異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

文字の大きさ
124 / 141
連載

第百三十五話 くせになりそう

しおりを挟む
第百三十五話 くせになりそう


「では、参ります。ふぉぉぉぉ!」

かき氷機のレバーを思い切り回すと、あっという間にフワっとしたかき氷が出来た。

「ふぅ‥‥さぁ、どんどん作るからね! あ、シロップはそこに置いてあるから」

アヌリとお出掛けしてから数日後、皆にかき氷を出しております。
用意したシロップは、イチゴ、メロン、マンゴー、抹茶にブドウ。全部島で採れた物で作った。勿論、ミルクも用意してある。モー実を煮詰めて作りました!

「氷ねぇ‥‥うわ、うまっ!」
「ふわっふわ!ん~、美味しい!」

ジローとキャロルは気に入ったみたいだが、あまりにガツガツ行ったので止めようとしたんだけど‥‥。

「「ぬ⁉」」

二人が揃ってこめかみを押さえた。

「あ~、急いで食べるとああなるから、気を付けてね」
「「もっと早く言ってよぉ」」

この二人、最近似て来たな‥‥。

「温かいお茶も用意してあるから、飲みながらね」
「ふむ、この抹茶が美味いのぉ。苦みと甘味が良い」
「ノナさん、それにミルク掛けても美味しいですよ」
「「「ふぉっふぉっふぉっ」」」
「美味いが、ちと冷えるの」

私も小さい頃、食べ過ぎてお腹壊した事あるな。ふむ‥‥夏、夏‥‥。
チリン、と縁側に吊るした風鈴が鳴った。平和だなぁ。
夏と言えば、スイカ、蚊、か‥‥いや、しりとりではなく‥‥う~ん。
幼い頃の夏と言えば、祖母が好きだった水饅頭だな。ふむ、水饅頭か。
流石にホームセンターでは売っていない。あんこを作る材料はあるが、くず粉かぁ。くず粉の原料である葛は簡単に育つが、中々に難しいと近所のお爺さんが言っていた。
くず粉の原料は葛の根っこ。その根っこは若いと、細く縦横無尽に広がるので、原料になる程までに肥大化となると、数年掛かるらしい。しかも、採れる冬には土から上は枯れているので、見つけるのも大変。見つけても、急斜面とかにあるので、掘り出すのも大変。
近所のお爺さんは自分の山で掘っていたらしいが、高齢で止めてしまったのだとか。

「葛かぁ」
「ありますよ」
「ふぉう! びっくりしたぁ」

セバスです。普通に出て来いってんだ!

「少々危険ですが」
「セバスが「危険」とか言うの、珍しいね。魔獣がいる山とか?」
「いいえ。この島にございます」
「え、マジ? 行く!」

と言う事で、次の日にセバスについてやって来ました。島の、端っこ。

「ここって、初めてセバスに会ったような‥‥?」

初めてこの島への扉を開いた時に繋がっていた場所に近い。

「はい。今でも昨日の様に思い出せます」
「いや、そこまで昔でもないしね」

片手の指でも余裕な年数ですよ。

「こちらです」

セバスが指したのは、崩れ掛けた地面の、斜面! 所々から太い根が出ている。

「葛って、ツルじゃなかったっけ?」
「まぁ、そうですね」
「これ、大樹だよね?」

太い根の上には、幹が物凄く太い樹。私が両手を広げても、抱えられない程ありそう。

「樹齢五百年くらいでしょうか」
「わぁ~お。ってか、上ふっさふさだけど、でんぷん取れるかなぁ」

確か、夏の間に光合成で蓄えた栄養分が、冬にでんぶんとして貯えられるとかなんとか‥‥。

「まぁ、行って来るね」

箒を取り出し、いざ! 根っこに近付くと、その太さがよく分かる。私の腕より太そう。

「それじゃあ、ちょっと失礼」

ナイフで根を少し傷付けると、白濁した汁が溢れてきた。これはでんぷんがたっぷり含まれている証拠なのだと、近所のお爺さんが教えてくれた。

「大丈夫そうだな。じゃあ、何本かもらいます!」

土が下に落ちて迷惑にならない様に大判の風呂敷を広げ、せり出している根っこに四方を括った。

「くっ‥‥このっ‥‥」

根の周りの土を取り除き、根を切り出してはアイテムポーチへと入れていく。普通はやらないらしいが、ここまでの大木となると何があるか分からないので、栄養剤と防腐剤を混ぜた樹用の薬を塗っておいた。

「こんなもんかな」

掘り出したのは、全部で五本。少ないと思われるかもしれないが、一本一本が直径三十センチ以上あるのだ。

「ただいまっと」
「お帰りなさいませ」

無事、着地。

「そう言えば、危険って言ってたけど‥‥何もなかったね」
「ヒナ様」
「ん?」
「空に浮く島。崩れかけている斜面。そこからせり出した根。それを切る。普通は、危険です」
「‥‥‥さぁ、戻るぞぉ!」

普通なんて、人それぞれさ!





作業場へ直行すると、先ずは根っこを綺麗にして、粉砕。
本当は洗うだけでも大変な作業だが、この世界は超便利。クリーンの魔法で綺麗にしたら、適度な大きさに切って潰していく。切り刻むと言うよりは、繊維状になるまで解すって感じだ。

「お隣のお爺ちゃん、ありがとう!」

暇な時にお茶を飲みに来ては、色々教えてくれた。
大きな樽を用意し、水を半分程入れる。樽の上に板を置く。
解した葛を分けて布袋に入れ、板の上で水を含ませてやさ~しく、揉む。

「なんか‥‥ふみふみしてるみたいだな」

子猫の時によく見られる、アレだ。みぎ~、ひだり~、みぎ~、ひだり~。あれって確か、母猫の乳を飲む時にやるんだよね。いやぁ、うん。ちょっとくせになりそう。

「おっと、いかん、いかん」

白い水が出なくなったら次の袋に変えて、またふみふみを繰り返す。
全部終わったら、樽を涼しい場所に一晩置く。すると、白いでんぷんと茶色い水に分離される。茶色い水を捨て、新しい水を入れて混ぜる。

「うわっ、泡が出て来た」

これはアクらしく、全部綺麗に掬い取る。それが終わればまた一晩置く。これを一週間以上繰り返すのだが、ここは魔法の世界。要は、でんぷんを洗って分離してを繰り返せば良いんだよね。

「重力操作」

樽の水に圧を掛け、でんぷんだけを樽の下へと押す。最初の水よりは、少し薄い茶色になった。水を代えてまた混ぜ、魔法で沈殿させる。これを五回程繰り返すと、分離される水が無色透明な水になった。
後は残った真っ白のでんぷんを取り出し、完全乾燥。石鹸程の大きさに切り分ければ、出来上がり! って、これを魔法どころか機械も無しで作るとか、凄いとしか言えない。

「美味しい水饅頭を作るぞ!」
しおりを挟む
感想 449

あなたにおすすめの小説

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。