔化そうと思ったが、セバスに手を取られてしまった。

「ヒナ様は、唯一無二の我等が主。最後の希望と言っても過言ではないお方。そのお方に牙を向けるなど、許しがたい」

いつになく真剣な眼差しで見つめられる。
大げさだよと笑う所だが、意外と的外れでもないから笑えなかった。
この島やセバスの動力は魔力だ。
今は私が入れた魔力で保っているが、数百年後、私が死んだ後は・・・。
島やセバス達を維持できる程の魔力量だと、転生者くらいしかいない。
憂いを帯びたセバスの声に、胸の奥が痛んだ。

「しかも、あの時ツバキが遅れたせいでちゃんとした映像が残っていない!」
「そこ!?」
「ヒナ様がこの世界に来た時からの映像があれば・・・」

胸の痛みが一瞬で消えた。

「はいはい、皆、ご飯にしようねぇ!」

セバスが手を離してくれたので、皆と先を歩く。
種を植えたばかりの畑に、エストがいるのが見えた。

「うわっぷ!」

エストに手をふると、突然強い風が吹いた。

「出来うる事なら、貴女が受けた痛みや悲しみから、守って差し上げたかった」
「ん?何か言った?」

セバスが何か呟いたけれど、風の音で聞こえなかった。

「いいえ」
「そう?」
「私は島の巡回に戻りますので、御用がございましたら何時でも、イヤーカフスでお呼びください」
「たまには一緒に食べれば良いのに」

セバスは食べ物を受け付けないわけではない。いつも、必要ないからと言われる。

「私の心も身体も、ヒナ様で満たされておりますので」
「ごめんなさい。私が悪かったです」

恍惚とした表情のセバスに、アヌリを思い出した。勘弁してください。

「はいはい。じゃあ、いってらっしゃい」
「・・・はい、いってまいります」

セバスは綺麗にお辞儀をすると、そのまま背を向けて来た道を戻って行った。
どうやら送って来てくれたようだ。
素直じゃないと言うか、偶に変な言動が出るんだよね。
あれで人工知能だと言うから、彼を作った道明寺さんは何者だったんだろうねぇ。

「ヒナさま?」
「ん?ああ、ごめん。ご飯、ご飯!」
「ごはん~」
「キュ~」

賢者かぁ。
セバスの楽しみの為にも、アルガバイスに行ってみようかな。
それまでは、ノナさんに頑張ってもらおう!
しおりを挟む
感想 449

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。