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第百四十六話 描きたいもの
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第百四十六話 描きたいもの
固く握手を交わす二人。まだ夕暮れの河川敷でクロスカウンターの方が理解できる。
これ、どうしたら良いのかねぇ。
ため息を飲み込もうとした時、クゥと自分のお腹が鳴る音が聞こえて来た。そう言えば、そろそろそんな時間か。
「(アヌリ、アヌリ!)」
アヌリの頬をぺシぺシと叩いた。
「(お腹減った!)」
「では、ご用意いたしますね。私達はこれから昼食にするが、良ければコールも一緒にと、ヒナ様が仰せだが」
「ヒナ様‥‥」
コールと目が合った‥‥気がする。うん、まぁ、言いたい事は分かるよ。自分の肩に乗せた猫を「様」を付け? って感じですよねぇ。
「ああ、まだ名乗っていなかったな。私はアヌリ。察しの通り、冒険者だ。そして、この方がヒナ様。私のごしゅ」
初対面の人に、何を言うかぁ! 思わず尻尾でアヌリの頭を叩いた。
「‥‥主です」
言い方を変えれば良いってもんじゃないでしょうがぁ! しかも、ちょっと嬉しそうだし!
「そう。うん。分かった」
分かっちゃったの⁉
「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
生暖かい笑顔を向けられたぁ! 爪を立ててやろうかと思ったが、また喜ばれそうなので頑張って我慢した。
湖の傍、木陰に移動。アヌリが巾着から絨毯を取り出し、地面に敷いてくれた。
やっとアヌリの肩から降りられた! なるべく揺らさない様に歩いてくれていたが、ちょっと安定しているバランスボールに乗っているみたいだったんだよねぇ。
猫らしく、思い切り身体を伸ばした。元の姿ではやらないが、今はコールもいるしね。
あ、意外と気持ち良いかも。
「ヒナ様、外套は脱ぎますか?」
「にゃ」
返事をすると、アヌリが外套を外してくれた。安心してください、着てますよ!
この日の為に、クレスが作ってくれた。カボチャパンツにノースリーブのトレーナー。
試着した時には、また突然現れたセバスによって撮影会が開かれた‥‥。
「ヒナ様、準備が出来ましたよ」
私が思い出しゲッソリしている間に、アヌリが全部整えてくれたらしい。
この子、踏むとかどうの言わなければ、かなり仕事のできる子なんだけどなぁ。
今日のお昼ごはんは、クロワッサンのサンドイッチにオニオンスープ。サンドイッチの具は、生ハムとたっぷり野菜のサラダと、ゴボウとネギのサラダ。生ハムもミトの実から作ったので、100%島産です!
「いただきます」
「にゃ」
私とアヌリはいつもの様に手を合わせた。コールはと言うと、繁々とサンドイッチを観察していた。
「見た事の無い形のパンにこれは肉かだが独特の香りはせず」
またブツブツ言ってる!
「おい、ヒナ様のご厚意だ。早く食べろ」
「にゃ(言い方)!」
「一の経験は百の物語に勝る、か。いただこう」
さて、私はどうやって食べようか。手で持つか? 元の姿で食べるつもりだったからなぁ。
「ヒナ様」
お皿を前に考えていると、アヌリが綺麗に小さく切ったサンドイッチをお皿に盛ってくれた。そして、その一つをフォークで刺すと、私の口元に近付けた。
「どうぞ」
わぁお、満面の笑み! 私は観念して、素直に口を開けたのだった。
「‥‥美味い」
今のは、私じゃないですよ? アヌリの向こう側に座った、コールだ。
もさもさ雰囲気からは想像出来なかった優雅さでサンドイッチを頬張るコール。そう言えば、廃嫡がどうのと言っていたっけ。と言う事は、貴族、だよねぇ。
「当然だ。ヒナ様が作られたのだからな」
ア~ヌ~リ~く~ん? 私、今、猫! あぁ、めっちゃ見つめられてるじゃん!
「そっか」
おや? 思ったのとは違った反応が返って来た。馬鹿にされるか、変に思われるかと思ったのに、返って来たのは柔らかい笑顔だった。もさもさの前髪の隙間から見えたエメラルドグリーンの瞳は、とても優しそう。
「随分と熱心にシャッカを見ていたが、コールは植物の研究でもしているのか?」
「いや、こっちだ」
コールは、自分が背負っていた巨大リュックをポンポンと叩いた。そして、ガサゴソと中を探ると綺麗な赤い石を取り出した。
「鉱石?」
アヌリは更に分からないと言った感じだが、私はそれに見覚えがあった。
「あ~、これじゃ分からないか‥‥ああ、こっちだ」
次にコールが取り出したのは、丸められた紙だった。それを渡されたアヌリが開いてみると、そこには写真かと思える程のトーナ王国の王城が描かれていた。
「絵師か」
「半分正解」
「これほどの腕なら、宮廷画家として重用されそうだが」
宮廷画家って確か、王族専属の画家さんだったっけ。衣食住の保証があって、お給料まで出る。その変わり、言われた通りに描かないといけない。事実よりもちょっと足が長いとか、細いとか‥‥写真はあるが、マイナーな上に王城に飾る様な大きな物は無理だしね。
理想の自分に近付けたくて「盛る」のは、時代と世界が違っても同じって事か。
「ジャガイモを見ながらキュウリを描けと言われたから、無理だと言った」
喋り方は穏やかなのに、辛辣!
「まぁ、それは無理だな。もう半分は?」
アヌリは同じ事言われたら、鼻で笑いそうだ。
「それは‥‥こっち」
コールがリュックから一冊の本を取り出した。それは柔らかい色で描かれた物語だった。
「子供の寝物語か」
子供向けの絵本だった。こっちの世界の本は、本らしく文字が多い。偶に挿絵はあるが、図鑑でさえ文字が多目だ。
「‥‥綺麗」
思わずポソリと出てしまった!
「ん?」
「あ、あ~! き、綺麗だな!」
アヌリが慌てて誤魔化してくれた。
「そうか。ありがとう」
コールがこっちを見ている気がするけど、気のせいだよね!
「絵師に童話ね。それがなんだってこんな砂漠に?」
「‥‥いつか描きたいものがあるんだ」
「描きたいもの?」
「まぁ、それが何かは分からんけどね。それを探して、世界をうろうろしているって感じかな」
コールは世界を旅しながら絵を描き、それを売って路銀にして、また旅を続けているらしい。
根っからの芸術家というのは、放浪する人が多いのかねぇ。あのおにぎり大好きな人みたいに。
「そう言えば、最近よく白い猫の話を聞くなぁ。白い悪魔とか、神様の使いだとか、話はバラバラなんだけどねぇ」
おっとぉ。話が怪しい方向に行き始めたぞ。
どうしようかと考え始めたところだった。突然、ゴゴゴゴゴと言う音と共に地面が揺れた。
「ヒナ様!」
地震か⁉
固く握手を交わす二人。まだ夕暮れの河川敷でクロスカウンターの方が理解できる。
これ、どうしたら良いのかねぇ。
ため息を飲み込もうとした時、クゥと自分のお腹が鳴る音が聞こえて来た。そう言えば、そろそろそんな時間か。
「(アヌリ、アヌリ!)」
アヌリの頬をぺシぺシと叩いた。
「(お腹減った!)」
「では、ご用意いたしますね。私達はこれから昼食にするが、良ければコールも一緒にと、ヒナ様が仰せだが」
「ヒナ様‥‥」
コールと目が合った‥‥気がする。うん、まぁ、言いたい事は分かるよ。自分の肩に乗せた猫を「様」を付け? って感じですよねぇ。
「ああ、まだ名乗っていなかったな。私はアヌリ。察しの通り、冒険者だ。そして、この方がヒナ様。私のごしゅ」
初対面の人に、何を言うかぁ! 思わず尻尾でアヌリの頭を叩いた。
「‥‥主です」
言い方を変えれば良いってもんじゃないでしょうがぁ! しかも、ちょっと嬉しそうだし!
「そう。うん。分かった」
分かっちゃったの⁉
「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
生暖かい笑顔を向けられたぁ! 爪を立ててやろうかと思ったが、また喜ばれそうなので頑張って我慢した。
湖の傍、木陰に移動。アヌリが巾着から絨毯を取り出し、地面に敷いてくれた。
やっとアヌリの肩から降りられた! なるべく揺らさない様に歩いてくれていたが、ちょっと安定しているバランスボールに乗っているみたいだったんだよねぇ。
猫らしく、思い切り身体を伸ばした。元の姿ではやらないが、今はコールもいるしね。
あ、意外と気持ち良いかも。
「ヒナ様、外套は脱ぎますか?」
「にゃ」
返事をすると、アヌリが外套を外してくれた。安心してください、着てますよ!
この日の為に、クレスが作ってくれた。カボチャパンツにノースリーブのトレーナー。
試着した時には、また突然現れたセバスによって撮影会が開かれた‥‥。
「ヒナ様、準備が出来ましたよ」
私が思い出しゲッソリしている間に、アヌリが全部整えてくれたらしい。
この子、踏むとかどうの言わなければ、かなり仕事のできる子なんだけどなぁ。
今日のお昼ごはんは、クロワッサンのサンドイッチにオニオンスープ。サンドイッチの具は、生ハムとたっぷり野菜のサラダと、ゴボウとネギのサラダ。生ハムもミトの実から作ったので、100%島産です!
「いただきます」
「にゃ」
私とアヌリはいつもの様に手を合わせた。コールはと言うと、繁々とサンドイッチを観察していた。
「見た事の無い形のパンにこれは肉かだが独特の香りはせず」
またブツブツ言ってる!
「おい、ヒナ様のご厚意だ。早く食べろ」
「にゃ(言い方)!」
「一の経験は百の物語に勝る、か。いただこう」
さて、私はどうやって食べようか。手で持つか? 元の姿で食べるつもりだったからなぁ。
「ヒナ様」
お皿を前に考えていると、アヌリが綺麗に小さく切ったサンドイッチをお皿に盛ってくれた。そして、その一つをフォークで刺すと、私の口元に近付けた。
「どうぞ」
わぁお、満面の笑み! 私は観念して、素直に口を開けたのだった。
「‥‥美味い」
今のは、私じゃないですよ? アヌリの向こう側に座った、コールだ。
もさもさ雰囲気からは想像出来なかった優雅さでサンドイッチを頬張るコール。そう言えば、廃嫡がどうのと言っていたっけ。と言う事は、貴族、だよねぇ。
「当然だ。ヒナ様が作られたのだからな」
ア~ヌ~リ~く~ん? 私、今、猫! あぁ、めっちゃ見つめられてるじゃん!
「そっか」
おや? 思ったのとは違った反応が返って来た。馬鹿にされるか、変に思われるかと思ったのに、返って来たのは柔らかい笑顔だった。もさもさの前髪の隙間から見えたエメラルドグリーンの瞳は、とても優しそう。
「随分と熱心にシャッカを見ていたが、コールは植物の研究でもしているのか?」
「いや、こっちだ」
コールは、自分が背負っていた巨大リュックをポンポンと叩いた。そして、ガサゴソと中を探ると綺麗な赤い石を取り出した。
「鉱石?」
アヌリは更に分からないと言った感じだが、私はそれに見覚えがあった。
「あ~、これじゃ分からないか‥‥ああ、こっちだ」
次にコールが取り出したのは、丸められた紙だった。それを渡されたアヌリが開いてみると、そこには写真かと思える程のトーナ王国の王城が描かれていた。
「絵師か」
「半分正解」
「これほどの腕なら、宮廷画家として重用されそうだが」
宮廷画家って確か、王族専属の画家さんだったっけ。衣食住の保証があって、お給料まで出る。その変わり、言われた通りに描かないといけない。事実よりもちょっと足が長いとか、細いとか‥‥写真はあるが、マイナーな上に王城に飾る様な大きな物は無理だしね。
理想の自分に近付けたくて「盛る」のは、時代と世界が違っても同じって事か。
「ジャガイモを見ながらキュウリを描けと言われたから、無理だと言った」
喋り方は穏やかなのに、辛辣!
「まぁ、それは無理だな。もう半分は?」
アヌリは同じ事言われたら、鼻で笑いそうだ。
「それは‥‥こっち」
コールがリュックから一冊の本を取り出した。それは柔らかい色で描かれた物語だった。
「子供の寝物語か」
子供向けの絵本だった。こっちの世界の本は、本らしく文字が多い。偶に挿絵はあるが、図鑑でさえ文字が多目だ。
「‥‥綺麗」
思わずポソリと出てしまった!
「ん?」
「あ、あ~! き、綺麗だな!」
アヌリが慌てて誤魔化してくれた。
「そうか。ありがとう」
コールがこっちを見ている気がするけど、気のせいだよね!
「絵師に童話ね。それがなんだってこんな砂漠に?」
「‥‥いつか描きたいものがあるんだ」
「描きたいもの?」
「まぁ、それが何かは分からんけどね。それを探して、世界をうろうろしているって感じかな」
コールは世界を旅しながら絵を描き、それを売って路銀にして、また旅を続けているらしい。
根っからの芸術家というのは、放浪する人が多いのかねぇ。あのおにぎり大好きな人みたいに。
「そう言えば、最近よく白い猫の話を聞くなぁ。白い悪魔とか、神様の使いだとか、話はバラバラなんだけどねぇ」
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