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第百六話 手土産
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第百六話 手土産
「へぇ~、ジェスカかぁ」
「ジロー、知ってるんだ」
ドワーフの町へ行った日の晩酌時。
もしかしたら知っているかもと思って、皆に話をしてみた。
「そいつ、でっかい斧持ってただろ?」
「うん。担いだまま、イノシシ追いかけてた」
「あっはっはっはっ!やっぱり、そいつは豪傑のジェスカだな。Aランク冒険者だが、実力的にはSランク」
縁側に降り注ぐ月明り。
流石にまだ寒いので、ガラス戸は閉めたままだ。
「私は、知らないなぁ」
キャロルは知らなかったようだ。
「ジェスカが第一線で名を広めていたのは、五十年くらい前だからなぁ」
「わぁ、産まれてない」
「ぐっ・・・」
キャロル、その一言は結構攻撃力が高い!「私その頃、小学生でしたぁ」とか笑顔で言われると、結構グサッと来るんだよねぇ・・・。
頑張れ、ジロー。
「ま、まだ現役っぽかったよ!?」
慰めてはあげないが、助け船は出してあげよう。
「そ、そうか。さっきも言ったが、実力的には申し分ない。だが、三十年程前に結婚してから、あまり姿を見なくなったな」
「あ~、旦那さんとすんごい仲が良かった。手を取り合って、見つめ合って・・・」
「うへ~、変わるもんだなぁ。俺が見た時は、ブラックベアと素手で戦ってたが」
金太郎か!斧担いで熊と戦って・・・。
「それで、そのガーゴって人が鍛冶師?」
「そうそう。これがそうなんだけど、どう?」
買って来た短剣をテーブルの上に置くと、皆興味津々だ。
ジローが手に取り、鞘から抜いた。
「へぇ~!俺が使ってるのよりも、良いな」
「そうなの?」
「ああ。これだけ良い武器を打てるなら、もっと名が知られていても良いはずだが」
「銀貨一枚で、投げ売りみたいにされてた」
「はぁ?」
ガーゴさんの見た目を説明すると、何となく皆納得したようだった。
「そういうのって、どの種族にもあるのよねぇ」
「俺は鍛冶の腕が良ければ、それで良い」
「私も!」
「ヒナ様のお決めになった事に、異論などございません」
最後のが気になったが、スルーで。
「とは言え、来てくれるかどうかは分からないんだけどね」
「ドワーフなんだろ?酒で釣れば良い」
「ドワーフと言えば、お酒よねぇ」
やっぱりそうか。
「手土産か・・・そうだね。何か用意してみるよ」
女性もいるから、甘い物もあった方が良いかもな。
二人に会いに行くのは三日後。
何が良いかなぁ~。
*
「可愛かった」
「ああ、そうだねぇ。あんな娘がいたらって思ったよ。猫になった時は、驚いたけどね」
ガーゴは口数が少ない為、意思の疎通が難しい。
その事と見た目が相まって、豪快で多少口の悪い他のドワーフとは中々上手くいかない。
「何故」
「行くって言わなかったのかって?」
ジェスカの言葉に、ガーゴはこくりと頷いた。
「あたいもあの娘は気に入ったよ。条件も破格だ。辺鄙な所だって言っていたが、冒険者は続けられる。でも、この家にはあの子との思い出が・・・」
「・・・」
二人が同時に向けた視線の先には、とても小さな椅子が一脚。
「今まで通りだって、何不自由無いさ!ここでだって冒険者はできるしね!生活の事なら、あたいに任せときな!」
「すまない」
「あんた、それは言わない約束だよ」
手を取り合い、見つめ合う二人。
かつてこの二人には、子供がいた。
異種族間では子供は出来にくいと言われる中、産まれたのは可愛らしい男の子だった。
二人は目に入れても痛くない程に可愛がり、三人は幸せに暮らしていた。
そんなある日、子供が病気に掛かってしまった。
ドワーフの町に教会は無いが、ポーションは売っていた。
二人は頼み込むが、値段を吊り上げられた上に売ってもらえなかったのだ。
必死の看病も空しく、子供は三歳でこの世を去った。
この一件で、夫婦と町の間の亀裂が修復不可能となり、今に至る。
ガーゴが打った剣をタダ同然で買い叩かれても、ジェスカが町の者から石を投げられてもここから離れないのは、子供と共に過ごした家があるからだった。
「さぁ、仕事、仕事!」
「ああ」
暗い空気を振り払う様に、二人は笑顔を作った。
*
「手土産と言えば、甘い物。確か・・・あった!」
アイテムポーチの中から取り出したのは、カップケーキの型。
これもゲーム時に買った物だ。
プレート一つで六個作れるタイプで、色々な形がある。
「う~ん・・・どれが良いかなぁ。私が持って行くなら、やっぱりこれでしょ」
選んだプレートを四つ。
先ずは、バターを作ります。
モー実を二つご用意ください。
片手に一つずつ持ち・・・ひたすら振る!
中からジャボジャボと音がするので、音が聞こえなくなるまで、振る!
「ふぃ~」
いつもなら茎に繋がっている方を切るが、それでは出てこないので縦に割る。
すると、中にはぽってりとした出来立てバター!
ヘラで取り出して型に薄く塗ったら、型を冷蔵庫へ入れておく。
次に薄力粉、ココの実、砂糖、ベーキングパウダー、モー実を合わせて混ぜる。
砂糖のざりざりとした感触が無くなったら、型に流しいれてオーブンで焼く。
デコレーション用のチョコレートとクリームを用意していると、オーブンから甘い香りが漂って来た。
ピーピーと焼き上がりを知らせる音が鳴り、オーブンから型を取り出す。
そのまま余熱が取れるまで放置してから、まな板の上にひっくり返す。
「おぉ~!ちゃんと形になってる」
半球に猫耳を付けたようなマフィンがズラリと並んだ。
一つずつ小さな紙皿にのせ、デコレーションすれば完成!
「出来た!どう?」
今までじっと私の作業を見ていたダイフク達が、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。
良いって事か?
「味見役に誰か・・・お、エスト発見」
庭を通りかかったエストを呼び止め、縁側に座ってもらった。
「ガーゴさん達の所への手土産なんだけど、どうかな?」
出来たばかりのケーキを出すと、何故かエストが固まった。
「・・・・・食べ辛い」
フォークを握りしめ、じっとケーキを見つめるエスト。
「こう、ザクっと割って」
自分の分のケーキをフォークで切り、一口食べる。うん、美味しい。
中をくり抜いて、クリームを入れても良かったかも。
「エスト?」
未だにケーキと見つめ合うエスト。
「何故、この形に」
「可愛いかなぁと」
向こうの世界では、こういうキャラケーキ?を偶に見かけた。
猫だったりクマだったりしたが、結構人気だったと思う。
「可愛いが、その・・・」
「もしかして、顔を描いたから?」
可愛くて切れない~的なアレか?女子か!
「俺には・・・無理だ!」
そして、逃げた。
「え、えぇ~・・・ん?」
脱兎の如く逃げ出したエストだが、彼の分のケーキも消えていた。
まぁ、アイテムバッグを渡してあるから、腐らせる事は無いか。
その日の夜、晩御飯のデザートとして出してみた。
「くっ・・・」
「これは、試練か」
「可愛い~!」
ジロー、アヌリ、クレスの三人は、エストとほぼ同じ反応。
「可愛い!」
キャロルは、一頻り眺めた後でサクッと切って食べた。
「美味しい!」
やっと感想が聞けたので、一安心。
後日、男性組から「色か形を変えてくれ!」と、お願いされてしまった・・・解せぬ。
「へぇ~、ジェスカかぁ」
「ジロー、知ってるんだ」
ドワーフの町へ行った日の晩酌時。
もしかしたら知っているかもと思って、皆に話をしてみた。
「そいつ、でっかい斧持ってただろ?」
「うん。担いだまま、イノシシ追いかけてた」
「あっはっはっはっ!やっぱり、そいつは豪傑のジェスカだな。Aランク冒険者だが、実力的にはSランク」
縁側に降り注ぐ月明り。
流石にまだ寒いので、ガラス戸は閉めたままだ。
「私は、知らないなぁ」
キャロルは知らなかったようだ。
「ジェスカが第一線で名を広めていたのは、五十年くらい前だからなぁ」
「わぁ、産まれてない」
「ぐっ・・・」
キャロル、その一言は結構攻撃力が高い!「私その頃、小学生でしたぁ」とか笑顔で言われると、結構グサッと来るんだよねぇ・・・。
頑張れ、ジロー。
「ま、まだ現役っぽかったよ!?」
慰めてはあげないが、助け船は出してあげよう。
「そ、そうか。さっきも言ったが、実力的には申し分ない。だが、三十年程前に結婚してから、あまり姿を見なくなったな」
「あ~、旦那さんとすんごい仲が良かった。手を取り合って、見つめ合って・・・」
「うへ~、変わるもんだなぁ。俺が見た時は、ブラックベアと素手で戦ってたが」
金太郎か!斧担いで熊と戦って・・・。
「それで、そのガーゴって人が鍛冶師?」
「そうそう。これがそうなんだけど、どう?」
買って来た短剣をテーブルの上に置くと、皆興味津々だ。
ジローが手に取り、鞘から抜いた。
「へぇ~!俺が使ってるのよりも、良いな」
「そうなの?」
「ああ。これだけ良い武器を打てるなら、もっと名が知られていても良いはずだが」
「銀貨一枚で、投げ売りみたいにされてた」
「はぁ?」
ガーゴさんの見た目を説明すると、何となく皆納得したようだった。
「そういうのって、どの種族にもあるのよねぇ」
「俺は鍛冶の腕が良ければ、それで良い」
「私も!」
「ヒナ様のお決めになった事に、異論などございません」
最後のが気になったが、スルーで。
「とは言え、来てくれるかどうかは分からないんだけどね」
「ドワーフなんだろ?酒で釣れば良い」
「ドワーフと言えば、お酒よねぇ」
やっぱりそうか。
「手土産か・・・そうだね。何か用意してみるよ」
女性もいるから、甘い物もあった方が良いかもな。
二人に会いに行くのは三日後。
何が良いかなぁ~。
*
「可愛かった」
「ああ、そうだねぇ。あんな娘がいたらって思ったよ。猫になった時は、驚いたけどね」
ガーゴは口数が少ない為、意思の疎通が難しい。
その事と見た目が相まって、豪快で多少口の悪い他のドワーフとは中々上手くいかない。
「何故」
「行くって言わなかったのかって?」
ジェスカの言葉に、ガーゴはこくりと頷いた。
「あたいもあの娘は気に入ったよ。条件も破格だ。辺鄙な所だって言っていたが、冒険者は続けられる。でも、この家にはあの子との思い出が・・・」
「・・・」
二人が同時に向けた視線の先には、とても小さな椅子が一脚。
「今まで通りだって、何不自由無いさ!ここでだって冒険者はできるしね!生活の事なら、あたいに任せときな!」
「すまない」
「あんた、それは言わない約束だよ」
手を取り合い、見つめ合う二人。
かつてこの二人には、子供がいた。
異種族間では子供は出来にくいと言われる中、産まれたのは可愛らしい男の子だった。
二人は目に入れても痛くない程に可愛がり、三人は幸せに暮らしていた。
そんなある日、子供が病気に掛かってしまった。
ドワーフの町に教会は無いが、ポーションは売っていた。
二人は頼み込むが、値段を吊り上げられた上に売ってもらえなかったのだ。
必死の看病も空しく、子供は三歳でこの世を去った。
この一件で、夫婦と町の間の亀裂が修復不可能となり、今に至る。
ガーゴが打った剣をタダ同然で買い叩かれても、ジェスカが町の者から石を投げられてもここから離れないのは、子供と共に過ごした家があるからだった。
「さぁ、仕事、仕事!」
「ああ」
暗い空気を振り払う様に、二人は笑顔を作った。
*
「手土産と言えば、甘い物。確か・・・あった!」
アイテムポーチの中から取り出したのは、カップケーキの型。
これもゲーム時に買った物だ。
プレート一つで六個作れるタイプで、色々な形がある。
「う~ん・・・どれが良いかなぁ。私が持って行くなら、やっぱりこれでしょ」
選んだプレートを四つ。
先ずは、バターを作ります。
モー実を二つご用意ください。
片手に一つずつ持ち・・・ひたすら振る!
中からジャボジャボと音がするので、音が聞こえなくなるまで、振る!
「ふぃ~」
いつもなら茎に繋がっている方を切るが、それでは出てこないので縦に割る。
すると、中にはぽってりとした出来立てバター!
ヘラで取り出して型に薄く塗ったら、型を冷蔵庫へ入れておく。
次に薄力粉、ココの実、砂糖、ベーキングパウダー、モー実を合わせて混ぜる。
砂糖のざりざりとした感触が無くなったら、型に流しいれてオーブンで焼く。
デコレーション用のチョコレートとクリームを用意していると、オーブンから甘い香りが漂って来た。
ピーピーと焼き上がりを知らせる音が鳴り、オーブンから型を取り出す。
そのまま余熱が取れるまで放置してから、まな板の上にひっくり返す。
「おぉ~!ちゃんと形になってる」
半球に猫耳を付けたようなマフィンがズラリと並んだ。
一つずつ小さな紙皿にのせ、デコレーションすれば完成!
「出来た!どう?」
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良いって事か?
「味見役に誰か・・・お、エスト発見」
庭を通りかかったエストを呼び止め、縁側に座ってもらった。
「ガーゴさん達の所への手土産なんだけど、どうかな?」
出来たばかりのケーキを出すと、何故かエストが固まった。
「・・・・・食べ辛い」
フォークを握りしめ、じっとケーキを見つめるエスト。
「こう、ザクっと割って」
自分の分のケーキをフォークで切り、一口食べる。うん、美味しい。
中をくり抜いて、クリームを入れても良かったかも。
「エスト?」
未だにケーキと見つめ合うエスト。
「何故、この形に」
「可愛いかなぁと」
向こうの世界では、こういうキャラケーキ?を偶に見かけた。
猫だったりクマだったりしたが、結構人気だったと思う。
「可愛いが、その・・・」
「もしかして、顔を描いたから?」
可愛くて切れない~的なアレか?女子か!
「俺には・・・無理だ!」
そして、逃げた。
「え、えぇ~・・・ん?」
脱兎の如く逃げ出したエストだが、彼の分のケーキも消えていた。
まぁ、アイテムバッグを渡してあるから、腐らせる事は無いか。
その日の夜、晩御飯のデザートとして出してみた。
「くっ・・・」
「これは、試練か」
「可愛い~!」
ジロー、アヌリ、クレスの三人は、エストとほぼ同じ反応。
「可愛い!」
キャロルは、一頻り眺めた後でサクッと切って食べた。
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