異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第百七話 島へご案内

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第百七話 島へご案内


ドワーフの町へ行ってから三日目。
私は再び、ガーゴ夫妻の家を訪ねた。
町は通らず箒に乗って来たので、猫のままだ。

「あんたが誘ってくれて、嬉しかったよ。だけど、あたい達はここを離れたくないんだ」

断られてしまった。

「理由を聞いても良いですか?」

町の人達とはあまり仲が良さそうには見えなかった。
ガーゴさんの剣は質がかなり良いのに投げ売りされていたり、門番や町のドワーフ達のジェスカさんに対する態度は良いとは思えない。

「・・・この家には、子供との思い出があるんだ」

ジェスカさんの視線の先には、小さな椅子が一脚。
そして彼女の表情から、その椅子がもう使われていない事を察した。

「ではもし、この家も持って行けるとしたら、どうですか?」
「家ごと?そうさね。もしそんな事が出来るなら、今直ぐにでも行きたいね」

言質は取ったぜ。

「じゃあ、そのままで行きましょうか」
「え、どういう・・・」

私が家の外へ出ると、二人も追って出て来た。

「さて」

建築スキルを発動。移築を選んだ。
すると、二人の家が綺麗さっぱり消えた。

「「は!?」」

このスキル、ストックできる家の数は三軒までと制限はあるものの、小屋から城までどんな大きさでも「一軒」丸ごと収納できる。
周りを見渡し、家の周辺にある物を片っ端からアイテムポーチに入れていく。

「後は・・・」

更地になった場所の奥、小さな墓石を見つけた。
きっと、あの小さな椅子の子だろうな。
墓石の周りには小さな可愛い花が咲いている。
確かこの世界では、遺体を土葬する事は無い。
魔物に掘り返されたり、逆にゾンビの様な魔物になってしまうのを防ぐ為に火葬するのだと、セバスに聞いた覚えがある。
探索を掛けると、墓石の中に骨壺が見えた。
これなら大丈夫だろう。
お墓に手を合わせ、花畑周辺を結界で囲みこんだ。

「よいしょ」

結界ごと持ち上げると、気を取り戻したガーゴとジェスカさんがハッと我に返った。

「お、おい!」
「これで、行けるよね?」
「い、家は!?」
「大丈夫。全部持ったよ?」
「で、でも」

二人ともあたふたとしているが、説明するよりも見せた方が安心するだろう。

「じゃあ、行こうか」

そのまま二人の手を取り、転移石を発動させた。

「おかえりなさいませ、ヒナ様」

予め伝えておいたセバスが出迎えてくれた。

「ただいまぁ」
「は?」
「ここは・・・」

呆然とする二人。

「こちらへ」

セバスの先導で工房のある元小島へと歩いて行く。
下宿の建物からは歩いて五分もかからない。

「そのまま持って来たのですか」
「お墓だから、物扱いしたくなくてね」

後ろを振り返ると、二人は何か言いたそうな顔をしながら一応ついて来てくれた。
人質を取っているようで、ちょっと罪悪感が・・・。

「え、え~っと・・・と、到着!」

やっとたどり着いた。ちょ~遠く感じた!
元々あった工房はそのままにしてある。もしかしたら、使うかもしれないしね。

「この辺かな」

スキルを発動させ、二人の家を出して移築完了。

「お墓はどう・・・あのぉ」

二人を見ると、またぽか~んと口を開けたまま固まった。

「何も無くなってないし、壊れていないはずですが、確かめてみてください」

ハッとした二人が、慌てて家の中へと入っていく。
少しして、二人がフラフラとしながら出て来た。

「どうでした?」
「大丈夫だった」
「良かった」

それから二人と相談して、お墓の場所を決めた。
土魔法で地面を掘り、結界ごとはめ込む。
そして結果を解けば、まるで最初からそこにあったようにぴったりとはまった。

「ツバキ」
「は~い!」

セバスが呼びかけると、ツバキがポン!と空中に現れた。

「繋ぐのは任せましたよ」
「はい、は~い」

繋ぐとは、上下水道の事だ。
この島ではちゃんと上下水道が完備されている。
水道に関しては、地下水をくみ上げてろ過しているらしい。
下水は一か所に集められ、ろ過や消毒等をして雲として排出。残った物は肥料として島の土に吸収されて云々・・・セバスが教えてくれたが、細かすぎて半分以上覚えきれなかった。
そしてそれ等を繋ぐのは、島の管理をするツバキのお仕事だ。

「説明もせずに連れて来ちゃって、ごめんなさい」
「あ、いや・・・」
「ここは、どこなんだい?」
「説明は、私が」

二人を連れ、下宿まで戻ってきた。
歩いている間にセバスが説明してくれたが、二人はまだ半信半疑状態。

「見て頂いた方が分かりやすいですね」

そして島の端へ。

「こんなでっかい島が、空にねぇ」
「見えなかった」

この島には、不可視の結界が張られているらしい。そうじゃないと大騒ぎになるしね。

「お~い、ヒナ!」

ジローが帰って来たようだ。

「おかえり」
「ただいま。お、そっちの二人が例の?」
「うん。ガーゴさんと、ジェスカさん」
「よろしくな!俺はジロー。冒険者だ」
「ジロー・・・エルフの冒険者・・・まさか、あのジローかい!?」
「お、知ってるのか」
「知ってるも何も、Sランク冒険者だろう!美味い食い物には目が無いって有名な。報酬の殆どを食い物につぎ込んでるとか」

あ、それはジローだわ。

「あはは・・・まぁ、俺の事だな。今は違うけど。ここには俺の他にも冒険者が何人かいるから、情報交換にも良いぞ。何より、飯が美味い!」
「そ、そうかい」

ジローは「そんじゃ、晩御飯にな!」と言うと、去って行った。
まだ困惑気味の二人を連れて元小島に戻り、また後で迎えに来ると伝えた。





「浮島、ねぇ。あんた、信じられるかい?」
「悪意は、感じない」
「まぁ、それはあたいもだけど」
「お墓、大切に扱った」
「ああ、そうだね。まさか地面ごと持ってくるとは思わなかった。家の中も何も変わってな・・・いや、水道とか言う綺麗な水が出て来る魔道具やらがあったね。厠にも驚いたけど!」
「冷たい箱」
「れいぞうこ、とか言っていたね」

二人はやっと人心地ついた様に、柔らかい表情へと戻っていた。

「とんでもない子だよ」
「ジェスカ、楽しそう」

子供を亡くしてから、二人はまるで時間が止まった様な生活を送っていた。
そして、それでも良いとさえ思っていた。

「ふふ、確かにね」

突然現れたヒナ。
強引に見えるやり方だが、壊す事はしなかった。
「前を向いた方が」「環境を変えて」等、助言をする者もいた。
だが、ヒナは「そのままで」と言ったのだ。そのままで良いと。
環境だけを変える。そんな不可能を、やってのけた。
大切な何かを亡くした傷は、完全には癒える事はない。まるでそれを、知っている様に。

「冒険者」
「そうだね。これからは、冒険者として本格的にやれるかもねぇ」
「冒険しているジェスカ、綺麗」
「もう、止しとくれよ、あんた!照れるじゃないか」
「「ふふふ」」

この日、二人は数年ぶりに心から笑う事が出来た。
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